2006年度区職労定期大会への「報告と提起」
2005年12月6日
千代田区職労執行委員会

代議員の皆さん、忙しい中、区職労定期大会への出席、ありがとうございます。
区職労執行委員会を代表して、委員長あいさつ、経過報告、運動方針案をまとめて、「報告と提起」として提案します。
この措置は、大会を午後としたため、「報告」と提案時間を短くし、討論時間を確保するための措置として行うものです。
皆さんのご理解をお願いするものです。
従って、従来、情勢報告を兼ねて行っていた委員長あいさつを運動方針案の情勢報告に委ね、これまで書記長が行っていた経過報告を思い切って割愛し、お手元にある経過報告書を配付することで経過報告に替えることにしました。
なお、経過報告の出番がない西本書記長については、経過報告書作成でごくろういただいたことに感謝したいと思います。
また、答弁については、それぞれ、担当の責任者である、副委員長や専門部長に答えてもらいますので、よろしくお願いします。
討論のまとめは、委員長が議論の最後に行いますので、この「報告と提起」、運動方針案や経過報告の内容について、質疑をいただきたいと思います。

さて、運動方針案に基づいた「報告と提起」を行います。
まず、2006年度区職労運動方針案の構成は、最近の情勢を踏まえ、3つの章に整理し、記述しています。
 第1章は、向こう1年間の区職労運動の目標と課題について、9つを掲げて取り組みを進めることにしています。
第2章は、情勢の特徴について、私たち職員の身近な情勢から区政分析及び政治情勢の特徴を記述しました。また、組合員アンケート結果による職員と職場の実態分析を行っています。
 第3章では、一年を簡単に振り返り、教訓を引き出し、課題については、組合員の生活と権利を守る取り組み、賃金不払い残業をなくす取り組み、労働時間短縮の取り組み、職場の民主化の課題、「NPM行革」に反対する取り組み、憲法9条を守る取り組みなど20項目を掲げて、具体的に取り組む方針を提起しています。

次に、1年間(2005年12月から2006年11月)の区職労運動の基本目標と課題についてです。
「総人件費削減・給与構造の見直し反対」、「憲法9条を守り、戦争する国にさせない」「事前協議の徹底」、「06職場要求の前進めざす」、「NPM型行革・構造改革路線反対」、「仲間を大切にする職場環境づくりをめざす」、「社会保障制度の充実、増税反対」、「道理と要求を堅持し取り組む」、「区職労の組織強化を図る」ことの9つとし、その実現と前進をめざして奮闘します。

3つめは、情勢分析についてです。ここでは、その特徴的なところを報告します。
1、公務員を取り巻く誤解に基づく厳しい状況についてです。
今後、公務員への「総人件費削減」攻撃は、政府の旗振りと財界の後押しのもと、ますます激しくなると予測されます。
「新地方行革指針」では、職員の20万人純減をめざすことを徹底して行うとしています。
「官から民へ」の「構造改革」路線に沿って、「総人件費削減」攻撃が行われ、公務員を「敵」に仕立てて、「構造改革」を進めるものとなっています。
これは、公務員の「総人件費削減」と消費税増税などの国民負担増を天秤にかけて、国民と公務員の分断をねらったものです。つまり、公務員の数や人件費を減らしたのだから、今度は増税をがまんしろということです。
公務員への攻撃は、実は、国民全体への攻撃といえるのもので、国民総反撃が必至の状況というものです。

日本の公務員数は多すぎると思っている国民は、比較的多いですが、政府資料で人口千人当たりの公務員数は、フランス96人、アメリカ80人、イギリス73人、ドイツ58人、そして日本はたったの35人です。
公務員数、人件費でみれば、既に日本は、「小さな政府」になっているのであり、このことを大いに宣伝することが重要です。

