給与構造見直しに反対 人事委員会に署名を集中しよう
国・人事院は、8月の勧告で、本給を5%引き下げ、調整手当を廃止し、新たに地域手当を設けて、全体として給与水準を引き下げ、給与構造を見直そうとしています。
区長会は、人事院が見直しを進めている給与構造の見直しについて、今年の勧告に国同様の内容を入れていく意思を表明しています。特別区人事委員会も人事院に追随する流れとなっています。
秋の賃金確定闘争の前段として、特別区人事委員会に対する要請が例年にも増して重要になっています。
今、職場にお願いしている署名を特別区人事委員会へ集中しましょう。
人事院の「地域給・給与構造の見直し」の内容と問題点
特別区職員の給与はどうなる?


◆「地域給」とか「給与構造見直し」って何?
人事院が公務員の賃金を抜本的に見直し、8月の人事院勧告で「公務員賃金を5%引き下げる」「地域給を導入」することを打ち出そうとしています。
具体的には、給料表全体を5%下げて、0から18%の幅で地域手当を加算して、地域間に給与格差をつけるというものです。
また、勤務評定の結果によって、昇給、昇格、一時金、退職金に個々の職員間で格差をつけようともしています。
それから、職務(肩書)の違いで大きく格差が出る給与構造にするとか、高齢の職員は、7%引き下げることも検討しています。つまり、地域間、職務間、職員間の三つで格差を拡大する賃金制度の大改悪といえます。

◆給与構造見直しの背景
小泉内閣は、憲法9条の改悪、増税や社会保障の改悪、財政赤字の国民負担の押し付け、地方財政への負担削減と道州制の導入などの地方制度改革、国民保護法のあるような戦争する国づくりなど、財界本位の構造改革路線を進めています。
また、6月の「骨太方針2005」で、地方財政の大幅な削減をめざす「三位一体改革」とともに、地方公務員の賃金・人員の大幅削減、自治体業務の民営化・アウトソーシングを強力に推し進めようとしています。
日本経団連も4月に「さらなる行政改革の推進に向けて」を打ち出し同様な提言を行っています。
政府は、3月に新たな「地方行革方針」を通知し、4.6%の職員の純減など5ヶ年計画を明確にして推進することを求め、さらに、与党自民党は、大阪市の「厚遇」問題の対策委員会をつくるとともに「公務員の政治活動の罰則強化」の検討、改憲に向けた「国民投票法」でも公務員の活動を規制するなど、憲法に規定された権利の制限を狙っています。

@給料表を一律5%引き下げ
地域手当で地域間格差拡大


給与構造の見直しの柱の一つは、公務員賃金を5%引き下げした上で、0から18%の幅で地域給制度を導入するものです。

◆根拠のない5%引き下げ
現在、人事院は、民間と公務員の賃金比較を全国の平均で行っていますが、ブロック別に官と民の比較を行い、4.77%と最も公務員賃金の方が高い東北・北海道の数値に合わせ、給料表全体を引き下げるというものです。
この論拠では、全体を引き下げる根拠としては成り立ちません。また、地域の民間給与との差は毎年変動するものであり、5%に固定して引き下げることには無理があるものです。要は、5%引き下げが先にありきなのです。

◆地域手当で市町村間に大きな較差が
給与水準を5%引き下げた上で、地場の民間賃金との均衡を取るためとして、地域手当を創設し、市町村間で0から18%もの差をつけるとしています。そして、これまでの調整手当は廃止するとしています。
地域間格差をつけるのに、賃金構造基本統計調査の結果を使い、市町村単位で、この地域は何%の手当とするとしています。
しかし、事業形態や業種、規模の違いを考慮しないことや統計自体が毎年変動する統計調査を使うことは、根拠として不適当です。

◆地方公務員は国家公務員よりさらに下がる!?
国家公務員の場合は、全体の引き下げで確保した原資で転居に伴う転勤手当や地域手当の異動保障、本省庁手当などで5%削減を埋める制度があります。しかし、自治体職員にはこうした制度の適用はほとんどありませんので、引き下げられた賃金のままとなります。

地域給は地域経済を悪化させ地方を切り捨てる

◆地域給は地域経済や地方の行政水準にも大きく影響する
全国750万といわれる公務員をはじめ社会福祉協議会などの公務員に準拠する労働者への影響とともに、地域では公務員賃金が民間賃金を決める参考になっている場合が多く、民間労働者の賃金を引き下げることが予測されます。また、生活保護費より低い現在の地域別最低賃金にも悪影響します。
さらに消費の落ち込みが地域経済に影響します。
地方交付税や国の地方自治体への補助金等の算定にも格差や影響を及ぼし、地方財政の悪化と行政水準の格差拡大につながることが予測されます。まさに、地方切り捨てにつながるものです。

◆賃金決定基準に逆行
公務員の賃金決定は、生計費、同一労働同一賃金等の原則を踏まえる必要があります。
また、公務の中立、安定、継続、専門性を保障する賃金・労働条件の確保が必要です。地域給の考え方は、民間準拠を絶対視するもので問題があります。賃金・労働条件は労使交渉で決めるという国際労働基準をも踏みにじるものです。

A成果主義の評価制度で職員間に賃金格差を拡大

給与構造の見直しの柱の二つ目は、「成果主義」の人事評価制度で個々の職員をランク付し、昇給、昇格、一時金、退職金などで職員間に格差を拡大させるものです。

◆査定昇給とは
現在の定期昇給は、12ヶ月間、勤務が良好であれば1号昇給します。査定昇給とは、勤務成績の評定によって、個々の職員に昇給の額に差をつけようとするものです。
 具体的には、@まず、一つの号給と次の号給の間を4分割し、号俸を三つ差し込んだかたちに給料表を変えます。Aその上で、勤務評定によって昇給の幅を、たとえば、「特に優秀」が8号俸、「優秀」が6号俸、「良好」が4号俸、「要努力」が0号俸などと格差をもうけ、昇給金額に大きな較差を持ち込むものです。
 また、昇給ができるのを、現行の年4回から年1回に削減し、特別昇給制度を廃止するとしています。

