2007年度区職労運動方針
2006年12月5日
千代田区職労定期大会決定

「総人件費削減・給与構造見直し」攻撃、成果主義型人事管理と公共性無視・住民サービス低下の民営化などの千代田区の「構造改革」路線に反対し、職員と住民の生活を守るための自治体を求め、自治体労働者の役割を発揮していこう
憲法9条を守り、戦争する国にさせない運動をすすめよう

目次
はじめに
T、私たちを取り巻く情勢の変化
  1、公務員に厳しい風が吹き続く
2、なぜ、いま改憲なのか
3、「自治体構造改革」で強まる住民生活破壊
4、労働組合運動にも変化の流れ
5、私たちの賃金をめぐる状況
6、「NPM行革・構造改革」を進める千代田区政
7、千代田区職員の状況
U、主な課題についての取り組みの基本方針
1、組合員の生活と権利を守る取り組み
2、憲法9条堅持、平和と民主主義を守り、労働法制改悪反対の取り組み
3、労働時間短縮、休暇獲得、次世代育成支援等の前進めざす
4、職場要求の前進めざす
5、成果主義型の人事管理強化に反対し、職場の民主化をすすめる
6、職員の健康を守り、職場環境の安全確保と働きやすい職場めざして
7、民間委託・民営化、人員削減などの「NPM行革・構造改革」路線に反対し、
  職場と地方自治を守り、住民本位の区政をめざして
8、区政政策と予算編成に関わって
9、要求前進につながる自治研究活動を
10、災害から区民と職員のいのちと健康を守り、安全を確保する
11、社会保障制度改善など、制度・政策要求の前進めざして
12、政治革新を求める
13、環境保全、食の安全確保
14、一致する要求に基づく労働者の共同闘争と連帯・支援

V、組織建設について
1、区職労の組織を強化する
2、組合活動の規制、介入を許さない
3、組織=上部団体の選択問題について
4、文化・スポーツ活動への支援
5、共済制度など、組合員の生活を支援する
6、区職労組織財政検討委員会の設置

はじめに

2007年度区職労運動方針は、これまでの方針記述の慣例とは異なり、@私たちを取り巻く身近な情勢を明らかにし、A要求の内容と運動の意義(要求政策)、Bどのように運動を進めるか(組織政策)の3点で記述し、全体として向こう一年間の基本方針を提起します。したがって、従来のような総合的な方針案とはしませんでした。
具体的な行動、取り組み方針は、春闘方針(1月から5月)、夏・秋季闘争方針(6月から10月)、確定闘争・大会成功に向けた方針(11月、12月)で明らかにします。

労働組合は、組合員の要求を解決するために活動する団体です。ここに示す方針は、その要求を達成するための具体策を示し、組合員の団結を強め、運動をすすめる上での羅針盤とします。

T、私たちを取り巻く情勢の変化

私たちを取り巻く情勢が大きく変化しています。この一年間の区職労運動の基本方向を考える上では、私たちを取り巻く情勢をどういう観点で捕らえるかが重要です。
私たちの要求の生まれてくる背景にある政府・財界、支配者層と我々との関係がどういう状況にあるのか、支配者層のどうこうがどうなっているか、その上で区職労がどういう方向で進んだらいいのかを明らかにします。
現行の憲法、教育基本法を改悪して戦争できる国づくりを進めながら、国民に耐え難い犠牲を強いている厳しい状況の中にも、それに反撃する国民の運動もつくられつつあります。
情勢が厳しくなればなるほど、それを変革していくエネルギーや条件も成熟していくというところに、労働組合運動の展望があります。
「情勢」をこうした二つの側面から見て、「情勢」は不変ではないこと、「変革」の立場でとらえて、取り組みを進めていきましょう。

1、 公務員に厳しい風が吹き続く
今、大企業は正社員を派遣や請負、パート・アルバイトなどの非正規雇用へと置き換え、ワーキングプアーを前提に、法律違反をしてまでも会社経営を行っています。労働者の3人に1人、若者や女性の2人に1人は不安定雇用となり、生活できない低賃金・無権利状態に置かれています。非正規労働者の8割近くが年収150万円以下で、05年で正規社員の賃金の64%にとどまっています。
全国の労働者の賃金は、この間マイナスとなっており、民間労働者の状態は全体として、長時間・過重労働などとも相まって大きく悪化しています。
しかし、景気が大企業を中心に回復する中、一部の高額所得者が生まれて所得格差が広がっています。
そうした状況の中で、公務員労働者の賃金・労働条件は、民間に比べてよいものと見なされ、公務員賃金が高いと政府・国をあげての攻撃があります。
今や公務員の平均年収は、上位に位置づけられ、非正規労働者との格差が広げられています。
国は、相変わらず大きな借金を抱え、財政危機になっています。
福岡市職員の飲酒運転・ひき逃げ事件、岐阜県庁の裏金事件など公務員の側にも付け入られるすきをつくっています。
こうしたことが、公務員攻撃のもとになっており、引き続き、公務員に厳しい風が吹いています。
国は、公務員の数を大幅に減らし、「総人件費削減」を行い、それを地方自治体にも押し付けています。さらに、消費税増税や社会保障費削減など国民にしわ寄せをするために、公務員に攻撃をかけて国民と公務員の分断を図っています。
職員の中に、こうした国の意図を明らかにして、怒りを呼び起こし、取り組んでいくことが求められます。

2、 なぜ、いま改憲なのか
鷹のつめを隠した安倍内閣
今、鷹のつめを隠した安倍内閣は、憲法改悪をねらい、国民投票法案や愛国心をもたせようとして教育基本法改悪案を国会で通そうとしています。安倍首相は、自分の任期中に憲法を「改正」すると名言しました。戦後の歴代首相では初めてであり、いよいよ本格的な国家総動員体制づくりに足を踏み出そうとしています。
憲法改悪の中心的なねらいは、「海外でも戦争する日本」をつくることにあります。
自民党の改憲案にみられるように、改憲の中心は憲法9条の改悪にあります。アメリカが地球的規模で引き起こす無法な戦争に日本が参加できるように、その最大の障害となっている憲法9条を取り除き、自衛隊の海外派兵、武力行使に道を開き、戦争に国民を総動員する「戦争する国」をつくることにあります。
もう一つの狙いは、多国籍企業化した日本の大企業がよりいっそう収益をあげていく国家体制をつくりあげようとしていくことにあります。そのために、憲法の生存権、社会保障の権利、労働基本権、教育を受ける権利などがじゃまになってきているのです。「構造改革」をさらに進めていくために、「弱肉強食」、「格差社会」が進行しており、この流れの転換が強く求められます。

憲法改悪を進めようとする勢力は、北朝鮮のミサイル発射問題や核実験問題を利用して、北朝鮮が攻撃してくると脅威をあおり、核武装論まで言い出しています。北朝鮮には、日本侵攻などができる軍事力がないというのが、専門家の間や国際社会では常識です。しかし、今、核兵器を作ろうとしていることは東アジア、日本の平和の危機となりますので、国際社会が一致して外交的解決をめざすことが一番よいと考えます。

