2011年度千代田区予算案に対する区職労コメント
2011年2月
千代田区職労執行委員会

 2011年度千代田区予算案が、1月に提示された。
 区職労は、その予算案に対しての問題点等を以下のように指摘する。

1、 2011年度区予算案全体の特徴
 千代田区の2011年度予算案の特徴は、次の通りである。
@  2011年度予算編成は、区民生活の安心を支えることを重点に編成した予算としている。
A  全会計の予算規模は586億46百万円で、前年度対比で49億26百万円、9.2%の増となっている。
 一般会計は、489億18百万円、前年度対比で44億85百万円、10.1%の増となっている。
 国保事業会計は、48億98百万円、前年度対比5億6百万円11.5%の増となっている。
 介護保険特別会計は、33億86百万円、前年度対比18百万円、0.5%の減となっている。
 後期高齢者医療特別会計は、14億44百万円、前年度対比7百万円、0.5%の減となっている。
B  歳入では、大きな特徴が特別区税で昨年が減収であったのに対し、1.3%の増、前年度対比1億72百万円を見込んでいる。しかし、そのうち特別区民税が景気低迷の影響を受け0.7%減の101億4386万円となっている。
C  目的別歳出では、総務費は、職員給与費等が29億38百万円の減などにより前年度対比で30億54百万円、46.1%の減となっている。これは、別に、職員費として、職員給与費、非常勤職員報酬等を一括計上し、前年度対比で117億37百万円となっている。したがって、以下の科目の経費から職員費は減額されている。
 区民生活費は、新日比谷図書館整備費14億82百万円の増で、前年度対比28百万円の増となっている。
 保健福祉費は、保護費3億32百万円などの減で、前年度対比19億72百万円、27.7%の減となっている。
 まちづくり推進費は、前年度対比8億79百万円、14.5%の減となっている。
 環境安全費は、前年度対比で17億13百万円、42.1%の減となっている。
 こども・教育費は、麹町中学校の整備30億38百万円、子ども手当1億64百万円、私立保育所補助金2億33百万円の増などにより、前年度対比で10億52百万円、10.7%の増となっている。
D  性質別歳出では、義務的経費が前年度対比8億53百万円、4.7%の減となっている。
 人件費は、前年度対比で7億64百万円、5.9%の減となっている。
 扶助費は、前年度対比で88万円、2.1%の減となっている。
 一般行政費は、前年度対比で66百万円、0.3%の増となっている。
 投資的経費では、麹町中学校整備などの増で、前年度対比60億49百万円、130.5%の大幅増となっている。
E  経常収支比率は、特別区民税の増などにより82.8%、昨年度よ7.7ポイント下がっている。千代田区は条例で経常収支比率について、85%程度と定めている。
F  人件費比率は、職員数の削減等で、25.0%となり、前年度対比で4.2ポイント下がっている。一般職員数は、1000人をさらに割り込み948人の見込みである。
2、 2011年区予算案に対する区職労コメント
(1) 一般会計歳出の問題点について
一般会計の歳出についての問題点を以下のように指摘する。
区民生活費
@  図書館運営費について、その指定管理料は、3億7548万円で、21年度予算より5106万円も、多くなっている。
 指定管理での図書館運営については、蔵書に対する利用者の不満が多い、職員の入れ替わりが多く、職員の経験蓄積が十分でない、などの問題点が指摘されている。
 新日比谷図書文化館開設準備では、1億2896万円、施設整備では、18億8229万円を計上し、昨年度予算と合わせると22億8265億円となる。平成23年の夏に開設予定であったが、アスベスト問題などもあり、23年秋にずれ込む予定である。
 指定管理者は、小学館集英社プロダクションが代表企業で、構成は、大日本印刷、シェアードビジョン、大星ビル管理、図書館流通センターとなっている。指定管理者の破綻や事故、公有財産の利用のあり方、労働者の低賃金化が問題となったことを受けて、指定管理制度の運用について、2010年12月28日付けで総務省が技術的助言を行なっている。今後も、千代田図書館も含めてチェックが必要となっている。
