2005年賃金確定闘争にあたっての職場討議資料
査定昇給制度導入・級格付廃止阻止に向けた職場討議用資料
2005年11月
千代田区職労教育宣伝部

職員をバラバラにし大幅な給与引き下げをもたらす
「人事・給与制度改悪案」は撤回を!
特別区の職場に「査定昇給」は要りません


区長会が狙う「人事・給与制度改悪」
その大きな特徴は、職員一人ひとりを「評価」で選別し、
昇給に「差」をつける「査定昇給」制度を導入することにあります。


 現在の昇給制度は、基本的に年1回の普通昇給(定期昇給)による1号アップ、成績特別昇給等による3〜12月分の4区分の昇給期間の短縮などで、昇給が行われています。また、1年間に欠勤が48日以上ある場合には昇給を3月分遅らせるなどの昇給延伸の措置があります。
 区長会は、こうした現行の制度を廃止・統合し、来年4月から、職員の能力・業績にもとづく「査定昇給」制度を導入するとしています。10月に特別区人事委員会が勧告した4分割給料表は、「査定昇給」制度の導入を前提とし、各号級を4分割したものとなっています。

(図解)表A「給料表の4分割」を参照してください

表Aの訂正版

■ 所属長の「評価」で昇給する人と昇給のない人が作られる

 「査定昇給」制度では、職員をA〜Eの5段階に選別します。Aの人は勤務成績が「極めて良好」として最大8号(現在の2号分に相当)昇給します。現在の普通昇給1号分(定期昇給)に該当するのは、勤務成績「良好」としてCにランクされる人で、4号の昇給。Dランクは「やや良好でない」として、昇給延伸。「良好でない」と「評価」されたランクEの人には、昇給そのものがありません。

(図解)表B 「査定昇給のイメージ図・特別区版」を参照してください

表B
「査定昇給制度」

■ 職場の活性化ではなく、職員をバラバラにする「査定昇給制度」

 職員を選別する「評価」の基準について区長会は、職員の「能力・業績」を反映させるとしています。
 私たち公務の職場は、企業のような利潤の追求ではなく、「全体の奉仕者」であることを職務としています。住民サービス、住民福祉の向上に向けて、職場が一体となった対応が求められます。こうした公務職場において職員個々の「能力・業績」をどのように把握するのでしょうか。

◆ 人材育成と、給与に「差」をつけることは次元の違う問題

 多くの区で、「人事考課制度」が導入されています。その手法や内容は異なりますが、ほとんどの区において、行政課題の実現に向けた人材の育成、職員の能力開発、目標管理をつうじた行政運営の活性化などがその目的に掲げられています。
 しかし、職員個々の能力を発揮させ、人材の育成を図るという視点と、職員を選別し、給与に「差」をつけるということは、まるっきり次元の違う問題です。課・係で同じ目標に向かって、職員一丸となって仕事を進めてきても、結果的に「査定」で給与に差をつけなくてはならない制度は、公務職場の実態にはそぐわないものです。職員をバラバラにし、職場の活性化には決して繋がりません。
 また、保育園をはじめとした係単位の出先職場、または、大規模職場などでは一体どのように職員一人ひとりを「査定」すると言うのでしょうか。
 「評価」により職員の給与を左右させることとなる所属長の責任や能力もきびしく問われることなります。

◆各区で実態の違う「人事考課制度」

 特別区における「人事考課制度」は、各区で定期評定の基準日が異なり、特別昇格・昇給へ「活用している」としている区も6区しかないなど、区によって制度内容や運用に大きな違いがあります。また、定期評定そのものが全ての区で実施されているわけではありません。
 こうしたことから区長会は、昇給の時期に関しては23区同じとするが、昇給の幅や昇給者の率、昇給者の決定方法を各区で定めるとしており、各区バラバラの制度で昇給を行うことを容認しています。これを許せば、各区で給与水準が大きく異なることになります。特別区職員の同一の給与水準・労働条件を保証するための「勧告」制度を否定し、特区連と区長会との「統一交渉」の仕組みを瓦解させることになります。

