2005年度千代田区職労定期大会での委員長あいさつ |
千代田区職労 執行委員長 小林 秀治 |
組合員の皆さん、大会参加ごくろうさまです。 2005年度区職労定期大会の冒頭にあたって、委員長挨拶を行います。 今回は、職場事情を考慮し半日の大会としました。討論時間などをできるだけ削減しないことを目標に議事日程を組みましたので、来賓挨拶をなくすこととしました。上部団体やつきあいのある団体については、メッセージをいただきました。大会しおりに掲載しましたので、ご一読願います。 大会議事も報告事項と議決事項を執行部から先に提案をし、その後にまとめて、代議員の皆さんに討論をしてもらうことにしています。ぜひ、議事運営にご協力いただきますようお願いします。 また、運動方針案についての執行部提案時間を短くするために、委員長挨拶のなかで、向こう一年間の区職労運動の基本目標と課題について、および組合員の生活を取り巻く情勢についてふれることで、提案にかえさせていただくことにしました。どうぞ、よろしくお願いします。 まず、今回の賃金確定闘争の結果についてです。 (口頭報告となります。) 次に、職場要求闘争についてです。 職場から集約した「05年度区職労職場要求書」を区当局に提出し、誠意ある回答を求めています。 今後、重点を決めて、団体交渉を行い、要求の前進をめざします。 福利厚生の充実については、カフェテリア・プランを2年間拡充することになり、組合員の生活支援に役立てられることとなりました。 3つ目に、2005年度区職労運動方針案についてです。 区職労運動の質的拡大と組合員ニーズに応じた変化に対応するために、運動方針案の構成を従来に比べ大きく変えました。 運動方針案の特徴は、最近の情勢を踏まえ、3つの章に整理し、記述しています。 第1章は、向こう1年間の区職労運動の目標と課題について、9本を掲げています。 第2章は、私たち職員の身近な情勢から、区政と国内の情勢の特徴を分析し記述しています。 第3章は、一年を簡単に振り返り、総括し教訓を引き出し、課題について、具体的に取り組む方針を記述しています。この内容については、後ほど、蒲生副委員長が提案を行います。 なお、区職労の組織強化方針は、この運動方針から切り離し、中長期的な観点からの取り組み方針とし、第3号議案で提案していますので、ご議論願います。 「向こう1年間の区職労運動の基本目標と課題」については、@当局に対し、地公法に基づいた交渉、事前協議の徹底を強く求めていくこと、A身近な職場要求を掲げて取り組むこと、B大都市東京の生活実態に見合った賃金を求めていくこと、C千代田区の「NPM行革」・「構造改革」路線に反対し、真の自治体の役割発揮を求め、住民との共闘を追求すること、D仲間を大切にする職場づくりをめざすこと、E社会保障制度の充実を求め増税に反対すること、F憲法9条を守り、戦争する国にさせない運動をすすめること、G道理と要求を貫く区職労運動をすすめること、H区職労の組織強化を緊急課題とすること、の9つを掲げて、この一年間取り組みをすすめます。 「組合員の生活を取り巻く情勢」について、簡潔にその特徴を述べます。 第1に、組合員の生活と職場をめぐる状況についてです。 区当局は、「人事考課の強化・目標管理型自己申告制度の導入」、「昇任選考、昇給・昇格等の一層の競争・差別・選別強化」、「人事異動へのドラフト制導入」などを実施し、上に忠実な職員作りを徹底して行おうとしています。 職場では、行政評価制度導入や新規事業など仕事量が相対的に増えてきているにも関わらず、職員数が減らされており、職場では負担が増えています。そこでは、賃金不払い残業が相も変わらずあり、メンタルな病気を患う職員が増えてきています。 職場では、人員不足や業務量の増大で過重労働が日常化し、職員同士のコミュニケーションができにくくされてきている状況があります。 保育園などは、正規に変えて非常勤、臨時が増え園の運営が大変になっています。そうしたなかで、職員は賃金不払い残業が放置され、年休が取りにくい状況が続いています。 また、児童館や保育園などは民営化・民間委託の危機にさらされ、職場がなくなることへの職員の不安が高まっています。保育園所属長の面接では、あからさまに、公務員を続けたかったら「こども園」か事務の仕事しかない、保育の仕事をしたいなら民間へ行くしかないと言われています。区当局の都合で職員が使い捨てにされることは許されません。区職労は、こうした動きに断固抗議し、職員の身分、権利を守るためにがんばる決意です。 アンケートからみた職場と職員の実態では、「家計の状態」について、「赤字が増えて苦しい」「やりくりに心配がある」とを合わせると約45%の職員が家計の苦しさを表明しています。こうしたなかで、区職員の平均賃上げ要求は、月33、000円となっており、切実さがにじみ出ています。 賃金不払い残業は、18%の職員があったと答えています。これは、重大な問題であり、放置できません。超過勤務で賃金が払われないことは違法であり、すぐに是正されなければなりません。