千代田区の「幼稚園と保育園の連携」問題の検討について(中間のまとめ)概要 | ||||
千代田区職労「幼保の連携」問題プロジェクト | ||||
1、 | 「幼稚園と保育園の連携」とは何か | |||
(1) | 「幼稚園と保育園の連携」とは何か 「幼稚園と保育園の連携」とは、双方の機能や役割を維持した上で ・「子供同士の交流」、「教育・保育内容の交流と連携」、「職員同士の交流と連携」などの相互の「交流と連携」・施設、設備の相互の共用化をすすめ、子育て支援の拡充と保育内容等の運営の工夫をしていくことと整理できる。 年齢を区分したり、分断するなど、幼稚園と保育園の機能と役割を解体し、新たな「制度」として運営するやり方は「連携」の範疇からはずれると考える。 「幼稚園と保育園の連携」は、双方の機能と役割を損なわず、かつ自立した施設の機能を保持した上で、成り立つものと考える。 |
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(2) | なぜ、今「幼稚園と保育園の連携」か 千代田区は、「千代田区幼児育成のあり方検討会」(1997年)をつくり、「いずみ方式」について検討した。その背景は、「(仮称)幼児園」の創設を構想することにあった。また、「幼稚園・保育園の連携のあり方を考える懇談会」(1999年)を設置し、「幼稚園と保育園の連携」について検討してきた。 「幼稚園と保育園の連携」については、幼稚園と保育園の機能と役割が接近し、幼稚園に保育所的な役割が求められてきている現状では、子育て支援の充実をめざす点において、必要となっている。その際は、保育の質を確保していくことが重要である。 |
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(3) | 「幼稚園と保育園の一元化・一体化」とは 厳密な意味での「幼稚園と保育園の一元化・一体化」とは、幼稚園と保育園について、制度上の違いを超えて施設や運営、職員体制を一つのものとして行うものといえる。単に施設を一体化したというだけでは、「幼稚園と保育園の一元化・一体化」とはいえないと考える。 |
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(4)「いずみ方式」とは「幼・保合体の年齢区分方式」と「複合施設方式」を合わせたもの 「いずみ方式」の特徴は、「幼・保合体の年齢区分方式」と「複合施設方式」が合わさったものである。 |
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2、 | 「幼稚園と保育園の連携」問題についての国などの政策動向 | |||
(1) | 少子化問題と幼稚園「改革」 地域に開かれた幼稚園、預かり保育の推進、幼稚園と保育所の連携のあり方の三つの課題を提起している。(1997年11月、時代の変化に対応した今後の幼稚園教育のあり方について) |
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(2) | 高まる保育サービスの多様化と保育園の子育て支援機能 多様な需要に応える保育施策の推進を強調。 少子化対策推進基本方針のなかで、「幼稚園と保育園の連携」の推進をあげている。 |
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(3) | 「幼稚園と保育園の連携」の問題点 1) 幼稚園、保育園の基本的な位置付けや機能があいまい? 2) 稚園、保育園」、小学校などの施設の共用化が先行? 3) 幼児・学童の発達や、成長過程に見合った各施設の自立性に立った「連携」か? |
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3、 | 千代田区の「いずみ方式」の検討 | |||
(1) |
導入経緯から…「いずみ方式」はやむなく導入されたものであった 「年齢区分方式は、佐久間小建て替えに伴う今回に限った特例的なものであり、将来に向けての方策を示したものではない。」(当局答弁、1985年6月4日、当時の企画課長説明) |
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(2) | 「いずみ方式」の問題点はさまざま | |||
1) | 保育に関わる問題点 | |||
・ | 年齢を区分したことで、ゼロ歳から就学前までの一貫した乳幼児保育が不十分とならざるを得ない。保育園の中での乳児と幼児の交流ができない。昨今は、異年齢の合同保育方式もすすめられており、一つの園の中での、乳児と幼児の交流は大切なものではないだろうか。また、保育園から幼稚園にうつるのに不安を持つ親がいる。 外に11の問題点を指摘。 |
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2) | 制度上の問題点 | |||
・ | 幼稚園には通園区域があり、区内在住に限られており、在勤者の乳幼児は和泉幼稚園に入れず、他の保育園に移らなければならない。(導入当初から他園に移った者が人いる) 外に3つの問題点を指摘。 |
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3) | 複合施設上の問題点 | |||
・ | 幼稚園と保育園の配置が良くないために、連携を取るためにつくったスペースが広さ的、位置的にも不十分であり、十分に生かされていない。 たとえば、園庭は幼稚園にしかないため、保育園が園庭を使いたいときに使えない。 外に5つの問題点を指摘。 |
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4) | 運営上の問題点 | |||
・ | 幼稚園と保育園が別々に運営されているために、当初の期待とは異なり、相互の連携が不十分であり、行事の共同実施等にとどまっている。例えば、年間計画などの相互の相談はない。 | |||
5)その他 ・3歳から就学前までの幼児を受け入れる保育園が神田東部地域には存在していない。 |
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(3) | 保育園と幼稚園を複合施設内に建設し、幼稚園に長時間保育を導入したことで評価できる点 | |||
・ | 幼稚園保護者の就労形態が変化しても、継続して幼稚園で保育を受けられる。ただし、幼稚園の特別課程の定員がいっぱいの場合は、無理となる。 | |||
・ | 就労していても幼稚園での教育・保育が受けられるようになった。 | |||
・ | 給食が新たに導入され、親の負担が軽減された。 |
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(4) | 今後の「いずみ方式」の扱いについて |
