記 |
T |
特区連の基本的主張 |
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区長会の「技能系人事制度改正骨子案」は、東京都の現業系人事制度を特別区にそのまま導入しようとするものであり、1999年の賃金確定交渉で労使確認してきた「協議の前提条件、目的、手順と方法」から逸脱し、特区連が強く求めている行(一)横引きでの任用給与制度の確立をまったく無視するものとなっています。
今後の協議を進めるにあたっては、これまで労使で合意してきた協議の到達点である次の3点を踏まえるべきです。@
協議の前提条件は、「特別区の役割、事情・条件を踏まえた人事給与制度の構築という理念が現行制度にも貫かれていることを尊重して協議する」こととする。A
協議の目的は、「現業系職員に関する人事給与制度上及び職場実態上の問題点を整理し、現業系職員の士気の高揚と現業職場のより一層の活性化を図る」こととする。
B 協議の手順と手法は、「現業系職員構成及び現業系職員の作業体制の分析を踏まえ、特別区により相応しい現業系人事給与制度のあり方及びその改善策について、拙速を避け双方の認識の一致点を拡大させる方向で協議を進める」ものとする。
特別区における現業系職員は、住民にもっとも身近な自治体としての区の第一線において住民生活に直結した責任ある仕事を行政系職員と同様に担い、直接住民サービスを提供し、職場全体のチームワークで仕事を遂行しています。多岐にわたる住民要求に迅速かつきめ細かな対応が一層求められ、現業系職員の存在と役割は、この住民要求に応えるためにも、益々重要となっています。
しかし、今日、各区において退職不補充をテコにした民間委託などによる合理化が進められています。このことが現業系職員の高齢化の原因となっており、職員の新陳代謝が阻害され、職員構成の逆ピラミッド化をもたらすとともに、職場の活力や職員の士気に影響を与えています。人員計画・採用計画に関する協議は各区段階での交渉事項ですが、特区連は、現業系人事制度協議にあたっては、少なくとも正規職員による退職補充など、職員が安心して働き続けられる職場づくりが目指されるとともに、職の安定と活性化に寄与し経験に裏打ちされた知識・技能が生かされる人事制度が求められていると考えます。
また協議の前提として、特別区の現業職場は、東京都の職場実態と大きく異なって、圧倒的に少人数で構成されているという共通認識に立ち、特別区の事情と条件に沿った人事制度を構築する必要があると考えます。
さらに制度導入にあたっては、特定の職種・職務や職場のみに適用されるなど職種・職務や職場間における差別・分断をもたらすものであってはならず、現業系職員の士気の高揚と現業職場の一層の活性化を促進できる人事制度であることを求めます。
加えて現行で現業職員に適用されている行(一)横引き体系の給与水準の維持改善を強く求めるものです。 |
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U |
区長会提案の各項目に対する特区連の見解 |
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1 |
技能主任の「職責」「設置基準」について |
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(1) |
技能主任の「職責」の問題点 |
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まず、技能主任の「職責」について、「@現場作業におけるリーダー、あるいは、A技能系職員に対する職務上の指導・育成等を行う」としていますが、この考え方は、東京都の行政系の主任制度を横引きした都の現業系人事制度を持ち込んだものです。1999年の賃金確定交渉で確認してきた「協議の手順と方法」をまったく無視したもので、特別区の制度設計からしても、特区連としては到底受け入れられません。
特別区の行政系の主任主事は、「リーダー」「指導・育成」する「職」として位置づけられていません。実務経験豊かなベテラン職員の職として導入されています。この点を踏まえて「職責」を問うのではなく、現業系職員の実務経験を生かす「職」として位置づけ、その名称も「技能主任主事」とすべきです。 |
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(2) |
技能主任の「設置基準」の問題点 |
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技能主任の「設置基準」について区長会は、「技能系職員が集団的に職務を遂行する職場において、概ね4人程度の技能系職員を単位として設置する。Aその他、職務内容に応じて、任命権者が必要と認める場合に設置する」としています。しかし「概ね4人程度の技能系職員を単位として設置」できうる職場は、特別区にはほとんど存在しないのが実態です。区長会側の調査でも、昨年4月1日現在の現業職場の人員構成は1〜3人が87.4%、1人職場が44.1%で平均2.2人となっています。
区長会側の考え方の根底には、技能主任(主事)はできるだけ置きたくないという本音が見えるだけでなく、東京都の現業系人事制度を丸ごと引き写して提案する態度は、特別区の現業職員の職員構成・職場実態に即した制度を作る気がないとさえ見えます。特区連は、特別区の少人数職場実態等を鑑み、職種や職場の相違による差別・分断を排し、単独職場でも任用される制度であることが必要であり、行政職と同様、実務経験豊かな職と位置付けて誰もが任用される制度とすべきであると考えます。
この点を踏まえるならば、「技能主任主事」の設置基準・設置数については、行政系主任主事と同様に、有資格者に対する昇任率を定め、その数とすべきです。 |
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2 |
「技能長」「統括技能長」導入の各区長判断の問題性 |
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区長会提案では、「技能長職及び統括技能長職は各任命権者が必要と認める場合に設置することとする」とされ、設置自体が23区統一導入ではなく、導入は各区長の判断とされています。
特別区の行政系の係長(総括を含む)は、23区で共通して導入されているのに対して、技能系については、各区判断での導入という提案は、技能系職員の行政責任を軽視する以外のなにものでもありません。もともと技能系職員の行政責任を現場段階で行政系職員が取りうるものではありません。行政系職員に現場責任を無理矢理持たせるとすれば、現業職場の活性化に繋がらないことからしても、この提案は受け入れがたい内容です。昨年の10月24日の第5回小委員会交渉で現業系人事制度構築の目的を、区長会は「職員の士気高揚と職場の一層の活性化を図るため」と示していますが、技能長職及び統括技能長職の導入の各区判断の提案は、この「活性化」目的から逸脱する内容であると言わざるを得ません。
特区連は、各区判断の区長会提案に対して、23区統一導入とすべきと考えます。 |
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3 |
技能長の「職責」「設置基準」について |
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(1) |
技能長の「職責」の問題点 |
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区長会は、技能長の「職責」についても、東京都の技能系人事制度における表現をそのまま特別区に持ち込み、「上司の命を受け業務に従事するとともに、技能系職員に対し常に適切な指導及び業務の監督等を行い、業務の安全及び能率的運営を維持するよう努める」としています。