2、公務員給与減らすねらいの政治的な「勧告」と区長会の対応についてです。
2005年は、「マイナス勧告」で平均約48000円の年収減となります。このことについて、国や都より引き下げ幅が上回るものであること、2005年春闘結果からみてもなぜ、特別区の民間給与の平均が区職員給与平均より低いのか納得できるものではありません。
まさに、公務員給与を引き下げようとする国・人事院に追随する政治的な「勧告」と言わざるを得ません。
「勧告」を受けて、区長会は、職務・職責及び業績をより的確に反映するための普通昇給と特別昇給とを統合し、「査定昇給」とすることや一般職員の勤勉手当への成績率導入、職務給の観点による枠外昇給制度や級格付制度の廃止を提案しました。
これらの内容は、地方公務員給与を決める原則である地公法24条の「生計費原則」を全く考慮していないのが特徴です。
特別区の給与制度は、国のキャリア制度と違い、職員を採用時の区分で昇任・昇格の差別をせず、職員の働く意欲とチームワークを生かす積極的な面をもつもので、これを崩す今回の「改革の方向」は容認できないものです。

3、賃金不払い残業問題についてです。
この問題で区当局は、賃金不払いが犯罪であるという認識に欠けている重大性を指摘しなければなりません。
ここ2、3年国の指導もあり、告発のあった民間会社などでは、未払いであった残業代(2004年度で約226億円)が支払われてきています。
しかし、職場では、賃金不払い残業は違法であり犯罪であるという認識に欠け、残業代未払いがまかり通っています。
区職労の調査でも、超過勤務時間の最大で年間900時間行っている職員がいますし、超過勤務が多い職場が存在しています。これは過労死予備軍であり、即区当局の改善に向けた早急な対応と不払い残業の解消が求められます。

4、新規採用を当局がさぼり続けいることと、今後更に240名もの職員を削減することについてです。
今年になって、新規採用を行わない方針を続けていましたが、私たちの要求や区民の声もあり、2006年度は4年ぶりに新規採用が行われることになりました。しかし、採用数は、わずかに数人程度となっています。
新規採用の抑制は、1)職員が減っていることにより過重労働が強まる、2)新規職員が職場に配属されないため、職員の世代間のバランスが崩れ、活性化が図れない、専門性の継続ができないなど、職場運営に重大な影響を与えます。新規採用抑制は、今後の区政運営に深刻な支障をきたすことが明らかであり、職員削減を重視するあまり、人材育成の中断や職場の不活性化など、将来の区政運営を危うくする重大な誤りです。
特に、団塊の世代の退職を迎える2007年以降、新規採用抑制方針が取られることになると大変な事態になります。
引き続き、新規採用、退職者補充、職場運営や職員の生命の危険や健康に影響を及ぼす職員削減に断固反対していくことが重要です。
また、職場では職員数削減で、休暇の取得など、権利行使が厳しい状況にもなっています。

5、対応が遅れているメンタルヘルス対策についてです。
2005年要求・生活実態アンケートでの健康状態について、「現在治療中」が20.4%もいます。また、「健康に不安がある」人は、43.1%います。統計として取ってはいませんが、職場からの報告を聞くと「心の病」が増えています。
メンタルヘルス問題への対応は、「勧告」の中でも強調されています。
メンタルヘルスの原因は、最近の調査では長時間過密労働と職場の人間関係が大きく影響していると言われています。
また、競争をあおる成果主義型賃金の導入も影響があると言われています。さらに、適正にあわない人事異動や職場運営のなかでの上司の不適切な指示などが「心の病」の原因にもなります。「心の病」の最終的な行き着く先は、自殺です。
具体的には、職員個人の努力任せにせず、長時間過密労働の解消、メンタルヘルスへの理解を深める対策や管理職の対応のレベルアップなど、積極的な対応が求められています。

6、能力・成果主義型賃金、「査定」賃金で職員の導入についてです。
区長会が「査定昇給」や勤勉手当への成績率導入、級格付け廃止を提案し、また、評価制度を確立し一層の能力・成果主義型賃金を強化しようとしており、2005年賃金確定闘争は、重大な事態になっています。
民間では能力・成果主義による評価制度の破綻や見直しが行われています。
公務職場への能力・成果主義型賃金の本格的な導入は、憲法に規定された「全体の奉仕者」としての公務員制度をゆがめ、「権力」に忠実で「モノ言わぬ公務員」づくりをすすめ、職場の効率性も損なうものとなります。さらに、上司への成果づくりの観点から上司の気に入る内容の仕事をつくるという問題点も指摘されます。
また、成果主義による人事評価制度は科学的に確立されていないと指摘されています。
公務職場に行き過ぎた「査定賃金制度」はなじまないものです。導入すれば、まちがいなく、「職員の職務遂行へのモチベーションを高めるのは、ほんのごく一部にとどまり、多くの職員の士気の低下を招くものとなる」ことは明らかであり、かつ、住民サービスは大きく低下するものとなるでしょう。
そもそも所属長が多くの職員を5段階の相対評価で公正に一人一人を毎年査定することは無理であると言わざるを得ません。ましてや出先職場の職員を所属長が日頃の職務をみていないで「査定」することなどあり得ません。
従って、相対評価で毎年、職員を「査定」することに土台無理があると言わざるを得ません。
能力・成果主義型賃金、「査定賃金」は、評価制度に信頼がないもとでは導入すべきではありません。