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1) | これまでの検討結果から 「いずみ方式」は、子どもの発達への影響がないこと、子どもへの負担がほとんどないことが学問的にもまた、実践的にも検証されるまでは、拡大すべきではないと考える。特に、「幼・保合体の年齢区分方式」については、慎重な検討が求められる。 |
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2) | これまでの幼稚園、保育園施設の建設経過から 千代田パークサイドプラザの中にいずみ保育園を「年齢区分方式」で建設することに際し、「年齢区分方式は、他園に波及はしない。いずみ保育園に限る」という労使協議に基づく約束がある。 |
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4、 | 千代田区の子育て支援の充実の方向性について 「母親の子育て意識と幼稚園・保育園の役割アンケート」結果から |
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(1) | 「母親の子育て意識と幼稚園・保育園の役割アンケート」結果の特徴 子育てを楽しんでいる一方、かなりの母親が、子どもとだけいることや母親の役割のみの生活にイライラしたり、不満を感じたりしている。母親のみが子育て責任を負っている状況では、子育てを無条件で楽しいと感じることは難しい。子どもを育てることの社会的責任を明確にして、安心して子どもを産み育てられる地域社会をどうつくっていくかが課題である。 |
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(2) | 千代田区の子育て支援の充実の方向性 地域の育児支援システムをつくることが求められている。 たとえば、母親が子どもを連れて集まれる場所、母親も子どももそこで友だちと交わることができるところ、母親の休息できる場所が必要となっている。子育てに父親や周囲の人々が関われるようにしていく手だても必要である。 また、人口増・維持対策を最大の課題にしている千代田区にとっては、子育て支援事業は、他自治体にない特色を出さなければならないと考える。 |
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5、 | 「幼稚園と保育園の連携」についての中間のまとめ |
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(1) | 千代田区の「幼稚園と保育園の連携」の方向性 千代田区の「幼稚園と保育園の連携」の方向性ついては、 |
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・ | 「幼・保合体の年齢区分方式」によらない「連携」を進める必要がある。「子育て支援機能の連携」をどう進めるかが課題といえる。 | |||
・ | 合築にあたっては、他の用途からのスペース的、環境的な制約を受けないことが前提である。たとえば、乳児の環境を考えると小学校との合築は好ましくないといえる。 | |||
・ | スペースの共用化にあたっては、幼稚園と保育園が自立した機能を持つことが前提である。また、「連携」のためのスペースやスタッフの整備のための財源的保障が必要である。安易な「施設統合」は、「連携」を促進するどころか、「連携」を中断させてしまうことになる。 | |||
・ | 幼稚園と保育園の子どもと職員が相互交流し、保育内容等の充実を進めていくことが必要である。一方を他方が肩代わりするような安易な機能分担を進めるのではなく、スタッフが相互の質を高め合う方向で、「連携」、交流を進めるべきであろう。 |
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(2) | 幼稚園の役割の方向性 急な用事に対して子どもを預かる場所としての機能や働く親を支援する機能としての「預かり保育」や長時間保育が必要となっている現実がある。 また、子どもを幼稚園にも保育園にも預けていない親の育児不安や育児ノイローゼの問題などに対応する育児相談や預かりなどの支援や「子育てネットワークづくり」など、新しい方向が幼稚園に求められているのも現実である。 こうした子育て支援について、幼稚園の課題として受けとめ、その方向性について、十分に検討すべきであろう。 |
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(3) | 多様な保育サービスの充実が求められる保育園 千代田区として財政的事情が伴うが、少子化の現状を前にして、また千代田区の人口増・維持対策として、高まる保育ニーズに応える努力が必要である。 多様な保育サービスを充実する上では、保育の質を確保することが重要である。 |
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(4) | 「幼稚園と保育園の連携のあり方」検討を進めるにあたって 検討を進めていく上で、保育の「質」の確保、スタッフや財源的裏付けの検討が必要である。 拙速をさけ、十分な議論の上に「幼稚園と保育園の連携」問題と「幼稚園と保育園の機能と役割のあり方」の結論を出すべきである。 |
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(5) | 第三次長期総合計画「基本構想素案」案に関わって 幼稚園と保育園は子育て支援という点では同じ目的をもって運営されているが、その成り立ちは違い、求める親のニーズも異なっている。今後、それぞれの特色を生かした「相互の交流と連携」を追求していくことが求められていることを「基本構想」「基本計画」に反映すべきである。 |
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6、 | 資料 |
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(1) | 「母親の子育て意識と幼稚園・保育園の役割アンケート」結果 「保育園や幼稚園に期待することや要望したいこと(自由意見)」 「母親の子育て意識と幼稚園・保育園の役割アンケート」調査用紙 |
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(2) | 区職労「幼保の連携」問題プロジェクト検討会の経過 |
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(3) | 「千代田パークサイドプラザ」の点検活動から 多目的複合施設建設の問題点を中心として |
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(4) | 「千代田区の幼児育成のあり方検討会」の報告 | |||