05人事院勧告の若干の解説
■給与改定
 官民較差、0.36%、1389円公務員給与が民間を上回っているとして、俸給表を4月に溯ってマイナス改定を勧告。

■春闘結果反映しない勧告
 05春闘は、連合集計で前年比304円増、全労連・国民春闘共闘で前年比432円、日本経団連では大手企業で前年比126円です。
この結果からみても春闘結果が反映されていない、民間準拠といいながら奇妙なものとなっています。

■不当なマイナス4月遡及勧告
 勧告は、本年4月に遡及し一律俸給表0.3%マイナス改定としました。さらに配偶者にかかる扶養手当を500円減額改定しました。改定差額については、12月期の一時金で減額するとしています。これは、不利益不遡及の原則に反することをまた繰り返すものとなっています。
結果、係長で40歳・配偶者・子ども2人のモデル給与例で年間7000円の減収となります。

■一時金も民間実態踏まえず
 一時金は、0.06月の格差に対し、0.05月の微増勧告でした。全額勤勉手当に配分し、今年は12月期にプラスし、18年度以降は6月、12月期に均等配分するとしています。今年の夏季一時金は、連合9.04%増、全労連・国民春闘共闘3.10%増、日本経団連(主要203企業)3.63%増となっており、民間企業は一定の改善が行われていますが、勧告はそれを反映せず、微増となっています。

■職員を差別し分断する給与構造見直し
@ 地方の民間賃金水準(最も民間給与の低い地域の3年間の平均の官民較差を指標)に合わせるとして俸給水準を平均4.8%引き下げます。昇給カーブフラット化のために、若手の係員層については引き下げを行わず、中高齢層(30歳代半ば以上)はさらに2%程度を上乗せ、7%賃金引き下げとしました。東京については、昨年の報告による地域官民較差3.72%を無視し、引き下げるとしています。
給与水準引き下げは、生活権を侵害するものです。引き下げ数値は、大企業と中小企業の賃金較差の反映で企業移転などに左右され不安定であり引き下げの根拠にはなりません。
基本給の引き下げは、退職金や年金に重大な影響を及ぼし、生涯賃金の引き下げとなります。
A 年功による給与上昇を抑制し職務・職責に応じた給与にするとして、級構成を統合・新設し10級制としました。現行1級、2級と4級、5級を統合する一方で、本省課長の職責を上回る職務が生じているとして、現行12級水準相当を新設し、本省高級官僚を優遇する再編となっています。
B 勤務実績を反映させるとして、現行号俸を4分割しました。
C 枠外昇給を廃止しましたが、一定の号俸延長を行いました。また、55歳昇給停止措置に変わる55歳昇給抑制措置が導入されました。

■地域手当の新設
 民間賃金の高い地域に勤務する職員に地域手当を支給することになりました。現行の調整手当は廃止し、支給割合18、15、12、10、6、3%の6区分としました。額は、本俸、本俸の特別調整額、扶養手当の月額合計に支給割合を掛けた額としました。
平成22年度まで経過措置が取られます。
この手当を適用してもほとんどの地域で、大幅な減少となります。また、地域間の賃金格差を拡大し、地域経済や地方の行政水準にも影響します。
23区は最高の18%、三多摩は、3から15%となっています。

■広域異動手当の新設
 転勤手当を広域異動手当と変更しました。

■勤務実績の給与への反映
@ 現行号俸を4分割し、勤務実績反映の給与制度としました。
A 昇給区分を5段階に設け、勤務成績判定期間を1月1日から12月31日とし、昇給時期を年1回、1月1日に統一しました。

■成果主義に基づく人事評価制度を本格導入することを宣言
 成果主義人事評価制度を本格的に導入するとしました。しかし、公務の職場では、全体の奉仕者として公正、中立、安定し継続性のある組織的な業務が求められています。集団組織のなかで専門性も高められていきます。
 成果主義に基づく人事評価制度を導入した民間職場では、職場のチームワークを乱すこと、マイナス評価を隠すこと、全体としてチャレンジ精神の減退、評価されない職場や仕事が出てくることなどの問題が出ています。

■本府省手当の新設
 本庁職員を優遇するものです。課長補佐、係長、係員にそれぞれの級別に応じた定額の手当を支給します。

■労働基本権の代償としての機能を果たさない
 人事院は、公務員の労道基本権付与のILO勧告にもふれず、賃金切り下げ、高級官僚優遇の給与構造見直しを推進し、労働基本権の代償としての機能を果たしていません。

■地方自治体への影響必至
 東京都人事員会は、すでに人事院勧告の方向にそって、給与構造見直しをするとしています。
 人事院勧告の内容が、地方人事委員会勧告に影響するのは目に見えています。このまま導入されれば、賃金の大幅切り下げに止まらず、退職金や年金の切り下げにつながります。
 人事院勧告の実施をさせないよう取り組み、特別区職員の生活実態や特別区の民間給与実態に見合った勧告とするよう、特別区人事委員会への働きかけがとても重要です。