区長会提案は、「技能系職員に対し常に適切な指導及び業務の監督」が優先されていることからして、部下の職員の存在が前提となっています。特別区の技能系職員の配置実態からして、部下の職員がいなくとも、現場で単独で職責を全うしている職員の位置づけが全くされていません。特別区の職員配置実態と職責からして、「高度の知識と経験を生かした」職員の職責も、同時に位置づけるべきです。 |
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(2) |
技能長の「設置基準」の問題点 |
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技能長職の「設置基準」について区長会は、「技能系職員が集団的に職務を遂行する職場において、概ね20人程度の技能系職員を単位として設置する」としています。
技能長の設置基準が「概ね20人程度の技能系職員を単位」としていること自体、無意味です。そもそもこのような単位で技能系職員が配置されている職場がどれほどあるかをまったく無視しています。
特区連は、技能長を23区共通して、現場段階での責任者として位置づけ、職務単位ごとに配置し、小人数職場であっても配置されるべきものと考えます。また高度な専門性を有する職員等が、行政系職場で「主査」と称される係長職に任用されていることからして、現業職場においても単独での「技能主査」の配置も可能とすべきです。 |
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4 |
統括技能長の「職責」「設置基準」について |
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(1) |
統括技能長の「職責」の問題点 |
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区長会は、統括技能長の「職責」を「上司の命を受け業務に従事するとともに、複数の技能長を統括する。また、技能系職員に対し常に適切な指導及び業務の監督等を行い、業務の安全及び能率的運営を維持するよう努める」としています。この表現も東京都の技能系人事制度における表現をそのまま特別区に持ち込んだもので、特別区の職員配置実態をまったく無視したものです。
行政系職場における総括係長の配置は、当初各課のライン系を中心にとして配置され、その後スタッフ系においても、その業務の重みに軽重を付けがたいことから、配置数が増えてきただけでなく、単独での配置も増えてきているのが実態です。
現業職場でも、「職責」は公式には不明確であっても、大型職場といわれる職場では慣行として肩書きを設けて組織的に業務を遂行している実態もあり、その組織的業務の頂点に着いている職員については、行政系の総括係長の職務と遜色のない業務をこなしています。また相当経験を積んだ特に高度な専門性を有して困難な業務を処理している職員も存在しています。したがって一方で、複数の技能長を統括する職としての位置づけが必要であると同時に、他方で単独配置にあって職務の責任度合いが高く、かつ困難な業務を処理している職員の職としても必要です。 |
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(2) |
統括技能長の「設置基準」の問題点 |
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区長会は、統括技能長を「技能長を多数設置している技能系職場に1名設置する」としていますが、行政系の配置実態と対比して、バランスを欠き、現業職場の職責をあまりにも軽視した表現です。この表現で実施すれば、1名も統括技能長が存在しない区が多数生じることとなります。
特区連は、統括技能長は、機械的に「1名設置」とするのではなく、技能長職員の配置実態や行政系とのバランスを配慮し定めることが必要と考えます。 |
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5 |
業務員制度について |
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区長会「技能系人事制度改正骨子案」は、技能系職員についてのみ適用させる内容となっていますが、現業系職員全体に関わる任用・給与制度として協議を進める必要があると考えます。仮に、区長会が「業務員制度のあり方等の問題」についての協議を求めるのであれば、今回の現業系人事制度にかかわる協議とは切り離したものとして扱われるものと考えます。 |
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6 |
同一職種内における職務間異動について |
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同一職種内における職務間異動は、任用制度の導入とは直接関係の無い問題です。1993年には「通常行われないもの」「各区の労使確認が必要」「各区の行革・合理化に連動させない」こととして労使で確認してきた経過があり、今後もその精神を生かした各区での運用が図られなければなりません。 |
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V |
現業系人事制度基本要求 |
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1 |
現業系職員に適用する任用制度について |
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あらたな現業系人事任用制度を構築するにあたり、その制度は以下の事項のとおり、特別区現業職員としての実務経験により培った知識・技能を生かすことを目的とし、行(一)横引きの人事任用体系とすること。 |
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(1) |
職級構成 |
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1級職、技能主任主事職、技能長職、統括技能長職の4層制の人事制度とし、全ての職を全区で設置すること。 |
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(2) |
新1級職の設置 |
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現行の1級職と2級職を統合し、新1級職とすること。 |
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(3) |
技能主任主事職の設置 |
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@ |
職の位置づけ |
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行政系の主任主事と同様、現業系職員が長年の経験を経て培ってきた実務経験を生かすことを職の設置目的すること。 |
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A |
設置基準・設置数 |
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有資格者に対する昇任率を定め、その数とすること。 |
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(4) |
技能長職の設置 |
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@ |
職の位置づけ |
