2005年度区職労運動方針(一年間の取り組みプラン)
◆第2 組合員の生活を取り巻く情勢について

1、 組合員の生活と職場をめぐる状況
(1)04年区人勧・報告の主な内容と組合員の生活状況

給与改定・一時金改善の見送りに不満
 特別区人事委員会は、10月8日、公民格差について、平均82円(0.02%)とし、「職員給与と民間給与がほぼ均衡しているため、例月給与の改定を見送る」とし、一時金についても「民間の支給状況と概ね均衡」とし据え置きました。これは、5年連続の年収減を阻止したとはいえ、大都市東京の生活実態からはかけ離れた大変不満な「報告」といえます。特別区の民間企業の業績の回復傾向のなかでの給与・一時金の見送りや据え置きは認められるものではありません。人事院や都人事委員会の勧告も同様の内容であり、特別区人事委員会がこれらに意図的に追随したものであることは明白です。

将来不安から消費抑制強いられる
 今日、長期不況のなかにあって特別区に働く私たちの生活実態は、依然として厳しいものがあります。物価は安定しているものの、5年連続の賃金の減額と共済掛け金等の総報酬制への移行と毎年の掛け金増加、一時金の引き下げ、医療費3割負担による生活費への圧迫など、年金・医療保険制度等将来への不安感から消費の抑制を強いられています。

(2)現業系人事制度と清掃職員の勤務条件問題

 特区連と区長会が交渉を続けてきた現業系人事制度問題に、新たな動きが出てきています。これまで特区連は、特別区の事情・条件に合った人事任用給与制度を求めてきましたが、ここにきて区長会側は、2006年からの清掃職員区移管に際しての処遇問題との関係で、「同一職種・同一給料表適用を前提に区現業職員と清掃職員の給料表を一本化する。またこの一本化にあたっては、これまでの行(一)横引きを是正し、新に区業務職給料表を作成し適用する」と区長会と特区連との協議経過を無視した改悪案を提案してきました。
また、現業職員に対して、4層制の任用制度導入と給与制度見直しが提案されています。これらはいずれも現業職員の生涯賃金・賃金水準に関わる重大な問題になっています。

 清掃職場の勤務条件は、移管に際して「処遇の低下を招かない」との労使確認を区長が履行することは当然のことです。しかし、清掃職員の身分切り替えに関連して特別区現業職員の処遇水準を低下させることは許されず、三者による協議と合意による解決が強く求められます。

■4層制の現業系人事制度
現行の現業系人事制度の新たに4層制(技能主任、技能長、総括技能長)の任用制度を導入するというもの。少人数職場が多い特別区の現業職場にはなじまないものと反対してきたが、清掃職員の区完全移管などの状況変化もあり、組合側は受け入れることにしているが、区長会が組合側の要求に答えないばかりか、業務職給料表の改悪を提案しており、交渉が難航している。

(3)異常な職員差別化

 区は、「NPM行革」を進めるにあたって、それを遂行する人材づくりを進めています。
 「人事考課の強化・目標管理型自己申告制度の導入」、「昇任選考、昇給・昇格等の一層の競争・差別・選別強化」、「人事異動へのドラフト制導入」などを実施し、上に忠実な職員作りを徹底して行おうとしています。一部の職員を徹底して持ち上げる一方、普通に働いている職員、過重労働や人間関係で疾病を負った職員は徹底して排除する風潮が出てきていることは由々しき事態と言えます。
 職員には、退職不補充、新規不採用を宣言し、昇任・昇格・昇給、人事異動などを使って徹底した競争をあおるものとなっています。その例として最近見直しされた特別昇給制度は、6月短縮と12月短縮のみを導入し、毎年の昇給者をこれまでより絞り込むものとなりました。必然に、職員にじわじわとしわ寄せが及んでいます。

■NPM(新しい公共経営)
 New Public Managementのこと。新しい行政経営として、全国的に国の指導に基づき自治体に導入されてきている。この手法を使って「NPM型行革」が進められている。新自由主義的行政改革と同じで、公共業務について、民間でできるものはすべて民間に任せる考え方が基本にある。

