2010年度区職労定期大会にあたっての報告と提起
2009年11月11日
千代田区職労執行委員会
 
 2010年度区職労定期大会にあたって、報告時間の都合上、若干の経過報告と運動方針案の提起を合わせて行います。
 まず、この1年間の活動の経過報告ですが、特徴的な2点のみを報告します。あとは経過報告集にすべて記載してありますので、ご覧ください。

 昨年の08賃金確定闘争では、公務員攻撃や「給与構造改革」が国から押し付けられる厳しい状況のもとで闘われました。結果は、勤務時間短縮の実施を09年4月1日とし、勤勉手当成績率拡大の実施時期を1年遅らせ、一律拠出の範囲を一時金の加算措置者とし、一律拠出上限割合はそのままとさせました。しかし、勤勉手当について、全職員から扶養手当を算出から除外することについては、実施時期(2012年)を遅らせるにとどまりました。また、準定年制度等の廃止及び勧奨退職制度の見直し・病気休職者に係わる給与の支給期間の見直しについても受け入れざるをえませんでした。
 民間の業績が上がらない中、勧告制度で賃金が引き下げられています。景気回復に実効ある経済運営を政府に求め、そして勧告制度をなくし、公務員に労働基本権を勝ち取ることがどうしても必要になっていると思います。
 もう一つは、職場要求前進の取り組みです。
 労働時間短縮との関連で、休憩時間を45分から60分とさせました。保育園は職場事情により、45分としました。また、@時間外手当の不払いに対する再認識をさせたこと、A係長昇任者数を増やすよう要求したことについて、一定の理解を示させたこと、B技能・業務系の特別昇格について、08給与確定交渉で妥結した内容で実施すること、C人員配置について、厳しいところには適切に配置していき、新規採用はゼロにはしない(35人採用)ことを確認したこと、D非常勤等の職務上必要なパソコンは確保すると確認したこと、Eパワハラ対策について、再認識させたこと、F区職労掲示板の代替策を出させたこと、G子どもの看護休暇の更なる改善を前向きに検討するとさせたことなどの前進がありました。
 今、区当局に区職労の職場要求を検討させています。引き続きの課題と共に、要求が前進するよう、キャンペーンを張るなどして、取り組んでいきます。

 次に2010年度の運動方針案の提起を行います。
 この運動方針案では、私たちの「要求」の生まれてくる背景にある政府・財界、支配者層と我々との関係がどういう状況にあるのか、支配者層の動向がどうなっているか、その上で区職労がどういう方向で進んだらいいのか、組合員の「要求」をどういう方針で前進させたらよいのかを明らかにしています。
 情勢が厳しくなればなるほど、それに抗して、変革していくエネルギーや条件も成熟していくというところに、労働組合運動の展望があると考えています。また、政権が変わり、私たちの運動で「要求」の前進がつかみ取れる状況になっています。

 まず、2010年度の区職労運動の基本は、
@異常な正規職員削減、成果主義型人事管理と公共性無視・住民サービス低下をもたらす「民営化」などの千代田区「構造改革」を転換させ、職員と住民の生活を守るために「住民全体の奉仕者」としての自治体労働者の役割を発揮していきます。
A憲法9条を守り、戦争する国にさせない、憲法をくらしと地域・自治体に生かすよう運動します。
としています。この基本に立って、この一年運動していきます。
 次に、情勢の特徴について、報告します。
 まず、総選挙後の大きく変化した政治情勢をどう見るかについてです。
 先の衆議院選挙では、永年続いた自民党中心の政治が終焉し、新しい政治の段階に入ったということで、日本の歴史が前に進んだと評価していいと思います。
 今、財界やアメリカの圧力もあり、マニフェストで約束したことの先延ばしや反故にするような動きが出ており、国民の中には、新政権に対し、期待と不安が渦巻いています。
 新政権に対して、私たちは、後期高齢者医療制度の廃止や労働者派遣法の抜本改正、障害者自立支援法の廃止などマニフェストで約束したことは、早期実行を求めていくことが重要です。新政権の公務員削減には断固反対していきます。
 そうした中で、「財界中心」「軍事同盟中心」という旧来の政治と決別するよう、国民的な運動をしていくことも、「要求」前進の点で非常に重要です。
 旧来の政治に逆戻りすることを許さず、「国民・労働者が主人公」となる新しい日本の政治を展望して、労働者のための政治が行われるよう、地域から継続して運動をしていくことが求められています。