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現業系職員の指導・育成、若しくは、高度の知識と経験を生かすことを職責とすること。 |
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A |
設置基準 |
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職務単位で設置し、単独職場でも設置すること。 |
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B |
設置数 |
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職務毎の有資格者に対し、職責と経験を考慮し定めること。 |
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(5) |
統括技能長職の設置 |
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@ |
職の位置づけ |
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現業系職員の指導・育成にあたるとともに、困難な業務を処理することを職責とすること。 |
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A |
設置基準 |
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職務を単位に設置し、単独職場でも設置すること。 |
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B |
設置数 |
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職務毎の有資格者に対し、職責に応じて定めること。 |
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(6) |
任用資格基準 |
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@ |
行(一)横引きの任用資格基準を基本とすること。 |
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A |
複線型の任用制度とすること。 |
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B |
すべての現業系職員が新3級(現行4級)に到達する制度とすること。 |
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C |
現行3級者が新3級(現行4級)に到達できる経過措置を講ずること。 |
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(7) |
選考方法 |
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@ |
選考は各区で行う制度とすること。 |
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A |
選考方法は、本人申し込み制とし、選考にあたっては選別を排し、経験に培われた知識・能力を勘案するものとすること。 |
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B |
新制度移行に伴い、現行3級職格付者は技能主任主事職に、現行4級職格付者は技能長職に任用すること。 |
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2 |
現業系職員に適用する給与制度について |
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現業系職員に適用する給与制度については、職務の実態を踏まえ、以下の事項のとおり行(一)横引きの給与制度とすること。 |
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(1) |
業務職給料表について |
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任用制度の職級に対応し、以下の4級構成とすること。 |
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@ |
新1級 |
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現行1級と2級を統合し、行(一)給料表の1級及び3級に対応した級として、1級職に適用する。 |
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A |
新2級 |
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現行3級及び行(一)給料表4級に対応した級として、技能主任主事職及び技能主任主事相当職に適用する。 |
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B |
新3級 |
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現行4級及び行(一)給料表5級に対応した級として、技能長職及び技能長相当職に適用する。 |
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C |
新4級 |
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行(一)給料表6級に対応した級として、統括技能長職及び統括技能長相当職に適用する。 |
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(2) |
級格付けについて |
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23区統一で率を決定すること。 |
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(3) |
初任給格付けについて |
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行政系V類にあわせ、全職種3月分の短縮措置を行うこと。 |
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(4) |
昇任時特別昇給等 |
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技能主任主事、技能長、統括技能長への昇任時には12月短縮とし、級格付時の場合は6月短縮を先行付与し、昇任時に6月短縮を付与すること。 |
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(5) |
職務段階別加算 |
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技能主任主事相当職から以下の支給率で支給すること。
2級……… 5%
3級……… 5%
4級………10% |
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(6) |
再任用 |
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行(一)再任用給料表横引き体系の給料表とすること。 |