■人事異動のドラフト制
 2004年4月の人事異動から導入。野球のドラフト制を模したもの。異動対象者名簿で密室のドラフト会議を行うものだが、詳細は明らかになっていない。運用基準を明らかにさせ、オープンなものにさせることが重要である。

(4)過重労働、コミュニケーション不足に陥っている職場実態

行政評価制度導入や新規事業など仕事量が相対的に増えてきているにも関わらず、職員数が減らされており、職場では負担が増えています。そこでは、賃金不払い残業があり、メンタルな病気を患う職員が増えてきています。職場では、精神的な負担を和らげるという雑談する余裕すらなくなってきている現状があります。
保育園などは、正規に変えて非常勤、臨時が増え園の運営が大変になっています。そうしたなかで、職員は賃金不払い残業が放置され、年休が取りにくい状況が続いています。
職場では、人員不足や業務量の増大で過重労働が日常化し、職員同士のコミュニケーションができにくくされてきている状況があります。
また、児童館や保育園などは民営化・民間委託の危機にさらされ、職場がなくなることへの職員の不安が高まっています。

(5)アンケートからみた職場と職員の実態

 2004年6月に行ったアンケートから、職場と職員の実態が浮かびあがってきます。
 アンケートの回答は、539人(組合員数の約58%)から寄せられました。
 通勤時間では、片道90分以上かかっている職員が11%もいます。往復3時間以上通勤に取られ、他の生活時間が減っている実態があります。これは、住宅事情などでやむなく遠距離通勤となっているもので、次世代育成の観点から、こうした職員への配慮が求められます。

 「家計の状態」について、「赤字が増えて苦しい」「やりくりに心配がある」とを合わせると約45%の職員が家計の苦しさを表明しています。この間のマイナス賃金が影響していると思われます。
 「経費がかさむもの」について、職員の負担が大きいのは、1位が住宅ローン・家賃、2位は、育児・教育費となっています。アンケートに答えた約2割の職員が、少子高齢化の中で問題にされている税金、社会保険料、医療費の負担感を感じています。また、住宅ローンについて、ほとんどの職員が負担を感じており、住居手当の改善が求められます。
こうしたなかで、区職員の平均賃上げ要求は、月33,000円となっており、切実さが出ています。

有給休暇取得日数について、0日から5日が約10%います。16日から20日が多数で平均すると取得日数は15日です。これまでと比べると取得日数は若干低下しています。これは、職場での人員不足、業務量の増で休みにくくなっていると思われます。
賃金不払い残業は、18%の職員があったと答えています。これは、重大な問題であり、放置できません。超過勤務で賃金が払われないことは違法であり、すぐに是正されなければなりません。アンケートによる賃金不払い残業の時間数の合計では3067.5時間もあります。職員一人平均では56時間の不払いがあります。
超過勤務時間数について、最大で年720時間行っている職員がいます。これは重大な問題で、是正されなければ過労死に至る危険性があるもので、区当局の対応が即求められます。

 職員の健康状態では、「治療中」が約17%もいます。また、約6割の職員が「治療中・通院中である」「健康に不安がある」と答えており、職場環境の改善、健康対策などが求められます。

区の新規採用抑制については、多数の職員が新規採用したほうがよいと答えています。区の新規採用抑制方針に従う意見は少数であり、今後の職員構成がいびつになる問題や職場の活性化が下がることから、方針を見直すべきです。
職員配置についても約47%の職場で職員数の不足を訴えています。この間の新規採用抑制と退職不補充が影響しているのは間違いありません。
係長層の生活環境パトロールについて、通常業務に支障あると答えているのは、約56%です。係長層の負担軽減が緊急の課題といえます。当面の措置として、係長層以外にも拡大する考え方もありますので、検討が求められます。