 さて、世界的なバクチ経済の破局の影響は、未だに深刻なもので、労働者の現金給与支給総額は、2009年8月までで15ヶ月連続でマイナスとなり、中小企業の倒産で失業者が増え、失業給付切れで再び雇用と生活が悪化するという状況になっています。
 日本の非正規雇用労働者の総数は、1700万人を超えて拡大し、全労働者の3分の1を上回る異常な事態となっています。こうした雇用環境の悪化の結果、年収200万円以下の給与所得者は、1067万5000人となっています。このことは、新しい家族を持ち、子どもを産み育てられず、労働力の再生産ができないことを意味し、社会にとって深刻な事態といえます。私たちの子どもにも大きな影響を与え、看過できない状況です。
 こうした不況と貧困を背景にして、公務員給料を引き下げる政治的で不当な勧告が出されています。
 このような深刻な事態に対して必要なのは、大企業の横暴がまかり通るルールのない経済社会からの転換であり、国民の所得を安定的に向上させるような内需主導型経済へ移行させることが、早く求められていることです。
 さらに、軍事費や無駄な公共事業に税金を使うことから、社会保障費に回すことが強く求められています。

 世界はいま、「核兵器のない世界」に向けて、大きく動き出しています。
 09年4月5日、オバマ米大統領は、チェコ・プラハで「核兵器のない平和で安全な世界をめざす」と演説しました。9月には、国連の安全保障理事会で「核兵器のない世界」をめざす条件づくりに安保理が取り組むというアメリカ提案の決議が全会一致で採択されました。
 この背景には、核拡散の危険を防ぐには核兵器を廃絶するしかないという認識の広がりと、私たちの継続した核兵器廃絶運動の力があると確信する必要があります。
 今起きている核密約問題の糾明と核兵器廃絶の運動を前進させるために職場、地域で草の根から取り組みを進めることがますます重要となっています。
 憲法問題では、2010年5月の改憲手続き法の施行に向けて憲法審査会始動の動きを強めることが予想されます。改憲派の巻き返しを許さず改憲阻止、憲法が生きる社会をめざして、憲法闘争を強めることが求められています。その点では、「九条の会」の運動を職場から積み上げていくことが重要です。
 労働組合が憲法九条を守る課題、平和と民主主義の課題を取り組むのには、大切な理由があります。それは、労働者の生活を根底から破壊する戦争を、憲法に基づき国家にさせないということです。
私たちは、戦争の反省に立ってつくられた憲法九条を何としても守らなければならないと考えます。区職労は、憲法の意義の普及と同時に、組合員の理解を得る取り組みなど、相互理解していくよう努めなければならないと考えています。

 これまでは、化石といわれていた日本の環境対策でしたが、9月の気候変動首脳会合で鳩山首相が、1990年比で温室効果ガスを25%削減すると公約しました。環境政策の見直しとして評価できるものです。日本の排出の7割近くを占める発電所や大規模工場などの削減義務化や排出権取引をなるべく使わず削減すること、一刻も早く実現されることが求められています。

