「改定千代田区行財政構造改革推進大綱案」に対する区職労見解
成果主義の人事管理と公共性を無視する外部委託は住民サービスの低下をもたらし職員のやる気を損なう・・・職場を奪う民営化は絶対認められない
2004年10月27日
千代田区職労執行委員会
1、 はじめに
 千代田区は、2004年9月24日、「千代田区行財政構造改革推進大綱改定案」を発表した。あわせて、平成17年度から平成21年度までの主な事業の5ヶ年計画である「千代田区第三次長期総合計画・推進プログラム改定案」も発表した。その後、構成を整理し、 「改定行財政構造改革推進大綱案」(以下「改定行革大綱案」という)とした。
 今回発表された「改定行革大綱案」は、成果主義人事管理の更なる徹底により、職員のやる気を引き出し、行財政運営面では、一層の経営的視点を前面に押し出し、新たに指定管理者制度などを使い事務事業のアウトソーシング(外部委託)を実施するとし、まさに国の進める「NPM行革」・「構造改革」路線を忠実に歩もうとしているものである。
 さらに、人件費の削減、経費を削減しつつ住民サービスも充実させる最適な行政サービス提供方法の選択など、組織のスリム化や経営能力の向上等に関する取り組みを引き続き進めていくとし、一定の目標を定め、人員削減とコスト削減を中心に実施しようとしている。また、各年度における取り組みについてアクションプラン(17年度から21年度までの5か年計画)を作成するとしている。
 「改定行革大綱案」は、第3回定例区議会を経て11月上旬の策定をめざしている。
 区職労は、このような「改定行革大綱案」に対し、そのまま実施されるとなると、憲法や地方自治法などによって規定された自治体の公共性(自治体行政の存在理由)が無視され、区民サービスや職員の労働条件に大きな影響を与えることから、多くの点で認めがたいものがある。特に、民営化などで職場(職種)そのものを奪われる職員がでることについて、絶対に認められない。
従って、以下の批判的見解を表明する。

2、 公共性を縮小・解体する自治体の「市場化」の動向
 今日の国の進める「新自由主義的構造改革」は、国家、行政機能の全面的な見直しを宣言し、「官から民へ、国から地方へ」「民間や地方に委ねられるものは可能な限りこれに委ね、行政のスリム化・重点化を積極的に進めるという21世紀型行政システム」の構築を提起している。それは、多国籍企業や高額所得者の税負担を軽減するために、行政の国民・住民に対する公的責任を縮小・解体することによって行政をスリム化するとともに、国家・自治体の事務・事業、サービス分野を「官製市場」として、そこに営利を目的とする大企業を積極的に参入させる方針を提起したものである。
 こうした流れの中にある「三位一体改革」で国から責任だけを押しつけられた自治体は、コスト削減を第1にした自治体経営に走っている。そして、自治体に企業経営の考え方を導入し、業務をアウトソーシング(外部委託)し、あるいは、労働者を低賃金の不安定雇用に代替することにより、人件費を削減することになる。
 また、自治体では、行政評価制度、業績評価制度など民間の経営手法と組織・労務管理を自治体行政に導入し(内部的民営化)、あるいは住民の生活に密着した福祉、医療、保育、教育等の自治体としての事務・事業、サービス等をアウトソーシングする外部委託によって、「市場化・スリム化」を進めている。
 自治体の「市場化」のねらいは、自治体の担ってきた社会保障等の分野に株式会社をはじめとする営利企業を参入させ、ビジネスチャンスを拡大するところにある。
 2003年12月の「総合規制改革会議」第三次答申では、「公共施設・サービスの民間開放の促進」に焦点をしぼり、@PFI、指定管理者制度の活用促進、A道路、河川の占用許可、公園施設の設置管理の弾力化、B公共サービスのアウトソーシングの推進、C公共サービス等の民間開放促進のための手段として「市場化テスト」および民間委託に関する「数値目標」の設定を提言した。
 ここにいう「市場化テスト」とは、「官民での競争入札」のことである。民間委託に関する「数値目標」の設定とは、たとえば「2005年度までに公共部門の15%を民間委託する」などと公約するものである。まさに千代田区の数値目標を定めた行革基本条例は、この例と通じるものがある。
 こうして、自治体の「市場化」をみると千代田区の「NPM行革」もまさにこの通り進んでいるといってよい。