2、 「NPM行革」・「構造改革」路線を強化する千代田区政
(1)千代田区「NPM行革」の先鞭・・・「行革大綱」と「行革基本条例」

区長は2001年2月に就任して、まず、「基本構想」を改訂しました。この「基本構想」で「千代田市構想」を打ち出し、世間の耳目を集めることとなりました。また、「基本構想改訂」にあたって、それまで、区民、学識経験者も参加して討議・検討してきたそれまでの「基本構想改訂案」を抹殺したことは重大な問題です。
その後、矢継ぎ早に、「庁議」廃止、「政策会議」を発足させ、「都心再生の提言」(都心5区長連名)を発表するなど、トップ・パフォーマンスを演出しました。
「新基本構想」の内容は、まさに小泉流「構造改革」の都心版といっていいものであり、「NPM行革」の基本的な考え方が盛り込まれています。
こうして、「新基本構想」、「新基本計画」に基づき、「事業の推進プログラム」、「行財政構造改革推進大綱」(2002年4月)を決定しました。そして、「行政評価システム」を取り入れ、事務事業評価を行っています。こうした一連の行政方針を決めた中身がまさに、「NPM」(新しい公共経営)の手法を取り入れているものです。
さて、具体的にみてみると、「行革大綱」は「構造改革」と銘を打ってあるように、「民間でできるものはすべて民間で」、「コスト効率主義」、「小さな政府論に基づく人件費削減」の考え方が貫かれたものとなっています。さらに「行革大綱」の進行管理を行おうとして、他に例をみない「千代田区行革基本条例」を制定しています。
 具体的には、学校・保育園給食調理の民間委託、職員数削減、事務事業の見直し、使用料・手数料値上げ、利用者負担の導入をはじめとし、保育園・児童館の民営化・委託化、認証保育所の誘致、図書館の民間委託をすすめようとしています。3年連続の新規採用見送り、退職不補充、再雇用職員の雇い止めと雇用日数の削減などで、04年度予算で4億3000万の削減を見込む。行財政効率化全体で14億8292万の削減を見込んでいます。(16年度予算の3.3%に相当)

■千代田区行革基本条例
 経常収支比率を85%程度、人件費比率25%程度とすることを条例で決めて、「行革」の進行管理を行おうとするもの。

(2)「行革大綱」と「推進プログラム」の改定

民営化で区の役割は優秀な民間会社を探すことになる
 千代田区は、2004年9月24日、「千代田区行財政構造改革推進大綱改定案」を発表しました。あわせて、平成17年度から平成21年度までの主な事業の5ヶ年計画である「千代田区第三次長期総合計画・推進プログラム改定案」も発表しました。
発表された「改定行革大綱案」は、成果主義型人事管理の更なる徹底により、職員のやる気を引き出し、行財政運営面では、一層の経営的視点を前面に押し出し、新たに指定管理者制度などを使い事務事業のアウトソーシング(外部委託)を実施するとし、まさに国の進める「NPM行革」・「構造改革」路線を忠実に歩もうとしているものです。
さらに、人件費の削減、経費を削減しつつ住民サービスも充実させる最適な行政サービス提供方法の選択など、組織のスリム化や経営能力の向上等に関する取り組みを引き続き進めていくとし、一定の目標を定め、人員削減とコスト削減を中心に実施しようとしています。また、各年度における取り組みについてアクションプラン(17年度から21年度までの5か年計画)を作成するとしています。
区職労は、このような「改定行革大綱案」に対し、そのまま実施されるとなると、憲法や地方自治法などによって規定された自治体の公共性(自治体行政の存在理由)が無視され、区民サービスや職員の労働条件に大きな影響を与えることから、多くの点で認めがたいものがあると表明しています。特に、民営化などで職場(職種)そのものを奪われる職員がでることについて、絶対に認められるものではありません。
こうして、区の「市場化」を進めていくことは、区は優秀な民間企業を探し、区の業務を営利企業に委ねる手配師になることであり、果たして自治体の行政がそれでよいのか問われます。改めて住民の生活と権利を守るという自治体の役割を確認することを求め、そこに働く自治体労働者の役割を引き出してこそ、真の自治体のあるべき姿といえます。