(図解)表C〜D「人事考課制度の導入状況等」を参照してください

表C
人事考課制度の導入状況
 (2005年1月1日現在)

表D
人事考課制度の活用状況
  (2005年1月1日現在)

◆民間でも「成果主義」賃金の見直しが進む

 民間では、業績を賃金に結びつける「成果主義」賃金が多くの企業で取り入れられてきました。しかし、最近の調査(厚生労働省「就労条件総合調査」)では「うまくいっている」とする回答は15.9%に止まり、8割の企業が「成果主義」に基づく業績評価の問題点を指摘しました。
 「成果主義」の問題点については、別掲のとおり指摘され、多くの企業で「成果主義」賃金の見直しが進められている現状にあります。公務職場で安易に導入することは、認められません。


@ 「成果」を「個別」に評価するため、利己的に行動する職員が増える。
A 職場の連帯感が薄れ、チームワークを阻害する。
B マイナス評価を隠蔽する傾向が高まり、「モラルハザード」を引き起こす。
C 短期的な「成果」が求められるため、失敗を恐れ「チャレンジ精神」が減退される。
D 地味な部署や仕事が嫌われ、また、そうした部署にいる職員のやる気が阻害される。


一時金に「差」をつける「成績率」の導入

 区長会は、一時金の勤勉手当分についても、図のような「成績率」を導入するとしています。
「査定昇給制度」と同様に職員を5段階に分け、全職員からカットした一時金と、下位区分の者から更にカットした一時金を上位区分の者に振り分ける仕組みです。
 「成績率」導入を狙った今年の勧告は、一時金0.05月引き上げ分を全て勤勉手当とするとしましたが、区長会は更に一時金の勤勉手当率を拡大させるとしています。

◆ほとんどの職員の一時金を「カット」

 全職員から一定額を「成績率」のための「原資」として拠出させます。
 たとえ、中位区分として査定されたとしても、一時金は引き下がるだけであり、ほとんどの職員は、一時金のカットだけが強要されます。
 「査定」の上位区分者のために、その他の職員が一時金をカットされるのでは、仕事への志気は下がるだけです。上位に区分された者も本来の一時金がカットされたうえに、僅かな率が上乗せされるだけとなっています。
 また、「査定昇給制度」と同様に、一律分・査定分、配分割合などは各区で判断としており、人事委員会勧告は同じなのに、区によって一時金の率・額が異なることとなります。

 (図解)表E「成績率提案の内容」を参照してください


表E
一般職員への成績率の導入について

任用制度の大改悪「級格付の廃止」

■ 現行「1職2級」制度は職員の知識・経験を生かす制度

 区長会は、任用制度を大幅に改悪する「級格付制度」の廃止を狙っています。現在は、別表のとおり「級別職務表」が定められ、経験年数等により上位の級に格付されることが可能な任用制度となっており、「1職2級制度」と呼んでいます。ベテラン職員の知識や経験を特別区行政に生かす制度として、また、生計費としての給与を保障し、職員が安んじて業務にあたれることを可能とした任用制度です。
 区長会は「職務給」原則を徹底するとしていますが、現行制度においても、「職務給」原則は貫かれています。今年度より実施された「現業系人事制度」をめぐっても、区長会自らが「職務」を明確化するためには現業系職員にも「1職2級制度」が必要と主張し、「技能主任」制度等の導入を強行しました。その舌の根も乾かぬうちの級格付廃止提案であり、納得できません。