3、 「改定行革大綱案」に対する批判的見解
@ 「千代田区における行財政構造改革とは」自治体の責務を軽視するもの
 「改定行革大綱案」では、「千代田市」をめざした行財政構造改革の推進と地方主権の時代と行財政構造改革の視点として、権限や財政面で真に自立した新しい自治体「千代田市」をめざしていくこと、人件費の削減をはじめとする経常的経費の削減による財政の硬直化防止、施策や事業の選択と集中、コスト意識・コスト情報の共有化等を通じて、限りある経営資源を効率的・効果的に活用し、強固な財政基盤を確立・維持することが肝要である、とふれている。
 しかし、ここで欠落しているのは、自治体として憲法による「地方自治の本旨」に基づき、住民の生活と権利を擁護する「住民の自治組織」としての側面を明確にする視点と、「住民の安全と健康、福祉を保持」する責務を果たす方向性が語られていないことである。
A 「これまでの取り組み成果」を強調するが、現場・職場の状況や区民サービスがどうなっているかみていない
 これまでの「行革大綱」に基づいた取り組み成果を語っているが、もっぱら区当局からみた成果であり、現場・職場や区民の側からみた総括となっていないのが問題である。
 区職労は、人員が減り業務運営に大変苦労している多くの職場があること、また心の病気になる職員が多くなっていること、係長になりたがらない職員が多くなっていることなどから、それらは「行革大綱」の具体化による影響があると判断している。
B 「行革大綱」の考え方は「NPM」そのもの
 「改定行革大綱案」では、民間における経営理念や手法を可能な限り採り入れ、行政の効率化・活性化を図るニュー・パブリック・マネージメント(NPM)など、民間の経営的視点を導入した行財政運営が必要になるとしている。
 「NPM」は、新しい公共経営ともてはやされているが、つまるところ、行政の「効率化」と「市場化」の手法といえる。
 「NPM」の具体化では、一つは、公民間のコスト比較論を全面に押しだし、コストの引き下げをめざす方法である。コスト削減では、自治体サービスの大半は労働集約型の部門に属しているため、そのコストはもっぱら人件費削減につながっていくのである。民間委託や雇用の弾力化(非常勤・臨時職員化など)、これから進められる指定管理者制度による民間委託、市場化テストなどはそのほとんどが人件費の削減をめざすものである。
 ここで問われるのは、人件費の安上がり化をめざす「NPM」は、公務労働の質に大きな変化をもたらすことである。正規職員の非正規化、民間の低賃金・不安定雇用への転化、公務労働のマニュアル労働化による質の低下などが、公務労働に求められる専門性の低下をもたらすものである。
 もう一つの「NPM」の具体化は、公務労働そのものの強化、効率化をめざすものである。
 これは、トップダウン型の行政目標(上から設定された政策目的に従うものであり、極めて局所的・部分的な目標である)に対し、目標管理を徹底させて自治体労働者を動員し、職務面から効率の引き上げをめざすものである。
 ここでの問題は、新たな上意下達方式、目標管理という「自発的強制」を伴う新たな官僚制を生み出すことになる危険性があることである。また、「NPM」は、その成果主義の徹底でも新たな官僚主義を生むことにもなるのである。
C 「内部努力の徹底、職員のやる気に応えるしくみづくり」で職員は本当にやる気を出せるか
1) 「成果主義の人事管理と職員人件費の抑制」で職場はどう変わる?
 成果主義人事管理は、区当局がこれまでの「行革大綱」でもふれていたことであるが、今回は、「職員のやる気に応える人事・給与制度確立」と称して、さらにそれを徹底しようとしている。具体的には職員の能力や業績が給与に反映される制度をめざすとしている。「職員のやる気に応えるしくみ」として職員表彰制度の見直し、職員公募制度、スペシャリスト認定制度を導入するともいっている。

成果主義人事制度は民間で見直されつつある
 民間では成果主義による人事制度が失敗に終わっているところもある。「虚妄の成果主義」(日本型年功制復活のススメ)という本を書かれた東大の高橋伸夫教授の「人は金のみにて働くにあらず」「単純な賃金による動機づけは科学的根拠のない迷信である。仕事の内容による動機づけこそが、内発的動機づけの理論の指し示すところ」「成果主義も年俸制も底を流れるものは切る論理である」「賃金制度は従業員が生活の不安を感じることなく、仕事に打ち込めるような環境をつくりだすために設計されるべき」であると指摘していることはとても示唆に富むものである。
 当局は、「目標管理型人事制度について職員の理解と納得の得られる制度確立をめざす」としているが、上司の客観的な評価や人が人を評価する難しさをクリアーできないものを制度として運用するのには大変問題がある。その結果で賃金に差が出るのには職員は到底納得できるものではない。民間営業成績のように数字で差がでるものは評価がしやすいということはあるが、チームワークで仕事をしている公務職場では職員に差をつけにくいものである。無理矢理つけるとなれば、職員個人の「あら」を探して差をつける以外にないのではないか。また、自らの評価が高まるような目標設定を試みたり、トップへの忠誠度を競うことになるなど、新たな官僚主義が起きてくる懸念がある。

 当局は、国の進める成果主義型人事制度、「NPM行革」・「構造改革」路線に追随するのではく、それこそ住民福祉に徹する区政をめざし、そのための人事制度こそ構築すべきであることを主張したい。