◆昇格も査定・ポイント制導入
現在、昇格は、公務員の経験年数とその級に在級した年数で基準を設け、これを満たした者が上位級に昇格します。
見直し案では、評価結果が「特に優秀」が何点などと決め、一定期間の得点合計が基準の点数を超えた場合に昇格資格を与えるポイント制に変える検討をしています。これでは、恣意的な査定が行われれば、不透明、不公正な昇格となってしまい、多くの職員が勤労意欲をなくし、職場の荒廃につながる危険性があります。

一時金も査定で格差拡大

◆全体の支給率引き下げ、浮いた財源で格差つける
一時金について、勤務評定の結果を反映するために、@期末手当を削減し勤勉手当を増やす、A勤勉手当の標準を引き下げ、浮いた財源を成績優秀者の加算に回すものである、B査定結果を5段階で区分し、成績率を厳密に適用させ格差を拡大するものです。

退職金に査定による格差

◆高齢職員基本給7%ダウンで退職金もダウン
退職手当は、退職時の本俸に勤続年数に対応する支給率をかけて算出します。基本給が5%引き下げられており、地域手当が退職金算定の基礎に入りませんので、退職手当も引き下がります。
高齢職員は、さらに2%基本給を削減します。そのため、7%も退職手当が下がることになります。

◆退職時の「級」によって退職金に差をもうける
退職時の「級」によって、加算措置を変える検討がされています。必然的に、低い級の方が加算率が少なくなります。この制度の導入で、退職金の格差がさらに広がることになります。

*民間でも「成果主義」の弊害が問題に
「成果主義」の評価制度は、導入している企業の調査でも「評価基準の明確化が難しい」65.9%(日本人事行政研究所)など過半数を超える企業が問題とし、経団連も修正を口にせざるを得ない状況です。
「成果主義」の評価制度は、@個別評価となるため、非常に利己的に行動する職員をつくり、職場のチームワークを阻害する。A個人、職場でマイナス評価を隠蔽するため、「モラルハザード」を引き起こす。B短期的な成果が求められるために、失敗を恐れ「チャレンジ精神」が減退する。C地味な部署や評価されない仕事を行う職場の職員のやる気を阻害する、など基本的な問題を抱えています。

*公務職場への導入の問題点
とりわけ、公務職場では、「全体の奉仕者」として公正・中立・安定・継続性のある、個人だけでなく組織的な業務遂行が求められています。また、専門性もこうした集団の中で育成・形成されています。
公務職場での評価制度の導入は、「権力者」の恣意性によって公務労働をゆがめ、弊害をもたらすことになります。
それだけに、評価制度導入の目的をはじめ、「評価基準」、「評価方法」、「評価結果」、「賃金の査定」に対し、客観性、合理性、公平性、透明性、納得性が完全に確保され、評価を受ける者の権利の確保、評価を行う者の十分な研修や点検体制の確保などが最低限求められ、職員全体の納得が求められます。

*徹底した労使交渉、労働基本権の回復が求められる
とりわけ、評価制度を賃金に連動させることは、賃金、労働条件そのものであり、公務員の労働基本権を剥奪したままで「勧告」で一方的にこうした重大な賃金制度の改革を行うことは、ILOなどが再三指摘しているように許されるものではありません。労働基本権の回復と労使交渉・労使合意が不可欠です。

B肩書での賃金格差拡大する

見直しの柱の三つ目は、「職務・職責」(肩書)により今よりも賃金格差を拡大することです。立場は、違っても住民に責任をもって仕事をしているのに、肩書によってこれ以上の賃金格差を生じさせるのには問題があります。

◆昇格しないと大きな賃金格差
国の行政職(一)の給料表は11級制ですが、1級と2級、4級と5級を統合し、さらに、高級官僚のために12級を導入し、10級制に再編するとしています。給料表は、3級より4級などと、級が上になれば昇給の金額が大きくなるので、昇進スピードが速い遅いで賃金に大きな格差が生じます。給料表の見直しは、高級官僚や管理職を優遇するものです。

◆職員全体を引き下げ、「本省庁手当」等でエリート官僚を更に優遇
霞が関の職員だけが適用される「本省庁手当」の新設、管理職手当の定額化と増額、給料表に12級水準給料の導入、高級専門職員のためのスタッフ職給料表(11級水準)の新設、、また、現在4級以上の級への昇格時の1号アップ制度を見直し、定額加算制度にし、昇格スピードが早く昇格回数の多い高級官僚にメリットが多くなるようにしようとしています。
このように、職員全体には、給料表の5%引き下げ、成果主義による格差などで浮かせた財源で、一部エリート官僚を優遇する見直しといえます。

◆住民に信頼され、誇りをもって仕事に専念できる賃金制度に
私たちは、住民の願い、要求を受け止め、意欲をもって働いています。そのことを保障するためにも、職員が働き甲斐をもって、職務に専念できる賃金や労働条件を求めています。
今回の給与構造の見直しにあたっては、次のことを対置して取り組むこと大切です。
@地公法24条の生計費原則や同一労働同一賃金の原則を踏まえること。
A職務・職責での格差を拡大するのではなく、住民に責任をもって職務に専念できる賃金制度をつくるべきこと。
B矛盾をもった評価制度による職員の分断ではなく、職員同士の協力関係を育成する賃金制度とすること。
以上