級格付制度については、ベテラン職員の知識や経験を行政に生かす制度として、また、生計費としての給与を保障し、職員が安んじて業務にあたれることを可能とした任用給与制度であり、廃止は大きな問題があります。級格付がどうしても廃止が避けられないとなれば、それに変わる人事任用給与制度全体の見直しが必要であることを強調しておきたいと思います。

7、昇任、昇格、昇給選考についてです。
区職労アンケートによる主任主事・係長・総括係長・技能主任選考について、「恣意的な選考になっている」、「評価されるべき人が評価されていない」との印象をもっている職員が一定の割合でいます。
マイナス賃金が続くなかで、ひとりでも多くの人の賃金水準がアップするようめざし、主任主事選考昇任率の大幅な引き下げ反対、主査制の拡充や係長昇任者数の増加、技能主任の民主的な選考を強く求めていくことが重要となっています。

8、法に基づく福利厚生制度の切り崩しの攻撃についてです。
総務省は「行革新指針」(2005年3月)で、福利厚生事業について、「住民の理解が得られるものとなるよう、点検・見直しを行い、適正に事業を実施すること」を求めています。
こうした攻撃は、公務員攻撃の一環の中で行われているものです。
 職員の福利厚生制度は、地方公務員法第42条で「地方公共団体は、職員の保健、元気回復その他厚生に関する事項について計画を樹立し、これを実施しなければならない」と雇用主責任を明確に規定しています。
特別区互助組合について、そのあり方について、今区長会で検討されています。2005年11月の区長会総会では、廃止を前提として議論されました。2005年12月には、人事厚生事務組合の議会で多数決で公費負担の廃止を決めようとしています。
今後、廃止を前提とした区長会案に対して、特区連が交渉で、当局負担の復活を求め、スケールメリットのある事業の存続を求めていくことが重要となっています。
こうした情勢を受けて、区互助会に対する公費負担のあり方も問題提起されると予測されます。公費負担はとんでもないとの風潮がありますが、公務員の権利の立場からも地公法42条に基づき適正な公費負担を行うことこそ必要です。

9、区当局が次世代育成支援を真剣に考えようとしない問題です。
「特定事業主行動計画」の策定にあたって、区職労は、職員が安心して子育てができる職場環境を整えるよう区当局に要求しましたが、肝心な点が抜け落ちたものとなりました。
 「少子化」は、日本の将来の土台をゆるがす大問題です。このことを区当局は、真剣に考えようとしていません。
そもそも、育児休業を取り易い環境をどうつくるか、職員が結婚し、子どもを産みやすい環境をどう作るかが問題なのに、根本的な対策を立てようとしていないことです。こんなことでは、民間会社に次世代育成支援を説いてもついてくるはずがありません。
根本的な対策とは、職員を減らさず、安心して育休代替職員を確保すること、育休職員を賃金や昇任・昇格で差別しないことのはずですが、それをわかっていながら実施しないのは、「少子化」の重大性を認識していないことです。
次世代育成支援のために、代替措置や休業手当保障のある育児休業制度の確立、育児時間の改善などが早急に求められます。

