イラク戦争問題緊急報告会の内容を掲載しました。(2003年4月)

■イラク戦争問題緊急報告会
やってはいけない戦争をなぜやるのか
 四月十一日夜、労働組合などの機関紙を主に扱っている印刷会社主催の、イラク戦争緊急取材報告会が開かれ、二名が参加しました。これはフリーの写真家で、バクダットからある民放テレビに現地報告を伝えていた久保田弘信さんを迎えて開かれたものです。久保田さんはイラク攻撃が始まる一月前からイラクに入り、四月一日に帰国しました。この日会場には短期間の呼びかけにも関わらず、112名の労働団体・市民団体等の関係者が出席して、生々しい報告に聞き入りました。わたしも空爆の下にいたからこそ言えるイラク戦争の真実を垣間見た思いです。 断片的になりますが、そこで報告された内容をご紹介したいと思います。
報告会では初めに久保田さんが撮られたビデオが上映されました。まずスクリーンには生まれたばかりの男の子を殺されて泣き叫ぶ父親と、その遺体を白い布で包む女性が映し出されました。続いて、バクダットの病院で、先の湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾の後遺症で、白血病に苦しむ子どもたちの姿が紹介されました。イラクでは経済制裁のため医薬品が不足しており、湾岸戦争の傷跡がまだまだ深く残っているようです。そして、約一キロ離れたチグリス川の対岸へ落とされた爆撃で、激しくゆれるホテル内部の様子から空爆の恐ろしさが伝わってきました。その後、久保田さんは自ら写しててきたスライドを見せながら、感じられたことを話され、それに対する会場からの質問が行われました。その中で印象に残ったことをいくつか紹介します。
@ 今、私たちにとって大切なことは、イラクを忘れないこと、関心を持ちつづけることだ。アフガニスタンでは今、危機的な状況にあるが、全く報道もされなくなり、関心も持たれなくなっている。イラクも大変なのはこれからだ。
A バクダットの中流以上の市民は世帯主を残して疎開したが、貧しい人たちは移動することもできず、空爆の中でも黙々と羊を飼っている。彼らは「ブッシュもフセインもない、戦争はいやだ。」と言っている。
B イラクの人たちに「日本は戦争に協力している。すまない。」と言うと、「お前がやっているわけではない。気にするな。」と言ってくれるが、一層つらくなる。
C アメリカもイラクもその被害の真実を語らない。民間人にも大量の犠牲者が出ているのは明らかだ。アメリカ兵も好きで戦争に行ったわけではない。両方にどんな犠牲がでたのかを私たちの手で明らかにして行かなければならない。
D 今、報道のあり方が問われている。イラクに居るときはどんな風に流されていたのかは分からないが、帰ってみてからは、アメリカよりの報道が支配的だと感じる。勝ち組だけではなく負け組の側の報道も両方流すべきだ。判断するのは視聴者だ。
E パレスチナホテルでジャーナリストが死亡したことに、「戦争なのだからジャーナリストが死ぬのは当たり前だ。」という意見を耳にした。また、私たちのことを「他人の不幸で飯を食う一発屋」とまで揶揄する人までいる。どんな人間でも命の価値はみな同じだ。わが国のさる要人が「最小限の犠牲で」などと述べていたようだが、自分の家族でも「最小の犠牲」などと言えるのだろうか。
F 開戦前はイラクの市民に爆撃を軽く見るよなところも感じられたが、実際に始まってみると湾岸戦争をはるかに超える激しさにその表情は違っている。子どもたちの笑顔も空爆の前後では違っている。その違いは空爆前の市民と触れ会ったものでないと分からない。
G (保育園などで子ども達が、「戦争は悪いことなのに、どうしてやっているの」との質問にどう答えますか。との会場からの声に)そういう気持ちを一生持ち続けてほしい。
H ニュースは私たちが作るものだ。偏向するのは流す側にも、黙って受け取る側に責任がある。マスコミに一人一人が、「ここが知りたい」と意見をぶつけることが重要だ。ある番組製作者は「十人からアフガンはと、電話を貰えば特集を組む」といっていた。
 久保田さんは結びに、「もう一度イラクに入ります。そして、アフガニスタンにも入ります。繰り返しになるけれど、イラクに関心を持ちつづけてほしい。」と述べられました。やってはいけない戦争をなぜやるのか、命の価値はみんな同じなんだ、という当たり前の感覚を失ってはいけないと強く感じた報告会でした。
 (久保田さんのアフガニスタンの写真集を購入しました。希望者に貸し出しますので、ご一覧ください。)