四番町図書館業務の一部委託についての区職労見解
2002年2月13日
千代田区職労執行委員会

1、  区当局は、四番町図書館業務の一部委託について、2003年1月21日、区職労に提案してきた。この内容は、2002年4月につくられた「千代田区行財政構造改革推進大綱」の中の「民間委託の推進、公共施設管理運営の業務委託」に盛られているものであり、図書館業務運営に精通しない民間の営利企業に委託しかねないものである。これは、当該職場や区職労の「利用者サービスの低下を招く」などの指摘を十分に検討しないままの提案であると言わざるを得ない。

2、  今、東京都及び23区の中で公立図書館の「行革・リストラ」が急ピッチで進行している。財政危機を理由として、新宿区では十館のうち五館、中野区では、八館のうち三館が廃館させられようとしている。
 カウンター業務の委託は、昨年度から江東区、墨田区の委託、来年度から、千代田区をはじめ、足立区、文京区、大田区、板橋区、豊島区、葛飾区、中野区、目黒区などで計画が進められている。
 また、23区図書館資料費の削減は、他都市と比較しても著しく減っている。1993年度に比べ2001年度は、図書館数が184館から214館に増えたにも関わらず、資料費は全体で37億550万3千円から27億6806万8千円となり、約10億円の減少となっている。各区の状況では、1館あたり中野区で70%以上減、豊島区で60%以上減、50%以上減は、千代田区、港区、渋谷区となっている。

3、  四番町図書館は、カウンター業務を中心に委託されるが、委託された区の実状をみると次の様な問題点が指摘される。
@ 個人情報が民間業者に知れることになりプライバシー保護上問題がある。また、延滞・督促、予約本の連絡を通じて個人の家庭状況、病気・医療、思想などを知ることになる。
A カウンター業務は専門的な仕事を含んでおり、安定的、継続的な労働が求められる。しかし、委託実施区の実態では、図書館業務については素人の低賃金で臨時的な労働者とならざるを得ず、ころころ変わるので、カウンター業務の安定性、継続性が保障されない。
B 委託経費3426万円は、非常勤職員とした場合の経費の方が安いのではないかと言う点について検討したのだろうか。
 3年から5年で異動する職員の経験不足と専門性を補うには、区で雇用している非常勤職員が専門性、信頼度の高さの点で必要である。
 サービスの質を保つには、委託職員より専門性があり、比較的に安定性、継続性のある非常勤職員の活用をもっと考えてみる必要があるのではないだろうか。
C 館長は、区職員であるが、歴史民俗資料館長と兼務であるため、図書館業務の細部にわたり目配りできるか不安である。特に、図書館内の危機管理が徹底できるか問題である。図書館は誰でも入れるために、利用者同士のトラブル、痴漢、のぞき見、置き引きなどが発生する。委託職員での対応は難しいし、委託契約に含められないのではないだろうか。
D 委託によりカウンターに入らなくなることにより、業務経験を通じた図書館職員の育成が困難になる。
E 請負契約の仕様書に基づくカウンター業務は事実上できない。従って、区職員から委託職員に対して指示・命令がなされ、業務運営がされることになる。これは、請負契約の趣旨から外れており、違法性がある。

4、  図書館のカウンター業務は、貸出・返却、利用者登録、書架案内、読書相談、フロアーワーク、配架配列見直し、それに伴う資料除籍など、サービスの基本となる業務が行われている。これらの業務を通じて利用者の資料要求を把握して、選書、書架配置、蔵書構成の診断が行われている。また、カウンター業務だけでなくお話し会などは熟練した話し方が必要である。
 カウンターでの利用者の要求・反応が図書館サービスをつくっていく上で重要となっているが、カウンター業務の委託は、サービス対象者の要望を把握しきれず、サービス低下に道を開くものであり、上記に指摘した問題点と合わせて検討した場合、区職労は、カウンター業務などの一部委託といえども賛成はできない。また、一部委託は全面的な図書館の委託の一里塚であり容認できない。
 区行財政効率化のためにどうしても何とかしなければならないのなら、営利企業に委託しないでもすむ方法があるのではないだろうか。今一度再検討を求めるものである。
                                                以上。