■「改定行革大綱」に対する区職労見解
区職労が「改定行革大綱」に対する見解を発表し、ホームページでも公開している。 自治体の「市場化」をめざし、職員を競争選別する人事制度に反対している。

■自治体の公共性
 公共性とは、単純にいうと、自治体の各種業務がなぜ公共的なものとして自治体のなかにおかれなければならないのか、その根拠なり存在理由のことといえる。

推進プログラム改定の目玉は観光か
推進プログラムの改定では、新たに観光に力を入れるとしています。そして相変わらず新しい「まつり」(江戸天下祭り等)を行おうとしています。
また、6つの空いた公共用地の売却等に動き出そうとしていますが、地域の要望を取り入れた跡地計画が求められます。
7つの公共施設の整備を計画していますが、麹町保育園の計画などは民営化を打ち出しています。
さらに、引き続き市街地再開発事業など民間企業の開発への支援を行っています。そして、規制緩和などで大規模なビル建設が相次ぎ、事業者側の利益が優先され、これまでの住民が追い出され、街の生活環境が破壊されてきています。
教育では、キャリア教育をすすめ、中高一貫でエリート校づくり、民間企業が望む人材・リーダーを育てることをめざしています。この学校は、明大の斉藤教授がマネージメントすることになっていますが、すでに準備段階で子どもの人権を無視する発言が出て保護者から批判が出ています。考える教員と考える子どもをつくらない戦前の教育の方向に向かっているようです。
 区は「こども園」をつくったことを評価していますが、職場実態をみてみると、幼稚園教諭と保育士の賃金格差や施設が一体化となっていない問題や、一元化の中途半端があるなかでの運営の難しさが出てきています。職員配置も十分でなく、超過勤務も他園と比べ多くなっています。ところが、こうした問題点の検討もなく、「こども園」を富士見で拡大しようとしていることは、重大な問題です。

(3)事業部制の導入と様々な「NPM」手法の採用

事業部制は、1年間試行されましたが、導入の是非をめぐる議論はほとんどなされず、トップが導入を決定し有無を言わさず動き出したものです。
事業部制は、現行の職制を5つの事業部に編成し、各部長を最高責任者として、一定の予算執行や人事権限を持たせました。一定の予算枠を割り振り、具体的な使途を事業部に委ねる方法に変更したため、各事業部の業績を評価するシステムが作られることになりました。
2003年度からは、事業部のマネージメントを支える業績評価手法としてBSC(バランス・スコアカード)の導入を図っています。これも導入にあたっての組織的な検討などなくトップダウンで、持ち込まれているものです。
区長と事業部長および幹部職員が議論し課題と目標を決めることにはなっていますが、実態はそうきれいにいっていないようです。従って、当該事業部などはBSCをよく理解できないまま、流れ作業に乗っている情況があります。
このような手法の導入は、公共サービスの効率性を高め、活性化するという目的で、民間企業の経営手法を公共部門にそのまま適用しようという意図から出発しています。しかし、区民を「顧客」とみたて、公共サービスに「市場メカニズム」を活用し業績や成果のみを追求することが、果たして公共サービスのあり方として妥当なものと言えるでしょうか。
単純化した数値による目標管理やコスト偏重、主観的な行政価値をトップダウンで現場の職場や区民に押し付けることは、組織や区民生活を活性化するどころか、職場ではよくわからないままに仕事をさせられているという、退廃的な風潮を助長することにもなりかねないものといえます。

■BSC(バランス・スコアカード)
 各事業部の執行の視点を「顧客(住民サービス)」、「財務」、「業務プロセス」、「学習と成長(職員研修)」の4つに大別し、それぞれの目標と指標を定め、「実績」、「評価」、「得点」で達成度評価をするものである。