A  総合窓口の運営の一部委託等で1億4573万円を計上している。住民票や印鑑証明の発行事務等の一部事務委託であるが、偽装請負の疑いが濃厚な問題をはらんでいる。例えば、窓口でのトラブル対応で、委託業者に任せっきりにできるのか、決してそんなことはできないはずであり、必ず、職員が出て行かざるを得なくなる。問題があれば、受託責任者を通じて是正するとあるが、それでは、迅速な対応は難しいといえる。また、もっとも大きな問題が個人情報が守られるかどうかである。結局のところ、民間事業者の低賃金をあてにした人件費削減がねらいであることは疑いがない。ところが、今回、区職員を5人削減するとしているが、どうみても3倍以上の費用がかかることになる。繁忙期とそうでないときに人員を調整することがメリットとなっているが、繁忙期は年にそんなにあるわけではない。慣れていない委託の者がきてもうまくいかないことになるのではないだろうか。
B  区民から他の財源にまわしてほしいという意見が出ている地域コミュニティ活性化事業は、各町会のイベント事業として毎年続けられているが、使用目的がかなりあいまいで税金の使い方には問題があるとの指摘がある。23年度予算は、1623万円である。発足時からの支出総額は、3億2682万円にもなる。区民の目線に立って、江戸天下祭りと同様に、地域コミュニティ活性化事業の見直しを検討すべきと考える。
 また、コミュニティ活動事業助成として、昨年度と同様1500万円計上されているが、地域コミュニティ活性化事業とどう違うのか整理が必要ではないか。
C  総合窓口の運営委託料として、1億2906万円計上されている。その中に、サービスマネージャー業務委託料とコールセンター運営業務委託料が入っている。コールセンターについては、相変わらず、経験不足の影響か、間違ったところへの紹介など各課からの苦情は多い。区民が最初に接するところがサービス低下では問題があるので、早急な抜本的改善が求められる。
保健福祉費
D  障害者福祉センター運営費の23度予算は、指定管理料(2億2984万円)、土地賃借料(1576万円)などで2億6658万円となっている。
 障害者福祉センターが22年1月に開設した。整備費、建設費、借地権利金支出やそれ以前の支出(予算)と合わせると17億367万円にもなっている。
 千代田区所有の敷地で建設すればこんなにはかからないのではないか。
まちづくり推進費
E  市街地再開発事業の23年度予算は、昨年度は10億円をきったが、淡路町二丁目西部地区の事業で17億3820万円と増えている。そのうち、区の一般財源支出は約8億7000万円で、残りは国と都の補助金である。昨年度の区補助金から5億円の増支出となっている。
 従来住んでいた住民が追い出され、高額所得者しか入れないような住宅建設(今回は約300戸)に税金をつぎ込むことの是非または、住宅の販売価格、大きさなどへの注文が検討されなければならないと考える。また、計画にあたって、地域コミュニティを壊さないために、近隣にも配慮した計画のプロセスがとても重要になっていると考える。
F  まちづくり予算に関わって、区民にとっては、身近な居住環境や景観を守り、住民を追い出さないでほしいという強い要望がある。これまでのような地区計画を単に拡大する方針だけでは、難しいものがあるのではないか。新住民が入ってきているものの、これまで長年住んでいた住民は大きく減っている。長年住んでいる住民を追い出さないための居住環境をどう守っていくかが課題であり、居住保障や大規模建設行為に関わる事前協議制度の導入などを掲げたまちづくり条例が早急に必要であると考える。
環境安全費
G  地球温暖化対策の23年度予算は、1億1818万円となっている。環境モデル都市として、2020年までに区全体でCO2の排出量を1990年比で25%削減するとの条例目標達成に向けた予算とのことである。
 区内で排出されるCO2の多くは、大規模ビル建設・事業所の影響である。この点での規制、協力を得ることが特に必要となっている。