研修参加の余裕なし
 職員の能力開発を重視しているのは、評価すべきであるが、人員削減で職場に余裕がなくなり、研修に思うように参加できない事態が発生していることを重くみるべきである。
 また、研修を通じて「新自由主義な公共経営」や「地方構造改革」の流れによる職員の意識改革も試みられているが、大事なのは、憲法原則や自治体の役割を重視する研修、職員の希望する業務の熟達に必要な研修こそが求められている。

21年度までに約440名削減の無謀
 総人件費の削減では、平成18年度までに300人削減するとしていた方針を修正し、平成17年度から平成21年度までに職員数の概ね2割240名の削減をめざすとしている。これは、平成13年度から平成15年度までに155人削減したことに加え、平成17年度以降も人員削減を続けるもので、実に平成21年度までに約440名の削減となる無謀なものである。
 この提案は、自治体の役割や公共性を無視した人件費削減であり、「小さな政府論」に基づくものである。
2) 「組織・機構の見直し」は住民サービス重点に対応を
 事業部制を定着させ、庁内分権を進め、企画経営能力を高めるとしているが、そもそも民間の事業部スタイルを導入しようとしているところに無理がある。また、庁内分権を進めるといってもボトムアップを認めない強いトップダウンがある場合は難しいのではないか。企画経営能力を高めるには、それに必要な質量の充実した人材が求められるのだが、それにふれないのは納得できるものではない。
 事業部制は、人員配置や予算執行を事業部長が行うことによって、事業部間に効率性を追求し競争を行わせるものである。その結果、年度途中の異動や予算の効率的部門への集中配当など、自治体の役割からではなく経済的利益の視点からの運営に陥るものである。予算の配分では、実態として前年度比マイナスで割り当てリストラを強いるものとなっている。他の自治体では、人員を一人削減すると700万円増額配当するという本来の行財政運営のあり方からずれる動きもでている。

 事業部制における「NPM型の組織内分権」、「分権化予算」に関わる問題点は次の通りである。

・事業部制のねらいは、「選択と集中」の構造が作られ、それによる行財政の効率化にある。
 そこでは、「政策枠」(あらかじめ全体で財源をプールし、「NPM」の理念を活用した施策について、財源を補填するもの)や「インセンティブ(優遇措置)」(例・人員削減するとその分予算が増額になるなど)などをめぐる事業部間の競争と、それをコントロールする戦略経営部門という新たなトップダウンの構造がつくり出される。各事業部に与えられる裁量とは、定められた枠内で既存のサービスをリストラし財源確保をする裁量である。この「分権化」には、職員参加を強めたボトムアップ型の意思決定サイクルを新たにつくり出すような視点は乏しいといえる。

・事業部間の競争によって、区民の視点が遠のくのではないか。
 個々の職員は、事業部のコスト削減競争にかりたてられる一方、「NPMの理念」に適合的な目新しい施策が評価されるようになる。「政策枠」や「インセンティブ」の設定はこれを如実に示している。さらに、「執行部門は住民に身近だから」という理由で形式上は事業部に権限委譲されたとしても、部内に新たな「選択と集中」の構造が作られるため、住民からすれば「NPMの理念」に適合しない要求を執行部門を通じて行政に伝える事が困難になる。「NPM」を通じた自治体内組織関係の権威主義化は、住民に対する自治体の権威主義化に他ならない。

・個々の事業部が担ってきた住民ニーズが競合関係におかれる。
 区の行政分野では、事業部というかたちでの民間経営手法になじむかどうか疑問が残るにも関わらず、画一的に経営組織化が行われ、本来同じ土俵で比較できない教育・福祉・環境・コミュニティなどの諸政策が、競争を通じて無理やり優先順位をつけられ、サービスの削減の危機にさらされる。

・人事任用給与関係の権限委譲によって、公平な人事任用給与の保障が損なわれ、「情実」「恣意的」な結果が起こり得る危険性がある。

・自治体組織における双方向のコミュニケーションが損なわれる。
 トップダウンによる垂直的な組織関係の硬直化が起きるだけでなく、各事業部が競争関係に置かれることで、水平的な組織関係が希薄になり、組織横断的に取り組むべき行政課題や組織間の調整、必要な施策への対応が難しくなる。