10、「NPM型行革」・「構造改革」路線を進める千代田区政についてです。
2005年6月区議会で、千代田区長は、「公務員の厚遇問題」と題して、職員数削減、特殊勤務手当の見直し、互助会事業の見直しなどで、職員の人権を無視してコストを優先させた対応をすることを宣言し、職員攻撃を行いました。
これは、労使でこれまで合意してきた適正な労働条件について、今の公務員攻撃に便乗し、権利を剥奪するものであり、納得できないものです。
千代田区政は、相変わらず、トップダウンで行政が行われ、区民や職員の声が通っているとは言えません。この背景には、役に立つ職員は1割、1割の職員はいるだけで罪であるという「人財集団論」という考え方がトップにあり、行政運営を行っているからといえます。
業務の民営化等も今後、「改定行革大綱」に基づき、学校・保育園給食の民営化の完成、保育園、児童館・学童クラブ等の民営化や民間委譲など、子どもに関わる施設、業務を営利企業に肩代わりさせようとしています。 
一方では、ゼネコンの経済活動を支援するための「都市再生」政策を受け入れ、超高層ビル建設や大規模建設計画を容認し、その結果、千代田の街壊しが進んでいると指摘されています。
区民や職員のためにならない千代田区の「構造改革」路線に反対し、区政の民主化が求められているといえます。

また、PFI事業の財政負担は長期的にみて問題があり、指定管理者制度もいったん営利企業に任せてしまえば、利潤追求のために利用料金が上がったり、サービスが低下したりすると予測されます。さらに、これまで受託していた団体の解散・整理による職員のリストラなど重大な問題が出てきます。
「市場化テスト」はこれを営利企業のビジネスチャンスの道具とし、住民の人権を弱肉強食の市場に投げ出すものです。
このことは住民サービスの低下をもたらす危険に絶えずさらされるとともに、住民参加や議会によるチェックが後退し、個人情報の保護についても保障はないと言わざるを得ないものです。また、談合や「口利き」などがはびこり、不正や腐敗、癒着の温床となる危険も高まります。
さらに、対象事業を民間が落札した場合、正規職員の処遇については配置転換や民間事業者への移転、臨時・非常勤職員には解雇という重大な問題が発生します。
質の高い公共サービスを確立し、公務公共サービス労働者の雇用を守る立場から、PFIや指定管理者制度の問題点を指摘し、「市場化テスト」に反対していくことが重要です。

千代田区は、平成17年度から平成21年度までの主な事業の5ヶ年計画である「千代田区第三次長期総合計画・改定推進プログラム」に基づき、児童館・学童クラブも民営化を進め、保育園の民営化も検討しています。
こうした民営化では、憲法や地方自治法などによって規定された自治体の公共性(自治体行政の存在理由)が無視され、区民サービスや職員の労働条件に大きな影響を与えます。特に、民営化などで職場(職種)そのものを奪われる職員がでることについて、絶対に認められるものではありません。

「こども園」に関するアンケートを2005年はじめに実施しました。その結果は、幼稚園教諭と保育士の賃金格差や施設が一体化していない問題や、一元化が中途半端になっているなかでの運営の難しさを指摘しています。職員配置も十分ではなく、超過勤務も他園と比べ非常に多くなっています。
また、幼稚園側が園長となっているなかでの保育園の独自性が出せない問題も指摘されています。
これに対し、千代田区は「いずみこども園」をつくったことを評価し、議会答弁では、「多様な意見があるとはいえ、いまだに職員の間に保育園、幼稚園の縄張り意識が残り、子ども主体の視点に立てていないことは大変残念です。大人の都合、大人の論理でない建設的な意見は大いに参考にしたいと考えています」と述べ、職員の意見に耳を傾ける姿勢を示していません。
こうした問題点の検討もなく、「こども園」を富士見で拡大しようとしていることは、大きな問題です。

11、「構造改革」の流れに沿う東京都と特別区の問題についてです。
「都市再生」の名で巨大なビル群ができつつあります。建設促進のために環境アセスを改悪し、高速道路建設にも、借金までして莫大な税金を使っています。臨海副都心開発などは、最近4年間で2.85倍の予算をつけ、不要不急の浪費型公共事業をすすめています。
生活道路や災害対策、都営住宅建設、河川対策など都民生活を守る公共事業は軒並み削減しています。
都民の願いの1位は高齢者施策、2位は医療です。なのに石原知事になってから、都の福祉と衛生予算は、全国一減らし、マイナス661億円となりました。
また、教育分野では30人学級実現をさぼり、ついに、実施していないのは、東京都と香川県だけになりました。

石原知事は平然と「憲法を廃棄すべき」と述べ、「憲法を命がけで破る」と公言しました。憲法99条が規定する「公務員の憲法遵守義務」に違反しています。
そして、特定の戦争史観を押しつけ、教師やこどもたち、保護者に日の丸・君が代を強制し、従わない教職員を処分しています。
戦前のような内心の自由を奪い、特定の戦争史観を押しつける石原知事とそれを支える議会を変え、憲法の輝く東京をつくることが求められます。