H  千代田区全域が路上禁煙地区となっている。現在、警察OBなどの非常勤職員と係長職員で毎日パトロールをし、過料を徴収している。過料徴収額は、平成21年度990万円となっている。平成18年度が1724万円で過去最高額となっており、それから21年度まで下がってきている。過料徴収等を担当している非常勤職員の23年度予算は、1億42万円(昨年度予算9274万円)で、他の非常勤よりは賃金が高くなっている。
 吸う人、吸わない人との「共生」の考え方で対応しているが、そうであるならば、過料というかたちでの対応ではなく、「説得」というかたちでの対応が望ましいと考える。
こども・教育費
I  麹町保育園の新園舎整備では、従来提案していた民設民営方式による大規模施設方針を変更し、保育所整備(運営は民営化)だけにとどめて(仮称)麹町地域認可保育所の整備(区が建設)としている。23年度は、基本・実施設計などで2703万円を計上している。建設は、24年度から25年度で、開設は、25年4月を予定している。
 区は、昨年末に現在の仮園舎を区立保育所として当面(いつまでかは明らかにしていない)残す方針を示しているが、保護者からは、比較的環境面で良い当初の敷地に区立保育園の整備を行うべきとの当然の意見が出ている。
 民営化問題での麹町保育園のあり方についての保護者と区の協議は、区が一方的に反故にした形となっており、問題を残したまま、方向をそらして民営化を進めようとしているものであり、保護者や区職労が納得できるものではない。やはり、区立保育所の民営化について、保護者と区が、民営化の良し悪しなどについて、十分な協議が必要ではないか。それなくしては、保護者の合意をとりつけるのは難しいと考える。
J  区は、区立保育園よりは人員配置や設備的に劣る認証保育所を待機児対策として積極的に誘致している。認証保育所補助は23年度予算で、昨年度より大幅に増えて4億7763万円となっている。補助対象施設は、8箇所になっている。
 認証保育所にいた保護者からは、区立保育所のほうがよいという実際の声が出ている。保育士が定着しない、低賃金など、認証保育所の構造的な問題点にメスを入れて、補助金を支出する必要があるのではないか。問題が起きてからでは遅い。
 また、今年度は、二番町にできる私立保育所への補助金として、新たに2億3311万円計上している。設置・運営事業者は日本保育サービスであるが、区が補助を出していることから、保育の質、保育士の条件などを確保するよう求めていくことが重要である。
K  放課後子どもプランの実施で、昨年とほぼ同額の2億3529万円支出する。また、新しく二番町の学童クラブに4502万円補助するとしている。
 従来の児童館の役割を検証せずに実施することに大きな問題があるといえる。各小学校に児童館の機能を移したときに、専門職の運営スタッフの質と数の確保、設備の確保ができるのか大いに疑問である。非常勤職員や委託でごまかすのでは子どもの成長や発達に責任を持つといえはない。また、「児童館そのものの運営について、抜本的な見直し検討を進めるとしている」が、放課後こども教室や学校内学童クラブの検証もないまま、児童館廃止ありきで進むことには利用者の不安が残る問題がある。児童館の見直しにあたっては、これまで築きあげられてきた児童館行政の総括と新たな施策の検証が必要と考える。
L  学校給食は、全面委託して3年が経った。小学校調理委託で2億1169万円を計上している。昨年度が1億8204円で、2965万円増えている。中学校給食調理で7060万円計上している。昨年度6828万円で、232万円増えている。この額を見ると果たして委託したほうが安上がりか、委託されてからの問題点や導入当初との経費比較、安全な調理材料の調達がどうなっているか、食の安全が確保されているか等の検討が必要になっている。
総務費
M  人材派遣委託として、4億8108万円(昨年度予算4億6593万円)計上している。人件費比率を条例で決めているとは言え、財政難ではないにも関わらず、正規職員を確保せずに、派遣職員でワークライフバランスの確保、休職者等の対応をするのは、筋道が違っていると指摘せざるを得ない。
