2019年9月 紀伊半島一周の旅

小林秀治

1日目(9月15日、日)

22時、八王子・南大沢の自宅を出発。圏央道の相模原愛川インターから三重県の亀山インターに向かう。日曜日の夜だが、連休の中日とあって、自家用車がいつもより多い。トラックはいつもより少なめである。高速は真夜中に走るに限る。料金は安いし、事故以外は渋滞がないからである。景色が見られないのが残念だが、高速道は、あまり景色のよいところは走っていない。


2日目(16日、月)

南大沢から関インターまで364キロ。奈良県に通じる国道25号線に入り、中瀬インターで下りる。
  7時に伊賀市の伊賀上野城に着く。上野公園駐車場に車を入れる。有料だが、まだ早いので、管理人がいない。チェーンはされていないので、車を停めて伊賀上野城などを散策。伊賀上野城は、石垣が高く、街並みが遠くまでよく見える。堀の水も豊富にある。桜の季節は華やかだそうだ。朝の散歩をする市民が多くいる。


伊賀上野の俳聖殿は見ていて飽きない


伊賀上野の俳聖殿

9時から伊賀流忍者博物館(756円)が開くので、入ることにする。その間、隣の俳聖殿(松尾芭蕉生誕300年を記念する建築物)を見ながら待つ。建物は、芭蕉の旅姿を表しているそうで、檜皮葺きの屋根が笠に見立てられ、1階の八角形は袈裟、柱は杖、木額は顔を表現しているそうだ。見ていて、おもしろいかたちの建物である。上は、キノコのようにも見える。


伊賀流博物館の忍者俳優
手裏剣を投げる忍者俳優

赤目渓谷を歩く


赤目渓谷案内板

伊賀上野から名張市を通って、赤目温泉・隠れの湯と赤目渓谷に向かう。道は行き止まりになっていて、行き止まりから赤目渓谷入り口がある。手前の駐車場は有料(700円)なので、赤目温泉・隠れの湯の駐車場に入れる。温泉に入ると当然無料である。
  先に赤目渓谷を歩く。赤目の由来は、役行者が修行中に赤い目の牛に乗った不動明王に出会ったことにあるという。なんと渓谷に入るのに有料で500円取られる。中に入ってみると、確かに整備してあり、誰でも渓谷が楽しめるようになっている。渓谷には赤目四十八滝があり、渓谷を堪能できる。結構な高低差がある。岩場や滝を巻くところには階段が設置してある。渓谷は4キロにわたる。不動の滝、千手滝、布曳滝を見て引き返す。お往復2キロ位だ。


赤目渓谷入り口にいるオオサンショウウオ

渓谷の入り口には、日本サンショウウオセンターがあり、オオサンショウウオが展示されている。直に見るとごつごつとした強面の顔である。


赤目渓谷の千手滝

渓谷を歩き、汗をかいたので、赤目温泉・隠れの湯に入る。ホテルの中にある温泉で、温泉は、少しぬめりがあり、ぬるめである。露天風呂には、客はなく、貸し切り状態であった。内風呂には、3人くらいいたが、すいていたので、ゆったり湯につかる。
  温泉につかったのち、伊賀流忍者の祖である百地三太夫屋敷跡を訪ねるが、名張市竜口にはそれらしきものも看板・案内もなかった。見落としかもしれない。百地三太夫は架空の人物とされるが、その屋敷跡は、天正伊賀の乱で織田信長に敗れた百地丹波の屋敷だという。二人は別人であるようだ。


