当面する情勢の特徴
 国際的な反戦運動の高まりを無視して米英などの軍事攻撃ではじまったイラク戦争は、多くのイラク市民の犠牲のもとフセイン政権の崩壊という事態となりました。しかしこれで戦争は終わったといえるのでしょうか。戦争でアメリカの軍需産業と石油業界は大もうけし、アメリカ政府主導による政府作りが画策される事に見られるように、戦争の真のねらいはアメリカの利権の確保にあるように思えます。現にイラクの大量破壊兵器が見つからない問題をめぐり、米国内でブッシュ政権を追及する声があがっています。6月5日には共和党よりとされるワシントン・ポスト紙でも、政権指導部が中央情報局(CIA)などに圧力をかけて情報を操作し、開戦の理由とした疑いが出ていると報じています。
 いち早くアメリカの支持を表明してきた日本政府は、イラク戦争や北朝鮮の脅威を口実に、昨年来2度も国会で継続審議となっていた「有事法制」の成立を急ぎました。慎重審議を求めていた民主党を抱き込んで、密室協議で「修正」合意し、6月6日成立させました。
 このことは戦争しない国であった日本が戦争できる国への重大な変貌をとげたことであり、修整では国民保護などを盛り込んだといっていますが、その危険性は何ら変わるものではありません。国家のために国民を戦争に協力させる「有事法制」は、国民の奉仕者である私たち公務員が国民を戦争に駆り立てるために動員させられるという悪辣なものであり、戦前の国家体制への逆戻りを断じて許す訳にはゆきません。政府は国会の会期を40日も延長して、無法な戦争のうえにイラクの軍事占領支配をすすめる米英軍を支援するため、戦後初めて、現に戦闘がおこなわれている戦場に地上軍を派兵することをねらったイラク特別措置法案を成立させようとしていますが、この廃案をはじめ有事法制を発動させないたたかいが重要になっています。
 経済改革もすすまず多くの中小企業者が苦しんでいる中、日本政府はりそなグループへの公的資金投入を決定しました。失政の穴埋めに公的資金を二兆円も投入することに多くの不満があがっています。また、保険会社の「保護」として浮上した「生保の予定利率引き下げ問題」など、国民への負担転嫁が露骨にすすめられています。6月17日の政府税調では消費税を10%台にする答申が行われました。
 4年ぶりとなる労働基準法の改悪をめぐっては、野党4党の修正により「解雇権の乱用禁止」規定を初めて盛り込むことになったものの、契約社員など有期雇用の契約期間の上限を1年から3年に延長することや、裁量労働制の対象を拡大し、導入要件も大幅緩和することが審議されています。裁量労働は、実際に働いた時間とは別に、あらかじめ決めた時間だけを「働いたとみなす」制度であり、長時間労働とサービス残業(ただ働き)をもたらす危険性が大きいため、「歯止め」規定があります。法案はこれを削除し、広範なホワイトカラーに適用できるようにすることがねらいです。国会審議で松崎朗労働基準局長は「労働時間の把握をしないのが裁量労働制の趣旨だ」などと延べ労働時間の把握そのものが後退する問題が浮かび上がっています。6日に成立した労働者派遣法改悪案は、派遣労働を「臨時的・一時的な労働力」とするために設けている“歯止め”を取り払い、常用雇用労働者の派遣労働者への置き換えを大規模にすすめる道を開いたものとなっています。
 公務員制度改革をめぐっては、昨年11月に「公務員制度改革大綱」の見直しと国際労働基準に基づく制度改正とそのための労使協議を求めるILO勧告が出されましたが、政府はこれを受け入れないままに法案成立をすすめています。悪政の推進役としての「もの言わぬ公務員づくり」をねらう政府案の廃案をめざしたたたかいが強く求められています。
 2003年春闘では、経営側はベアゼロどころか、賃金下げや基本給廃止、成果主義賃金など賃金体系の大幅な見直しを迫ってきました。依然として続く不況のもとで経営が苦しい状況の企業もありますが、大規模なリストラで史上最高の利益をあげているところもあります。しかしこうしたところも人件費抑制をねらい、労働者に賃下げと労働強化を押し付けています。こうした状況のもとで、春闘相場も昨年を下回っており、今年の人事院勧告への影響が懸念されます。
 石川区政は今年度より事業部制を導入し、職場間での競争をあおる業績評価を行うとしています。人事任用制度でも主任主事や係長選考での若年選抜の傾向が現れ、級格付けでも「追い越し」が出るなど職場でも疑問の声が出されています。さらに6月には人事考課制度の見直し(自己申告の見直し)が提起されています。
 職場での十分な浸透もないままにスタートした平成15年度の組織改正によっていまなお混乱を招いている職場も出ていますが、当局は一方的なトップダウンの姿勢を替えようとしていません。
 予算の面では生活環境条例や江戸開府400年記念事業などにつぎ込む一方、職場には緊縮財政を押し付けるやり方に疑問の声があがっています。特に新規職員を採用せず、増員要求にもこたえないことにより、職場は慢性的に人手不足となり、休暇を取ることもままならないなど職員に負担を押し付けています。
 年末に行った区職労のアンケートでは、職場の変化について、仕事意欲が高まった(10.72%)に対して満足のいく仕事ができなかった(36.16%)、サービス残業が増えた(43.2%)、仕事意欲減少(50.08%)という回答が寄せられましたが、状況は改善されるどころかいっそう悪化しています。少なくない職場では、残業が増える一方で予算がないとして時間外手当の申請を「自粛」したり、年次休暇取得もままならない中で代休に振り替えるといったことが行われ、こうした状況に職員の不満は限界に近づいてます。
当面する課題について