ポスト1割削減先にありき
 「改定行革大綱案」は、課・係の再編、統廃合についてもふれているが、業務の進めやすさや区民サービスにあった組織に見直すべきであり、1割(約30ポスト)削減が先にありきで、人員削減の手段とすることが見え見えであり、本末転倒と言わざるを得ない。
D 「経営的視点を導入した行財政運営の確立」では自治体の公共性が損なわれる事態に
1) 民間企業の営利目的に公共施設・業務を明渡すことになる「公共サービスの民間開放の推進」
 「公共サービス向上のための最適なサービス提供方式の選択」というが、まさに、公共サービスを民間企業の営利目的のために開放、餌食にするものである。
 具体的には、民設民営方式、指定管理者制度導入(公設民営方式)、個別の業務委託を推進していくとしている。
 今回の「改定行革大綱案」では、新たに指定管理者制度を導入するところに特徴がある。指定管理者制度は、自治体の「スリム化・市場化」の手段として今脚光を浴びている。この制度は、地方自治法第244条の2の改正により導入されるもので、「公の施設」を第三者に管理させるときには、委託契約ではなく、議会の議決を経て管理者を指定するというものである。この管理者に営利企業が含まれることが、一気に公共業務を「市場化」の波にさらすものとなったのである。
 こうした公共サービスの民間開放方針は、住民の諸権利の保障や自治体の公的責任の後退をもたらすことになる。また、民間事業者が利潤を上乗せした料金設定ができることになり、利用料などが高くなること、利潤追求で人件費を押さえ、結果的に職員の不安定雇用化を促進し、公共業務に必要な専門性を損なう問題がでてくる。
 地方自治法では、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」と決めている。しかし、貸館業務などでは運営が公正に行われるか危惧される。さらに、公共サービスの民間開放では、運営に利用者・住民の意見具申や参加、住民監査請求を含めた運営に関わる住民のチェックが法的に確立されていない問題がある。

「市場化テスト」の導入で公共業務が解体へ
 「市場化テスト」(官民競争入札)の導入で、公共部門の廃止を目論んでいることは重大である。イギリスでは、サッチャー時代に、官民を対等の立場で入札にかけ、価格だけで直接競争させ、入札に破れた公共部門の事業が廃止されていった経緯がある。それがサービスの著しい質的低下を生んだことが反省されている。区当局はこのことをどう考えているのだろうか。

PFIの活用で長期的にみてコストが軽減するか不明
 PFIとは、本来、公務分野にノウハウや資金がない場合、民間企業の資本やノウハウで事業を推進することであるが、実際は民間企業へ丸投げし、公的資金を投入するために行われている。民主制の確保、公的責任や事業費の補助額が適正であるかの判断が難しい、事業・業務の安定性・継続性に問題があるといえるし、長期的にみてコストが軽減されるか不明であり、問題である。
2) 「区有財産の有効活用」の検討は民主的に
 今回初めて、区有財産の活用について、検討を打ち出し、決まるまでは駐車場などにして賃貸料などの収入を得るとしている。しかし、活用の検討について、区民を入れた検討委員会の発足など、区民の目線に立った行政というわりには民主的な手続きを踏む提案がないのは残念である。
3) 「公社等の見直し」は区民サービス低下をきたさないように
三公社の統合による新公社の理念は何か
 現行の三公社の事業を統合・拡充し、民間人材を多数採用し、独自性を発揮した事業展開を行うとしている。しかし、新公社の事業理念が浮かんでこないし、区財政の削減をねらって三公社の寄せ集めを試みたという感が否めない。そうした中での民間人材の多数採用は、後々の雇用問題に発展しかねない危惧が生じる。

「区からの補助・事業委託のあり方を見直す」のは社協などの解体がねらい
 社会福祉協議会などは、本来、区が育成してきたものであり、社会福祉の質・量の維持を図っていくためには、区の補助・事業委託は欠かせないものである。それを民間と競わせることは、社協などの解体につながり、ひいてはそこに働く職員の雇用問題を引き起こすことになるものであり、認めることはできない。
4) 「区民サービス向上のための改善」は区民ニーズを正確に把握して行うべき
 施設・窓口の開館日・開館時間の延長について、区民の利便性とコストを比較検討するとしているが、このことは徹底すべきである。今までは、強いニーズがなくとも区民受けをねらって延長することが多かったのではないか。事実、コスト比較するとどうかとういう施設・窓口があるのは事実であるので、再検討を求めておきたい。また、土、日等拡大にあたっては、職員の労働条件の大きな変更であるので、区職労と十分協議すべきである。

「ITを活用した業務改革」では利用者の格差解消を
 ITの活用は広がっていくと思われるが、利用者の情報格差の解消は大きな課題である。特に高齢者の対応は緊急を要する。
E 「区民の満足度と成果を重視する区政への転換」というが・・・
1) 「行政評価制度の改善、PDCAサイクルの確立」は「NPM理念」と切り離して
 区政運営を充実するため、これまで実施してきた行政評価制度や「BSC」等を改善し、事業の業績を次の事業内容や予算に反映させていく総合的な仕組みを確立するとしている。
 しかし、「NPM」に基づく行政評価制度が抱える問題点は以下のようにある。

・顧客志向あるいは納税者志向で行われる行政評価は、区民の立場の多様性・多面性を捨象(共通性以外のものを捨て去る)している。
 区民の階層など、どの立場に立つかによって評価の対象領域や評価基準は異なってくると考える。