(4)「NPM行革」と区政変質のねらい

都心の都市再生で千代田区の居住環境の破壊進む
「NPM行革」の手法を使い、区政をどう変質させていくのかというねらいは、石川区政3年間をみると概ね明らかになってきています。
まず、区政発足当初、「政策会議」なるものを立ち上げ、区政の方向づけを行っています。その会議のメンバーは、区民を若干入れたものの、ゼネコンの役員を入れ、取りまとめ役に石原信雄氏(元官房副長官)を起用し、その会議を区長サイドの考えにリードしました。
その一端を紹介すると、千代田区をどう変えようとしているのかわかります。
「千代田区というのは、国会もあり、皇居もあり、各民間企業の本社もあり、政府もあり、国家の中枢が集まっている。東京タワーはありますけど、どうでしょうか、日本のシンボル的な、ものすごい大きな超高層みたいな、例えば、台湾では500bを超えるビルができた。逆にここへものすごい超高層みたいなのをつくって、逆に周りを全部森にしちゃう。・・・・」と前田建設会長が住民の視点を度外視した開発者の視点での発言を行っています。今まさに千代田の街は激しく開発やビル建設が行われ、環境が著しく変化し、特に居住環境が悪化してきています。
14年度からの5年間の「事業の推進プログラム」では、民間施行の市街地再開発事業に約290億円も出すことにしています。区内に今までほとんどなかった100m級の超高層ビルが50棟以上も出現してきています。
 また、汐留開発や秋葉原開発の就業者を神田で受け入れる考えが示されたことにより、猛烈なワンルームマンション開発が神田を襲い、街とコミュニティそのものを壊しています。
こうして「区政転換」の動きは、小泉内閣の「都市再生」や石原都政の「メガロポリス構想」による事業推進によっていっそう促進されてきているといえます。
まさに、民間でできる事業はほとんど委託し、もうけの対象とし、民間企業ができるだけ活動しやすいように補助金を出し、行政を大企業本位に変えていくことであるといえます。
区政は、区民を「顧客」にたとえ、行政サービスを行うといっていますが、実は自助努力を説き、行政の役割を縮小してきているといえます。

住民監視社会の危険性
路上喫煙取締まりのやり方には未だ議論がありますが、区は、生活環境条例に基づき、路上喫煙の取締まりパトロールを強化し、それに職員がかりだされています。また、治安が悪いとの理由で、安全・安心のまちづくりを進め、監視カメラを取り付ける、不審者発見ネットワークづくりをする、子どもの非行防止と称して監視するシステムづくりなど、住民を常に監視する社会にしようとする動きがあります。これらのことが、行き過ぎると戦前の暗黒監視社会になりかねないもので要注意です。

■千代田区「政策会議」
創造性溢れる積極的な区政運営を推進するため、区長の政策形成を支援し、意思決定を補佐するというもの。構成は、20人。そのうち、企業会長など有力財界人は5人いるが、区民代表はわずか2人である。区長の考えに賛同する人々の集まりといわれている。

(5)2005年2月6日には、千代田区長選挙があります。実績を強調する石川区政ですが、住民や職員との溝はできつつあることは、職場実態や住民の置かれている情況、街の変貌ぶりをみるとまちがいありません。こうしたなかで、現区政に反対する動きの幅広い結集が急速に求められます。

3、 憲法否定、福祉切り捨て、人権無視の石原都政都政
 石原氏は、圧倒的な得票を得て知事になりましたが、彼の進める都政は、憲法を否定し、福祉を目の敵として切り捨て、人権を無視して進められています。
 特に、福祉では、医療費助成・寝たきり手当廃止、特養老人ホーム、保育、国保補助金の530億円を削減しています。また、母子保健院、青年の家、労政事務所などの都立施設100以上を廃止しています。
 都市再生では、国の先頭に立ち、多国籍企業の活動しやすい都市に作り変えるために超高層ビル建設と大型幹線道路建設を推進しています。
 教育現場では、教員や生徒に日の丸・君が代を強制し、従わない教員を処分しており、憲法の思想・信条の自由を踏みにじっています。
 こうした都政は、都民や職員の犠牲を強いるもので、2005年6月の都議会選挙及び次期の都知事選挙での都政の転換が求められます。