労働組合が平和と民主主義の課題を取り組むのには、大切な理由があります。それは、労働者の生活を根底から破壊する戦争を、憲法に基づき国家にさせないということ、労働者の生活を圧迫する民主主義の破壊をさせないことにあります。
このことは、日本が侵略戦争を行い、国民とアジアの人々を苦難に陥れたとき、労働組は解散させられ、戦争に協力した反省から出ているものです。
私たちは、戦争の反省に立ってつくられた憲法9条を何としても守らなければならないと考えます。しかし、組合員の間には、戦後60年以上立って、戦争の悲惨さやその上に立ってできた憲法の意義が十分理解されていない状況もあります。
区職労は、そうした組合員とよく話し合うなど、相互理解していくよう努めなければならないと考えます。

3、 「自治体構造改革」で強まる住民生活破壊
国は、2011年の国と地方のプライマリーバランスを黒字にすることを掲げ、歳入・歳出一体化による地方交付税の大幅削減、公務員の人件費大幅削減、福祉・教育・社会保障も切り捨て、消費税の大幅増税などを打ち出しています。社会保障で1.6兆円、公務員人件費で2.6兆円も減らすとしています。国家・地方公務員を5年間で5.7%も削減するとしています。
また、「自己責任」、「自己決定」、「受益者負担」、「応益負担」などの考え方により、さらなる住民の負担を増やそうとしています。
市場化テストなどで新たな地方行革を進めようとしており、「自治体構造改革」は、新たな段階を迎えているといえます。
こうしたことが実行されていけば、地方自治体と住民の生活の破壊につながります。
地方交付税や総人件費削減、社会保障費削減を止めさせ、地域経済を振興させ、地方財政の確保を求めていくことがとても重要です。

区市町村でも学校給食調理、図書館、保育園、児童館、区市民施設など、指定管理者制度による民間委託、民営化が進められ、国の圧力を受けて職員削減が急速に進められています。市場化テストで戸籍などの窓口業務を民間開放し、プライバシー侵害問題などを引き起こそうとしています。
しかし、民営化を提案された保育園では、保育の質の低下を心配する父母と保育労働者が共同して民営化反対のたたかいが広がり、凍結や延期する自治体も出てきています。
こうした公的責任を放棄する動きに対して、住民に行政の実態を知らせ、そのことで住民が怒り、それを組織することが自治体労働組合には重要となっています。住民が主人公となる運動こそが反撃の主体でり、自治体労働組合が住民と共同することが、公務員攻撃を地域から止めさせることにつながるものといえます。

4、 労働組合運動にも変化の流れ
労働組合の組織率は、企業の非正規化が急速に進む中、相変わらず低下しています。とりわけ、青年組合員が減っていて、「人が集まらない」「元気がでない」「役員のなり手がない」という状況は、民間も公務労働組合も同じ状況です。要求がなかなか実現せず、権利が後退させられているのも実状です。
そういう中で、「組合の運動方針は押し付けではないか」、「なぜ、労働組合が平和運動を取り組まなければならないのか」、「組合は、自分勝手に権利を主張している」、「役員は大変そう、できるだけかかわりたくない」などの意見があり、労働組合の役割が見えにくくなっていて、組合員のなかで沈殿しています。
また、「職場はそれどころではない」、「自分のことで精一杯、他人のことなんかかまっていられない」、「どうせやられてしまうんだろう、がんばっても仕方がない」とあきらめさせられています。
労働組合は、この「あきらめ」政策とのたたかいが必要です。表面的な現象に振り回されることなく、現実をありのままに、本質からとらえてこそ、「自分は自分でいいのだ」という自己肯定感が生まれます。そして、仲間を信頼できるようになり、社会発展への確信をもつことができるようになります。そうなれば、労働組合の必要性が見えてくると思います。

全国的な労働運動は、大企業組合中心の「連合」運動で目立たないものとなっていますが、地域労働運動などに刺激を受け、虐げられてきた労働者がめざめて、不払い残業代を払わせる運動、偽装請負告発の運動で正規雇用を勝ち取ることなどの運動が前進しています。また、成果主義の現場支配に対して、成果主義賃金の問題点を明らかにして、見直しをさせています。自治体労働組合のなかでも保育園の民営化に反対し、住民と共同し、提案の撤回や延期をさせています。
そうした中で、職場では「自分たちの権利」について主張し始め、そうした声を取り上げていく労働組合運動の新しい流れが出てきており、その点で財界による労働者支配が揺らいできているといえます。まさにワーキングプアー数百万人の怒りが主張となれば、労働運動の大きな転換になると考えられます。
これからの労働組合運動は、雇用形態の枠を超えて連帯していくことが必要となっています。
民間労働者の賃金・労働条件は、私たち公務員労働者に大きな影響を与えます。民間労働組合と共闘した取り組みを主に地域を中心に取り組んでいくことが重要となっています。

5、 私たちの賃金をめぐる状況
企業規模を変えて公務員賃金水準引き下げ
特別区人事委員会は、今年の勧告で従来の公民較差の比較対象企業規模が「100人以上」ならば、月例給で2189円(0.5%)、一時金で0.05月プラスの公民較差があったといいます。ところが、企業規模を「50人以上」に変更したため、この数字よりも3977円も減額となり、1788円のマイナス勧告、一時金は据え置きとなりました。今回の調査データには、新たに調査対象企業になった「50人以上100人未満」の企業の割合はたった5%にすぎません。わずか5%でなぜ、3977円も減額になり、一時金が据え置かれるのか大きな疑問です。
今回の調査方式の変更は、国の総人件費削減の一つとして、「骨太方針2006年」に基づき比較対象企業規模を見直すことになったものです。そして、人事院が地方の人事委員会に圧力を加えてきたものです。その圧力に屈し、第三者機関としての役割を特別区人事委員会が放棄し、政治的勧告を行ったものです。
公務員労働者にとっては、労働基本権が奪われているもとで、不利なかたちで政治的勧告が行われることは、権利侵害といえるものです。したがって、人事委員会の存在そのものを強く問い続けることが重要となっています。

本給切り下げにつながる地域手当の本格導入
今回の勧告では、地域手当の本格導入があります。地域手当は、従来の調整手当を変更し、昨年、国が導入したもので、全国にいる国家公務員の賃金を平均4.8%削減し、地域の民間の賃金水準に応じて3%から18%の6段階の地域手当を支給するものです。特別区は、実態に合わないものとして、昨年は、調整手当から地域手当の名称切り替えだけで済ませました。しかし、今年の勧告では、13%にして、その分本給を1%切り下げました。2010年までに18%にして、本給も5%程度引き下げるというものです。これは、直接、退職手当と年金の減額に影響する大問題です。
 東京23区職員の場合、国と違い、そのほとんどが首都圏に生活しており、地域手当の意味がないものです。従って、組合は、本給へ繰り入れるよう毎年要求しています。このような合理性のない手当を区職員に押しつける人事委員会はまさに、国・人事院に追随しているもので、自主性がないものといえます。引き続き、不合理な賃金制度の是正を要求し改善をめざして行くことが重要です。