級別標準職務表
行(一)給料表 適用者
職務の級 標準的な職務
1 級 定型的な業務を行う職の職務
2 級 相当の知識又は経験を必要とする業務を行う職の職務
3 級 相当高度の知識又は経験を必要とする業務を行う職の職務
4 級 1 主任主事の職務
2 高度の知識又は経験を必要とする業務を行う職の職務
5 級 1 係長又は主査の職務
2 特に高度の知識又は経験を必要とする業務を行う職の職務
6 級 1 総括係長の職の職務
2 困難な業務を処理する係長又は主査の職務
7 級 課長の職務
8 級 1 統括課長の職務
2 極めて困難な業務を分掌する課長の職務
9 級 1 部長の職務
2 重要な業務を所掌する統括課長の職務
10級 特に重要な業務を所掌する部長の職務

業務職給料表 適用者
職務の級 標準的な職務
1 級 2級、3級又は4級に属さない職員の職務
2 級 1 技能主任の職務
2 特に高度の知識又は経験を必要とする業務を行う職務
3 級 1 技能長の職務
2 困難な業務を処理する技能主任の職務
4 級 1 統括技能長の職務
2 困難な業務を処理する技能長の職務

■ 級格付廃止は、中堅・ベテラン職員の役割を否定
  東京都では、級格付前の級に戻すことまで提案



 区長会は、中堅・ベテラン職員としての役割が期待されて上位に級格付されている職員の役割を否定し、「人件費の増大に大きな悪影響」などど、級格付者の存在そのものが「悪」であるかの如く描いています。
 同様の提案を行っている東京都では、既格付者を以前の級に戻すことまで主張しています。


 特別区の行政は、住民により身近な住民サービスの実現を主としています。職員に求められる能力は、専門的力量と総合的視野に裏づけされなければならず、これらは職員個人の努力とともに、職場での集団的努力をつうじて育まれるものです。中堅・ベテラン職員の幅広い豊富な実務経験は特別区の財産であり、住民にとっては「より質の高いサービス」を安心して受けられる保障となります。こうした職員の役割を否定することは許されません。
 また、国・総務省は、国に無い「不当」な制度であるとして是正を主張していますが、高級官僚・キャリア組を中心に設計されている国家公務員の場合は、採用試験で人事コースが確定した後は、基本的には級歴・職歴で昇格・昇任していく仕組みです。特別区では、国とは違い、採用後の昇任選考すなわち試験制度を仕組みとしているため、国と同じに論じるのは大きな誤りです。
 一方、グラフのとおり、係長選考の昇任率は年々低下し、一般選考は4%台、長期選考は2%台にまで落ち込み、男性と女性の昇任率にも大きな開きが生じています。また、技能主任についても昇任率を現行10%としているなど、昇任による昇格はまさに「狭き門」となっています。級格付制度による職員の活用はますます重要であり、制度の廃止ではなく、改善こそが図られるべきです。

 (図解)表F「係長昇任率の変化」を参照してください


表F
係長昇任率の変化

人事・給与制度の改悪提案は、住民に「痛み」を押し付ける「露払い」

◆職場から大きな反対の声を広げよう

 区長会は、「職員の能力・業績及び職責の反映」が「総人件費を抑制し、公務能率のいっそうの向上に資する」と主張しています。「査定昇給」や「成績率」の導入、「級格付」廃止などは、人件費の削減にその大きな狙いがあります。また、民間でも破綻しつつある「成果主義」を公務職場に持ち込むことは、賃金水準を低下させるだけでなく、公務の質を変え、全体の奉仕者としての公務員の職務を歪めるものです。
 住民生活無視の自治体市場化・切捨てを進める小泉政権は、「まずは公務員給与の削減から」として、財界とともに「公務員制度改革」を大合唱しています。区長会の「人事・給与改悪提案」は、こうした小泉「構造改革」路線に沿ったものであり、結局は、住民負担の拡大や委託化など「行革」リストラによる「痛み」を住民に押し付ける「露払い」の役割を私たち公務員労働者に果たさせようとするものでしかありません。
 「人事・給与制度改悪」に対し、職場から大きな反対の声を広げていきましょう。