女性の参詣認めた女人高野・室生寺


室生寺の五重塔

13時半に女人高野・室生寺を参拝。川にかかる朱塗りの太鼓橋を渡って、境内に入る。高野山金剛峰寺が女人禁制何に対し、室生寺は女性の参詣も認めたので、女人高野・室生寺と言われる。
  階段を上がっていく。檜皮葺きの屋根と朱色の五重の塔が有名だが、意外と小さい。この五重塔は、1998年に台風で大きな被害を受けたが、修復して現在に至っている。平安時代の初頭の建立と言われていて、とても古いものである。
  女人高野・室生寺をあとにして、細い道を登って吉野山を走る。途中に、金峯山寺(きんぷせんじ)がある。世界文化遺産である。吉野山地方は古来、聖域で、修験道の山だった。そこに、蔵王権現を祭る金峯山寺が造られたという。金峯山寺の本堂、蔵王堂は国宝で大きく、黒光りしていて重厚である。
  吉野山の道の両側には、温泉や旅館、土産物屋が立ち並んでいる。桜の名所として知られている。
  今日は、道の駅・吉野路黒滝で車中泊をする。道の駅・吉野路黒滝までは、左に、近鉄吉野線と吉野川を見て走る。その後、下市から山に入る。


3日目(17日、火)

5時過ぎに道の駅・吉野路黒滝を出発。今日は、山の中をドライブする。夜が明けると、晴れのようだ。吉野川沿いの渓谷を進む。かなりの渓谷で、道の下は深い。ループ橋を過ぎると、大台ケ原ドライブウエイの入り口があり、そこから入る。大台ケ原ドライブウエイの道はかなり狭いところが多い。上に行くと、霧が出てきてガスってきた。猪の子どもが道の端に出ていた。


大台ケ原駐車場

くねった道を30分位走ると、終点の大台ケ原駐車場に着く。雲一つない天気である。支度をして、ハイクに出るが、大台ケ原の西側の湿地帯のある所は、許可制で事前に予約を取らないと入れない。入口は、チェーンがしてあった。乗り越えていけば行けるが、つかまってもしょうがないので引き返す。東側は、許可がいらず、普通の登山ができる。登山に行く人もいた。私は、大台ケ原が山の奥の奥にあることを感じて、次の目的地に向かう。
  大台ケ原ドライブウエイを少し引き返すと小処温泉の入り口の看板があるので、下ることにする。下りは、急坂で車1台がやっと通れるところを一気に下る。下ったところに、小処温泉がある。一軒宿である。女将に聞くと平日なので、温泉に入れるのは11時からだという。温泉の先にある滝を見に行くことにする。奥に行くと行き止まりである。駐車場があるが、落ち葉でいっぱいで清掃されていない。駐車場すぐ近くに「くらがり又谷の滝」がある。20m位の落差があり、切り立った岩の間を水が流れ落ちてくる。珍しい滝と言える。滝の水しぶきで涼を取り、小処温泉は、まだ開かないので先を急ぐことにする。


ぬめりのある下北山温泉きなりの湯


池原ダム・下は下北山温泉

下北山温泉きなりの湯を目指す。そこまでは、ダム湖を下に見ながら、くねった道を走る。ここは、奈良県の山の中。きなりの湯も11時からなので、上のダムを見に行く。ダムの上から見ると、きなりの湯があるあたりは、谷になっており、キャンプ場などもある。ダム湖をせき止めている。反対側は、水を流しているダムである。池原ダムという。天気が良く湖面は鏡のようで、周りの山々や木々、白い雲が映っている。
  きなりの湯は、町営。最初は、3人の客。湯はかなりぬめりがあるが、無臭。やわらかいお湯でとてもいいお湯だ。温泉に入り、その後、十津川に向かう。次も温泉。今日は、温泉三昧になりそうだ。
  湯泉地温泉に向かう。ここも奈良県の山奥である。奈良の平城京があったところや開けたところは、京都に近く、奈良県の北にあるが、紀伊半島の山奥部が奈良県の面積としては最も多い。十津川村までは山道である。くねりくねって35キロ走る。外は涼しい。山の中なので、15度位。川沿いに降りてくると24度位に上がるので、暑く感じる。窓を開けて、風を入れて走ると暑く感じない。
  湯泉地温泉に着く。橋を渡って滝の湯に入る。リニュウアルされていて新しい。露天風呂は、滝のあるところまで階段で下りていく。内風呂からなので、裸で下りていく。先客は3人。地元の人らしき人が若い人をつかまえて話しかけている。若い人は、千葉から来ているそうな。この辺を一人で旅をしているようだ。公務員と言っていた。お湯は透明でぬるめ。硫黄の臭いあり。