中高年層の賃金水準の抑制をねらう賃金カーブのフラット化
 本給の切り下げと公民較差のマイナス勧告と合わせて、本給が切り下げられました。しかし、「賃金カーブのフラット化」によって若年層は、切り下げ率は低く抑えられています。が、中高年層は、最高1.7%と切り下げ幅が大きくなっています。国の切り下げ幅は、7%にも達しました。今後、地域手当の見直しによる本給切り下げが行われるならば、引き続き、中高年層の切り下げが比較的大きなものとして続くことになります。
 行政のなかで、経験を発揮し、仕事をリードしている中高年層は、この賃金水準引き下げと特別昇格制度の廃止などと合わせて、大きな影響を受けるもので、モチベーションの低下につながらないよう賃金・任用制度の改善を求めていくことが必要です。

特別昇格廃止に伴う人事任用制度の抜本的改善をためらう区長会
 06賃金確定闘争では、行政系人事任用制度の見直しが重要課題となっています。05賃金確定交渉で、特別昇格制度が廃止になる前提として、行政系人事任用制度の改正を行うことで合意しているものです。
 ところが、区長会は、昇任選考資格基準を見直すのみの提案を行っています。係長選考などの改善が必須となっています。

管理職優遇の退職手当に改悪
 退職手当制度について、地域手当の支給割合の変更に伴い、構造面の見直しを図る必要があるということで見直されました。新たな退職手当制度は、期穂額と職員の職責や貢献度に応じた調整額とすることで管理職優遇となるものです。これは、国が基本給を引き下げたことによって退職手当を見直したものとほぼ同じ内容となるものですが、支給率の変更は伴わないものです。
「職務・職責に応じた貢献度で支給額を決める」とされていますが、今でも退職日の給料月額で大きな差がついており、退職手当は職務・職責によって現行制度でも差がつけられています。これ以上の差の拡大は認められない、現業差別であると反対をしましたが、経過措置の設定、昇給抑制の改善をさせたのみで妥結を余儀なくされました。今後も、支給率の改悪を許さず、現業職の改善を求めて行くことが必要となっています。

一時金の加算措置問題
 06賃金確定闘争では、一時金の加算措置が大きな課題となりました。区長会は、期待の強かった係長を7%にアップさせましたが、級格付者の引き下げ、引きはがしを提案するなど、役職加算に特化する提案を行ってきました。組合側は、現業差別であると強く反発し、最後まで粘りましたが、経過措置を2年間延ばすことのみにとどまりました。
 一時金の加算措置は、公民の比較ベースが違うことの解消を図る意味で導入された経過があります。このことをあいまいにさせず、引き続き、一時金の加算措置の改善が求められます。

6、 「NPM行革・構造改革」を進める千代田区政
与党からも「官」から「民」への疑問出る
 国の方向に沿って「官」から「民」へ、「NPM行革・構造改革」を進めている区政に対して、与党からも千代田荘の全面民間委託の問題点などを指摘し、民間委託に対する慰問が出されています。
 千代田区は、区内民間企業に対し、次世代育成支援を求めていますが、肝心な私たちの職場での取り組みは、真剣に次世代育成支援をする気がないのではと考えられます。区職労が、次世代育成支援のための休暇要求を出しても答えない、また、育児休業のための代替措置を相変わらず、不安定雇用労働者で対応し、育児休業のための任期付き職員を金がかかるという理由で採用していません。
区民の求める子ども医療費無料化の問題では、その方向で対応せず、次世代育成手当なるもので対応しましたが、いよいよ23区のなかで千代田だけ未実施となりました。
一方で、江戸天下まつりなどのイベントには、この5年間で約5億4千万円も使っています。また、区民施策を削るなかで区の積立金は、約500億円にもなっています。
格差社会になるなかで、区民の住宅要望が強まっていますが、民間の住宅供給に任せるだけでなく、開発協力金を使って区民要望に応えることが求められます。
街づくりについては、開発事業者の勝手が横行し、大規模建築物が増えてきて、居住環境は悪化し、千代田を離れざるを得ない区民が出ています。地区計画などの施策で何とか居住環境を守ろうとしていますが、建築基準の緩和などの影響もあり、地域のトラブルも起きています。

民間委託などで職員が大幅に減少し業務に不安
千代田区は、職員1000人体制をめざしています。他自治体と比べ、人口に対する職員数比率が多いというが理由です。また、住民に職員を減らすといえば一般的に受けがいいことも反映しているようです。
ところが、職員を減らされている現場は大変です。特にマンパワーが必要な保育園、児童館、福祉職場では、非常勤職員など不安定雇用労働者が増え、職場の運営に不安を感じています。「いつ子どもの事故が起こりはしないか」と心配しています。
職場において適正な職員数を下回ることや民間に公共性のある事業が移ることになれば、住民へのサービス低下は必至です。また、職員数が減らされることにより、残された職員に過重労働がのしかかり、その結果、近年メンタルな病気にかかる職員が非常に多くなっています。
建築確認行政の民間委託で耐震偽装などの大問題が起りましたが、公共性のある仕事は公務員が行い、責任を負うことが大事となっています。そして、その仕事を保障するための人員を確保することが、住民サービスを確保する上で非常に大事であり、その職員の権利も確保することといえます。

正論を言う組合を敵視
組合活動の制限を目論む

これまでは、交渉やそれに不可欠な機関運営について、勤務時間内に組合活動が認められていましたが、国をあげての公務員攻撃のなかで、千代田区もいち早く、組合の勤務時間内の活動を交渉のみに制限してきました。無給による組合休暇を認めてはいるものの、組合活動を制限しようとする意図がみえています。
区職労は、正論を言う組合に対する圧力の一環としてとらえ、これに反発し、受け入れていません。
引き続き、団結を維持し、時間内組合活動の解決に向けて交渉の強化が求められます。

7、 千代田区職員の状況
千代田区の職場も人員が減っていること、パソコンでの仕事が中心となっていること、成績主義が強化され賃金格差が持ち込まれてきていることなど、労働環境が大きく変化する中で、職員同士のコミユニケーション不足や人間関係が悪化し、「心の病」が増えています。特に、職場の人員が減っていて仕事量が多すぎると感じています。アンケートでは、回答者の半分以上の人が「職員数が不足して大変」と答えていますし、千代田区の職員削減方針を止めるべきと考えている人は6割以上います。「現在病気療養中または通院中である」が組合員の1割にもなっています。「心の病」の原因にはパワーハラスメントがありますが、1割近くの人が「職場にあると思っている」と答えており、かなり深刻な事態といえ、対策が必要といえます。
過重労働問題が職場のなかで問題になり、超過勤務の多い人の点検が義務付けられました。昨年の超過勤務時間では、年間300時間以上が7人います。最大で700時間と答えた人がおり、過労死予備軍といえ、過重労働の緊急チェック対象です。「休憩時間がほとんど取れない」人も約1割近くいます。休息時間がほとんど取れない人は実にアンケートで答えた人の半分です。年間10日以下の有給休暇取得者も1割以上います。
不払い残業も根絶されておらず、1割が不払いがあったと答えています。不払いの総時間数は、年3543時間となっています。
成果主義型賃金で働く意欲の低下も心配されています。昇給について、「恣意的に実施されていると思う」、「まじめに働いても昇給がない」と訴える人も2割近くいます。昇任選考については、「恣意的に実施されている」と思っている人が1割います。定期評定制度についても「恣意的に実施されていると思う」人は、1割近くいます。
責任や仕事量から係長になりたくないと思っている主任が多く存在します。特別昇給が廃止されて敬謙を積んだ主任の処遇が課題となっています。
こうした職場環境の悪化について、当局に正確に認識させ、改善を強く求めていくことが必要です。