アンケートによる賃金不払い残業の時間数の合計では3067・5時間もあります。職員一人平均では56時間の不払いがあります。民間企業でさえ是正している世の中で、法を守るべき自治体が賃金不払い残業を放置していることは許されないことで、区長の責任問題です。区職労は、この問題を引き続き、厳しく追求していきます。 超過勤務時間数について、最大で年720時間行っている職員がいます。これも重大な問題で、是正されなければ過労死に至る危険性があるもので、区当局の対応が即求められます。 職員の健康状態では、「治療中」が約17%もいます。また、約6割の職員が「治療中・通院中である」「健康に不安がある」と答えており、職場環境の改善、健康対策などが求められます。 第2に、「NPM行革」・「構造改革」路線を強化する千代田区政についてです。 「改定行革大綱」は、成果主義型人事管理の更なる徹底により、職員のやる気を引き出し、行財政運営面では、一層の経営的視点を前面に押し出し、新たに指定管理者制度などを使い事務事業のアウトソーシング(外部委託)を実施するとし、まさに国の進める「NPM行革」・「構造改革」路線を忠実に歩もうとしています。 さらに、人件費の削減、経費を削減しつつ住民サービスも充実させる最適な行政サービス提供方法の選択など、組織のスリム化や経営能力の向上等に関する取り組みを引き続き進めていくとし、一定の目標を定め、人員削減とコスト削減を中心に実施しようとしています。具体的には、画一的に30ポスト削減、平成21年度までにこれまでの削減数とあわせ約440人もの職員を削減しようとしています。 区職労は、このような「改定行革大綱」に対し、そのまま実施されるとなると、憲法や地方自治法などによって規定された自治体の公共性(自治体行政の存在理由)が無視され、区民サービスや職員の労働条件に大きな影響を与えることから、多くの点で認めがたいものがあると、批判的見解を表明しています。 特に、民営化などで職場・職種そのものを奪われる職員がでることについて、絶対に認められるものではありません。 こうして、区の「市場化」を進めていくことは、区は優秀な民間企業を探し、区の業務を営利企業に委ねる手配師になることであり、果たして自治体の行政がそれでよいのか問われます。 改めて住民の生活と権利を守るという自治体の役割を確認することを求め、そこに働く自治体労働者の役割を引き出してこそ、真の自治体のあるべき姿といえるのではないでしょうか。 千代田区の街づくりでは、市街地再開発事業など民間企業の開発への支援を積極的に行っています。そして、規制緩和などで大規模なビル建設が相次ぎ、事業者側の利益が優先され、これまでの住民が追い出され、街の生活環境が破壊されてきているという事態が生まれています。 平成14年度からの5年間の「事業の推進プログラム」では、民間施行の市街地再開発事業に約290億円も出すことにしました。区内には今までほとんどなかった100b級の超高層ビルが50棟以上も、ここ2、3年で出現してきています。 また、汐留開発や秋葉原開発の就業者を神田での受け入れを区が表明したことにより、猛烈なワンルームマンション開発が神田を襲い、街とコミュニティそのものを壊しています。 教育行政では、キャリア教育をすすめ、中高一貫でエリート校づくり、民間企業が望む人材・リーダーを育てることをあからさまにめざしています。中高一貫校では、明大の斉藤教授がマネージメントすることになっていますが、すでに準備段階で子どもの人権を無視する発言が出て保護者から批判が出ています。考える教員と考える子どもをつくらない、戦前の教育の方向に向かっているようで心配しています。 区は「こども園」をつくったことを評価していますが、職場実態をみてみると、幼稚園教諭と保育士の賃金格差や施設が一体化となっていない問題や、一元化の中途半端さがあるなかでの運営の難しさが出てきています。職員配置も十分でなく、超過勤務も他園と比べ多くなっています。ところが、こうした問題点の検討もなく、「こども園」を富士見で拡大しようとしていることは、重大な問題であると警告を発しておきたいと思います。 こうして「区政転換」の動きは、小泉内閣の「都市再生」や石原都政の「メガロポリス構想」による事業推進によっていっそう促進されてきているといえます。 まさに、民間でできる事業はほとんど民間企業に委託し、もうけの対象とし、民間企業ができるだけ活動しやすいように補助金を出し、行政を大企業に手厚いものに変えていくことであるといえます。 区政は、区民を「顧客」にたとえ、行政サービスを行うといっていますが、実は区民に自助努力を説き、行政の役割を縮小してきているのが本質といえます。 2005年2月6日には、千代田区長選挙があります。実績を強調する石川区政ですが、住民や職員との溝はできつつあることは、職場実態や住民の置かれている情況、街の変貌ぶりをみるとまちがいありません。 こうした状況を踏まえるならば、区職労は、現区政の継続に反対せざるを得ないことを表明します。 