「(仮称)こども園」の設置に関する見解 | |||
2000年10月 「(仮称)こども園」問題対策協議会 議長 宮川 義弘 |
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1、 | はじめに 8月29日、千代田区当局から「千代田区における新たな乳幼児育成のあり方について・・・(仮称)こども園の設置」に関する提案がありました。 その後、区当局は、区職労、都教組千代田支部、保育園保護者、幼稚園保護者等に精力的にこの案の説明を行いました。それぞれの説明会では、さまざまな立場から意見が出ています。 幼稚園、保育園の職員からは、「どうして2002年4月実施なのか」「なぜ、和泉幼稚園といずみ保育園でやるのか」などの疑問が出されています。 幼稚園の保護者からは、「どうしてそんなに急いでいるの?」「うちの子どもは実験台?」など、区のやり方に疑問をもち、アンケート活動を行うなどの動きがあります。 問題点で共通しているのは、区当局の進め方に対して、初めての大きな問題であるにも関わらず、2002年4月にこだわり、あまりにも検討時間を保障していないということです。 区職労は、昨年「幼保の連携問題」を検討していたこともあり、9月7日に、区長に対し「問題の内容からみて検討する時間が少ないので2002年4月実施を延期すること」を申し入れました。 また、都教組千代田支部も10月15日、「2002年4月開園を行わないこと」を教育長に申し入れました。 こうした中で、区職労、都教組千代田支部、区職労保育園分会、区職労学校分会は、10月10日に「(仮称)こども園」問題対策協議会を発足させました。 以下、「対策協議会」で議論した「こども園構想」の問題点について述べます。 |
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2、 | 「幼保一元化」が急に出てきた背景 「幼保一元化」が急に具体的に出てきた背景は、石川区長の選挙公約であり、「千代田新世紀構想」に記述されたことです。 また、石川区長は、「21世紀は都市間競争」ということで、他自治体と違った特色のある施策を打ち出すことに躍起になっていることも「幼保一元化」が急に出てきた要因となっています。 |
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3、 |
区当局の「(仮称)こども園」設置案に対する「見解」 |
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(1) | 「一元化の基本理念」について 「一元化園にふさわしい資格や職種の創設について、国等に働きかける」としていますが、2002年4月から実施するには間に合いません。その間、具体的にどう対応するのかが示されていません。たとえば、新たな職種の創設をしなければ、提案のような幼稚園教諭と保育士の協働は、同一労働同一賃金の原則からみて難しいのではないでしょうか。 そもそも「幼保一元化」とは何かです。国は、「幼保の一元化」に関わって、施設の共用化の推進、教育内容・保育内容の整合性の確保、合同研修の実施、子育て支援に係る事業の連携強化にとどめており、根本的な制度改革を提案する動きはありません。 「幼保一元化」とは、幼稚園と保育園について、制度上の違いを越えて施設や運営、職員体制を一つのものとすると理解できます。区は、これをめざそうとしていますが、全国では完全な「幼保一元化」の施設はまだありませんし、国も制度改革に踏み出そうとしていません。こうした中で、あえて実施するのですから、必要十分な準備があってしかるべきです。 また、今後の検討になりますが、「幼保一元化」による子どもへの弊害はないのか疑問が残ります。 さらに、「幼保一元化」について、区民のニーズがあるかということですが、「一元化」が必要という声は特に聞いていません。 |
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(2) | 「(仮称)こども園の特徴」について |
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@ | 設置条例をつくることになると、和泉幼稚園、いずみ保育園の名称はなくなり、「こども園」のような名称になると考えられます。幼稚園の保護者側からは、「和泉幼稚園がなくなるの」「小学校・幼稚園の統廃合の後、苦労して整えた園歌や園章などどうなるのか」という疑問が出されています。 | ||
A | 「保育に欠ける」という保育所の入所要件を撤廃することについては、「保育に欠ける」人が優先されるのか問題が残ります。「保育に欠ける」保護者を保障しないとなると、区としての保育責務の放棄につながりかねません。 | ||
B | 保育時間の自由な選択といいますが、どういうメニューになるのか明らかにされていません。こまぎれの選択ができるようになると園の運営上、さまざまな問題が出てくるでしょう。また、「長時間の子」と「短時間の子」の間で人数のアンバランスが生じると、子どもにも影響が出てくるでしょう。さらに、親の都合を優先した保育時間の自由選択で良いのか疑問です。子どもの視点が必要でしょう。 | ||