U、主な課題についての取り組みの基本方針

労働組合は、「要求」で一致することが運動の基礎となります。
「要求」の切実さ、正当性、意義を明らかにし、「要求」実現に向けた取り組みの若干の総括を行い、取り組みの方向を示し、区職労の取り組む主な課題についての基本方針を、以下簡潔に記述します。

1、 組合員の生活と権利を守る取り組み
組合員の生活と権利を守るには、まず、賃金を引き下げさせないことが重要で、そのために組合が全力で奮闘することが求められます。
昨年の05賃金確定では、マイナス勧告、特別昇格制度の廃止、新たな昇給制度(査定昇給)や成績率の導入(係長以上)について、反対をして取り組みましたが、公務員賃金を引き下げようとする強い圧力に直面し、受け入れざるを得ませんでした。また、新たな昇給制度実施のための給料表の4分割が行われ、2006年4月には一斉切り替えで全職員が一定の昇給をし、この点では、若干の賃金改善があったといえますが、この間のマイナス賃金を取り戻す状況とはなっていません。
地域手当の導入については、調整手当をそのまま切り替えることで乗り切り、基本賃金の水準引き下げを許しませんでした。前進面では、一時金の加算措置改善を06年度で行うことを約束させました。
さらに、新たな人事評価制度を労使協議でつくることも合意しましたが、当局提案もなく協議が進んでいません。特別昇格廃止の前提として、行政系任用制度の見直しが約束されましたが、区長会は、未だに組合要求に答えようとしていません。
今後の賃金闘争では、定期評定結果の開示や苦情・相談制度を取り入れ、客観性、透明性、納得制が高く信頼性のある新たな人事評価制度をつくることや係長選考の改善などを柱とした行政系任用制度の改善が求められています。
この間の公務員賃金をめぐる状況も厳しいものがありますが、マイナス賃金にさせないよう、政府・人事院が意図的に公務員賃金を引き下げることに反対して取り組むことが重要となっています。
(1) 「総人件費削減」、「給与構造の見直し」を許さず、一時金など賃金・労働条件改善を掲げ取り組む2006年賃金確定闘争
2006年賃金確定闘争は、10月12日の「マイナス勧告、給料表の1%削減」、「退職手当制度改悪」に反対し、一時金の改善など、賃金・労働条件の改善をめざし、特区連に結集して取り組みます。(11月21日、給与関連項目について、妥決しました。)
(2) 「格差社会反対」、「企業の社会的責任追及」、企業に賃上げを要求し、増税・社会保障改悪に反対する2007年春闘
@ 「企業の社会的責任を果たすこと」と「企業に賃上げ」を要求し、「格差社会」反対、 「増税・社会保障制度改悪」反対など全国民・労働者の要求を掲げて、民間労働者のた たかいと連帯する2007年春闘に積極的に参加します。
A 批准投票によりスト権を確立し、産別の取り組みや千代田春闘共闘会議に参加し、地 域から春闘をたたかいます。
B 2007年メーデー(5月1日)の成功に向けて取り組みをすすめます。
(3) 「マイナス勧告」を許さず、「給与構造の見直し」に反対する取り組み
公務員賃金引き下げを狙った「マイナス勧告」を許さず、「給与構造の見直し」に反対します。特別区人事委員会に対しては、国・人事院に追随することを止めること、大都市の生活実態に見合った賃金改善および公民比較方法の改善を求めます。
(4) 「能力・成果主義型賃金制度」に反対する取り組み
「能力・成果主義型賃金制度」に反対し、その矛盾と弊害を明らかにし、改善を求める取り組みをすすめます。
(5) 賃金不払い残業の根絶めざして
時間外勤務手当の不払いは、違法であり犯罪であることを当局に深く認識させ、職場で不払いが発生しないよう具体的な対応を求めます。時間外勤務手当の不払いが生じている職場について、不払い賃金の清算を交渉等で強く求めます。
(6) 昇任・昇格・昇給制度の恣意的選考に反対し、公平・民主的な選考を求める
@ 昇任、昇給、昇格による恣意的な差別的選考に反対し、より公平、民主的な制度の実 施を要求します。
A 2006年度の特別昇格について、廃止が決まっていることから、統一交渉で合意した 昇格率を守らせ、年齢、経験を重視した選考とすることを求めます。
B 特別昇格廃止を補うような行政系および現業系の人事任用制度の改善を求めます。
C 昇任・昇給・昇格制度の実施に対する「結果の本人開示制度」や「苦情・相談制度」 の確立を求めます。
D 技能主任の昇格率の確保、技能長設置に取り組みます。
(7) 退職手当の改悪に反対する
職務・職責を基本とした管理職優遇の退職手当制度の見直しを要求し、支給率の改悪に反対します。
(8) 「行革大綱」に基づく職員削減方針を改め、職場に適正な職員配置を
@ 職員削減方針と対決し、退職数に見合う新規採用を強く要求し、正規職員による人員 配置を強く求め、交渉による解決をめざします。
A 残業が恒常化している職場や仕事量の急激な増大が予想される職場については、正規 職員での人員配置増を求めます。
B 異職種・異職務従事について、労使合意の上、実施することを求めます。
(9) 育休任期付職員採用制度の導入を
@ 任期付職員採用制度(短時間およびフルタイム)は、長期的には住民サービスおよび 自治体のなかに階層分化を引き起こすので、活用価値がある場合を除き、任用しないよ う求めていきます。
A 育休任期付職員採用制度を導入するよう、強く求めます。
(10) 再任用制度と再雇用制度の改善を
再任用制度および再雇用制度について、賃金の改善、勤務時間のメニューの拡大など、制度の改善をめざします。
(11) 各種事務従事の勤務条件等の改善を
選挙事務、防災訓練、区民体育大会、江戸フェス、江戸天下祭等の事務従事について、従事者の手当をはじめとした勤務条件の改悪をさせず、改善を求めます。
(12) 生活環境条例のパトロール従事の改善を
路上禁煙地区のパトロールについては係長層の配置を止め、パトロール体制の強化が必要な場合は、専属職員の採用等によってカバーすることなどを求めます。制度については、不公平さを増している路上喫煙者に対する過料制度を改め、マナー重視を求めるなどの制度に切り替えるよう求めます。
(13) 適正な人事異動を
@ 人事異動にあたっては、事業部まかせにせず、全庁的な判断の必要性から人事当局の 主導権で行うことを求めます。人事異動の実施にあたっては、本人の意向・希望を尊重 させます。
A これまでと異なる職務従事の人事異動および異職務従事で配置されているすべての現 業職員の異動について、内示前の事前協議とすることを求めます。
B 異議申し立てについては、その期間を設け、誠意をもって対応させます。
(14) 福利厚生制度の改悪に反対し、充実を求める
@ 特別区互助組合の大幅事業縮小のため、区互助会の事業の拡充を求めます。
A 公務員攻撃の一環とする福利厚生制度の改悪に反対します。