区政の進め方に反対や疑問をもつ幅広い区民の結集が求められています。 第3に都政についてです。 石原氏は、圧倒的な得票を得て知事になりましたが、彼の進める都政は、憲法を否定し、福祉を目の敵として切り捨て、人権を無視して進められており、首長に不適格であると言わざるを得ません。 特に、福祉では、医療費助成・寝たきり手当廃止、特養老人ホーム・保育・国保補助金削減で530億円を減らしています。また、母子保健院、青年の家、労政事務所などの都立施設100以上を廃止し、自治体の役割をなくそうとしています。 第4に小泉「構造改革」についてです。 小泉「構造改革」は、グローバル化した大企業に奉仕するための「改革」であり、戦後憲法のもとで作りあげてきた福祉などの諸制度の破壊です。そこを貫いているのは際限のない競争社会、差別化・競争化の社会、ルールなき社会づくりです。それは、年金や医療制度の連続改悪に見られるような社会保障分野の切捨てと大銀行などへの公的資金の注入などの施策として表れています。 もうひとつは「郵政公社民営化」「市場化テスト制度」にみられるグローバル企業が勝ちぬき、もうけをさらに増やすための「改革」です。 小泉内閣は2005年には介護保険に手をつけ、2006年は医療制度を改悪するスケジュールをねらっています。介護保険は制度発足5年目の定期見直しですが、保険料の引き上げと20歳以上への納入義務者の拡大し、より一層利用を抑制し、国民負担を求める改悪が計画されています。 11月25日、政府税調は、所得課税の定率減税廃止と消費税増税などを打ち出しました。定率減税廃止で年間約3.3兆円の負担増、消費税が10%になれば、年間約12兆円にのぼるものとなります。 いずれも庶民にとっては、家計に大きな負担をかけ、消費を抑制することになり、消費不況が継続することになるものです。 日本経済の回復傾向があるものの、完全失業者は314万人、25歳未満の完全失業率が9・6%と依然高水準を保ち、厳しい雇用状況は続いており、先行きの不安定さや将来展望のなさが指摘されています。このことは、犯罪の増加や自殺者の増加に表れ、私たちに危険信号を送ってきているのではないでしょうか。 公務員制度改革では、「住民全体の奉仕者」を否定し、権力者に忠実な公務員作りを進める一方、企業やNPOを行政パートナーとして位置づけ、自治体職員を減らし、市民を有償ボランティアとして自治体業務を担わせる動きが急速に強まっています。 同時に、住民を自治の主体としてではなく「顧客」としてとらえ、行政内部に民間企業の経営手法を導入する、「二ュー・パブリック・マネージメント」(NPM)が広がり、職員の意識改革、業績評価やマニュアル化がすすんでいます。 このことは区政分析でも述べましたが、まさに千代田区が進もうとしている方向といえるでしょう。 第5に、憲法問題と平和についてです。 アメリカ軍は、イラク・ファルージャを総攻撃し、モスク、病院を破壊し、罪のない住民を殺害しています。 小泉首相が非戦闘地域と言っているイラクのサマワに、ロケット弾が打ち込まれています。小泉首相は、自衛隊派遣地について根拠なく非戦闘地域と言いはっています。さらに、1年間の派遣延長を決めようとしています。首相の詭弁が通じる国にさせてはならず、自衛隊の早期撤退を要求していくことが、憲法を守る上で重要です。 いよいよ「改憲」が政治課題となり、2007年に想定される衆議院選挙と参議院選挙に併せて憲法改正の国民投票を行うという政治日程が具体的に語られています。自民党は今年6月「論点整理(案)」を発表し、憲法の平和・民主の原則を公然と否定する立場を明らかにし、海外での集団的自衛権の行使に道を開こうとしています。そして、来年の通常国会に憲法「改正」の手続きを定める「国会法改正案」の上程を決めています。 こうしたきな臭い流れを押しとどめようと、井上ひさし氏、大江健三郎氏など九人が「9条の会」をつくり、全国で憲法9条を守る運動を呼びかけています。 区職労は、職員の生活は平和でなければ守れないことから、憲法9条を守り、日本を戦争する国にさせないよう運動を進める決意です。 拉致問題や核兵器問題などを抱える北朝鮮への対応も、北東アジアの平和にとって重要であり、慎重に話し合い・外交努力の中で解決することが求められています。 このように小泉「構造改革」を中心とした様々な悪政は、労働者・国民に苦痛を与えるものであり、これに対する反発も必至であり、反対闘争が起こっています。 自治体労働者の権利を守り、住民サービスの切り捨てに反対するたたかいと働き甲斐を奪う「NPM行革・構造改革」、「行政の市場化」に反対するたたかいを結合し、住民と地域労働者と共同して闘えば、運動は広がると確信しています。 また、こうした流れの中で、政治が大きく動きます。主体的に私たちが、政治を動かす役割を果たすことが、要求が前進する道であるといえるのではないでしょうか。 以上を申し上げて、大会にあたっての冒頭挨拶とします。 どうもありがとうございました。 |