2005年6月区議会での「こども園」に関する質疑(一般質問)
(区議会速報)

■飯島和子議員
初めに(仮称)富士見一丁目計画についてです。
この事業は、推進プログラムでは富士見小学校・幼稚園の用地に小学校、こども園、児童館、地域活性化機能を持つ施設の工事を来年度から着工し、3年後、2008年度に開する予定となっています。また、昨年度はこの計画の整備手法についての検討を日本経済研究所に委託して、約1,400万円かけて行い、今年度予算では計画の推進のために1,800万円を計上しました。このように事業が進められているにもかかわらず、いまだにこの計画について地元に説明が全くなく、まちの中や保育園、小学校の保護者からは、区がどのような施設にしようとしているのかを知りたいという声が出されています。地元からも施設及び情報提供と話し合いの場を持つ要望を今年3月に区に提出していますが、納得いく対応はいまだにされていません。より良い計画にするには、情報を開示するとともに、地域や関係者とともに協議していくことが何より大切ではないでしょうか。
まず初めに、計画の内容に関連して3点について質問します。
1つは、施設に含まれている地域活性化機能とは具体的にはどのようなものを考えているのでしょうか。検討するに当たっては何を参考にするのでしょうか。
2つ目は、地域住民から既に出されている要望はどこで検討され、どのように生かされるのでしょうか。
3つ目は、整備手法についてです。区は調査検討した結果、PFI手法を導入したいとしています。教育的複合施設の建設、維持管理をすべて民間が行うPFI手法で行った場合の効率、効果的なメリットとはどのようなことでしょうか。子どもたちの健やかな成長に責任を持つ立場からの答弁を求めます。
第2に、この施設に建設が予定されているこども園について質問します。
区長は、いずみこども園を幼稚園と保育園の良いところを取り入れて一元化したと述べていますが、開設後3年が経過した今日の状況はどのようになっているでしょうか。区職員組合保育園分会が区内の保育園、幼稚園、こども園の職員を対象に今年4月に行ったいずみこども園に関する実態調査では、子どもにとって発達の場になっているか疑問視する声も数多く出されています。例えば、保育園、幼稚園のどちらの良さも生かせず、保育の質が落ちたように思える、1日の中で担当者が何人も入れ替わるのは育ちに大きな影響が出る、乳児一人ひとりに以前のような保育をしたいなどです。また、事務仕事が多過ぎる、子どもがいる保育士は勤務が難しいという声が出され、現場には深刻な問題がたくさんあることが赤裸々に記されています。
富士見一丁目計画に予定されている2つ目のこども園は、富士見こども園として場所の離れている富士見幼稚園と飯田橋保育園を対象にした計画と言われています。そうだとするならば、幼稚園と保育園が同じ建物にあり、年齢区分方式で13年の実績があるという理由で開設したいずみこども園より問題はさらに多くなることが予測できるのではないでしょうか。
実態調査では2つ目のこども園について、子どもにも職員にも負担が大きいので、十分いずみこども園の意見、要望を反映させてもらいたい、いずみこども園の問題点をクリアしてからスタートしてほしいなどの意見が数多く出され、見切り発車の開園は絶対にやめるべき、しっかりと話し合い、より良いこども園を作っていかなければならない、実態や現場の職員から課題を聞き、生かしてほしいと切実な要望が出されています。また、保護者からは、夜9時近くに園に電話をしたら朝7時半からの保育士がまだ仕事をしていたのでびっくりしたとか、職員の入れ替わりが多いので心配などの声も聞いています。
昨年第3回定例会で区は、2カ所目のこども園の設置に対してはいずみこども園の実践の成果を十分に生かしてまいる所存であると答弁されていますが、区長はいずみこども園の現状について現場職員や利用者の声を聞いた上で計画を進めているのでしょうか。子どもの健やかな成長を最優先させる立場に立つならば、次のこども園の具体化の前にまず現場の声に真摯に耳を傾け、いずみこども園の3年間の検証を関係者間で進めるべきではないでしょうか。見解を求めます。
第3に、幼保総合施設についてです。
区長は、先の第2回臨時会招集あいさつで、いずみこども園が国の進めている幼保総合施設に先鞭をつけたと述べられました。幼保総合施設については、2003年の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003 、いわゆる骨太方針第3弾において、就学」前の教育と保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の設置を可能とするよう2006年度までに検討することが決定されました。これを受けて、総合規制改革会議は、2004年3月にまとめた総合規制改革会議の成果事例の中で、幼稚園も保育園も同じように株式会社が設置できるようにすることと、総合施設ではそれぞれ現行の幼稚園と保育所に関する規制のどちらか緩い方の水準以下とすべきであると提案しています。施設整備、職員資格、職員配置、幼児の受け入れ基準などについて水準を低い方に合わせるべきだというのです。
例えば職員配置を3歳児について見ると、現在保育園は保育士1人について子どもは20人、幼稚園は教諭1人に子どもは35人までが認められています。昨年3月に閣議決定された規制改革・民間開放推進3か年計画では、総合施設のモデル事業を行うに当たって、職員配置は3歳から5歳児は概ね子ども20人から35人に1人の間と設定しています。
3歳児35人に対して職員が1人でも基準を満たすことになってしまいます。設置基準の緩い方に合わせた施設では今まで以上に子どもと職員にしわ寄せが行き、幼児教育に責任を持つことができなくなるのではないでしょうか。
総合規制改革会議が提案している幼稚園を株式会社が設置できるようにすることと、幼保一元化の施設の設置基準の水準を低い方に合わせることについて区長の見解を求めます。