昔、谷瀬の吊り橋は生活道路


谷瀬の吊り橋

湯泉地温泉をあとにして、十津川に沿って北上し、谷瀬の吊り橋に向かう。この吊り橋は、高さ、長さともに日本一ということだ。
  駐車場に入ると、観光バスもいて、中高年の観光客が大勢い来ていた。吊り橋は、一度に20人以上乗ると危険ということだったが、それは守られていないようだった。歩くと縦にも横にも揺れる。慣れないと歩きにくい。
  渡る前に吊り橋の全景を見るが、長くて高さもある。長さ297m、高さ54m。もともとは生活のためにかけられた吊り橋。谷瀬集落の人たちが洪水のたびに流された橋の代わりに流されない吊り橋を、私財を投じて作ったものだそうだ。今では、それが観光資源となっている。
  今日の宿は、谷瀬の吊り橋から北に20キロのところにある、道の駅・吉野路大塔である。明日は、高野山に参る。早めに寝る。


4日目(18日、水)

5時15分に道の駅・吉野路大塔を出発。曇り後小雨。高野山に向かう。途中も山道でガスっている。


道端にイノシシ

シカと猪が道端に出ていた。車が近づくと、さっと山の中に消えていく。朝方や夜は、動物に出会う機会多い。スピードを出していると衝突もあるので、気を付けなければならない。


高野山に僧が行き交う


高野山の山門

朝の6時半に高野山の金剛峯寺の駐車場に入る。制限はなく無料。気温が20度以下と涼しい。長袖、長ズボンに着替えてお参り、散策に出かける。ここは和歌山県で世界遺産の高野山。金剛峯寺は高野山真言宗の総本山で、弘法大師が開いたお寺。本堂はきらびやかなイメージがあったが落ち着いていて、年輪が重なった檜皮葺きの建物である。朝の鐘がゴーンとなり、静寂の中に響き渡る。高野山の街中を歩くといたるところに、金剛峯寺の子院、天徳院などの寺が117もある。金剛峯寺から少し離れたところに、壇上伽藍があり、根本大塔がある。真言密教のシンボルとして建てられたとのこと。今は修復中で中は見なかったが、曼陀羅の世界を表現しているそうだ。街中にあるお寺では、ここかしこで朝のお勤めの勤行が、読経が行われていた。通りにも聞こえてくる。高野山全体は、お寺の街である。
  歩いて、高野山入り口の山門を見る。大きくて、古く、風格のある山門であった。車に戻り、少し東に行くと道端に駐車スペースがあるので、そこに車を置き、奥の院に参る。奥の院には、弘法大師御廟がある。参道の両脇には、墓の数々が累々として建てられている。20万基以上あると言われ、戦国大名の6割以上の墓があるそうだ。古いものから新しいものまである。