1.公平・民主的な特別昇給の枠拡大をもとめるとりくみ
 昨年の賃金確定闘争で妥結した特別昇給枠拡大(面積率22%→40%)に対して、当局は業績評価をもとにした再編をねらっています。統一交渉で合意された「現行制度を基礎」は、職員全体の賃金底上げを求める特区連要求を踏まえたうえでの合意であり、当局の曲解を許さない態度で望みます。
 具体的には、@現行の3月短縮20%をさらに大きく拡大すること。A12月短縮措置については導入しないこと。を基本に交渉を強めます。

2.サービス残業縮減に向けたとりくみ
 重点要求交渉で設置を求めた検討部会を早急に開催します。
 検討部会の開催にあたっては、部会が有効に機能するようチェック体制の確立、36協定の締結など積極的に課題を持ち込んでいきます。
 また、恒常的に残業が生じる職場については人的措置を求めていきます。

3.休暇制度の改善を求めるとりくみ
 今年度の夏休については5日とすることで合意済みですが、再雇用職員の夏季職免及び夜間勤務者の取得方法について継続課題となっています。6月中の決着をめざし、当該部会と協力して交渉を強めます。
 また、元気回復職免については、職員が年間を通して有効に活用できる方途について協議をすすめます。
 平成15年度経過措置になっている出勤時間特例措置については、アンケート調査を行い実態把握と要求集約を行うとともに、新制度の発足に向けて協議をすすめます。

4.成績主義の導入・人事管理の強化を許さないとりくみ
 人事考課(自主申告)の見直しは、慢性的な人員不足による余裕のない職場状況や管理職側の問題など現状では体制的に保障されることに疑問が残ります。また、「昇任や昇給・昇格など、給与上の処遇に活用できる客観的かつ合理的な人事考課制度を構築する」と区長が発言しているように、効果的・効率的な職務遂行を図るのではなく、業績評価をするための目標設定と位置づけられることが危惧されます。
 当局の一方的な導入を許さず、区職労としての解明要求をまとめ職員の差別・選別の道具にされないよう働きかけていきます。

5.人事委員会勧告に向けたとりくみ
 今春闘の結果は、労働者へのしわ寄せがいっそう進行している状況となりました。私たちの人勧についても昨年に続きマイナス勧告が予想される厳しい状況となっています。
 特区連に結集し、署名活動や要請行動を積極的に展開します。

6.職場要求実現に向けたとりくみ
 職場環境がいっそう厳しくなる中で、職場のささやかな要求実現も困難になっています。今期は要求集約期間として全職場の職場懇談会をめざし、要求集約をすすめます。
 6月議会に提案されている本庁舎建て替えについては、説明を求め、職員の意向を反映するよう求めていきます。

7.平和と民主主義を守るとりくみ
 有事3法案が成立したと言っても、国民の多くはその実態を知っているわけではありません。私たち自治体職員も、実際に発動されたらどうなるのか知ることが重要です。そして有事法制を発動させないためのとりくみもすすめます。
(1) 有事法制について学習し、自治体職員にどう影響するのかを学習します。昼休みなどにミニ学習会を行ないます。
(2) 第12回千代田平和集会(7/24)に参加します。
(3) 「イラク支援法」の成立を阻止し、自衛隊海外派遣反対のための諸行動に参加していきます。
(4) 8月7日〜9日、長崎で行われる原水爆禁止世界大会に区職労の代表を派遣します。また核兵器の廃絶を求める署名行動や原爆パネル展、平和バザーなどを行います。
(5) 核兵器の廃絶めざすためにも、原爆症認定訴訟を支えるために裁判傍聴などの支援を行なっていきます。

8.組織強化のとりくみ
 職場の管理が強まり、一方で要求の実現が困難になる状況が続いています。これらを打開するためにも労働組合の団結をいっそう強めることが重要になっています。
 時間内組合活動を最大限有効に活用するよう各級機関に徹底するとともに、当局の解釈改悪を許さないように注意を払っていきます。
 情宣活動を強化します。5月に開設したホームページの積極的な利用を計ります。
 夏季闘争委員会(7月4/5日)を開催し、取り組みの総括と学習を行います。
 区職労団結まつり(7月10日)を開催し、組合員の交流を計ります。