2004年度賃金労働条件改善要求を区長に提出
2004年賃金・労働条件改善に関する要求書
 政府は、「構造改革の加速・拡大」のため国民・労働者への負担の押し付けを迫る一方で、「月例経済報告」においては、景気は「着実に回復」しているとの認識を示しました。しかし、総務省の「労働力調査」や厚生労働省の「毎月勤労統計」は、国民・労働者の生活実態の厳しさをいっそう際立たせており、政府の認識とは大きくかけ離れたものとなっています。また、昨年12月に日本経団連が発表した「経営労働政策委員会報告」は、「春闘終焉」を宣言し、大企業が膨大な利潤を上げる一方で、労働者には更なる賃金引下げとリストラを迫るものでした。
 公務員労働者に対する2年連続の「マイナス勧告」の押し付けや、民間労働者に対する定昇制度まで否定した賃金の抑え込み、社会保障の改悪など、国民への構造改革の押し付けは、公務も民間も問わない「賃下げとリストラの悪循環」の一層の進行をもたらすものです。こうした実態を変え、労働者全体の賃金底上げを図ることこそが、景気を「着実に回復」させる早道であると私たちは考えます。
 特別区職員は、住居費負担をはじめ全国最高の生計費を必要とする東京圏での生活実態のもとで、厳しいくらしを強いられており、さらに年金給付の切り下げや保険料額引き上げなどの社会保障費負担増のもとで、賃金・諸手当の改善は緊急かつ必然的な課題となっています。昨年の特別区職員の賃金確定交渉において、特別区長会は、国に追随した2年連続の「マイナス勧告」の実施、「不利益不遡及の原則」に反した不当な減額調整措置、5年連続の一時金削減、そして、国の「指導」に屈した退職金削減など、特別区職員に多大な負担を強要しました。勧告内容の精査を通して「マイナス勧告」や「不利益遡及」措置が職員の理解と納得を得るに値しないことが明らかにされたにも関わらず、5年連続にもなる給与削減が行われたことは極めて遺憾であり、二度とこのような対応を繰り返されないよう強く求めるものです。
 また、公務員制度改革をめぐって政府は、「公務員制度改革大綱」に基づく法制化へ向けた法案提出を狙っています。ILO勧告の完全履行など公務員制度の民主的な改革が実現するよう、特別区区長会からの政府・関係機関への強い働きかけを求めるものです。
 以上の点から、特別区人事委員会に対しても、特別区職員の生活実態と労働条件の現状をふまえた賃金改善の「勧告」と「人勧制度」の改善を求めた要請を行います。貴職におかれましても、特別区の職員が安んじて職務に専念できるよう、下記の項目について、特別区の自治を堅持・拡大する立場から自主的・主体的に検討し、回答されるよう要求します。



一、 賃金の改善について
1. 特別区職員の賃金改善について、職員の生活を維持・改善することを基本に、大都市東京の生活実態にふさわしいものとなるよう、平均20,000円以上引き上げること。
2. 業務職給料表について、行(一)横引き体系を堅持すること。
3. 再任用現業系職員に適用される給料表について、行(一)横引き体系とすること。
4. 調整手当については、給料表額への繰り入れをはかるなど、制度改善を行うこと。
5. 再任用職員の賃金についても、定年前職員に準じ、大都市東京の生活実態にふさわしいものとすること。
二、 例月支給諸手当の改善について
1. 扶養手当について、教育加算の増額など現行支給額の引き上げを行うとともに、配偶者が扶養親族でない場合の第一子等への加算制度を新設すること。
2. 扶養手当認定限度額を引き上げること。また、扶養手当認定限度額との整合性をはかるため、共済組合の扶養認定基準及び所得税の非課税限度額について、引き上げを行うよう関係機関に働きかけること。
3. 住居手当について、特別区職員の住居費支出の実態を踏まえ、手当のあり方を含めた抜本的な改善を行うこと。
4. 通勤手当について、引き続き制度改善に努めること。
また、支給方法が6箇月定期券価額での支給・原則年2回の支給に変更されたことにともなう職員の負担増を軽減すべく、措置を講じること。
三、 一時金の改善について
1. 支給月数の算出において公民で比較ベースが異なっているなどの現状をふまえ、大都市東京にふさわしい支給水準とすること。
2. 「加算措置」については、その適用範囲を行政職・業務職ともに拡大し、また、加算区分についても改善を行うこと。
3. 勤勉手当は廃止し、期末手当に一本化すること。
四、 賃金決定基準の改善について
1. 都道府県行政とは異なる、基礎的自治体である特別区にふさわしい人事・任用・給与制度に改善すること。
2. 特別区職員の賃金水準の底上げをはかるため、昇任・昇給・昇格制度を改善すること。
3. 男女共同参画社会をめざして、特別区職員の男女別昇任・昇格の実態をふまえ、男女間格差の解消に向けた、具体的な改善策を講じること。
五、 労働時間短縮の促進・休暇制度の拡充について
1. 土曜閉庁職場の拡大をはじめ、「1日当たりの労働時間」を短縮し、週40時間を下回る勤務制の条例改正に、引き続き努力すること。
2. 超過勤務の縮減と年次有給休暇の取得を促進し、年間総実労働時間のより一層の短縮をはかること。併せて、厚生労働省「基準」の遵守等、そのための条件整備をはかること。
3. 超過勤務手当の割増率について、100分の150(深夜超過勤務及び休日給は、100分の200)にすること。
4. 育児休業・介護休暇の取得にかかわる、賃金・一時金・退職金措置の改善をはかること。
六、 福利厚生制度の充実について
1. 福利厚生制度の一層の充実に向けて、引き続き努力すること。
2. 防災及び災害対策用を含め、区内及び近距離に職員が居住できるよう職員住居援助施策の一層の拡充に向けた対応を行うこと。
七、 その他
1. 公務員制度の民主的改革をはかるため、ILO勧告にそった労働基本権の完全保障など、関係法規の改正に向けて、政府関係機関への働きかけを行うこと。
2. 年金制度について、給付削減や保険料引き上げによる国民・労働者への負担強化ではなく、公的責任を一層拡充していくことをはじめ、介護保険・医療保険など社会保障制度全般の改善に向けて、政府関係機関への働きかけを行うこと。
3. 取得しやすい育児休業や介護休暇をめざして引き続き制度の拡充を行うこと。また、休業手当金の支給期間・割合の改善など関係機関への働きかけを行うこと。
以  上