2016年9月 宮城・岩手・秋田・山形の車旅(その2)
小林秀治
 秋田県に入った5日目である。

満点の青空のもと露天温泉(ふけの湯)は格別
[秋田・ふけの湯露天風呂]
[御座石神社からの田沢湖]
 駐車場から眼下に目をやると、白い煙が何本か立ち登っていた。案内板を見ると、「ふけの湯」と書いてある。予定にはなかったが、時間に余裕もあり、寄り道をすることにした。ふけの湯は一軒宿。天気は快晴である。ちょうど8時半から日帰り客を受け入れるとのことなので、入湯料600円を払う。宿の建物から離れた沢沿いに露天風呂があった。風呂は、二か所あり、秘湯の湯ということでひなびた感じ。川が温泉になっており、硫黄の匂いが立ち込めていた。湯は白濁でぬるめの39度くらいか。
 泊り客が一人、露天風呂に入ってきて、話しかけてきた。昨日の泊り客は二人だけだったとのこと。満天の青空のもと、温泉に入っているのは、すこぶる気持ちが良い。
 11時に乳頭温泉に着く。旅館街はなく、宿が点々としている。私は有名な妙の湯には入らず、一番手前の休暇村の温泉に入る。中は、乳頭温泉(単純硫黄泉)と田沢湖高原温泉(ナトリウム炭酸水素塩泉)の二つの湯が楽しめるようになっていた。ブナ林に囲まれた露天風呂は雰囲気がよい。
 乳頭温泉から下って、13時に田沢湖に出る。日本で一番深い湖で、423.4メートルの深さがある。深さがある分湖面の色は濃い感じがする。北側の沿岸にある御座石神社近くの茶屋で休憩。秋田名物の稲庭うどんを食べる。
 そこから、国道105号線を能代に向かう。国道105号線は、一部は整備がよくなく、走りにくい。途中、道の駅・あにに寄る。ここはマタギの里とのこと。熊の剥製なども飾ってあった。

能代で友人と再会
[能代で石塚君と]
 15時に能代駅に着く。能代は、日本海に面した街である。規模は小さいが、私の故郷の新潟市に似ている。同じ日本海に面し、シベリアからの風を防ぐための防風林としての松林が海岸沿いにはある。冬の日本海は風が強く凍るように冷たい。体験したものにしかわからない冷たさである。
 石塚君に能代駅から電話し、待ち合わせ場所を決める。風の松原という松林の入り口に車を止め(駐車違反の恐れなし)、中心街のイオンで石塚君と待ち合わせる。
 待ち合わせの17時、交差点の向こうに石塚君が現れた。見た目は以前とそう変わりはない。相変わらずおなかが出て痩せてはいなかった。
 イオン近くの「天一」という天麩羅・季節料理屋で9時半ごろまで飲む。石塚君は、両親と3人暮らしだそうだ。まだ年金は出ないので、貯金で食いつないでいるとのこと。母親に痴呆が出て大変にもなっているようだ。石塚君は元気がないと話す。この夏も病気のせいで気持ちが重たく、あまり外にも出なかったようだ。気分がよいと、飲みにも出掛けるようだ。ここの店にも焼酎のボトルがキープしてあった。そのボトルを開けて、また一本キープした。
 別れ際、店の前で写真を撮った。ここで別れようといったが、車のあるところまで一緒に歩くといったので、話ながら歩く。車に着いたら、飲んでいるので、ここで寝て、明日の朝、次の目的地男鹿半島に向かうと話す。
 お互い、元気で暮らし、また会おうと言って別れた。
 今日は、飲んでいたので、松林(風の松原)の入り口で車中泊。すぐに寝入った。

22日(木)6日目である。
[男鹿半島・入道崎]
 午前6時に風の松原を出発。左に能代の海岸線にある風力発電機を見ながら走る。沿岸3キロにわたって24基の発電機が設置してある。
 干拓地に入る。大潟村の道路は数キロにわたってまっすぐだ。道の駅・おおがたに寄る。ここにも車中泊の車が十台位あった。南下して突き当りを右に行き、男鹿半島の先端の入道崎をめざす。   
 朝7時なので、入道崎の駐車場には車が1台のみだった。空は曇り。風はないので、車を置いて、歩く。下は芝があり、草原となっていて歩きやすい。付近は海岸段丘である。白と黒の縞模様の入道埼灯台が目を引く。ここも北緯40度線上にあるので、モニュメントが置かれている。
 岬にある土産物屋が1軒早くから店を開けていた。なまはげの地でもあるので、いたるところに、なまはげ人形を置いている。
 帰り際、一人の若く見える女性が300cc位のバイクから降りて、入道崎に向かった。曇り空のせいもあり、後姿は、何かさびしそうな感じである。
[道の駅あきた港]

道の駅・あきた港には100mの展望台
 8時半に道の駅・あきた港に着く。そこには、他の道の駅にはない100メートルの展望台があった。展望台に上り日本海、秋田の街並みを見る。秋田市の街並みは奥が深く南に延びていた。
 道の駅から秋田市街に入り、秋田市民俗芸能伝承館を見学。竿燈や土崎港祭りの曳山、梵天祭りや秋田万歳、山谷番楽など秋田市に古くから伝わる行事や民俗芸能を紹介している。竿燈の実演も行っている。