珍しい赤い地蔵さん

弘法大師御廟は、大師信仰の中心地。御廟には、信者と思われる夫婦連れなどが供養に訪れていた。供養受付では、金の灯明が200万円で売られていた。


正面奥が弘法大師御廟

弘法大師御廟は、撮影禁止である。私は入り口から少し離れたところでシャッターを早めに押した。
  帰り道、参道の脇に、水子地蔵が数体並んでいた。信者と思しき人が一体ずつていねいに、ひしゃくでお水をかけていた。少し、ぽつりぽつりときていたので、お地蔵さんの頭や肩は、黒光りして濡れていた。
  高野山を降りて、和歌山市に入る。やはり、地方都市で低い建物が多い。商店街もさびれている感じである。ここで昼食を取り、少し散策して、次に向かう。
  有田を通り、道の駅・白崎海洋公園に入る。半島の先端にある道の駅である。風がビュービュー吹いて強い。道の駅は一部、営業していたが、あとは閉店状態。昨年の台風で、道の駅の施設や隣にあるスポーツ施設が損傷を受けていた。最先端にあるスポーツ施設は壊滅状態であった。その先に、展望台があるので、風は強かったが登ってみた。まだ、陽ざしは強くて、まぶしいくらいだった。目の前には紀伊水道(紀伊半島と四国に挟まれた海域をいう)があり、遠くには、四国の徳島、淡路島が見える。当初はここで、車中泊を行う予定だったが、風が強いので、先の道の駅に行く。紀伊由良、御坊、印南を通り、道の駅・みなべうめ振興館に着いたときは、暗くなっていた。ここで車中泊。他に、車中泊は一台。


5日目(19日、木)


紀州の梅干しはスーパーで


白浜温泉・由良浜

道の駅・みなべうめ振興館を出発。この地方は、梅で有名。梅干しは、地元のスーパーで買うのがよい、安くて甘くてうまい。あとで行く、熊野古道の道端で買った農家の梅は、昔の酸っぱい梅であった。早朝の白浜温泉、由良浜を訪れる。白浜全体がリゾート地の雰囲気である。由良浜に立つと、砂が白く、ソテツなども生えていて南国の雰囲気である。朝が早いので、温泉には入らず、景色のみ見て白浜をあとにする。


色鮮やかなイセエビ

その後、国道42号線を南下する。右手に海を見ながら走る。海岸線は入り組んでいて、高低差もあり、起伏に富んでいる。海に突き出た岩礁帯も多い。道の駅・すさみに寄る。ここには、すさみ町立えびかに水族館がある。おもしろいかもしれないと入ってみることにする。9時開館なので少し待って一番の客で入る。これから行く串本海中公園水族館とセットだと2000円で600円お得になるので、両方の入場券を買うことにする。
  中に入ると、大きなタカアシガニ、小さなカニ、伊勢海老、小エビ、大グソクムシなど、世界のエビ、カニ類が展示されていた。タカアシガニなどが触れるコーナーがあり、触ってみた。触られると伊勢海老みたいにピーっと逃げるのかと思いきや、おとなしく触られている。ほとんど動かない。
  いつも言うが水族館は、なぜか癒される。旅行で、水族館を目的としていく場合も地方にある有名でない水族館にも入ることにしている。全国で100を超える水族館があるようだが、数は把握されていないようだ。私は、これまで、20くらいは入っているだろうか。この小さな水族館から、串本方面に30分位南下すると、串本海中公園水族館がある。平日なので、駐車場はすいている。


大きなクエ

この水族館は、目立った大きな魚はいないが、海中に展望施設があり、直に泳いでいる魚がみられる。中の水族館で目立ったのは、1m以上もある大きなクエである。食すと脂がのったおいいしい貴重な魚である。季節は秋から冬である。クエは、この地方、紀伊水道でよく取れる魚のようだ。
  海中展望施設では、単独で泳ぐ、二ザダイやシマアジ、紫色鮮やかな小魚が泳いでいた。集団でみられる魚としては、メジナなどがいるようだ。今日、この時間は、群れで泳ぐ魚はきていない。
  串本海中公園水族館から望むと潮岬半島のほうがよく見える。そこに向かう。


本州最南端の潮岬


本州最南端の潮岬

潮岬の駐車場に着いたが、有料なので、入らず、先に行く。少し先に行くと、展望台があるので登る。展望台から潮岬、灯台、太平洋を一望できる。海の向こうでは、タンカーなど数隻が行き交う。海の交通の要所でもある。天気が良い日だったので、まぶしいくらいである。
  隣にある観光センターで近大マグロを食す。近畿大学の養殖場のマグロである。マグロ丼1400円、他と比べると養殖なので安い。ちなみに、青森県・大間で天然のマグロを食したが、マグロ丼3500円位であった。