 また、派遣職員や非常勤職員の低賃金に依拠していくことの問題性を指摘したい。同一労働同一賃金を真剣に考えるべきである。派遣職員の導入は、法律上、3年以上同じ職場・業務に派遣を受け入れた場合、人が変わっても、区に雇用義務が生じる原則を踏まえるべきである。また、専門26業種といわれるものが期間制限はないが、専門性の疑わしいものには適用しないようにしなければならない。また、保育園、児童館については、派遣職員が頻繁に変わるなど、運営上好ましくないとして正規にもどすよう要求していることもあげておく。
N  職員福利厚生費として、職員健康管理、互助会助成、職員住宅維持管理、借上げ型職員住宅で8711万円計上している。昨年が8951万円で、240万円減っている。区一般予算のわずか0.18%という低さである。公務員バッシングの中で職員福利厚生費が削減されてきた結果といえる。そのなかでも互助会助成は13年度予算で1億2605万円あったものが、23年度予算では1814万円と大幅に減らされている。区長に職員の福利厚生の実施義務があると法律では決めている。このことを具体的に実施するよう改めて求める。
O  総務事務業務委託で3908万円(昨年度予算4162万円)計上されている。従来職員課が行っていた職員に関する申請事務、非常勤職員関係事務、研修事務などを委託しているのだが、職員課の職員数が不足しているのは分かるが、職員のプライバシー問題や本来区職員がやるべき事務を委託していくことには問題があるといえる。
(2) 新しく区民要望に応えている点について
 商工融資事業の融資限度額の引き上げ、女性のがん対策、こども医療費助成の拡充(高校生等医療費助成)など、区民要望に応えた点は、評価できる。
(3) 行財政効率化の問題点について
@  23年度予算における行財政効率化額は、16億619万円としている。昨年より、約6億円も増えている。総人件費・6億3830万円の減や事務事業の見直し・9億5195万円などによるものである。職員数の削減では、昨年度との比較で10人減となっており、退職者数を完全に補充していない。そうした中で、保育園、児童館、学校、本庁職場などの現場では正規職員の不足で大変な対応を余儀なくされている。
A  平成13年4月1日の全体の職員数は1362人、23年4月1日では1061人になる見込みとし、301人純減したとしている。このひずみは、保育園や児童館など多くの職場で表れ、仕事量などの増で、職員にメタルヘルス不全など、健康面への影響をもたらすものとなった。業務量に見合った適正な職員配置が強く望まれる。
(4) 財政運営の状況に対する指摘
@ 職員数について
 職員数について区は、17年度から21年度までに240人削減することを目標としたが、職場や区職労の削減反対や区民の声などで、予定通りの削減はさせなかった。
 その結果、23年度見込みで一般職員数は948人になるとしている。これは、13年度(石川区長1期目の初年度)との比較で、296人の減である。
A 人件費比率について
 23年度の人件費比率は、昨年度より減少見込みで25.0%になる。減少の理由は、職員給与費の減や投資的経費の増による。
 区は、人件費比率を25%程度とすることを条例で定めているが、果たして25%が妥当なのか科学的な根拠は示されていない。25%に制約されず、業務量と職場の状況による適正な人員配置が求められる。
B 基金について
 23年度末の基金総額の見込みでの合計は、21年度の675億3百万円と比べ減ったとはいえ、606億90百万円となる。これは、区の年間予算を大幅に超える額である。
 千代田区でも貧困と格差が確実に広がっている。中小企業や低所得者、高齢者対策、雇用対策、住宅対策などに、積極的に活用すべきと考える。

 以上、2011年度千代田区予算案についての指摘事項を述べてきた。区当局に対して、区議会での議論および区職労の指摘した事項について耳を傾けることを求めるものである。特に、正規職員を減らし、非正規を増やす人件費抑制方針の撤廃を強く求めるものである。
以上