2、 憲法9条堅持、平和と民主主義を守り、労働法制改悪反対の取り組み
安倍首相は、明確に憲法9条を変える必要があると公言しました。安倍内閣がめざすのは、日本が海外で戦争できる国にしようとすることであり、国内では、教育基本法を変え、国家に忠実な国民を作り上げようとしています。
国家が愛国心を強制することは、憲法19条の思想・良心・内心の自由を侵害します。また、教育基本法の改悪は、教育内容の国家の無制限の介入に道を開き、憲法が保障すうる教育の自由と自主性を破壊するものです。
一方、日本を戦争する国にさせまいと憲法9条改悪に反対する運動も全国に波のように広がっています。憲法9条を堅持し、平和と民主主義が守れるかが、私たちのくらしと職場に大きな影響を与えます。徴兵制が敷かれ、国家への忠誠心を持たされるようになれば、民主主義が奪われ、暗い社会となるのは戦前が教えてくれています。絶対に、憲法9条を変えて、戦争する国にしてはならないと考えます。しかし、組合員の中には、「変えてもよい」、「よく分からない」などの意見もあり、そうした意見を大切に扱い、世界的に注目されている憲法9条の意義をよく理解してもらう努力が必要です。
(1) 憲法9条を堅持し、平和と民主主義を守る
@ 憲法9条改悪反対、「国民投票法案」及び「教育基本法改正案」の廃案をめざす運動 に参加します。また、「区職員9条の会」や「千代田9条の会」の運動と連帯し、地域 で憲法9条を守る取り組みをすすめます。ただし、憲法9条に対して「変えるべきであ る」「よく分からない」などの組合員の意見もあることから、憲法問題についての情報 提供を宣伝活動などを通じて、十分に行います。
A 核兵器廃絶、安保条約破棄をめざし、日米軍事同盟強化、米軍基地の再編・強化反対、 あらゆる戦争と侵略行為に反対し、平和と民主主義を守る取り組みに参加します。
B 国民保護計画の千代田区版の問題点を明らかにしていきます。
(2) 労働法制の改悪反対、働く権利の確立を求める
@ 労働組合の存在を形骸化する「労働契約法」の制定と労働時間の原則が壊されるホワ イトカラー・エグゼンプション(労働法制のあり方案)に反対します。
A 企業の不当解雇に対するたたかいを積極的に支援し、解雇規制の法制化を求め、偽装請負など、大企業の非正規労働者の増大政策に反対します。

3、 労働時間短縮、休暇獲得、次世代育成支援等の前進めざす
労働時間の短縮や休暇制度の新設・改善を掲げて取り組みをすすめてきましたが、当局は、「区民の理解と納得が必要」との理由で区職労要求にほとんど応えていません。実質的には、強制的な長時間労働などで、年間の労働時間が伸びています。長時間・過密労働に規制をかけて、過労死やメンタルな病気を引き起こさせないようにすることが重要となっています。
休暇問題では、子のための看護休暇が少し改善されましたが、その他は前進がありません。次世代育成推進の方針を当局に真剣に検討させることが、休暇問題の前進につながると考えます。
また、賃金改善がされない中、夏休やリフレッシュ休暇の改善を当局に強く求めていくことも重要です。
(1) 労働時間短縮をめざす
@ 一日の労働時間を短縮し、週単位労働時間の短縮など年間総実労働時間の縮減をすす め、年間1800時間以下の労働の実現をめざします。
A 超過勤務規制・縮減、長時間労働の解消などを強く求めていきます。残業規制のため に労基法36条に基づく「36協定」の締結を要求します。
B 休息時間の廃止による拘束時間の延長に反対します。
(2) 安易な開庁時間延長に反対する
@ 開庁時間延長について、ニーズがあり、真の住民サービスにつながるものであれば、 職員、職場の納得の上で対応していくこととします。なお、委託による対応には基本的 に反対します。特に、総合窓口の開庁時間延長や土曜日開庁については、職場の意向を 検討するよう強く求めていきます。
A 開庁時間延長については、人員配置、労働時間、変則勤務、時間外手当等の条件整備 の上での実施を要求します。特に、総合窓口職場について、、十分な職員配置体制を取 るよう求めていきます。
(3) 休暇制度及び次世代育成支援対策の前進めざす
@ 夏場の職員の健康維持等の観点から、夏季休暇の日数増を求めていきます。また、(仮 称)子育て休暇など休暇制度の新設やリフレッシュ休暇など既存の休暇制度の改善を求 めていきます。
A 育児休業改善、育児時間制度の改善など、次世代育成支援対策の取り組みをすすめま す。また、育児のための短時間勤務制度の導入を求めていきます。
B 育休業などを取得しやすい制度となるよう、昇給制度の改善など、賃金・一時金・退 職手当等に関わる取り扱いの改善を求めます。
C 育休任期付職員採用制度の導入や職員配置の条件整備を行うことなどを柱とするよ う、特定事業主行動計画の抜本的改正を求めます。

4、 職場要求の前進をめざす
労働組合の活動の出発点は、「労働者の要求」にあります。今、私たちのおかれている状況は以前と比べ大変に悪くなっています。「話し合う時間がない」、「要求が出てこない」というのが共通の悩みです。
私たちは、不安や不満を表に出すことが知らず知らずのうちに抑えられているように思います。
そうした中で、組合員の誇りと自覚、権利意識を育てることが労働組合の役割となっています。「社会を支えているのは労働者だ」、「区政を支えているのは私たちだ」、「労働者には人間らしく生きる権利がある」ということを改めて知ってもらうことが重要です。
昨年の職場要求闘争では、06職場統一要求を職場から集め、第1次要求書として、当局に提出し、文書回答を得ました。昨年12月の団体交渉で要求前進をめざしました。毎年、職場要求の集約を行い、当局検討を求めることは、当局に対し、真剣に検討させ、職場問題に対するプレッシャーをかけています。しかしながら、多くの要求の前進はみられないままとなっています。重点となる要求を繰り返し要求し、要求前進をめざしていくことが引き続き重要となっています。
(1) 職場要求の前進めざして
「2007年度区職労職場要求書(職場統一要求・第1次要求書)」、「第2次要求書(各職場の人員要求と職場改善要求)」の回答を年内の大衆的団体交渉で求めます。
(2) 2008年度職場要求を集約する
@ 2008年度の職場要求集約にあたっては、区職員の生活・職場実態等アンケート(2007年6月から7月)を取り組みます。
A 全職場での昼休みを中心とした職場懇談会等を組織し、要求・意見を集約します。