■政策経営部政策担当部長(大畠康平君)
飯島議員のご質問のうち富士見一丁目計画についてお答えいたします。
この富士見一丁目計画につきましては、昨年度、計画の整備手法についての検討を行い、今年度、計画を具体的に推進するため、近々、地元関係者で組織する協議会を立ち上げるところでございます。地域要望についてはその中で検討してまいります。
この計画は、単に富士見小学校の改築にとどまらず、施設全体を地域の人々に開放するとともに、地域のにぎわいを創出するなど地域の活性化に寄与することを目指しております。
また、民間の資金や経営、技術のノウハウを最大限に活用するため、設計段階から建設、維持管理に至るまで民間事業者が一体として実施するPFI手法で整備してまいります。
これにより、これまでにない新たな形の総合子ども施設として一層良質な行政サービスの提供を目指してまいります。

■子育て推進室長(島崎友四郎君)
飯島議員のご質問にお答えいたします。
まず、いずみこども園についてですが、21世紀にふさわしい乳幼児育成施設として、幼稚園、保育園双方の要素を取り入れながら、所管官庁や法制度上の枠を超えた新しい幼保一元施設として平成14年4月全国に先駆けて創設いたしました。運営側の都合によらず、子どもと保護者の視点に立って幼稚園と保育園の枠をなくすための様々な検討を重ねた末に実現したものです。地域の子どもを年齢や保護者の就労形態で区別することなく、ゼロ歳から就学前までの心身の発達に合わせて一つの施設で継続的に育成することを基本理念として運営しております。創設以来丸3年、こども園職員の工夫や努力もあり、第三者評価の結果等からも保護者の方々からの評価は大変高いと自負しております。
保育園分会の実施したアンケートの結果をお持ちのようですが、多様な意見があるとはいえ、いまだに職員の間に保育園、幼稚園の縄張り意識が残り、子ども主体の視点に立てていないことは大変残念です。大人の都合、大人の論理でない建設的な意見は大いに参考にしたいと考えています。
富士見幼稚園と飯田橋保育園を母体とする2番目のこども園として設置が予定されている富士見地域については、いずみこども園の経験を生かして子どもと保護者に一層喜ばれる施設とするよう、保育園及び幼稚園等関係者により検討してまいります。
次に、国の総合規制改革会議の幼稚園・保育所の一元化に関する議論についてですが、幼稚園と保育所に関する行政を一元化し、施設設備、職員資格、職員配置、幼児受け入れなどに関する基準を統一化すべきとの方針はかねて千代田区が主張してきたことであり、その前段階としての規制緩和は幼保総合施設を全国規模で広げていくためには必要であろうと理解しております。

■(飯島和子議員)
自席から再質問いたします。
まず、富士見一丁目計画なんですが、これはこの秋にPFIでやるかどうかを決定するというふうに予算特別委員会の分科会でも話されていると思いますが、今の話はもうこの手法でやりますというふうに受け取れたんですが、その点を明らかにしていただきたいことが一つあります。
近々、協議会を開いて、そこで住民の意見も取り入れていくと言いましたけれども、この施設が地域に開放されたものであるという説明がありましたが、であるならば、もっともっと早くにしっかりと住民の意見を取り入れて、それからPFIにするのか、どっちがいいのか、手法も考えるべきだと思います。もう既にPFI方式ありきというように私は受け取れましたので、その点についてもう1回伺いたいと思います。
それから、こども園についてですが、先ほどの答弁ですと、私が述べた分会のいろいろ様々な問題点、そしてまた現場の声を聞いてほしい、この答えに対して、職員の縄張り意識でそういう問題が起こっている、このような答弁のように聞こえました。それでは実態をつかもうという姿勢が全く見られないと思います。再度、職員、保護者も含めて関係者の方の声をよく聞くように、この点で求めたいと思います。

■政策担当部長(大畠康平君)
飯島議員の再質問にお答えいたします。
まず1点目のPFI方式の決定についてでございますけれども、この秋にVFM(バリュー・フォー・マネー)が出た段階で正式に決定するということでございます。
2点目の建設方式そのものについても区民の意見を聞くべきではないかというご質問でございますけれども、建設方式そのものにつきましては、やはりこれは区で決定してやっていきたいというふうに考えております。ただし、その建設の中身、内容につきましては協議会と十分協議しながら、また議会と議論しながら決定していきたいというふうに考えております。

■子育て推進室長(島崎友四郎君)
飯島議員の再質問にお答えいたします。
まず、現場の声あるいは利用者の声をもっと聞くべきではないかというご意見でございますけれども、利用者の声につきましては、第三者評価等を行う中でかなり詳しく利用者のアンケート、保護者のアンケートをとっております。そういう中で幅広く意見を集約しているものでございます。それから、職員につきましても、管理職が随時職員面談等を行って、職員の意向をきめ細かく把握する中で事業展開しているということでございます。