千代田区06予算案に対するコメント
2006年度千代田区予算案に対する区職労コメント
人件費削減で他の事業を充実したというが、削減された職場におけるサービス低下は避けられない
2006年3月
千代田区職労執行委員会
1、 2006年度千代田区予算案は、2月に発表された。この予算案について、区職労として、職員、区民の立場でコメントを発表するものである。
2、 発表された区予算案の特徴は以下のとおりである。
@ 全会計の予算規模は、544億68百万円、前年度対比13億74百万円、2.5%の増である。
一般会計では、432億34百万円、前年度対比で15億89百万円、3.8%の増である。
国民健康保険事業会計では、38億86百万円、前年度対比で2億83百万円、7.9%の増である。
老人保健特別会計では、42億19百万円、前年度対比で2億32百万円、5.2%の減である。
介護保険特別会計では、31億29百万円、前年度対比2億66百万円、7.8%の減である。
A 予算編成の基本的な考え方として、「子育て支援」、「介護予防」、「住まいの安全」、「学校教育の充実」を重点にあげている。
B 行財政改革の成果、主に人件費、事務事業の見直しなどの削減によるものとして、11億2279万円をひねり出し、行政サービスのかたちで区民に還元したとしている。
C 主要施策で特徴的なものは、子育て支援の一環として、妊娠時から高校3年生までの子どものいる家庭を支援する次世代育成手当を新設し、3億88百万円を計上している。
介護予防では、「自立支援」の推進として、要支援・要介護状態に陥るおそれのある高齢者を対象に介護予防関連事業として、3億9百万円を計上している。
住まいの安全では、耐震強度偽装事件を踏まえ、緊急・マンション等耐震促進事業(6億11百万円)を、区内全てのマンションを対象に実施するとしている。この財源には、開発協力金を充てるとしている。
教育分野では、18年4月開校の中高一貫校の経費、2億23百万円を計上している。
3、 予算案の内容について、以下、問題点等を指摘する。
@ 次世代育成手当のように、次世代育成支援の拡充は歓迎されるものでる。
しかし、区民の中には、乳幼児医療費無料化の拡大を願う要求も強いことも考えるべきである。現に他自治体では、千代田区の制度(6歳まで)より拡大してきている。区民要求に応えていくためには、この流れに沿うことも必要ではないだろうか。
また、職員の次世代育成支援についても、真剣に考えるべきである。職場に気兼ねなく安心して子育てが出来るようにするための、育休代替制度の切り札として、育休任期付職員採用制度の実施や男性職員の育児参加休暇の新設などが緊急に求められている。
A 地域コミュニティ活性化事業(4015万円)は、ばらまきである、区民要望の強い他の事業に予算を回したらいいのではないかと、区民等からの声がある。そのことを真摯に受け止めるべきである。
B 耐震強度偽装事件を受けて、当面の「緊急・マンション等の耐震促進事業」を行うとある。それはそれで必要なことではある。ただし、もっと根本的な解決を図るために、国に対し、建築関係法令の改正や居住の権利を明記した「住生活基本法」の制定等を要望することと同時に、千代田区として、住民のいのちと財産を守る責務があることから、「住宅は人権である」「安全な住宅に住む権利」という居住権を宣言し、安全・安心の街づくりを全国に先がけて進めることが重要と考える。
当面の対応も必要だが、区内の建築について、民間検査機関を指導し、区が、建築行政全体を把握できるようにすることが、大事である。そして、中間検査の幅を広げ、検査を強化し、千代田区で建築した物件は、安全であるというブランドをつくることが必要ではないだろうか。
C 「緊急・マンション等の耐震促進事業」の財源に開発協力金を使うとしている。しかし、開発協力金制度要綱では、その第10条で、「開発協力金は、良質な住宅の供給と良好な住環境の整備を推進するため、区民及び区内在勤者向けの区民住宅の建設及び区長が優良民間住宅の区民住宅としての借り上げ並びに関連する環境整備等に要する事業費に充当するものとする」と明記している。
今回の措置が、「関連する環境整備等に要する事業費」にあたるかどうか、十分に吟味されなければならない。当時、この制度をつくった担当者は、協力金制度に合致するか疑問があると述べている。このことは、非常に大事で、今後、区民在勤者向けの区民住宅の建設及び借り上げのために開発協力金を生かすという基本の主旨が崩れるとなると、開発協力金制度そのものが揺らぐのではないかと危惧するものである。