 2009年2月、千代田区長選挙が行われ、石川区政が継続し、これまでの千代田区の「構造改革」路線は続けられています。
 区立麹町保育園などの民設民営化を進めようとし、児童館は放課後こどもプランを進めるとの理由で廃止または民営化を検討しています。
 区当局は、人員削減を徹底し、相変わらず新規採用を抑制しています。2010年4月には35名の採用を予定していますが、これまでの退職数には見合っていません。
 職場からは、人員不足で業務が回らず、超勤が恒常的になっているなどの訴えがあります。千代田区監査委員会も今後の課題の中で「今後の区政運営に必要な人員の適正な数を明確にするとともに、大量退職に対応する計画的な採用を検討されたい」と指摘しています。
 人員が不足している職場では、過重労働、超過勤務が行われ、精神疾患で病気休暇・休職者も少なからず出ており、個人の責任としない組織的な対策が求められています。
 区職労は、「官から民へ」、「構造改革」路線では、公共性のある業務が自治体の責任で行われなくなり、低賃金労働者に依拠する民営化では、住民サービスが大きく後退すると指摘し、改めよう要求しています。
 また、貧困と格差をなくす一つの方法として、公契約条例により、時給1000円以上賃金を支払うよう委託先に義務づけた野田市を見習うことが求められます。
 区職労は、@住民こそ主人公である、A当該労働者が住民と連帯、共同して運動する、B自治体労働者の専門性を前面に押し出していくことを掲げて、「自治体構造改革」、「民営化路線」と対決しています。引き続き、この路線を徹底していくことが求められています。
 千代田区内では、都市再生のかけ声のもと、大規模再開発が行われ、地域の居住環境が悪化しています。住民が安心して、よりよい環境で暮らしていけるように、住民の立場に立った地区計画の網掛けやまちづくり条例の制定など、区が思い切った「緩和から規制へ」の政策を打ち出すことが強く求められます。
 2009年7月の都議選では、負けたことのない自民党現職が、若干、20代の民主党新人に敗れました。「構造改革」への批判が集中したものと思われます。
 まちづくりに対しても既存住民の権利を守るようにすべきだとの強い意見が出されています。大規模建築計画に対して、異議が出され、日照、景観などの環境を守るよう要望しています。そうした流れは全区的に起きています。
 そうした中で、区財政の無駄遣いへの一部が批判され、いったん予算を組んだ天下祭りが中止に追い込まれました。また、まち未来千代田の不祥事に端を発し、公社のあり方検討が行われています。
 区職労は、石川区政が筋を通す組合を敵視すること、組合活動の制限をすることに対し、きっぱりと闘っていきます。
 職員が石川区政をどうみているかアンケートから見てみると、「評価できる・どちらかというと評価できる」は、わずか8%です。反対に「評価できない・どちらかというと評価できない」は、昨年の27%より増えて49%にもなっています。現区政に対する厳しい見方があり、区政運営の基本を変えるよう、引き続き要求していきます。
 2009年7月から8月にかけて行った「10職員の生活実態・要求アンケート」で、組合員の賃金引き上げ要求は、平均で約3万6800円で、昨年よりも2000円高くなっており、この間の年収のマイナスを反映しています。
 家計の状況は、年収のマイナス影響を受けて、「赤字増えて苦しい」「やりくり心配」が49%になっています。その影響で小遣い減ったが、54%になっています。
 全体としては、超過勤務の実態は、相変わらず減ってはおらず、人員措置などの改善で、減らすことが強く求められます。
 セクハラやパワハラが職場にあると思うと一定数の人が答えています。その中でパワハラはセクハラより多くなっています。また、セクハラ、パワハラを今受けている人がおり、対策が早急に求められます。パワハラが多くなっているのは対策が整っていないのが背景にあるのではないでしょうか。
 職員の健康状態は、「治療中25%」となっており、昨年より増えています。心の健康を害したことがあるのは29%もあります。区職員全体からみると相当な割合になると考えられます。これは、明らかに人員不足や人間関係など、職場環境によるものです。
 メンタルヘルス対策は、ピースマインドに委託し、改善されてきていると考えられますが、もう一歩進んで、メンタルヘルス不全を起こさせない職場づくりなど、対策の強化が求められています。不要なストレスのない職場づくりが今求められています。そのためにも労働組合が力を発揮する必要があります。
 以上で、情勢報告を終わります。