紀州・熊野は古代のカルデラ噴火でできた


昼食を終えて、観光センターの隣にある紀伊ジオパークセンターに入る。無料。中は、小中学校の生徒であふれていた。授業の一環のようだ。
  中では、ビデオが放映されていた。紀伊・熊野の歴史を1500万年前から説明していた。1500万年前のカルデラ噴火、巨大な火山活動が影響して、その後風化して、今の紀伊・熊野の風景になったとのことである。那智の滝、山の上にある巨石、穴の開いた岩、切り立った崖、海に突き出た岩柱の郡などが挙げられる。
  ジオパークという言葉をよく聞くが、地球科学、地質学の観点から教育や観光に役立てようとする運動だということである。まさに、紀伊半島の地球的な歴史をさかのぼり、紀伊・熊野を宣伝していた。
  明日は、熊野大社本宮と熊野古道を歩くので、早めに道の駅に向かう。着いたのは、熊野川のほとりにある、道の駅・瀞峡街道熊野川である。


6日目(20日、金)

道の駅・瀞峡街道熊野川を出発し、25分位で本宮町に着く。空が白んでくると熊野の山々が見えてくる。山々にはガスもかかり、神秘的だ。


熊野古道・発心門王子

世界遺産熊野館に車を停め、早朝に熊野大社本宮を参拝。参道は、100段以上ある階段である。上り詰めると、大社の門があり、それをくぐると熊野大社本宮殿が横長く鎮座している。祭っているのは仏像。神仏混合の社である。出雲大社や伊勢神宮と比較してこじんまり感はある。熊野大社以外は、大勢の人でにぎわい、門前町もあったのと比較してのことである。


熊野古道・中辺路

大社前からバスで発心門王子へ行く。7時40分に発心門王子に着く。バス停もあり、駐車場がないと言われていたが、そのスペースはある。山の中である。〇〇王子とは、熊野古道にある神社のことである。神社といっても建物があるわけではない。
  発心門王子に参り、熊野古道を熊野大社本宮に向かって歩く。下りで約7キロである。普通に歩いて、約3時間の道乗りであるが、2時間15分、ほぼノンストップで下りてくる。あとで、筋肉痛になったのは言うまでもない。山を下る方が、普段使っていない筋肉を使うということである。途中は、昔の石畳の道もあれば、石の階段、土と細かい砂利の道、舗装道路と入り混じって、今の熊野古道がある。私が歩いたところは、和歌山県・田辺から熊野大社本宮に向かう熊野参詣道・中辺路(なかへち)の一部である。他には、田辺から海岸線沿いに歩き、那智・新宮に向かう大辺路(おおへち)、高野山から熊野大社本宮に向かう小辺路(こへち)、熊野参詣道伊勢路、吉野からの大峯奥新道など、数多くある。全て歩くと何日もかかるようだ。全てを歩く人もあるようだ。
  中辺路は最も多くの昔の人々が歩いた道だという。歩いていると、その影が見えてくるように思う。
  3キロほど進んだところで、中高年のツアーに追いつく。ガイド付きである。それを追い越して歩く。
  途中一度休憩する。そこに、草刈をしていた3人の男が休んでいた。そこに話しかけていた下から登ってきた一人の女性。明るく話しかけている。車での一人旅のようで伊勢の方から来たと言っていた。車中泊ではないようだ。休憩していた場所からは、下のほうに、熊野大社本宮の大鳥居が見えていた。あと1キロほどのところで、下から登ってくる中高年の女性の二人連れとすれ違う。どこまで行くのか、まだ先は長く、登りが続く。登り始めのようでまだ、軽快に会話して歩いている。