・目標と指標の設定に関わっては、民主制が欠如している。
 行政評価、事務事業評価は、目標設定そのものが、区民参加ではなく区長などの戦略的経営部門によってきわめてトップダウン的に行われている。個別のサービスの縮小・廃止という重要な意思決定が行政組織内部で一方的に決められている。

・指標設定においての操作化の問題がある。
 行政評価一般に共通する問題として、戦略的な目標を指標に具体化する段階で、様々な操作が行われている。

・行政評価システムは行政運営全体にもたらす歪みと硬直化がある。
 一度指標が設定されれば、職員の活動はそれらに縛られることになり、可視的な目標への固執、指標に当てはまらない他のニーズや新たなニーズの切り捨てが生じやすくなる。「革新的な経営手法」として導入された行政評価システムは、実は行政組織を保守的で硬直的なものに変質させる危険性をはらんでいる。
2) 「外部評価制度等の導入」
 すでに福祉部門等で第三者評価を実施しているが、実施業者を変えて行うことや区民および職員側の視点での評価方法の見直しも求められる。
F 「財政の健全化」について
1) 「経常的経費の見直しと財政体質の改善」では公会計の透明制確保、民主的な運営を
 企業会計的手法の活用や予算編成手法の改革等を通じ、健全で弾力的な財政体質の構築に努めるとしている。
 企業会計的手法では、利益を導くためのバランスシートや複式簿記化は浪費的公共投資の事実を隠すだけでなく、効率性、コスト中心の財政運営をさらに進めることになる。さらに各項目の恣意的な設定などによって実態を反映せず、公会計の透明性を阻害するものともなる。
 税金を基本的な財源とする自治体財政は非営利を基本とし、民主的で能率的な運営を行うために単年度予算主義によって歳入・歳出のバランスを取り、透明性の確保を行っていることも再確認すべきである。
2) 「利用者負担の適正化と公平性の確保」というが、負担強化がねらい
 「利用者負担の適正化と公平性の確保」の背景には、顧客志向があり、それは、住民のなかの納税者という側面を重視し、払われた税金に見合ったサービスを提供しようとするものである。公共が提供するサービスには利用負担適正化と公平性の考え方はそのまま適用すべきではないと考える。
3) 「財源の確保」は必要な体制で
 滞納整理を強めるとしているが、それに伴う質と量の職員体制は必要である。また、成果主義を全面に押し出し、ノルマを課すようなやり方は職員および滞納整理される側双方に歪みが生じることになるので避けるべきである。
G 「ともに担う地域経営」では公共性を失わないように
1) 「区政の発進と透明性の向上」では情報格差解消を
 区政情報についてITを媒体として提供していくとしているが、ITを利用していない、しきれない区民への支援や情報格差をなくすことが課題でる。また、IT化は、プライバシー保護や住民管理を強化する手段となる危険性があるので注意を要する。
2) 「双方向での区政情報の共有」では区民の意見を大いに採り入れて
 双方向での区政情報の共有は、21世紀の自治体運営には欠かせないものである。この双方向での情報共有について、職員との関係も同じように築き、区民のためになる仕事を進めて行くことが重要である。
 これまでの区の説明責任は、ともすると政策実行のための説明になっていたように感じる。今回、政策提案型広報をつくっていくことは、区民との意見交換ができるという点で進歩したといえる。

住民参加の積極的な推進を
 計画段階から住民参加を取り入れ、住民自治を促進させることに政策転換すべきである。
3) 「区民・地域との協働の拡充」でコスト削減の手段にしない
 「改定行革大綱案」では公共の担い手として区民、NPO、ボランティア等の支援体制を拡充するとしている。
 NPOの定義は非常に緩やかであり、役員が高額の報酬を受領することも禁止されておらず、実際には営利企業に近いようなものも含めてさまざまなタイプがあるので、協働する場合は注意を要する。また、行政と住民・NPO・ボランティアの協働を目指す場合、@行政がコスト削減の手段とせず、安上がりの労働力の受け皿として利用しない、A住民の側が公共性の再定義の段階から参画できること、Bパートナーを組むときの要件として、主権者としての住民・NPO・ボランティアの自発性を尊重することが重要である。