5、 成果主義型の人事管理強化に反対し、職場の民主化をすすめる
民間で成果主義の賃金制度が導入されてきましたが、その弊害で制度を止めたり修正したりするところが多くなっています。私たちの職場では、民間の後追いをして2008年4月からの昇給実施から行うことになっています。民間での問題点を明らかにし、制度づくりに生かしていくことが必要です。一人ひとりを評価する、感情的・恣意的なものを排除するより精度の高い人事評価制度の確立が求められます。また、目標管理型の自己申告制度について、目標に照らした成果で評価し、賃金に反映させるやり方をさせないことが重要となっています。また、「昇任、昇格選考が恣意的になっている」、「実務経験の評価が十分されていない」など、当局の選考のやり方に職場から異議があります。区職労がいっそう、公平、民主的な選考を要求していくことが重要となっています。
(1) 新たな人事評価制度の構築を要求する
現行の人事考課制度を抜本的に改めさせ、「本人開示制度」、「訂正権の保障」、「苦情処理・相談制度」をもつ新たな人事評価制度の構築を要求します。また、目標管理を賃金と直接連動させないよう求めていきます。
(2) 公益通報制度の改善を
匿名でも受け付けられること、行政観察員に女性の弁護士を加えることなどの改善を求めていきます。
(3) 当局研修の充実を
@ 職員研修について、職員の自己実現ないし発達保障のための権利であることを認めて 行うよう求めていきます。その上で研修内容については、職員参加で充実させるよう求 めます。
A 住民本位の仕事を積極的に進め、明るい、働きがいのある職場にするために各種の研 修を積極的に計画するよう求めます。特に、2007年度について、「自治体の公共性と公 務労働」、「構造改革の自治体への影響」、「地方自治制度改革の論点」、「憲法と地方自 治」、「住民福祉のための自治体実現」、「公務員制度改革」、「三位一体改革と地方自治 財政」などのテーマについて、取り入れるよう要望していきます。
(4) 自治体のOA、IT化による労働の変化に対応を
@ OA、IT化による労働の変化に対し、組合員の権利と労働条件を守る視点を大事に して取り組みをすすめます。
A 新たなシステム等の計画については、当局との事前協議を徹底し、既存のシステムに ついても、定期的な協議を求め、問題解決に努めます。特に、新庁舎のIT化にあたっ て、協議を求めていきます。
(5) 職場での権利確立と働きがいのある職場づくりを
@ 性別、職種による差別、人事任用による差別をなくし、明るく働きやすい男女共同参 画社会の実現に向けて、男女格差をなくしていくことなどの取り組みをすすめます。
A セクシュアル・ハラスメント防止と方針の徹底、新たにパワー・ハラスメントの防止 等の対策を求めます。

6、 職員の健康を守り、職場環境の安全確保と働きやすい職場をめざして
パソコンで仕事をする、人員不足などによる過密労働など、職場環境が大きく変化するなかで、労働者の健康が脅かされています。区職員のなかでも過重労働が多くなり、心の病の職員も増えてきています。職場環境の安全確保と改善が急務となっています。
また、新庁舎のレイアウトや総合窓口案について、職場からの要求がなかなか答えられない異常な状態が続いています。職員の声を無視したやり方に批判が出ています。
区職労が職場の声を要求にし、その前進めざして奮闘することが求められています。
(1) 職員の健康と職場環境の安全確保
@ 新庁舎、OA化やIT化、組織の変更などで職場環境が大きく変わる中で、職員の健 康と働きやすい職場づくりを求めていきます。
A 安全衛生委員会の活動強化を求めます。また、安全衛生委員会が過重労働のチェック 体制を強化するよう求めます。
B 職員のメンタルヘルス対策について、その強化と管理職の早期対応を求めます。また、 当該者および周辺の職員が相談できるようなカウンセリング制度を確立することを求め ます。区職労メンタルヘルス対策要求の前進をめざします。
C 職業病、公務災害、労災認定に取り組みます。
(2) 区役所新庁舎に関わる労働条件の整備を
区役所新庁舎に関わる、出入管理、出勤管理、総合窓口などの労働条件整備について、区当局に協議を求めていきます。

7、 民間委託・民営化、人員削減などの「NPM行革・構造改革」路線に反対し、職場と 地方自治を守り、住民本位の区政をめざして
千代田区の「NPM行革・構造改革」が進められています。しかし、職場では、人員不足で過重労働が増えており、職員の健康が心配されています。また、指定管理者制度による民間委託は、区施設や図書館などで進んでいます。図書館は公共性があり、社会教育の面でも重要な施設であることから、全面的な民間委託は全国でもまれなものとなっています。
千代田荘の全面民間委託に関わって、何でも官から民への流れでいいのかと疑問が区民から出されています。今後、保育園や児童館、保健所の検査などが委託されようとしています。保育園の民営化具体案は、区議選を意識し、選挙終了後に出して来る動きです。
こうした動きに対して、住民からの問題提起が起こることが予測されます。区職労は、、住民の動きと連携し、公共性をなくす千代田区の「構造改革」、民間委託に反対していくことが重要となっています。
(1) 千代田区の「NPM行革・構造改革」路線に反対する
@ 成果主義人事管理の更なる徹底により、職員のやる気を引き出し、行財政運営面では、 一層の経営的視点を全面に押し出し、新たに指定管理者制度、市場化テストなどを使い 事務事業のアウトソーシング(外部委託)を実施するとする「区行財政構造改革推進大 綱」の具体化に反対します。
A 人件費の削減、経費を削減しつつ住民サービスも充実させる最適な行政サービス提供 方法の選択など、組織のスリム化や経営能力の向上等に関する取り組みを引き続きすす めていくとし、一定の目標を定め、人員削減とコスト削減を中心に実施しようとする「区 行財政構造改革推進大綱」の具体化に反対します。
B 自治体に関わる事故、事件が続発する中、「地域住民のいのち、健康、安全を守る自 治体」の視点から、当局に対して仕事や職場の点検を行うよう要求します。また、区職 労としても点検のためのキャンペーン等を行います。
C 「区行財政構造改革推進大綱」の具体化は、憲法や地方自治法などによって規定された 自治体の公共性(自治体の存在理由)が無視され、区民サービスや職員の労働条件に大 きな影響を与えるので反対します。
D 給食調理の民間委託問題について、執行委員会で対応します。
E 児童館・学童保育事業の民間委託化に反対し、「対策委員会」を設置して取り組みま す。また、父母、地域住民と連携します。
F 保育園の民営化に反対し、公的保育の充実を求めて、父母、地域住民と共同し、「対 策委員会」を設置して取り組みます。また「認定こども園」制度の導入に反対します。
G 新図書館の指定管理者制度導入の問題点を追求していきます。
H 指定管理者制度が適用されている施設の問題点を具体的に検討します。
I プライバシー侵害と住民監視社会につながる住基ネットや自治体の電子化の部分に反 対します。
J 戸籍・住民票窓口業務、健康保険の徴収業務などの市場化テストの導入に反対します。
(2) 画一的なポスト削減に反対
@ 組織整備にあたっては、職場環境・労働条件・区民サービス向上、区民にわかりやす いことの面から検討し、徹底した職員参加を経て、十分な期間をおいて事前協議するよ う求めていきます。
A 課・係の再編、統廃合について、業務の進めやすさや区民サービスに見合った組織に 見直すべきであり、画一的な削減には反対します。また、二つの課の課長兼務に反対し ます。