八咫烏は熊野にあり


串本の橋杭岩

熊野大社本宮が近づくと、民家が現れる、すぐに、杉木立の中にある熊野大社本宮に行きつく。朝、階段を登って参詣したのとは、逆コースで下り、世界遺産熊野館の駐車場に入る。そこで、世界遺産熊野館に、無料なので入る。左手の館に入ると、日本サッカー協会のロゴの八咫烏と参詣した際に奉納されたサッカーボールが展示されていた。ここ熊野は、八咫烏の地である。八咫烏とは、日本神話において、神武天皇の東征の際、熊野から大和へ案内したとされる烏で、神である。三本の足がある。
  右の建物では、紀伊・熊野のビデオが流されていた。先に1人の青年が見ていた。私もしばし、見ていた。
  雨模様が心配であったが、午前中は降らなかった。熊野大社本宮を出るとぽつぽつときた。


湯の峰温泉のつぼ湯

熊野大社本宮の近くには、いくつかの温泉がある。今回は、湯の峰温泉に入る。日本最古の温泉だそうだ。1800年前に開かれたそうだ。ここには、数軒の旅館、民宿があるが、さびれてはいる。川が温泉街の真ん中に流れているが、その脇から温泉が湧き出ている。温泉は熱く、温泉卵ができるほどだ。湯の峰温泉公衆浴場があり、内湯が安く入れる。川沿いには、世界遺産にもなっている「つぼ湯」がある。天然岩の間から出ている温泉でそこを囲って入浴できるようにしている。入ると、一人位しか入れないので、30分貸し切りで入ることになっている。770円である。「つぼ湯」の湯は熱い。埋めて入る。底から温泉が湧いているので、しばらくすると熱くなる。温泉の色も変化するようだ。すっぽり温泉に入っていていい気分。ただ、周りが囲われているので、閉鎖的である。
  その後、明日、釣りをするので串本に戻る。
  15時に道の駅・くしもと橋杭岩に着き、釣りの仕掛けなどを準備する。目の前に、橋杭岩が広がる。岩が柱のように海から突き出て杭のようになって横に何本も並んでいる。珍しい風景である。
  雨が降って風もあるので、明日はどうなるか心配ではあったが、早めに寝た。


7日目(21日、土)

4時半に道の駅・くしもと橋杭岩を出発。風も雨もない。5時半に串本町、紀伊大島に渡る。ループ状の橋をわたって、港に着く。
  事前に下見にきているので、すぐに、今日の船宿、大裕丸に着く。港に車を停めて準備をする。他の釣り人(一人は私だけ)は既にきていて、船に乗るのを待っていた。全員そろったところで、6時前だが、船は釣り人を乗せ、養殖いけすのある湾、熊野灘に向かった。今回のつりは、カセ釣りというもの。養殖いけすやその近くにエンジンの無い船を固定してそこに乗って釣るものである。串本特有のようだ。他のところは、筏をつくってそれを固定して、その上に乗って釣るやり方が多いように思われる。


串本で10時間の海釣りを堪能


串本の熊野灘

オキアミなどまき餌をもらい、早速、釣りにかかる。少しうねりがあり、船は揺れる。島影の湾なので時折強い風が吹くが釣りやすい。私は、一人なので自由にスペースを使い、二本の竿を出して釣りをする。初めてなので、コマセかごを小さいのしか持ってきておらず、失敗の思いである。
  狙いは、マダイ。釣り方は、関東と同じ。ハリス仕掛けは10メール。コマセを振って仕掛け分上げて、待って釣る。何回か繰り返すとあたりがあり、25pほどのアジ、そのあとは、オオモンハタがきた。その後はエサが取られるが、あたりはない。もう一つの竿は、胴付き仕掛け3本針でオキアミを付けて、底の方を釣る。すぐにエサが取られるが、あたりもある。30pのオオモンハタ、それ以下のオオモンハタ六匹、アジ3匹、40pのハマチ1匹などを釣った。残念ながら、マダイのあたりはなかった。他のグループは、マダイを釣り上げていた。私の釣り方が悪かったようだ。
  料金は、6000円+2000円(コマセ、付けエサ代)である。
  季節によっては、大マダイやブリ、ワラサなども釣れるようである。午後4時に、迎えの船が来て沖上がりとなる。船が走っている時間は15分程度である。まだ、台風の影響は少なく、よかったと言える。
  明日は、台風の影響があるとみて、那智の滝を早めに見ることにして、太地町の道の駅・たいじで車中泊を取る。