4、 個別施設・業務の民間開放の問題点
 「行革大綱改定案・公共サービスの民間開放の推進」で示された個別施設・業務について、その問題点を以下に指摘する。
@ 保養施設の民営化または指定管理者制度導入
 箱根千代田荘は民間事業者に無償貸与し、民営化するとしている。ところで地方自治法は健全な財政運営を図るとともに、公共の財産の恣意的な運用を防止することを目的として、自治体の財産の管理及び処分について一定の制限を設けている。すなわち、行政財産は原則貸し付け禁止(第238条の4)である。従って、民間事業者に無償で貸し付けることは、地方自治法に抵触する可能性があるし、自治体の財産を無償で使用し、営利をあげることが公平の原則に照らして問題があるといえる。
A 保育園の民営化または指定管理者制度の導入
 保育所は「市場化テスト」を活用し、その結果、民営化または指定管理者制度を導入するとしている。
 「市場化テスト」とは、行政が提供するサービスのコストや質を民間事業者との競争入札で比較し、官より民がすぐれていれば民間へ業務を移管する手法とされている。
 ここでは、民間との比較をコスト中心で行うことがめざされ、質を比較するといってもあいまいなものとなっている。「市場化テスト」の結果というのは、コストを安くできる民間事業者に軍配があがるのは目に見えている。だからこそ、区当局も保育所について、民営化や指定管理者制度の導入を推進するとしているのである。また、「市場化テスト」することにより区民・利用者を納得させる口実にしようとしていることも見えている。
 民設民営方式は、民間事業者に施設の建設から保育所運営まで任せることである。これを適用しようとしているのが、麹町保育園の建て替えである。今回発表された「推進プログラム」では、一番町計画(民設民営保育園と民間賃貸住宅)を発表し、平成20年度の開設をめざしている。まさに民間事業者(営利企業含む)が区の土地の上に、保育所をつくり、民間の保育所を運営することになる。従って、区立の麹町保育園は消滅することになる。
 指定管理者制度(公設民営方式)の導入によってこども園を除くすべての保育所が民間に委託されることになる。指定管理者制度のもとでは、通常保育以外に、事業者が延長保育、子育て支援事業等、多様な事業を実施することが可能となる。その契約には区は関与せず、民間事業者が直接行う。また、通常保育の時間内において、英語教育、スイミング指導、朝食提供、クリーニングサービスなどオプション保育・サービスを提供するなどして営利を追求することが出てくる。更に重大なことは、指定管理者制度導入の保育所では直営よりも安い金額で管理が委任されるので、非正規職員を中心とした運営にならざるを得ず、保育の質の低下はまぬがれない。
 中野区では、2004年4月に二園で指定管理者制度を導入し、社会福祉法人と株式会社に管理運営を指定した。そして、そこで働いていた区の正規職員は他園に異動させ、全区の保育所で働いていた非常勤保育士29名全員を雇い止めにした。このことは、不当解雇であるとして東京地裁で争っている。
 保育所は、保育士による人的サービスが中心であり、その運営費の80%は人件費である。公立保育所では、勤続年数が長く保育経験に富み、深い専門性を有する正規職員による保育が行われてきた。ところが、民間保育所では、人件費のコストが公立と比較して7割から5割程度で、勤続年数の差がこのコスト格差をもたらしている。民間保育所では、保育士が長く働き続けられる賃金・労働条件が確保されていないことが原因で経験の浅い保育士が多くなっている。低賃金で1年契約など不安定な職場では、保育士が頻繁に入れ替わっている。こうした労働環境のもとでは、専門性は蓄積されず、保育の質が低下したままである。
 公立保育所が存在せず、自助努力と市場原理に委ねられているアメリカでは、保育者の賃金が著しく低いため優秀な保育者が保育の仕事から離れてしまい、学位や経験のない労働者が保育を担い、保育の質が低下していると指摘されている。まさに、日本での保育の市場化・民営化の方向は、アメリカのような最悪の状況になるということである。
B 児童館・学童クラブの運営体制の見直し
 児童館・学童クラブの機能を統合し、民営化するとしている。また、児童館の役割を見直すとしている。
 現行の学校施設を利用した民間事業者によるアフタースクールを拡充しようとしているが、従業員の質の問題や学校管理者との調整の問題など、現場段階では多くの問題を抱えていることが指摘されている。
C (仮称)障害者福祉センター、いきいきプラザ、福祉作業所、岩本町ほほえみプラザ、高齢者センター、西神田在宅サービスセンターへの指定管理者制度の導入
 新規及び既存の福祉施設に指定管理者制度を導入し民営化するとしている。
 これらの中には、すでに区が社会福祉協議会などに運営を委託しているものがある。今回指定管理者制度導入で、他の民間事業者などが指定されると、雇用問題が発生する重大な問題となってくる。本来、社会福祉を進めるために社会福祉協議会は区がつくってきたものであり、公共性は守られなければならない。これを「市場化」の名のもとに解体していくことは問題であり、許されない。
 こうした福祉施設は、公共性、公平性、安心を確保する観点から指定管理者制度の導入があっても社会福祉法人に限定する措置が重要となる。また、指定管理者制度導入のもとでも施設利用者の人権や生活の質、自立支援が的確にできることを条例で規定することが重要である。
D 図書館など社会教育施設運営への指定管理者制度の導入
 新図書館の整備に合わせて指定管理者制度を導入するとしている。
 図書館などの社会教育施設は、パブリックビジネスとして民間企業のターゲットとされている。
 図書館では、館長及び教育委員会が必要と認める専門的職員(司書)、事務職員等を置くものとされており、指定管理者制度導入によっても区職員全員を引き上げることはできない。(図書館法第13条)また、入館料、その他図書館資料の利用に対するいかなる対価徴収も禁止されている。(図書館法第17条)
 しかし、文部科学省は、「今後は館長業務を含めた全面的な民間委託が可能であることを明確に周知」していくとしており、新図書館が出来上がる頃には、全面委託が可能になっているかもしれない。事実、こうした動きをにらんで、山梨県山中湖村ではNPOが指定管理者となって「24時間図書館」をオープンしている。
 社会教育施設への指定管理者制度導入については、@障害者団体や青少年団体の割引制度がなくされる、A利用希望者の多い日曜、祝日などの使用料が値上げされる、B所得によって格差を設けることにより人権保障に格差が生じることなどが問題となってくる。
 社会教育施設は、憲法、教育基本法、社会教育法で保障された住民が健康で文化的な生活を営む権利、学ぶ権利を保障するための施設であることを踏まえることが重要である。そのためには、住民が所得の違いに関わらず、安い費用でこれらの施設を利用できることが当然のことである。
E 夜間受付・防災対策員(災害情報対策員)業務の統合
 夜間受付と防災対策員(災害情報対策員)業務の統合を検討するとしているが、夜間勤務であることが同じである以外は全く別の業務であるのを統合するというのは難しいのではないか。統合のねらいは人員減によるコスト削減であることは明らかであるが、新庁舎整備に関わっての検討は当該や区職労との十分な協議が必要である。
F 保育園・学校給食調理の業務委託
 保育園・学校給食調理の業務委託が進んでいるが、次世代育成支援及び「食育」の観点、教育・保育との一環性と質の確保の点から直営にもどすことを強く要求する。
G 保健所の検査業務委託
 臨床検査、公害検査、衛生監視等に関わる検査業務について、業務の法的根拠、専門性、効率性を勘案し、民間検査機関に委託するとしている。また登録検査機関の活用も考えるとしている。
 保健所業務が年々縮小され、衛生医療行政が後退していることについて、職員は大きな問題意識をもっている。今回の提起は更なる検査業務などの民間検査機関への委託である。
 千代田区が自治体として責任をもって衛生行政を維持管理していくためには、根拠となる科学的数値なくしては今や成り立たない。その検査結果にあってはならない間違いが他の自治体や民間の検査機関において生じ、処分を受けた企業の多大な経済的負担または信用の失墜等に対する自治体の責任問題が厳しく問われたことは、記憶に新しいことである。
 「改定行革大綱案」で示す保健所の検査について、民間の検査機関でできるところはほとんどない。国で決めた精度管理を完全に行い、機器を備え技術者を揃え、随時検体を受け入れ利益を出すことが難しいことだからである。しかも検査の精度について、外部の者が本当のところ知る手だてがないのが実情である。
 また、危機管理を考えてみても、腸管出血性大腸菌O157等の集団食中毒を防ぐのは地道な保菌者検索等の仕事を実施しながら技術を保持し、その上でまた新たな細菌等の研修も実施することが出来てなし得るものである。
 専門性を確保していく面では、人員の確保を確実に行い技術を繋いで行かなくては、責任ある検査を行えないし、そのことは行政全体にも影響を及ぼしかねない。
 「改定行革大綱案」にあるような人員削減では、特殊な仕事をしている保健所の検査や食品監視、環境監視のような仕事は継承できず、行政に混乱を生じていくことが考えられるので、検査委託方針は見直すべきである。
H 道路公園、生活環境条例関係業務の見直し
 道路公園の維持管理、放置自転車・放置看板対策等について、職員配置を変え、委託化を推進するとしている。
 道路公園の維持管理は、委託などにより予算を削減したために、清掃等の不備が街や職員から指摘されている。こうした点をおろそかにせず、生活環境条例関係業務を行う必要があるのではないか。業務変更にあたっては、当該の分会と十分協議を尽くすことが重要である。