■都市再生
 石原都政の都市再生は、メガロポリス構想で、東京圏全体に視野を広げ、業務機能にとどまらず、居住、産業、物流、防災などの広域行政の課題をしている。センターコア・エリアからの分散ではなく、都心と他のエリア、あるいは副都心とのネットワーク形成によって、このエリアを国際ビジネスが育つ環境にしようというのがねらいである。
 小泉内閣では、骨太方針で、国と地方が一体となった21世紀プロジェクトを積極的に推進するために、内閣のもとに「都市再生本部」が設置され、国際競争力のある大都市圏の再生をめざすとしている。

4、 小泉内閣の下で強引にすすめられる「構造改革」・「自治体 再編」
(1)「構造改革」はグローバル化した大企業に奉仕するもの

 「構造改革」は、グローバル化した大企業に奉仕するための「改革」であり、戦後憲法のもとで作りあげてきた福祉などの諸制度の破壊です。そこを貫いているのは際限のない競争社会、差別化・競争化の社会、ルールなき社会づくりです。それは、年金や医療制度の連続改悪に見られるような社会保障分野の切捨てと大銀行などへの公的資金の注入などの施策として表れています。
 もうひとつは「郵政公社民営化」「市場化テスト制度」にみられるグローバル企業が勝ちぬき、もうけをさらに増やすための「改革」です。
 「郵政公社の民営化」は、朝日新聞の調査ではわずか2%の関心・要求でしかありません。地方でも反対が進んでいる中、小泉首相は、350兆円の国民の財産を市場経済にはき出させようと強引に進めているものです。

 「自治体再編」も、三位一体の改革という財政面からの「改革」と、市長村合併から都道府県合併・道州制、そして「自由度の拡大」という規制緩和と、指定管理者制度などのリストラのツールが一体となって、本来「住民福祉の増進」のためにある自治体と自治体労働者のあり方を根本的に変えるものとなっています。
 そして、こうした「改革」をさらに押しすすめるために、国民の意識の改革をすすめ、新しい階層型の社会が目指されています。「勝ち組・負け組」を峻別し、金持ち、強い者を優遇し、弱者には力=治安対策で対処するという新自由主義に基づくアメリカ型の社会づくりが進められています。

■構造改革
 構造改革とは、新自由主義的改革ということ。たくさんの負担や規制にがんじがらめにされていると企業の活力が回復しないために経済不況も回復できないから、負担や規制を取り払い、企業の「自由」を回復することによって経済を回復させようとするもの。企業の自由勝手な活動は、個人の幸福を実現するどころか社会に深刻な問題を発生させるということで、これまで負担や規制を行ってきた経過がある。

■市場化テスト
 「市場化テスト」とは、行政が提供するサービスのコストや質を民間事業者との競争入札で比較し、官より民がすぐれていれば民間へ業務を移管する手法とされている。
民間との比較をコスト中心で行うことがめざされ、質を比較するといってもあいまいなものとなっている。「市場化テスト」の結果は、コストを安くできる民間事業者に軍配があがるのは目に見えている。

■指定管理者制度
 地方自治法第244条の「改正」が行われて導入されたものです。これまで、公の施設の管理委託は、公共団体、公共的団体、第三セクターに限定されていましたが、営利企業でも管理委託が可能となりました。

(2)切り捨てられる社会保障と消費税増税

 自民・公明両党が強行した「改悪年金法」によって、厚生年金保険料が04年10月から引き上げられました。国民年金は05年4月からになり、2017年まで14年間もの間、国会の審議もなく保険料引き上げは連続します。共済年金も10月から掛け金が引き上げられ、今後5年ごとに見直され引き上げられます。このまま掛け金の引き上げを10年以上も許すことなく、労働者の側に立った改革を求めていくことが求められています。
 小泉内閣は05年には介護保険に手をつけ、06年は医療制度を改悪するスケジュールをねらっています。介護保険は制度発足5年目の定期見直しですが、軽介護度のサービス利用の制限、入所施設利用者からの「ホテルコスト」徴収、保険料の引き上げと納入義務者の拡大(20歳以上)、障害者支援費支給制度との統合など、より一層利用を抑制し、国民負担を求める改悪が計画されています。
 また、07年の消費税増税に向けた議論が始まっています。04年9月の税制調査会は、日本経団連など大企業の要請にこたえて、一層の庶民増税の方向を打ち出しました。来年以降5年間で80兆円の大増税計画を協議しています。その柱は、99年から実施されてきた定率減税の廃止と消費税増税です。定率減税の廃止で総額15兆3000億円の負担増、消費税は、5%アップで12兆5000億円の増税で、09年までの5年間では62兆5000億円もの大増税となるものです。