 さて、主な取り組みの基本方針について、述べます。
1、まず、賃金闘争についてですが、今、景気が落ち込んでいるとはいえ、大企業は、政府の支援なども受けて、賃上げなどによる労働分配率を上げず、雇用の不安定化を進めて利益を上げ、税負担も軽くされています。私たちは、賃上げを正当に要求し、企業の社会的責任を追及していく運動が求められています。
 今年の賃金確定闘争では、@勧告内容を精査すること、A行政系人事制度の改善、B業務職給料表の改善、保障額表からの早期脱却、C超勤手当割増率改善と超勤縮減などを重点課題として、その前進をめざします。
2、2010年の春闘については、「企業の社会的責任を果たさせ、企業中心社会の是正をさせること」、「内部留保を使い雇用を守らせること」、「賃金引上げで、内需拡大に影響させること」、「年金制度など社会保障制度の改善をさせること」、「労働者派遣法を抜本的に改正させること」、「高齢者を差別する後期高齢者医療制度廃止」など、全国民・労働者の要求を掲げて、民間労働者のたたかいと連帯する2010年春闘に積極的に、千代田地域で参加します。また、最低賃金の大幅引き上げで、「貧困と格差の是正」を求めます。
3、職場要求については、区で解決できる要求の前進に向けて奮闘します。例えば、互助会事業、カフェテリアプランの制度改善などを強く求めていきます。
4、賃金不払い残業の根絶については、違法であり犯罪であることを当局に深く認識させ、職場で不払いが発生しないよう具体策を求め、超勤手当の不払いが生じている職場については、不払い賃金の精算を交渉等で強く求めていきます。
 また、ICカードで退庁時刻の打刻を行い、職員の超勤管理を行うよう求めていきます。
5、実質的に一般職である非常勤職員の賃金・労働条件について、自治体職員の貧困と較差を許さない立場から、いっそうの改善をめざします。
6、千代田区の職員削減方針と対決し、退職数に見合う新規採用を強く要求し、非正規に頼らない、正規職員による人員配置を強く求めます。
7、平和と憲法問題では、2010年の改憲発議をさせないよう取り組み、憲法9条を守る運動に積極的に参加します。また、「区職員9条の会」や「千代田9条の会」の運動と連帯し、地域で憲法9条を守る取り組みを行っていきます。
8、労働時間については、ヨーロッパ並みに週35時間労働に向けて運動を始めていきます。さらに、残業規制のために労基法36条に基づく「36協定」の締結を要求し、具体化を図ります。
9、労働基本権の全面回復で勧告制度の廃止を強く求めていきます。
10、民間では人事考課制度の見直しが行われています。改めて問題点の改善を求め、「能力・成果主義型賃金制度」の強化に反対していきます。
11、職員のメンタルヘルス問題について、相談体制の充実強化など対策強化と管理職の早期対応を求めていきます。
12、公共で行うべき仕事を放棄する民営化、市場化テストなど事務事業のアウトソーシング(外部委託)、人員削減とコスト削減を進める「区行財政構造改革推進大綱」の具体化に反対していきます。
 具体的には、?町保育園、神田保育園の民設民営化、児童館・学童保育事業の廃止・民営化に反対し、公的保育・学童保育の充実を求めて、父母、地域住民と連携して取り組みます。
13、年金制度の更なる改悪と年金の一元化に反対し、安心して老後を暮らせる最低保障年金制度の確立を求めていきます。
 また、社会保障を口実とした消費税引き上げ、大増税に反対し、大企業の優遇税制を変えるよう求めていきます。
 医師・看護師不足を改善し、安全・安心して医療が受けられるよう求めていきます。
 75歳以上の高齢者を差別する後期高齢者医療制度の廃止を求めていきます。
14、区に対して、区の請負事業に対し、請負う労働者の賃金保障をするなどの「公契約条例」を制定するよう求めていきます。
15、民主区政の実現に向けて、区予算や施策に対する意見表明を行っていきます。
16、地球環境問題は、大きな問題です。温室効果ガス排出の中期削減目標の達成を求め、また、国民負担とならないような環境税をつくるよう求めていきます。
 政府の責任による食糧の安全確保、食料の自給率を高め、日本の農業を育成するよう求めます。

 最後に区職労の組織建設についてです。
 闘う組合としてアピールし続け「要求」を一つでも二つでも前進させること、共済制度の充実などにより、「魅力あるためになる区職労」づくり、「見える運動をつくる」ことを、みんなでめざします。
 区職労ニュースとメール配信ニュースを充実し、写真ニュース新設やネットでのブログ開設など、組合員との日常的なつながりをつくります。
 新規採用者及び2006年以降採用者の加入をめざすための具体的な対策を取ります。そのための予算措置も行います。
 役員を中心とした学習会、青年層を対象にした賃金学習会など、時宜に応じた学習を行います。
 区職労を担う後継者育成に、力を注ぎます。
 引き続き、組合員の思想、信教、政党支持、政治活動の自由を保障し、組合民主主義を徹底して区職労運営を進めます。
 組合員の生活設計を応援するために、退職準備(年金と退職金など)セミナー、ファイナンシャルプランセミナーを行います。
 「区職労組織財政検討委員会」を設置し、区職労組織財政のあり方を検討します。
 以上が、主な取り組みの基本方針です。
 これで、区職労定期大会に対する「報告と提起」を終わります。代議員の皆さんの討論で補強し、よりよい運動方針にしていただくことをお願いして終わります。