8、 区政政策と予算編成に関わって
千代田区の区政政策と予算について、区政民主化の立場から、その問題点を明らかにしていくことが、自治体労働組合としての役割です。区職労は、これまでも、区政政策への意見や予算に対する見解を発表し、態度を明らかにしてきました。しかし、区民への周知がここ数年不十分となっています。
(1) 区民のための区政政策
@ 政策決定にあたっては、上からの決定の押しつけとせず、区民および職員参加のもと で、相当期間をかけて決定するよう求めていきます。
A 「地方自治の本旨」に基づき、財政に裏打ちされた住民自治・団体自治を実現できる 「真の地方分権」を求めます。
(3) 区民のための予算編成を
@ 区民要望にそった必要な事業の経費は、区予算編成において、きちんと措置し、区民 サービスを低下させないようにすることを求めます。
A 職場・現場でムダであるという意見がある事業については、十分な検討を行って判断 することを求めます。また、コスト効率主義を改め、区民サービスの質および公共性の 観点から予算編成を行うことを求めます。

9、 要求前進につながる自治研究活動を
区政政策や予算を分析する前提として、自治研究活動が重要です。今後、新たな都区制度改革、道州制導入の動きなども出て、特別区を巻き込む自治体編成が予想されます。引き続き、自治問題について、東京自治問題研究所などと連携して研究していくことが重要となっています。
(1) 区職労自治研究活動の推進
@ 区政政策や区予算編成、区予算に関わって検討を加え、その結果を職場、区民に広く 明らかにしていくよう努力します。
A 自らの仕事を点検し、住民本位の区政、働きがいのある職場づくりをめざした職場自 治研を組織し、職場政策づくりをめざします。
B 各種団体の自治研究活動に組合員を参加させます。
(2) 特別区の自治権拡充をめざして
@ 都区制度改革を注視し、特別区の自治権拡充をめざし、特区連方針にそって取り組み を進めます。
A 自治体再編に関わる動きに対して、学習し宣伝します。

10、 災害から区民と職員のいのちと生活を守り、安全を確保する
都心を中心にした大地震がいつ起きてもおかしくない状況といわれています。その時のための防災の初動態勢、対策の強化が求められています。また、職員がどう動くのか、災害時の労働条件など日頃から確認しておかなければなりません。しかし、職員の災害時の労働条件など、提示されないままになっています。明らかにさせる取り組みなどが必要となっています。
(1) 災害から区民のいのちと安全、財産を守るために、区施設に働く職員の安全が確保 され、ただちに救援活動が開始できるような措置、区内への職員の配置など初動態勢の 強化を求めます。
(2) 災害時の区職員の労働条件を提示するよう求めていきます。
(3) 自然災害被害者への公的支援制度の充実を求めていきます。

11、 社会保障制度改善など、制度・政策要求の前進めざして
一元化などによる年金制度改悪、財政悪化による消費税率大幅引き上げなど、社会保障制度や税制の更なる改悪が行われようとしています。新たな国民負担をせずに、公共事業の縮小や防衛費の無駄を省くなどで財政再建は可能です。賃金が上がらない中で、こうした国民負担の増大に反対していくことが、私たちの生活と権利を守ることにつながります。
(1) 年金制度改悪に反対する
年金制度の更なる改悪と安易な年金の一元化に反対し、安心して老後を暮らせる最低保障年金制度の確立を求めていきます。
(2) 消費税廃止を展望し再引き上げと増税に反対する
消費税率再引き上げ、大増税に反対し運動します。また、大企業の優遇税制に反対し、企業の社会的責任を追及していきます。
(3) 医療制度改悪に反対する
医療制度の改悪、医療の「市場化」に反対します。
(4) 介護保険制度の改善を
@ 介護保険制度の問題点を明らかにします。
A 介護労働者の賃金引き上げ、国庫負担の拡大、特養老人ホーム、グループホームなど の施設の増設などを求めていきます。また、低所得者など介護保険を十分に利用できな い問題を解決するために、自治体が支援する制度の充実を求めていきます。
(5) 障害者自立支援法の改善を
障害者自立支援法の問題点を明らかにし、その改善を求めていきます。
(6) 最低賃金制度確立、自治体関連労働者の賃金・労働条件改善を求める
@ 増大するパート、非正規労働者が、不当な低賃金で働くことを余儀なくされており、 このような状況が、正規職員の賃金引き下げに利用されているという観点からも、最低 賃金制度の確立を求めていきます。
A 区役所に働く「臨時・非常勤」職員および関連労働者(委託先の労働者含む)の雇用 ・賃金・労働条件の改善を求め、均等待遇の実現をめざします。
B 区に対して、「公契約条例」を制定するよう求めます。
(7) 生活保護制度改善・運用を求める
生活保護制度について、制度とその運用の改善を求めます。
(8) 公務員制度の改悪に反対し労働基本権回復を求める
@ 職場に差別と分断をもたらす「能力・成果主義」に基づいた「公務員制度改革」に反 対します。また、「住民と共に、信頼される公務員」の確立、民主的な公務員制度の確 立をめざします。
A 「人勧体制打破」をめざし、公務員のスト権回復を展望します。あらゆる機会を通じ て「人勧体制打破」、ストライキ権回復の意義を明らかにして、たたかいます。
B ILO151号(公務における団結権の保障および雇用条件に関する条約)をはじめ とした、労働関係条約の批准を求めます。

12、 政治革新を求める
2007年は、一斉地方選挙、都知事選挙、参議員選挙があり、二大政党の争いが焦点などと言われていますが、地方選挙の状況などを見るとそうはなっていません。区職労は、、日本全体が国政革新、労働者のための政治が行われるようになることを求めて、政治啓発活動を行っています。引き続き、区職労の団結を強化するために、組合員の政党支持の自由を保障していくことを約束します。
(1) 国政の変革と都政の民主化を
@ 労働者のための政治をめざし、政治革新を求めていきます。この点について、選挙の 都度、組合員に向けて政治啓発活動を行います。
A 悪性と「構造改革」、憲法や教育基本法の改悪をすすめる安倍内閣の政治の転換を求 めていきます。
B 憲法を否定し、福祉、教育予算を削り、オリンピック招致をテコにした巨大開発を進 める石原都政の転換を求めます。また、都教育委員会の教職員や子どもへの「日の丸・ 君が代」の強制に反対します。
(2) 民主区政への転換を
@ 災害対策や高齢者福祉、住み続けられるまちづくり、住宅確保などの要求を区民、地 域の労働者と共に組織し、区民・労働者の求める、開かれた区民本位の区政への転換を 求めます。
A 民主区政を実現するために要求の一致する政党や広範な民主団体との協力・共同をめ ざし、かつ共に自治研究活動などの取り組みを進めます。