5、 成果主義型人事制度及び「NPM行革」・「構造改革」路線ではない行財政運営の道
 以上、「改定行革大綱案」について批判的見解を述べてきた。区職労は、「改定行革大綱案」の方向では自治体の公共性が損なわれ、区民サービスが低下し、職員のやる気も失せると指摘してきた。さて、それではどういう方向が自治体行政にとって展望があるのか、示してみたい。
@ 自治体の役割を再確認する
自治体には公共性、平等性・公平性、継続性・安定性の確保が求められる
 自治体は、本来主権者としての住民の生活と権利を守り、住民福祉の向上のための役割があり、常に公共性を確保していなければならない。
 住民は、権利として平等に自治体の施策を受ける権利がある。基本的に所得の違いによって住民の生活に必要な施策が質的に変えられたり、権利が制限されたりすることがあれば、人間としての生活が平等に保障されないことになる。当然、事業や行政の執行は公平に行われなければ、安心して生活がおくれない。
 住民は、継続的・安定的に自治体の施策を受ける権利がある。しかし、自治体と企業では目的が違うことから継続性・安定性に差がでてくる。たとえば、企業活動の目的は経済的利益の確保で住民との矛盾が生じると企業は利用対象者の利益より企業の利益を優先する。その結果、住民に対する責任を放棄し、常に倒産や撤退の危険があり、福祉を受ける住民の権利が安定的に保障されない。
従って、公共性、平等性・公平性、継続性・安定性の確保が必要とされる自治体の役割を改めて確認して、行財政運営を行っていくことがとても重要である。