大都市事務検討会では、都が行う大都市事務の範囲について、協議されていますが、都の財政及び事務事業を手放さない姿勢、財政調整の算定基準を改悪して、特別区への財政配分を減らし、区のリストラを迫っています。これも石原知事の政治姿勢が影響しているものです。

各区とも「行革大綱」に基づき、外部委託をすすめ、職員削減などの内部努力を行う「NPM型行革」をすすめ、歳出を極力抑えるものとなっています。
豊島区は、財政難を理由に、統一交渉で決まったことを守らず、1年間職員給与を3%カットしています。
 各区長が統一交渉のルールを守るよう常に働きかけていくことが重要となっています。

12、小泉内閣の暴走と痛みを伴う「構造改革」、憲法9条を改悪し、日本を「戦争のできる国」にするねらいについての問題です。
10月28日、自民党は満を持して、「新憲法草案」を決めました。
 改憲案は、前文から侵略戦争の反省を削除し、かつ第9条2項の戦力不保持も削除し、自衛軍を持つことを明記しました。これによって、海外での武力行使の歯止めをはずし、「戦争の出来る国」日本にするとしました。
 政権党が初めて改憲草案を出したことで、憲法問題は新たな危険な段階に入りました。
憲法9条は、「戦争しない国」日本をつくり平和を確保してきました。憲法9条の改憲に反対する国民の多数派をつくり、憲法9条を守り抜くことが、私たちの生活基盤を確保していく上でとても重要です。

「9条の会」が発足して1年半になります。この「9条の会」の刺激を受けて、全国各地で「9条の会」が生まれ、その数は3500を超し、今でもその数を増やしています。
着実に草の根の広がりで憲法を守る運動が広がっているといえます。
区職員の中では、49.0%は変えるべきではないと思っています。また、「見直してもよい」25.3%、「わからない」25.7%あり、職場で憲法9条の意義について議論することが求められています。
 憲法9条を宝として、21世紀の日本と世界に広げることが、戦争をなくすことにつながると確信します。

海外での武力行使の「歯止め」となってきたのが憲法9条です。日米同盟の侵略的強化は、憲法9条と両立できなくなっています。こうした現実に合わせようとするのが憲法改正の動きです。
しかし、世界を見渡してみると、国際民主法律家協会が「第9条は、人類に与えられた贈り物」と評価したり、アメリカの退役軍人会が「9条を支持する」と表明したりして、9条を世界と地域の平和秩序をつくる「土台」にしようとする動きが広がっています。
私たちは、こうした動きを歓迎し、9条を守る運動に取り組むことがいよいよ重要となっているといえます。

小泉首相は、10月17日、国内外の批判の高まりや、韓国、中国からの中止要請、違憲判決を無視するかたちで靖国神社を今年も参拝しました。一般国民と同じ「私的参拝」を装いましたが、首相の参拝は「私的」などといえるはずがありません。それから、参拝した日は、A級戦犯がまつられた日であり、参拝を支持する人へのメッセージを明らかに送っており、確信犯です。
 首相の靖国参拝について、アジアの国々が抗議するのは、戦犯の人たちを英霊とあがめ、靖国神社そのものが、靖国史観に基づき歴史の真実を覆い隠し、日本の侵略戦争を正当化しているからです。
 あえて参拝を続けることは、日本の侵略戦争と植民地支配で苦しめられたアジア諸国の理解は得られず、国連憲章と日本国憲法に基づく平和の道に逆行するものです。日本の外交と平和に大きな影響を与えている首相の靖国参拝をやめさせることが大事です。

 2005年10月29日、在日米軍の再編・強化計画(中間報告)を日米両政府が、関係自治体の頭越しで合意をしました。これは、日本政府の異常なアメリカいいなりの立場によるものです。
 米軍基地の再編強化に対し、県知事や関係自治体の首長は、「絶対容認できない」と、かつてなく反対の声をあげています。
 米軍基地は、百害あって一理なしであり、縮小し撤去することが求められます。