8日目(22日、日)

8時前に道の駅・たいじを出発。風が出てきている。雨は止んでいる。


さすがに日本一で神秘的な那智の滝


那智の大滝

8時半に那智勝浦を通り、那智大滝に着く。早い時間なので、滝入り口のトイレの駐車場に車を停める。ここは4台しかない。雨模様なので、あたりは暗い。石段を下りて、那智の大滝を目の前にする。落差は日本一のようだ。水量も多い。ここは、滝に近づくことはできない。滝が神のようになっているからだ。また、お参りの対象になっている。ここには、那智御瀧・飛瀧神社がある。朝、宮司が、滝に祈りをささげていた。他に若いカップル一組、きていた。


三重の塔と那智の大滝

その後、熊野那智大社に参る。相当な坂の石段を登り、青岸渡寺と並んである熊野那智大社に参る。階段は合わせると500段近くになるようだ。坂の途中に、朱色の三重塔がある。後方には那智の大滝が見えて、風景としてはすごく良い場所である。
  熊野那智大社は朱塗りで明るい。そこから、土産物屋がある駐車場に向かって石段を曲がりくねりながら降りていく。途中、これから参拝する外国人などが息を切らして登ってくる。最近は、日本の有名な観光地、特に、世界遺産に指定されている場所は、外国人が多い。


くじらは日常で文化


太地町・台風の影響で荒れている

車に戻ると、急に雨が降ってきた。これから、太地町にもどり、くじら博物館に向かう。
  太地町に入ると、風が強く吹いている。ソテツも揺れている。波しぶきも立って、台風の影響を受けている。だが、まだ、大丈夫のようで、また日曜日とあって、博物館には、家族連れなどが多くきていた。
  中は、クジラの骨格標本が3階からでっかくつるされていた。大きなクジラでは十数メートルにもなる。
  昔のクジラ取りなども紹介されていて、この地方の文化となっているようだ。太地町のクジラ取りやイルカ取りについては、海外からも批判があるが、昔からの文化といえる。


小型のクジラ・目がかわいい

外の海に近い天然の海水のプールでは、小型のクジラが飼育されていた。エサをやることもできる。エサをあげようとすると顔から上を水面に出してくる。目が小さくかわいい。
  風が出て来ているので、予定を一日早めて今日中に帰ることにする。


紀伊勝浦港の足湯

14時に紀伊勝浦港で、マグロやその内臓などの珍味を買い物する。クジラの肉も売っているが、私は、地元のスーパーで安いのを、15人前位の物を買った。土産物屋で買うのもいいが、現地では、スーパーなどで安くいいものが売っている。今回は、くじら肉と紀州の梅干しを買った。あとアミエビの干したものも買った。
  紀州勝浦港には、なんと足湯がある。帰りがけに足湯に入り、よい気分で帰途についた。。
  途中、三重県に台風の影響で大雨警報が出て、土砂降りの中、運転していた。
  紀伊長島インターから紀勢自動車道、伊勢自動車道、東名阪自動車道、新東名を通って22時に南大沢の自宅に帰ってきた。
  今回の紀伊半島の旅で、本州と北海道の海岸線沿いはほとんど走ったことになる。あとは、九州と四国である。これからも挑戦したい。