13、 環境保全、食の安全確保
地球環境を守ろうと世界中で言われています。温暖化対策、大気汚染調査活動など、身近でできることからやっていくことが必要です。
食料の安全確保の問題でも組合員のためになる取り組みを進めていくことが求められています。
(1) 環境を守る取り組み
@ 地球環境を守るための諸行動に参加します。
A 「大気汚染調査」を行い、組合員と区民の健康を守る取り組みに生かします。
(2) 食糧の安全確保を求める
安全性無視の「食」の規制緩和に反対し、食糧の安全確保を求めます。また、食糧の自給率を高めるよう求め、米輸入自由化に引き続き反対します。
(3) 原子力問題の対応
原子力発電所の総点検・検証や反対する運動に参加します。

14、 一致する要求に基づく労働者の共同闘争と連帯・支援
この方針は、長年かけて築き上げたものです。ナショナルセンターの違いで運動をためらうのではなく、「要求」で一致すれば、取り組む姿勢を貫いていくことが、全体の労働運動の発展に必要だといえます。
(1) 「要求」で一致するあらゆる労働者・労働組合との幅広い共同闘争と連帯を強めま す。
(2) 千代田争議団の争議や国鉄闘争などの争議について、引き続き支援します。
(3) 中部全労協について、引き続きオブザーバー加盟としますが、財政支出については、 財政運営上の観点から削減します。
(4) 連合千代田の役員派遣については、次期執行部で検討します。

V、組織建設について

これからは、黙っていても組合員が増える時代ではなくなり、努力して組合員を維持し、増やしていくことが強く求められています。
また、「要求」を実現するための主体的な力を維持・強化するため、組合員の団結強化、魅力ある組合にしていくことも重要です。
以下、組織建設に関わる取り組みを進めます。

1、 区職労の組織を強化する
区職労の組織強化の中長期的な目標と課題・取り組み方針を修正し、かつその具体化を図ります。特に、来年度の組織強化にあたって、次の点を重視して取り組みます。
(1) 組織の減少に歯止めをかけるために、共済制度の充実など、「魅力ある区職労」づ くりをめざします。特に、区職労ニュースを機関紙化するための抜本的な改革に取り組 み、区職労運動と組織の根幹に据え直すこととします。
(2) 新規採用者等の全員加入をめざします。また、若年者の加入に向けて努力します。
(3) 自治体に働く関連労働者の組織化を検討します。
(4) 随時、労働組合に関連した課題で役員を中心とした学習会を行います。また、勤労 者通信大学、労働学校等の受講などを組合員に対し積極的に働きかけます。
(5) 区職労課題の取り組みについて、意思統一や学習を進めるために、月1回拡大執行 委員会を開きます。
(6) 区職労を担う後継者育成に力を注ぎます。
(7) 組合員の思想、信教、政党支持、政治活動の自由を保障し、区職労運営を進めます。

2、 組合活動の規制、介入を許さない
(1) 時間内組合活動を保障するよう、交渉再開を求めていきます。また、庁舎管理規則 を前面に押し出すなどの組合活動規制や当局の区職労活動への介入・干渉を許さないよ う取り組みます。
(2) 組合員が自主的に行う正当な政治活動について、不当な処分、弾圧を行わないこと を確認させます。

3、 組織=上部団体選択問題について
(1) 未批准になっている組織選択問題の決着に向け議論します。
(2) 職場に対し産別の新聞など、討議資料を配布し、討議素材を提供します。
(3) 産別に関する運動については、執行委員会の討議を経て要求の一致を基本に取り組 みます。

◆組織選択問題
労働組合運動がナショナルセンターである連合と全労連に分かれた時に、当時の東京都区職員労働組合(都職労)の仕切りのもとで、区職労もどちらに参加するのか、組織=上部団体の選択、つまり連合・自治労か全労連・自治労連かが迫られた。その結果、全労連・自治労連および中立の選択をしたが、組合員総数の過半数の賛成が得られなかった。したがって、区職労は、従来、自治労に組織加盟していたので、今日まで、自治労傘下の組合として組合費を納めている。

4、 文化・スポーツ活動への支援
(1) 文化・スポーツは、心身に良い刺激を与え、活性化させるだけでなく、豊かな感性 や創造性を育むなど、人間性の全面発達に欠かせない営みとなっており、区職労として 組合員の文化・スポーツ活動を支援します。
(2) 組合員の文化・スポーツ要求を大切にし、組合員同士の人間的結びつきを広める立 場から、竹の子掘り、手作り味噌づくり、さくらんぼ狩りなど、組合員相互とその家族 の親睦、交流をめざした取り組みを実施します。
(3) 三部合同学習旅行会を支援します。
(4) 区職労団結まつりなど、組合員の交流、親睦を深める取り組みを実施します。

5、 共済制度など、組合員の生活を支援する
(1) 確定申告の仕方について、講座・相談会を実施します。
(2) 定年・勧奨退職者及び再任用・再雇用満了者の送別会を行います。
(3) 組合員に対する無料法律相談を弁護士と提携して行います。
(4) 組合員のための退職慰労金制度について、引き続き制度を維持しつつ、区職労財政 との関係からの見直しを検討します。
(5) 組合の共済制度について
@ 引き続き、自治労共済、全労済、都区職員共済会の火災共済、自然災害付火災共済、 年金共済、生命・医療共済、自動車共済など任意共済事業を取り扱い、その充実を求め ます。
A 組合員のニーズに応えた区職労独自の慶弔制度について、引き続き検討します。
(6) 都区職員生協運動の推進について
安全な食品や商品の斡旋を生協に要望し、かつ区職労独自で産直運動と提携し、産直品の斡旋をします。また、随時「区職労市」を開催します。
(7) 労金との連携について
区職労主導のもとに労働金庫と連携し、財形募集の取り組みや組合員のニーズに応えていく取り組みを行います。また、組合員の意見を労働金庫に反映させます。
(8) 組合車については、千代田争議団と連携していきます。なお、車両の状況から原則 として組合員への貸し出しは行わないこととします。

6、 区職労組織財政検討委員会の設置
この間、組合費収入の減少を受けて、様々な支出上の効率化を図ってきました。今後も、財政効率と区職労組織のあり方を検討する必要に迫られています。
区職労組織と運動の強化・発展をめざしていくために、組織・財政を総点検します。そのために、「区職労組織財政検討委員会」を設置し、区職労組織財政のあり方を検討します。
以上