C | 管理運営の「一元化」、幼稚園教諭と保育士が一体となって教育・保育にあたることについては、全国的にも全くはじめてのことです。経験・蓄積がないところからの出発になります。幼稚園、保育園双方の職員が十分な時間をかけて、教育・保育内容のすり合わせと実践が必要となり、そのためには試行と研修が必要でしょう。そうでないと、子どもにしわ寄せがいくことになります。 幼稚園と小学校の関係の調整にも時間が必要です。従来、行事などをいっしょに取り組んできています。「こども園」になり、教育・保育内容、幼児教育も従来と大幅に違ってくる中で、小学校にも大きな影響が出てくるものと予想されます。 同じ仕事をしていくのに、今は保育士と幼稚園教諭の賃金・労働条件が大きく違っています。この点をどう解決するのか重大問題です。この問題が解決されない限り、保育園と幼稚園との一体的な運営は難しいでしょう。 また、「こども園」の職員の所属はどこになるのか疑問が出されています。組織的に「こども園」の管轄をどこに一元化するのか、早急に明らかにすべきでしょう。 施設の一体化について、提案されているパークサイドプラザ(複合施設)では、小学校のエリアも含めて再構築しない限り、「一元化」の施設としては難しいでしょう。「こども園」設置に関する工事は、大規模になることが予測されますが、2002年4月開園予定だと、いつ工事をするのでしょうか。 |
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D | 「一元化」して新たな保育を行うことから保育料が新たに設定されますが、幼稚園保護者の保育料の大幅値上げが予測されます。保護者の納得を得るのは非常に難しいのではないでしょうか。 |
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(3) | 「一元化の必要性」について 「一元化の必要性」が述べられていますが、「一元化が先にありき」となっています。これまでの区の検討からも「一元化」の必要性は十分議論されていません。「一元化」の必要性については、関係者の間で十分議論すべきでしょう。 |
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(4) | 「(仮称)こども園といずみ方式」についての問題点 なぜ、和泉幼稚園といずみ保育園を「こども園」にするのかが疑問です。この地域での保護者、区民から両園を「一元化」する要求は聞いたことがありません。さらに和泉幼稚園では、長時間の保育を行っており、一定の保護者ニーズを満たしています。 区当局は、「一貫した方針に基づく継続した保育ができない」など、「いずみ方式・年齢区分方式」の問題点をあげ、それを改善するとして、和泉幼稚園、いずみ保育園で「一元化」を実施するとしていますが、両園の発足にあたっては、「この施設・運営は一元化しない」といってきたことにも矛盾します。 「一元化」する施設については、小学校との併設であり、また、区民施設なども入った複合施設となっており、「一元化」をするには、ふさわしくありません。「こども園」のスペースを十分確保するには、小学校の領域まで踏み込まなければなりません。さらに複合施設となっているために、どこからでも不審者の侵入が可能であり、子どもの安全上も問題です。 したがって、「年齢区分方式」として出発し、施設も不十分なかたちで運営してきた施設を「一元化」園にすることは、大変困難な課題を抱えています。今、必要なのは、「いずみ」で「一元化」を行うことではなく、和泉幼稚園、いずみ保育園において、「幼保の連携」が十分できるように、施設の改善、運営の改善を行うことこそ必要です。 また、区内部の検討で2001年7月に発表された「幼稚園のあり方研究会」のまとめでは、「保育時間の延長のニーズが強い地域で、幼稚園だけでは十分な対応を図りにくい場合、保育園と一元化した施設として整備していくことを考えるべき」として、具体的には富士見幼稚園の改築に合わせて整備することを提案しています。一ヶ月くらいで今回の「いずみでの子ども園設置」を提案することは、区施策の一貫性と矛盾するでしょう。 |
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4、 | 「(仮称)こども園」設置に関しての総括的な「見解」 以上のさまざまな問題点からみると、「幼保一元化」について、教育・保育内容の十分な職員の検討を保障すべきです。そして、子どもにしわ寄せしないためにも試行を行うことが不可欠です。 また、「幼保一元化」にあたっては、幼保関係者、学識経験者もまじえて、理論面からも十分な検討を行うことが必要です。 和泉幼稚園、いずみ保育園での「幼保一元化」は小学校施設のエリアも含めた大規模な見直し、職員賃金・労働条件の同一化をしない限り難しいといえます。 したがって、和泉幼稚園、いずみ保育園においては、「幼保一元化」をすすめるのではなく、「幼保の連携」が十分できるように、それぞれの施設の改善、運営の改善を行うことこそ、今必要と考えます。 以上。 |