■定率減税
 所得税と個人住民税の税額の一定割合を差し引く減税。所得税額の20%(最大25万円)、個人住民税額の15%(最大4万円)を控除するもの。

(3)「構造改革」がもたらした雇用問題

 今年9月の月例経済も日銀短観も、日本経済の改善は見込まれるものの、先行きの不安定さを指摘しています。そして、完全失業者は314万人と前年同月に比べると19万人減少し、15ヵ月連続の減少となっています。改善基調とはいえ、25歳未満の完全失業率が9.6%と依然高水準を保っており、厳しい雇用状況は続いています。
 このような状況下、きちんと働いているけれども、生活保護水準以下の生活しかできない人たち=「ワーキング・プア」の増大が問題化してきています。この結果、全労働者の賃金水準全体が大きく引き下げられやすくなるとともに、社会保障制度全体が「抜けた底」に向かって崩れ落ちていきます。こうした事態は、「日本型雇用」解体と賃金水準破壊が大規模に進んだ結果です。この5年間に正規職員が400万人削減され、年収が300万円以下のパート・臨時・非常勤などの非正規労働者は1,200万人を超え、就業者全体の30%に達しています。
学生の状況は、仕送り減で採用される気がしないという就職難です。働く青年もものすごい超過勤務とサービス残業を強いられています。先行き不安で将来に展望がもてなく、就職活動をしないニートが新たに生まれ、社会不安の材料になっています。

■ニート
 ニートとは求職も通学もしない若者のこと。今、52万人、あと10年で109万人になると予測される。有名大学を出て就職活動をしたが、ことごとく駄目で、変なプライドでフリーターにもなれないのが特徴である。働きたいけど就職ができにくい社会経済状況の反映がある。ニートの増加は、経済成長率の抑制要因になるといわれる。

(4)「構造改革」がもたらした自治体職場の激変

 公務員制度改革で「住民全体の奉仕者」を否定し、権力者に忠実な公務員作りが進められる一方、企業やNPOを行政パートナーとして位置づけ、自治体職員を減らし、市民を有償ボランティアとして自治体業務を担わせる動きが急速に強まっています。
 同時に、住民を自治の主体としてではなく「顧客」としてとらえ、行政内部に民間企業の経営手法を導入する、「二ュ−・パブリック・マネ−ジメント」(NPM)が広がり、職員の意識改革、業績評価やマニュアル化がすすんでいます。
 こうした事態は職員の仕事の進め方や思想にも深く関わってきています。民営化攻撃の中で自らの存在を否定され続ける中で、仕事に確信が持てない職員が増える一方で、「弱者」の立場や住民、地域の実情をもとに仕事をするよりも、政府政策の動向や民間経営的な視点から考え、住民生活に密着する現場部門を軽視し、サ−ビスをコストだけで考える職員づくりが急速にすすめられています。
 一方、三位一体の改革の名の下ですすむ地方交付税の削減などによって、自治体では「予算さえ組めない」として職員の賃金カットと住民サービス削減と住民の負担増が顕著になっています。
 また、有事法制・国民保護法制との関係で、行政内部に現職の自衛官が配置され、防災システムが危機管理・テロ、有事システムの一環として計画されていることも見逃せません。

■三位一体の改革
国から地方への国庫補助負担金と地方交付税交付金の削減を先行させ、財源移譲を地方自治体にするもの。財源移譲が少ないので、地方自治体は、いっそうの財政危機が深まってきている。
 政府・与党は11月26日、「三位一体改革の全体像」を発表し、「地方の権限拡大」の名で、福祉・教育などに対する国の責任を後退させ、地方財政の削減を進めることを決定した。自治体が本来果たすべき住民福祉の増進の仕事を困難にするものである。

