平成16年度千代田区予算案についての区職労コメント
基金積立てをしつつ、総人件費抑制による冷たい予算案
2004年月2月
千代田区職労執行委員会
 平成16年度千代田区予算案が、2月初めに発表されました。
 区職労は、この予算案に関わって、職員の賃金・労働条件や区民生活に関わる重大な問題が含まれていますので、以下のコメントを発表します。
 一般会計予算は、対前年度比38億33百万円(8.0%)減の442億90百万円となっています。ただし、平成15年度予算に計上した「岩本町ほほえみプラザ」の一括買い取り経費を除くと、15年度と比べて10億28百万円(2.4%)の増となり、保健福祉と教育の分野に予算を重点配分したとしています。区職労が以前から福祉・教育にシフトした予算とすべきと主張してきたことからみれば評価することができるものです。ただし、経常的経費を削減した分や人件費削減などがこれらの経費に回っているので、その分職場にしわ寄せがきているとみなければなりません。
 国民健康保険事業会計は、33億8百万円、対前年度比2.0%増、老人保健特別会計は、39億26百万円、対前年度比4.2%減となっています。介護保険特別会計は、31億63百万円、対前年度比2.3%減となっています。
 16年度の区の予算規模は、546億87百万円で、対前年度比で40億14百万円(6.8%)の減となっています。

区当局は、予算案について、
@区として初めて予算編成に「マニフェスト的手法」を活用
A区民サービスの総合的向上と独自性・独創性ある施策に重点配分
B江戸開府400年記念事業の成果を踏まえた予算
C行財政改革の成果を行政サービスの形で区民に還元する予算
D行政(事務事業)評価結果を反映させた予算
E「事業部予算枠編成方式」をさらに発展させた予算編成
F平成12年度以降、5年連続、新規起債はゼロ
と7つのポイントをあげて16年度予算案を特徴づけています。