2007年から団塊の世代が定年退職を迎え、高齢化がピークとなる2025年に向けて、75歳以上の高齢者から保険料を徴収し、かつ患者負担を引き上げる、いわゆる「高齢者医療制度」を創設しようとしています。
 小泉「構造改革」の医療版で、財界の求めに応じ、経済の伸びに基づいた給付目標の達成をめざす総額抑制方式とするものです。
 これによって高齢者の保険料は、介護保険料と合わせて月1万円にもなり、年金からの天引きとなるため、高齢者の生活に深刻な影響を与えるものとなります。

 小泉「構造改革」は、グローバル化した大企業に奉仕するための「改革」であり、戦後憲法のもとで作りあげてきた福祉などの諸制度を破壊するものです。そこを貫いているのは際限のない競争社会、差別化・競争化の社会、ルールなき社会づくりです。それは、年金や医療制度の連続改悪に見られるような社会保障分野の切り捨てと、大銀行など大企業を救済する施策として表れています。

大企業・財界は、中高年へのリストラと新規採用抑制によって、正社員を減らし、派遣・パート・業務請負などの非正規雇用への置き換えを進めています。今や、労働者の3人に1人、若者の2人に1人が不安定雇用に置かれています。
このようにニートや不安定雇用労働者が増えています。
働く権利と労働条件を確保するなど、労働者・国民の側に立った改革を求めていくことが求められています。

公務員の賃金を引き下げ、人員を減らし、「小さな政府」をつくれば国民負担が減り、国民サービスが向上するかのように、マスコミなどを使って幻想を振りまいています。しかし、実際に進んでいるのは、国の財政赤字解消のための、国民のくらしと地域経済の破壊となる大増税計画です。
公務員の「総人件費削減」や医療制度などの社会保障改悪をまず進め、その先に国民への大増税計画、消費税率の引き上げや定率減税の2007年全面廃止などをねらっています。しかし、大企業減税はそのまま温存する姿勢を崩していません。
こんな「構造改革」は国民にとって何の益のないものです。

 景気の動向を示すデータは、改善を示しているものの、2005年民間給与実態は6年連続でマイナスとなっており、労働者には景気回復は実感できないものとなっています。
 これらの要因は、民間企業が正規雇用からパート・臨時・派遣労働に置き換えられた結果です。「日本型雇用」解体と賃金水準破壊が大規模に進んだ結果です。
先行き不安で将来に展望がもてなく、就職活動をしないニートが新たに生まれ、社会不安の材料にもなっています。
 また、こうした低賃金労働の問題をそらそうと「公務員給与が高い」と公務員攻撃キャンペーンに利用されています。

2005年4月11日に、経済財政諮問会議は、2030年を展望して日本の長期ビジョンを発表をしました。憲法改悪を視野に入れ、新自由主義の視点から書かれています。
2030年には日本の人口は約9000万人、5人に一人が75歳以上の超高齢化社会になると予想し、グローバル化により、世界諸国が勝ち組と負け組に二分されると述べています。
報告書の中身は、「行革・リストラ」「公務員の縮小」であり、公務領域の縮小です。国や自治体の公的役割を否定、弱肉強食の市場原理の矛盾を覆いかくし、民に任せればすべてうまくいくと描いています。
企業の利益を守るための高度な管理国家をめざすものとなっており、それに対置した福祉国家の展望が求められています。

政府は、1998年3月に「規制緩和推進3ヶ年計画」を出し、これまで、社会的に必要であった企業などに対する規制や法規制を大企業の活動に邪魔になるとして、次々「規制緩和」を行いました。
その一つが、建築確認・検査業務を民間会社に任せたことです。2005年11月に発覚した耐震強度偽造は、民間確認・検査業務の甘さを悪用したもので、いずれ起こる問題と指摘されていました。
国民の生命と安全を守るための建築行政とチェック体制の強化が早急に求められます。そして、公共業務を「官から民へ」移すことは、大きな問題があることを国民の中で議論することが益々必要になっています。

「労働契約法」が、財界の意向を受けて政府で検討されています。
 「労使委員会」の法制化による労働組合の形骸化、使用者による労働条件の一方的な変更や解雇の金銭解決を可能にし、ホワイトカラーの労働時間管理を止めるなど、現在の労働のルールを根底から覆すものとなっています。
 今でも、労働のルールは、圧倒的に使用者側有利となっています。その労働のルールの改善こそ求められ、更なる使用者側有利への改悪は認められるものではありません。