角館は落ち着いた歴史ある田舎町
[角館・武家屋敷の庭]
 13時半には角館に入った。角館駅で情報を収集し、大まかな地理を把握する。有料駐車場があったが、無料駐車場があるはずと、探す。すぐに駐車場はみつかり、角館武家屋敷群の一番北側に車を停め散策する。普通の観光客は、南の方からくるが私は北から下っていく。一番北側にある石黒家に入る。入ると、座敷に上げられ、早速案内人がいつものように説明を始める。
 石黒家は、佐竹北家に仕え、財政関係の役職についていた家柄とのこと。建物は、茅葺き屋根の母屋とのぞき窓のついた黒板塀、正玄関と脇玄関を備えて武家の高い格式を示しているが、簡素なただずまいである。現存する角館の武家屋敷の中では、格式が一番高い屋敷である。
[比内地鶏の親子丼]
 武家屋敷通りを南下すると、土産物屋や飲食店、カフェなども建物が江戸時代風に作られている。「比内地鶏・究極の親子丼」という看板が目を引いた。おなかが空腹でもなかったが、食べようと店に入る。午後2時過ぎにも関わらず、客は3組位いた。値段は、親子丼としては高く1600円。比内地鶏がブランドで高いのだろう。味はまあまあ、おいしくこんなもんかなと思う。比内地鶏を初めて食べた。
 予定では、これから宮城県に入り渓流釣りをすることになっていたが、天候がよくないので、変更して明日渓流釣りをすることにする。そこで、場所も変更し、すでに4度位行っている山形県の肘折温泉に行くこととする。
 そこで、国道13号をまっすぐ南下していく。外は雨が降ってきた。
 今日は、山形県に近い道の駅・おがちで車中泊をする。

23日(金)7日目である。
 午前4時に道の駅を出て肘折温泉に向かう。天気は雨模様。夜中はずっと雨が降っていた。今日は釣りができないかもしれないと思いつつ、車を走らせる。

久々に尺イワナ2匹釣り上げる
[肘折温泉・銅山川の堰]
 午前6時に肘折温泉に着く。最初は、いつも来ている肘折温泉場から1キロほど上の大きな堰の下で釣る。この川は最上川から分かれた銅山川である。いつもすぐにあたりがある場所であるが、今回はあたりはない。1時間ほどして、あたりがあり、釣りあげたのは、17センチほどの岩魚。すぐ2匹目もかけたがバラしてしまう。
 後が続かないので、川を下りながら釣り歩く。大水が出た後なので、木が倒れていたり、土手が崩れていたりして釣り歩きにくい。それでもいそうなポイントを探る。20センチ弱の岩魚を2本追加したところ、水の中に大きな岩のあるポイントで、今までにないあたりがある。引きが強い。何度も岩の下にもぐられようとする。できるだけ深場に潜り込まれないようにやりとりし、魚体を浮かせ空気を吸わせ弱らせ引き寄せた。浮かせた岩魚は精悍な顔をしていた。5分くらいのやりとりだったと思う。あとで測ったら31センチの岩魚であった。
[31センチの岩魚]
 その後20センチ以下の岩魚を追加したところで、ふと目を川下にやると釣り人が登ってきていた。その釣り人はフライのしかけでやっていた。幅の狭い川では釣るのが難しいと思った。釣り人がいたので、それ以上、釣れないと思い、そこから、土手に上がり、川を変えることにする。
 変えた川には依然に一度入っている。温泉街から西に伸びている苦水沢である。水が苦いわけではなく、魚はいる。以前にも釣れた実績がある。他に釣り人もいないので、最初の堰から釣り上がることにする。川の上には、樹木はなく、見通しがよい川である。最初の堰で20センチ超えのヤマメを釣る。その後魚がついていそうな淵などを釣り上がった。浅そうな淵のところにきた。岩の下に魚がいそうである。そこにエサを振り込む。少し流してあたりがないので上げようとすると重い引きが伝わる。何度か岩の下にもぐられそうになり、ハリスを切られそうになったが、それを交わし、水面に口を出させ、たもに入れる。上げたイワナは31センチであった。ハリスを抜こうとしたところ口の奥にかかっていた。恐らく最初あたりがなかったことから、すーっとエサを飲み込んだに違いない。
 エサは、釣具屋で売っているブドウ虫である。白く、無臭の蛾の幼虫である。ブドウの木の中に巣を作ったからブドウ虫と言われる。それを釣りエサ用に養殖している。渓流魚には抜群である。あとは、オニチョロなどの川虫を使う。岩魚は肉食である。場合によっては、水辺の蛇やカエルも食うそうである。

肘折温泉の湯でつるつる
 14時に雨が降ってきたので、釣り終えて、肘折温泉のいでゆ館に入る。入湯料は400円。平日なので、客は地元の人らしき人が二人であった。ゆっくりつかる。泉質は、ナトリウム‐塩化物・炭酸水素塩泉である。肌がつるつるになり、気持ちがよい。
 昼食がまだであったが、ここの食堂のメニューによいのがないので、道の駅で食べることにする。近くの道の駅を探すと道の駅・尾花沢があった。15時半に道の駅・尾花沢に着く。そこで、食べてから、さらに南下して道の駅・むらやまで車中泊することにする。
 道の駅・むらやまは、国道13号を挟んで広い。山形方面に向かっていたので、反対方向にはいけない。歩道橋で売店などには行けるようになっている。
 そこで、駐車場とトイレはあるので、ここで車中泊をする。

24日(土)8日目である。
 今日は帰りなので、0時に起き、山形道を目指して出発する。自宅までの距離を見ると約500キロである。山形道から東北道に入り、途中のサービスエリアで仮眠しながら、ゆっくりと八王子を目指して帰る。無事に南大沢に着く。今回はこれまで。