さて、16年度予算案の評価すべき点及び問題点について、以下、指摘します。
@ 予算規模について、施設整備費を都合に応じて加算したり除外するのは予算を正しく見る上で好ましくありません。保健福祉や教育予算の充実を強調していますが、ここ数年の決算額推移を見ると、市街地再開発事業の積算額(13年度から16年度の4年間で約194億円)が突出し、公債費も次第に増えてきており、区予算の別の姿が見えてきます。
A 「千代田区行財政構造改革推進大綱」に基づき、新規採用の抑制、退職不補充、再雇用職員の報酬削減、特勤手当削減などで人件費を4億3216万円削減するとしています。この人件費削減は、当初区長が少なくとも3億円削減といっていたものを大幅にオーバーしています。職員数の削減は、定年退職の2倍以上の37名になっています。
 この予算案通りに成立すると、300人削減方針が出されてから、すでに128人も削減されたことになります。この影響で職場では慢性的な職員不足が生じてきており、過重労働及び超過勤務が恒常化し、法律違反の賃金不払い残業が行われている職場も依然として存在し、管理者の責任が問われています。特に、マンパワーが必要な保育園では、正規職員が削減され、休息・休憩時間もまともに取れない大変な困難を強いられている状況となっています。また、新規採用が2年連続で行われていないことに対する職員の不満が鬱積し、職場の活性が低下しています。
 ところが、人件費比率は、予算規模が減ったために、28.4%となり、昨年度より1.9%も増え、今後、区当局は、人件費比率25%を至上命題とし、職員の削減にさらに走ることが必至となっています。
以上の事態は、「行財政改革の基本条例」による経常収支比率(85%程度)、人件費比率(25%程度)で、目標設定を行い、行財政改革の成果をしばっていることによるもので問題です。
自治体財政の水準と評価は、種々の財政指標を総合的に検討して判断すべきです。単一指標(経常収支比率)のみで、財政状況を捉えるのは問題で、総合的判断を誤るものといえます。このねらいは、人件費の削減におかれていることは明白です。
B 新たな小学校と保育園給食調理の委託、ちよだパークサイドプラザ学童保育の委託、電話交換業務の委託、公園・児童遊園清掃業務委託など、区民サービスに重大な影響を及ぼす業務が、コスト・効率化優先で1億1540万円も削減されています。
さらに、公共施設の維持管理経費の見直しを行い、1億4451万円削減するとしていますが、職場からの声では無理な節約、区民サービスに影響する経費節約を行っているとの指摘もあります。
C 国の三位一体改革の影響で区立保育園保育実施運営費補助金が1億9百万円も削減されました。その代わり、所得譲与税の移譲や配当割交付金、株式譲渡所得割交付金が、1億6300万円増えましたが、特定目的でなくなったことにより、保育園の民営化方針との関係で、今後、保育施策に予算が回されるか大きな不安が出ています。そうした中で、麹町保育園の給食調理を委託し、経費を削減していますが、給食調理委託に対する区民の問題意識も依然と存在しており問題があります。
 また、認証保育所補助金6767万円を計上し、認可保育園より保育料を2割安くし、認証保育所の優遇を行っています。区立保育園の充実で、区民要望を満足する十分な保育行政ができるはずですが、区の認証保育所優遇をみると区立保育所つぶしといわざるを得ません。
D 岩本町にケアハウス、グループホーム等の施設からなる「岩本町ほほえみプラザ」が完成しました。この施設は、「利用料金方式」で運営されることになりますので、グループホームの個室利用料19万5000円となっています。ケアハウスの場合は、個室(中)の場合、所得により最低11万8900円から20万900円となっています。これらの利用料金は、差額助成を行うとしても高齢者の負担する料金としては非常に高いものとなっており、区民福祉の観点が欠けているといわざるを得ないものです。
また、一番町特別養護老人ホームと一番町高齢者在宅サービスセンターについて、「利用料金方式」に変えることにより、入所者負担が増すことが明らかになっており、問題といえます。
E 今充実が求められている子育て支援について、児童手当の拡充(3402万円)を行うことは、評価できるものです。また、賃貸住宅の確保が困難な高齢者等に対して入居支援(164万円)を行うとしており、高齢者等の居住権確保の点から待たれていた制度といえます。
F 皇居外苑を中心としたところに帰宅困難者支援場所の整備(6342万円)及び帰宅困難者用仮設トイレ設置(2040万円)を行うとしていますが、地域の労働者の要求でもあり、評価できるものです。しかしながら、行政側の負担だけでなく企業側の負担も検討すべきではないでしょうか。
G 財政効率化といいながら江戸開府400年記念事業に昨年度7億21百万円(予算規模)も支出することに対し、区職労が疑問を投げかけてきました。16年度予算案では、江戸開府400年記念事業の成果を踏まえるとして、15年度で終了するとしていた地域コミュニティ活性化事業について新・地域コミュニティ活性化事業(50百万円)としてまた盛り込んでいます。この事業は、区民の中では、福祉・教育予算にまわすべきではないかなどの意見があり、また、3年の期限付き予算で当然止めるものと思われていましたが、なぜか復活されています。
 また、町名由来板に9022万円計上しています。継続事業とはいえ、不況下での事業として妥当なのか改めて考えさせられます。
H 国や都の進める「都市再生」及び民間大手事業者の事業実施に引きずられたかたちで富士見二丁目、有楽町、淡路町二丁目などの市街地再開発事業、秋葉原の東口広場整備などに71億9611万円計上しています。これらの予算は、国・都から一定措置されるとはいえ、税金をつぎ込むことに変わりはありません。区財政全体としてみた場合、例えば、15年度の商工融資予算は約5億円でしたが、16年度は4億3391万円と減額しており、不況下で困っている区民のことを考えると、配分に問題があるといわねばなりません。
また、国の掛け声のもと行われている都市再生は、千代田区全体としてみた場合、街破壊という声もあり、「都市再生を問い直そう」という動きが出てきており、注目されます。
I 道路占用料、公園使用料、公共溝渠使用料などの値上げで、2億6041万円の増収を見込んでいます。また、がん検診、「館外歩行・宿泊訓練」(富士見福祉会館)、「春・秋所外指導、宿泊訓練」(福祉作業所)、高齢者生活機能改善事業、運動習慣支援事業などの11事業で利用者負担を導入し773万円の増収および歳出抑制を見込んでいます。不況下での利用者負担の導入には問題があります。
J 財政調整基金について、15百万円積み立てて16年度末現在高見込額を151億60百万円としています。この積み立てからみれば、773万円の利用者負担の導入は避けられるのではないでしょうか。
 また、駐車場整備基金貸付金返還金3億35百万円を含めて3億48百万円を社会資本等整備基金に積み立てています。積立金総額は、16年度末残高見込み額で、293億78百万円となります。まだまだ余裕があるといわざるを得ません。人件費の抑制や利用者負担の導入、給食調理の民間委託でのコスト削減など、区民や職員への負担増との関係では、基金の使い方が検討されるべきでしょう。
K 「安全・安心まちづくり」施策と称して、主に防犯カメラおよび監視カメラの設置を進めています。また、安全パトロールを新たに実施し、2920万円計上しています。東京都も治安対策に重点をおいた予算編成をしていますが、千代田区もこの流れに沿うもので監視社会及び公権力が市民社会を支配することにつながることが懸念されます。
L 区職労は、職員が切実に解決を要望している職員手当や賃金不払い残業問題など、予算編成に関わる要求を昨年10月には提出していますが、その区職労の2004年度職場要求に全く応えていない予算となっています。
M 事業部予算枠編成方式は、経常的経費、義務的経費を縮減させ、余剰経費の一定額について、次年度流用できるようにし、その事業部の事業執行の工夫ができるようにしています。今回の予算編成でも、5%マイナスシーリングを設定したために、2億7264万円の経常的経費が削減されています。しかし、このことは、事業評価を理由に経常的経費、義務的経費の無理な削減を誘発し、その結果、性格が異なる事業部間の競争を煽る結果になるなどの問題が生じてきます。
また、投資的経費は別枠扱いにし、トップの判断が優先するようにしているのも問題があります。さらに、複数年度制を取ることについては、節減と称し、決算不用額捻出の競争を招くのではないかの心配があります。また、予算編成の原則(会計年度独立の原則・単年度主義や予算公開の原則)を逸脱しないかの点検が必要です。

 以上、16年度予算案について、コメントしましたが、新・地域コミュニティ活性化事業や人件費削減を強調した予算編成は、来年の選挙を意識したものといえ、不況下で苦しむ区民を支援する予算とは言い難いものです。
また、区予算の全体からみれば、「都市再生」、「安全・安心のまちづくり」、コスト削減が目立つ予算であり、区民には暖かみのない予算案といわねばなりません。職員に対してはまさに冷たい予算案です。
 区職労は、今後、区議会での予算議論を注視し、指摘した問題点のアピールを行っていく決意です。
以上。