四つ目は、1年を振り返り、今後の課題についての取り組みについてです。
この1年間の区職労の取り組みについて、簡単に振り返ってみます。
まず、2004年賃金確定闘争では、基本給でマイナスとなりませんでしたが、勧告作業の改善などによる賃金水準のアップや区長会が改善方向を出していた一時金の加算措置の改善は、公務員を取り巻く状況が益々きびしくなる中で交渉が進みませんでした。
 2005年賃金確定闘争では、「マイナス勧告」で年収が平均約48000円の減を余儀なくされました。公務員賃金を抑えこもうとする「勧告」に対し、官民比較の精査を強く求めていくことが重要です。
次に技能系人事制度の改悪で、現業職員にも技能主任などの任用制度が入り、上位級へいくのが難しくなり、生涯賃金に大きな影響を与えることとなりました。しかしながら、係長級に相当する新3級までの昇任・昇格への道と3年間の経過措置を行うこと等確保しました。ただし、採用年齢が遅い職員が新3級に制度的に行けないことも明らかとなり改善要求が必要となっています。さらに、問題なのは、制度改正して1年も立たずに級格付制度を廃止する提案をしてきた区長会の対応には大きな問題があります。
三番目に、2005年区職労要求については、統一要求や分会、各職場の切実な要求を出し、政策経営部長と交渉を行いました。区当局回答は、相変わらず職場の実態を考慮せずそっけないものとなっています。しかし、パソコンの更新や新庁舎要求などで職員の意見が反映しています。引き続き、労働組合運動の根幹である要求実現の取り組みを粘り強く行っていくことが重要となっています。
四番目に、2006年の新規採用の取り組みでは、はじめて要請署名と庁内世論を高めようと運動しました。その結果、区議会での与野党での議論もあり、数名の新規採用を4年ぶりに行わせることになりました。しかし、職場が求める人数、職種には程遠いものがあり、「行革大綱」に基づく職員削減方針に反対していくことが引き続き、重要となっています。
五番目に、「NPM型行革」に反対する取り組みでは、学校・保育園の給食民間委託に関わり職員の処遇問題で対応してきました。しかし、配置された職場が合わず、退職を余儀なくされる職員も出ました。配置転換にあたっての研修を十分に行わせることや相談活動の強化を行うことが求められています。
また、今後、計画されている児童館や保育園などの民営化に対し、公共性を守ることを旗印に住民と共に反対していくことが求められます。
六番目に、区職労の組織強化については、「区職労組織強化方針」を確定し、本庁舎の部会づくり方針や分会・部の強化方針を進めることに着手することになりました。
しかし、年収のマイナスなどの影響を受け、年に十数人が組合を離れ、また、退職不補充の影響を受け組合員数は約900人となっています。
組合員数の減少は、組合財政や区職労運動に大きな影響を与えつつあります。組合員の減少に歯止めをかけるあらゆる方策を考え出していくことが本当に重要となっています。
今や労働組合の組織率(19.2%)が大きく減少し、権利を保障されない労働者がほとんどとなっています。その中で、公務員労働者は恵まれているといわれ、それが賃金・労働条件切り下げの攻撃となっています。そんな中で、労働組合が役割を果たし、踏ん張らなければならない時といえます。
引き続き、職員の要求を掲げていくことにこだわり続け、要求の前進をめざしていくことが今ほど重要になっています。
さて、最後に向こう1年間の取り組みについて、重要な点について述べます。
1、2005年賃金確定闘争は、11月21日、「勧告」された給与及び4分割給料表の実施、一時金の0・05月増などの05給与改定について、中間的に妥結しました。
 12月20日を一応の交渉期限とし、「査定昇給」導入反対、勤勉手当への成績率導入反対、級格付廃止反対で、特区連に結集してたたかいます。12月20日に団体交渉を設定し、区長要請、12日、午後6時半から、大井町駅前のきゅりあんで特区連総決起集会、16日、区長会総会要請・座り込み行動、21日に29分早朝職場大会を構え、区長会を追い込んでいきます。職場からのたたかいへの参加をお願いします。
2、区職労アンケートに基づき、時間外勤務手当の不払いが生じている職場について、不払い賃金の清算を交渉等で強く求めます。時間外勤務手当の不払いは、違法であり犯罪であることを当局に深く認識させ、職場で不払いが発生しないよう具体的な対応を求めます。
