2005年賃金確定要求書
2005年10月26日
千代田区長
石川 雅己様
千代田職員労働組合
執行委員長小林秀治

2005年賃金確定に関わる要求書

 特別区人事委員会は、本年10月14日、職員の給与等に関する勧告及び報告を行いました。今年度の給与改定に関わっては、公民比較において平均4,191円(0.97%)の逆較差があるとして、月例給を4月に遡って引き下げる「マイナス勧告」としました。同時に、「能力・業績」主義を特別区の給与制度に持ち込む「給与構造の改革」を来年4月以降にできる限り速やかに実施するとして、「査定昇給制度」導入を前提とした「4分割給料表」を勧告しています。一時金についても、勤勉比率の拡大に踏み込み、勤勉手当を0.05月引き上げとするなど、その内容は、本年の人事院勧告に追随するものとなっています。
 マイナス改定による職員一人あたりの平均年間給与は、約4万8千円の減額となります。昨年は、給与改定「勧告」が行われませんでしたが、1999年から始められた一時金の削減や2002年、2003年のマイナス勧告による影響を加えると、「勧告」に基づく給与改定が行われるならば、職員の平均給与削減額の合計は、約56万7千円にも上ることとなります。一時金についても、民間支給状況が昨年以降に大きく改善されている中で、特別区人事委員会による民間実態調査でも年間平均4.47月の上昇としながら、人事院勧告と同様に0.05月の引き上げに止めています。高い住居費や教育負担に苦しむ首都圏・東京での生活実態や、依然として他都市と比べ低水準にある特別区の賃金水準、さらに社会保障費の急激な負担増などが強いられている私たち特別区職員にとっては、到底納得できる「勧告」ではありません。また、特別区人事委員会が示した「労働経済指標」では、民間給与が回復基調にあることが報告されるなど、公民比較における逆較差そのものへの大きな疑義も生じています。結果として特別区職員のマイナス給与改定が、回復基調にある民間給与を抑え込む役割を果たすことになりかねず、特別区人事委員会の対応は極めて不満であると言わざるをえません。
特別区の「給与構造の改革」に関わっては、地域給を除き人事院勧告と同様の「改革の方向」を打ち出しています。具体的には、職務・職責及び業績をより的確に反映できる給料表構造の見直しや、勤務成績を適切に反映するための普通昇給と特別昇給との統合、一般職員の勤勉手当への成績率の導入、職務給の観点による枠外昇給制度の廃止や級格付制度の廃止に向けた検討などを提示しました。これらの内容には、地方公務員給与を決める原則である地方公務員法24条に明記された「生計費保障の原則」が全く考慮されていません。給料表や給与の構造を考える場合、生計費保障がその基本となるべきです。現行の給与制度は、生計費の保障に職務と責任を加味したものであり、地方公務員法の趣旨を踏まえ、特別区の職場実態を反映する仕組みとなっています。特別区の給与制度は、国のキャリア制度と違い、職員を採用時の区分で昇任・昇格の差別をせず、また、経験豊かな職員の活用も含め、働く意欲とチームワークを生かしながら公務にあたれるようにするなどの積極性を持つものであり、これを崩すことは絶対に容認できません。
特別区人事委員会は、「見直し事項については、平成18年4月以降、できる限り速やかに実施する必要がある」としていますが、「給与構造の改革」の課題は、すべて労使協議事項であり、十分な労使の協議が求められることを踏まえる必要があります。
賃金確定交渉を開始するにあたり、私たちは本年の特別区人事委員会「勧告」の真剣な精査を求めるとともに、昇任・昇格・昇給制度の改善などを含む要求事項を、7課題29項目として具体化しました。特に、「賃金決定基準等の改善」要求に関わっては、昨年度から今年度にかけての技能系及び業務系人事制度に関わる労使合意の到達点を踏まえて、制度的欠陥の改善などに向けた必要事項を具体化してあります。
貴職におかれましては、私たちの主張を十分に理解されるとともに、下記のとおり要求事項を提出しますので、国・総務省等からの不当な「指導」に屈することなく、特別区の自治の立場を堅持し、自主的・主体的に決断して回答されるよう要求します。