D 今回も予算編成の特徴として、内部努力、主に人件費削減を行い、他の事業に予算を振り分けたことを強調している。しかし、削減された人員の実態をもっと深くつかむべきではないか。保育園など子どもをあずかる職場からは、これ以上の正規職員削減は、園の運営に支障をきたし、事故につながりかねないとの指摘があがっている。
また、法に基づく職員の福利厚生について、その使用者責任を区当局が果たさなければらない立場にありながら、公費負担を減らす予算となっていることは問題である。今、特別区互助組合への公費負担割合や事業見直しが行われており、その結果は、区互助会事業、つまり、職員の福利厚生事業に大きな影響を与えるものである。こうした経過を無視して、区の公費負担を減らすことは、「削減先にありき」であり、内部努力の内容に問題があると考える。
E 箱根千代田荘を民間委託から民営化にするとしている。どこにメリットがあるのか理解し難い。業者の利益のためだけに実施する懸念があると言わざるを得ない。また、申込み受付を民間事業者任せにした場合、不正は起こらないだろうか心配である。
F 昨年、公会堂を閉鎖することを決め、今回の予算に反映している。しかし、閉鎖理由が建物や設備の老朽化をあげ、大規模改修、設備の更新には多大な財政負担が必要になるからとのことだが、公会堂の必要性からの検討がなく釈然としない。公会堂はしばらく前に大きな予算(平成10年度決算・耐震改修で5億6618万円)をかけて大規模改修を行っている。この改修は、こんなに早く閉鎖することを見越してはいない投資であったはずである。この無駄づかいはどう区民に説明するのだろうか。また、自治体が公会堂を持たなくともよい理由を区民にわかりやすく説明する必要があると考える。区内には、公会堂規模の施設で安く利用できる施設はほとんどないのが実状であり、他の自治体の利用をしなければならないのではないだろうか。
G 認証保育所への優遇補助(1億2684万円)を強化している。これは、認証保育所の保育料を認可保育所よりも2割安くしているものである。まさに、認可保育所に十分な職員配置をしないことと合わせて考えると、認可保育所つぶしと言わざるを得ないものである。
H 富士見こども施設整備について
富士見こども施設整備はPFI事業で行うことになっている。事業者が管理運営する関係で、現場職員や関係者の声が計画に反映されにくいことがあると指摘されている。職員や関係者の声をよく聞いて計画をするめることが大事である。
I 保育所運営について
保育所の運営費の多くは、人件費となっている。現在、区立の保育所の人員配置は、正規職員を減らし、不安定雇用である非常勤や臨時職員を入れて対応している。そのため、勤務ローテーションがむずかしく、職員の休暇、休憩・休息時間などが思うように取得できず、職員に負担を強いている。そうした状況のなかで、必要な職員を不安定雇用でない職員を配置し、安心・安全な保育所経営を行う必要があるのではないだろうか。
J 予算案で、総人件費を4億340万円削減するとしている。人員数では41人の削減である。そして、2006年4月1日現在の職員数を1131人にするとしている。
また、今回、定数条例を改正し、2009年度には、あと111人削減し、1020人にするとの目標を明記するとしている。
これは、改定行革大綱で2005年から5年間で職員数を2割削減するという方針に沿ったものであるが、「まず削減ありき」であり、職場実態を無視したものである。
多くの職場では、長時間労働が横行し、不払い残業も生じ、明るい職場は失われ、ギスギスしたものとなっている。こうしたことも要因となって、メンタルヘルス障害、「心の病」を患う職員も増えている。また、人員不足のために安心して子どもを産むことをためらう傾向も産まれている。ましてや、成果主義型賃金制度の徹底で、男性が育児を行う風潮などとても醸成できる環境にないのが実状である。
こうした職場状況をみるならば、区職労は、条例に削減目標を明記することには反対するものである。行き過ぎた人員削減、削減先にありきの方針は見直すべきである。
人員配置問題では、一方的な削減をせず、どこの職場にどの位の正規職員が必要かを労使で検討する場をぜひ、設けるべきであると提起するものである。
以上