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「(仮称)こども園」設置に関する解明要求 | |||
「(仮称)こども園」問題対策協議会 議長 宮川 義弘 |
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「(仮称)こども園」設置に関して、以下の解明を求めますので、誠意あるご回答をお願いします。 |
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1、 | 一元化に関して | ||
@ | なぜ、和泉幼稚園といずみ保育園で一元化をすすめるのか。2001年7月に出された「幼稚園のあり方研究会まとめ」で富士見幼稚園から一元化を進めるとしたこととどう整合性をとるのか。 | ||
A | 「こども園」は認可をとるのか。 | ||
B | 一元化について、神田東部地域のニーズはこれまであったのか | ||
C | 他の地域に一元化を拡大する考えは、将来も含めてあるのか否か。 | ||
D | 一元化の学問的理論はまだ完成されていないと考えるが、「こども園」設置に関して、学識経験者の意見を聞くことは考えていないのか。 |
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2、 | 教育・保育内容について | ||
@ | 「こども園」の時限ごとの具体的な教育・保育内容を示すこと。 | ||
A | 開園までに職員の研修、実習を保障するのか。 | ||
B | こどもたちの生活、遊びが小学校との関係で守られるのか、考えを聞きたい。 | ||
C | 「試行」が必要と考えるが、いかがか。 |
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3、 | 施設・設備の改善について | ||
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「こども園」の保育室等の配置図、平面図を示すこと。また、改善工事はいつ行 うのか。 |
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A | 小学校と「こども園」は明確に区別できるのか。たとえば、一階の小学校の出入り口はどうするのか。 | ||
B | 今以上にこどもの定数を増やすというが、今の保育室、給食室ではスペース不足である。その点の改善をどう考えているのか。 |
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4、 | 管理・運営について | ||
@ | こどもたちの安全について、外部からの侵入対策はどう考えているのか。 | ||
A | 園歌、園章はどうなるのか | ||
B | 和泉幼稚園、いずみ保育園の名称はなくなると考えてよいか。 | ||
C | 「こども園」の組織体制はどうなるのか。園長は一人になるのか。 |
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5、 | 入園、入所基準について | ||
@ | 幼稚園、保育園の保育料はいくらになるのか。 | ||
A | 「こども園」の入園基準を明らかにすること。 | ||
B |
「保育に欠ける」入所基準を取り払うとあるが、「保育に欠ける子」を優先するのか。
また、区内在住を優先するのか。 |
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C | 年齢における定数を明らかにすること。 |
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6、 | 職員の賃金・労働条件について | ||
@ | 「こども園」に勤務する職員は、どこの所属となるのか。 | ||
A | 「こども園」に勤務する職員の賃金はどうなるのか。「こども園」の設置提案から推察すると幼稚園教諭も保育士も同一労働になると考えるがいかがか。 | ||
B | 教育会、都の研修会、都幼教等への研修は保障されるのか。 | ||
C | 幼稚園教諭、保育士、用務、栄養士、看護士職員の勤務体制はどうなるのか。また、「こども園」の正規、非常勤などの職員体制を明らかにすること。 | ||
D | 時間外手当について、教員の調整手当以外に支給可能か。 | ||
E | 幼稚園教諭について、第2、第4の土曜日勤務はどうなるのか。勤務した場合、代休となるのか。 | ||
F | 幼稚園教諭は、他の幼稚園に異動は可能か。 | ||
G | 事務職を配置する考えはないのか。 |
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7、 | その他 | ||
@ | 「こども園」を民間に委託する考えについて、将来ともにあるか否か。 | ||
A | 千代田区の幼稚園、保育園を民間に委託する考えについて、将来ともにあるか否か。 | ||
以上。 | |||