一、 賃金の改善について
1. 2005年特別区人事委員会「マイナス勧告」は、大都市東京の生活実態や精緻な民間調査結果とは言えず、特別区職員の賃金については、生計費原則に基づき改善すること。
2. 特別区人事委員会が勧告した査定昇給の導入をはじめとする「給与構造の改革」を行わないこと。
3. 調整手当については、特別区職員の勤務実態をふまえ、給料表額への繰り入れをはかるなどの制度改善を行うこと。
4. 業務職給料表について、行(一)横引き水準に改善すること。
5. 教育職員給料表について、給与水準や給与体系の改悪を行わないこと。
6. 再任用職員の賃金について、定年前職員に準じて改善すること。
二、 一時金の改善について
1. 民間企業における支給額と率の増加や、支給月数の算出において公民で比較ベースが異なっているなどの現状をふまえ、支給月数の改善をはかること。
2. 「加算措置」について、適用範囲を在級歴や年齢を基礎に拡大し、加算区分についても改善を行うこと。
3. 一般職への「成績率」の導入は行わないこと。
4. 勤勉手当を廃止し、期末手当に一本化すること。
5. 「基準日主義」を改め、勤務実績等に基づく一時金支給を行うこと。
三、 例月支給諸手当の改善について
1. 扶養手当について、教育加算の増額など現行支給額の引き上げを行うとともに、配偶者が扶養親族でない場合の第一子等への加算制度を新設すること。
2. 扶養認定限度額を引き上げること。また、扶養認定限度額との整合性をはかるため、共済組合の扶養認定基準および所得税の非課税限度額について、引き上げを行うよう関係機関に働きかけること。
3. 住居手当について、特別区職員の住居費支出の実態をふまえ、手当のあり方を含めた抜本的な改善を行うこと。
四、 賃金決定基準等の改善について
1. 国や都道府県行政とは異なる基礎的自治体としての特別区にふさわしい人事・任用・給与制度に改善すること。
2. 昇任・昇格制度を改善すること。
(1) 昇任・昇格制度について、一職二級制度の維持・改善を行うとともに、定年退職時には行政系では6級、現業系では3級に到達できるよう、制度の改善及び運用を行うこと。
(2) 技能系及び業務系人事制度について、以下のとおり改善すること。
@ 技能T及び技能Xの初任給決定が職歴加算で行われた場合でも、技能主任選考資格基準においては、年齢加算計算方式を用いること。
A 技能長設置基準について、職員数を単位とするだけではなく、「職務として必要な場合は設置できる」よう改善すること。
B 新3級格付資格基準の経過措置における技能主任歴は、2008・2009年度は1年、2010・2011年度は2年、2012・2013年度は3年とし、2014年度から本則とすること。
C 新3級格付資格基準の経過措置における新2級歴は、2005年度から本則とすること。
D 新3級格付の資格年齢の上限を本則においても60歳とすること。
E 採用上限年齢35歳以上で採用された者の昇任・昇格選考の機会における不利益を解消すること。
(3) 統一交渉で合意した昇任率と昇格率については、厳守すること。
(4) 係長長期選考の昇任率を有資格者の実態に合わせて改善し、行政系6級特別昇格の特例取扱を制度趣旨に即して実施すること。
(5) 男女共同参画社会をめざして、特別区職員の男女別昇任・昇格の実態を踏まえ、男女間格差の解消に向けた具体的な改善策を提起すること。
3. 昇給制度の改善を行うこと。
(1) 現行普通昇給制度を維持すること。
(2) 昇任時特別昇給制度の拡充をはかること。
(3) 給料表の枠外者の救済のため、給料表の足のばしを行うこと。
(4) 人工透析等にともなう病気休暇の取得による、昇給制度等の不利益措置を引き続き改善すること。
4. ホームヘルパーの職の専門性を生かした安定的なあり方について、早期に結論が得られるよう協議を進めること。
五、 労働時間短縮の促進・休暇制度等の拡充について
1. 土曜閉庁職場の拡大をはじめ、「1日当たりの労働時間」を短縮し、週40時間を下回る勤務制の条例改正に、引き続き努力すること。
2. 賃金不払い残業を根絶させるとともに、超過勤務の縮減と年次有給休暇の取得を促進し、年間総実労働時間のより一層の短縮をはかること。厚生労働省「基準」の遵守等、そのための条件整備をはかること。
3. 超過勤務手当の割増率について、「100分の150」にすること。また、深夜超過勤務及び休日給については、「100分の200」にすること。
4. 仕事と家庭生活の両立を推進する立場から、取得しやすい育児休業や介護休暇の実現に向けて、育児休業・介護休暇の取得にかかわる昇給制度などの賃金・一時金・退職金措置の改善や、休業手当金の支給期間・割合の改善を行うこと。
六、 福利厚生制度等の充実について
1. 福利厚生制度のいっそうの充実をはかること。
2. 特別区職員互助組合のあり方の検討にあたっては、地方公務員法第42条に基づく使用者責任を十分に踏まえるとともに、労働組合の意見を十分に反映すること。
3. 病気休職者のうち「心の病」による者の割合が増加していることをふまえ、原因の究明に努めるとともに、職員が安んじて公務に励める環境整備に向けて対策を進めること。
4. 防災・災害対策への対応も含め、職員住居援助施策のいっそうの拡充に向けた対応を行うこと。
七、 その他
1. 公務員制度の民主的改革をはかるため、ILO勧告にそった労働基本権の完全保障など、関係法規の改正に向けて、政府関係機関への働きかけを行うこと。
2. 年金制度について、給付削減や保険料引き上げによる国民・労働者への負担強化ではなく、公的責任をいっそう拡充していくことをはじめ、介護保険・医療保険など社会保障全般の改善に向けて、政府関係機関への働きかけを行うこと。
3. 住宅・年金財形貯蓄について、育児休業取得に伴う積立中断期間により不利益が発生しないよう関係機関へ働きかけること。

以上