■公務員制度改革
 国が進める公務員制度改革は、労働基本権についてはふれず、能力業績主義による人事管理強化と再就職管理の適正化と称する高級官僚の天下りを温存をねらうものとなっている。憲法に基づく「住民全体の奉仕者」として、職務遂行上の権利保障をし、職員が主人公の民主的公務員制度の確立が求められる。

5、 憲法9条を改悪し、「軍事大国化」へ突き進む日本
 イラク戦争は「国連憲章に反する」とアナン事務総長が明言しました。小泉首相が非戦闘地域と言ってサマワにロケット弾が打ち込まれました。アメリカ軍は、ファルージャを総攻撃し、モスク、病院を破壊し、罪のない住民を殺害しています。小泉首相は、自衛隊派遣地について根拠なく非戦闘地域と言いはっていますが、首相の詭弁が通じる国にさせてはならず、自衛隊の早期撤退を要求していくことが、憲法を守る上で重要です。
 沖縄ではイラクへの出撃訓練をしていた「米軍ヘリ」が墜落し、日米安保は国民を守るものではないことが改めて浮き彫りになり、沖縄の世論の8割は基地の完全撤去を求めています。しかし、米軍の都合による基地再編、基地の固定化が行われようとしています。
 世界に目を向ければアメリカや小泉内閣のすすめるグローバル企業の利益を最優先にした政治は少数派です。世界の流れは反グローバリズムであり、国連憲章と日本国憲法9条の理念を生かした新しい秩序が求められています。
 小泉内閣は、「違法」とされるイラク戦争に加担し、自衛隊の多国籍軍への参加にまで踏み出しました。またそのことを成果として誇示し、小泉首相は日本の国連常任理事国入りを訴えました。しかし、日本がイラク・アフガニスタン両国でやってきたのは、「地球規模の日米同盟」であり、国際法秩序を破壊するアメリカに何でも賛成の日本を常任理事国にすれば米国に二議席を与えるようなものだという見方はほぼ常識化しています。
 憲法改正に賛成する若者などが増えてきている状況の中で、いよいよ「改憲」が政治課題となり、2007年に想定される衆議院選挙と参議院選挙に併せて憲法改正の国民投票を行うという政治日程が具体的に語られています。自民党は今年6月「論点整理(案)」を発表し、憲法の平和・民主の原則を公然と否定する立場を明らかにし、海外での集団的自衛権の行使に道を開こうとしています。そして、来年の通常国会に憲法「改正」の手続きを定める「国会法改正案」の上程を決めています。また、自民党の「憲法改正国民投票法案」では、改憲に反対する国民の運動に制限を加え、特に公務員の運動参加を禁止するなど公務員の憲法遵守義務をも否定する内容が盛り込まれています。
 こうしたきな臭い流れを押しとどめようと、井上ひさし氏、大江健三郎氏など九人が「9条の会」をつくり、全国で憲法9条を守る運動を呼びかけています。
 2004年に成立した有事関連7法は、「武力攻撃」に加え「大規模テロ」まで発動の範囲を拡大しました。とりわけ国民保護法は、政府の「基本指針」に基いて、都道府県・市町村に対し地域住民の避難・誘導などに関する「国民保護計画」を義務づけるなど、戦争にかかわる業務の一部を自治体に日常的に担わす法制であり、地方自治の根幹に関わる大問題となっています。
 拉致問題や核兵器問題などを抱える北朝鮮への対応も、北東アジアの平和にとって重要であり、慎重に話し合い・外交努力の中で解決することが求められています。

■「9条の会」
 井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子の9氏が呼びかけ人となって発足したもの。文字通り憲法9条を守り、世界の普及するために、講演会など活動を行っている。この「9条の会」の刺激を受けて、全国各地で「9条の会」が生まれている。