3、今後の240名職員削減方針と対決し、職場が求める適正な新規採用を強く要求するなど、正規職員確保の運動をすすめ、交渉による解決をめざします。職場実態に見合った人員配置の提案を求めます。職場実態に合わない人員削減案に反対し、交渉を強化してたたかいます。
4、福利厚生制度の改悪に反対し、充実を求めます。特に、特別区互助組合の廃止に反対します。また、特別区互助組合及び区互助会費の公費負担の削減に反対し、互助会事業の充実を求めます。
5、憲法9条の改悪に反対し、9条を守る運動を進めます。「区職員9条の会」や「千代田9条の会」の運動と連帯し、憲法9条を守ります。
6、2006年度区職労要求について、2005年12月に団体交渉を行い、その前進をめざします。特に、東京都で前進した、子どもの看護休暇の時間単位での取得や仮称子育て休暇の制度化などを要求します。
7、人事考課制度の強化に反対します。人材育成、絶対評価の観点から相対評価とさせず、かつ主観的・恣意的評価をさせず、公正・公平な制度確立、「苦情相談制度」、「本人開示制度」、「訂正権の保障」などを求めます。
人事考課制度の強化は、職員に対する管理強化や組合員間に分断・差別やプライバシーの侵害をもたらし、組合員の労働条件に大きく影響するものであり、給与制度とリンクさせないなど、実質的にその狙いを発揮させないよう取り組みます。
8、職員のメンタルヘルス対策について、その強化と管理職の早期対応を求めます。また、当該者及び周辺の職員が相談できるようなカウンセリング制度を確立することを求めます。別途、区職労メンタルヘルス対策要求を出し、その前進をめざします。
9、人件費の削減、経費を削減しつつ住民サービスも充実させる最適な行政サービス提供方法の選択など、組織のスリム化や経営能力の向上等に関する取り組みを引き続き進めていくとし、一定の目標を定め、人員削減とコスト削減を中心に実施しようとする「改定行革大綱」の具体化に反対します。
学校や保育園の給食調理委託問題では、調理を定年までやりたい職員を最後まで残すよう要求し、職員の配置など希望を優先させること、職場研修の強化などを要求する取り組みを行います。
児童館や保育園の民営化問題では、保護者との共同を追求する取り組みを当該分会と共に追求します。
建物の構造計算の偽造による問題で住民の生命と安全が脅かされる事態となりました。規制緩和に反対しつつ、建築確認審査や中間、完了検査体制の充実を求めていきます。
10、小泉「構造改革」による社会保障制度の改悪に反対していきます。特に、高齢者医療の改悪と消費税率アップ、定率減税全面廃止の阻止に向けて取り組みます。
11、小泉「構造改革」路線をストップさせるための政治革新の課題については、来年は大きな選挙がありませんが、特に、区政民主化に向けて「行革大綱」の中身などを区民に知らせる取り組みを行います。
12、一致する要求に基づく労働者の共同闘争と連帯・支援の課題は、従来通りとします。
13、「地公法55条」「ながら条例」「職免・減免規則」の廃止に反対し、規則に基づく時間内組合活動を保障するよう要求します。
組合員が自主的に行う正当な政治活動について、不当な処分、弾圧を行わないことを確認させます。
組合活動に対する不当介入を断固として許さず、不当処分に反対し、処分の撤回、不利益の実損回復を求めます。
区職労の時間外の宣伝行動への干渉をはねのけます。
事務所使用料の不当な請求については、はねかえしていきます。
14、共済制度などの充実で、組合員の生活を支援する取り組みを強化します。
15、区職労の組合員は約900人となっています。今後、団塊の世代が退職すると、予算編成上重大な事態になります。そのことなどに対応するために区職労内に「組織財政検討委員会」を設置し、対応を検討します。

最後に、「総人件費削減・給与構造見直し」攻撃、成果主義型人事管理と公共性無視・住民サービス低下の民営化などの「構造改革」路線に反対し、職員と住民の生活を守るための自治体を求め、自治体労働者の役割を発揮していこうではありませんか。
さらに、憲法9条を守り、日本を戦争する国にさせない運動を進めていこうではありませんか、ということを申し上げて、以上で、運動方針案に基づく「報告と提起」を終わります。
 皆さんの活発な討議を期待します。ご静聴ありがとうございました。