自治体は住民の経済的平等を確保する役割がある
 自治体には税や社会保障制度などを通じて、住民間にある所得格差を是正し、経済的平等を実現する役割がある。住民が主権者として人間らしく生活することを保障するためである。従って、効率性は、住民からみた(民主的)効率性であり、自治体には事業目的との関係であえて収益性よりも公共性を重視した事業を展開する義務をもっている。
A 自治体労働者の役割を再確認する
自治体労働者の専門性確保
 自治体労働者(臨時・非常勤含む)について、自治体当局は専門性を確保し、役割分担や研修などによって、十分な働きをするよう条件を整備する責任がある。
 住民は専門的な知識を有した自治体労働者によって、自治体の施策を受ける権利がある。 公務労働の多くは住民とのコミュニケーションを取りながら課題を解決する労働であり、個別性に着目しながら一般的基準の中で、住民の課題を解決するヒューマン労働である。憲法・法令や各基準・他の事業などに精通し、基本を踏まえた専門的で総合的な判断を求められる。自治体労働者は、住民の発するメッセージを受け止め、専門的な知識や経験を発揮して意識的・系統的に生活の中での課題の解決や改善を図っていく専門的な労働である。

マニュアル労働でなく専門的判断に基づく裁量・現場判断が求められるのが公務労働
 自治体労働の主人公は、自治体労働者と住民である。住民要求の多様性に的確・迅速に対応するためにはマニュアルではなく専門的判断に基づく裁量・現場の判断機能が必要である。「市場化」のためのマニュアルは自治体労働を単純労働化させ、住民要求の機械的否定や自治体業務の執行責任をマニュアルに押し付けることになり、また自治体労働者は、自ら基本的知識を基にして考える姿勢を後退させることになる。住民との接し方や住民の生活をマニュアルに合わせることになり、様々に変化する行政需要に対応できないとともに住民の権利や生活を保障できないことになる。

職場からの政策提起ができるように
 企業は利益をあげることが目的で、公的な目的は二の次になる。企業自体が現場から出された住民のための政策提起を積極的に行うことはほとんどない。利益につながらない要求は受け入れられず、そもそも企業内で政策提起の手続きも存在しない。
 従って、自治体労働者が職場から政策提起をすることが重要である。それをトップが否定するようでは、職員のやる気がますます失せる結果となる。

住民からみた(民主的)効率性の追求
 地方公務員法は、民主的で効率的な運営を保障するために制定されている。自治体労働者は、主権者である住民の意思に基づいて効率的に自治体の業務を進めることが必要となっている。従って、日常的な業務の効率性の追求は、コストを中心とした効率性ではなく、住民要求や憲法・法令等に照らして行うことが重要である。

自治体労働者の専門制確保には労働条件確保が必要
 自治体労働者が専門性を発揮しながら住民福祉の向上を図るためには、自治体労働者の「誠意」や「情熱」だけに頼ることはできない。労働者が安心して技能を向上させ、健康で人間らしく働ける環境が必要である。自治体労働者が安定して住民に接するために、そして、自主的・主体的な専門性向上やスキルアップ(訓練による技能向上)の意欲のためにも労働条件の確保が必要である。
 以上のように、自治体労働者の重要な役割を述べてきた。従って、「行革大綱改定案」のめざす成果主義型人事制度による職員づくりやアウトソーシングによる公共業務の民営化等では、職員の質や専門性を確保した自治体運営ができないと断言できる。
B 新しい自治体の姿を展望する
福祉国家を展望する
 「NPM行革」・「構造改革」路線をやめさせるために、地域での住民運動が必要なことはいうまでもない。
 さて、今の動きに対する第三の道は、新しい福祉国家を展望することである。この福祉国家は、「NPM行革」・「構造改革」路線をやめ、グローバル企業の野放図な活動を規制し、日本経済の再建をめざし、農業や地場産業再生への展望をもつものである。地域での経済再建は、地域にナショナルミニマムを保障しつつ、地域経済の再建によって地域を新しい福祉国家の単位としていくものである。
 この福祉国家を展望する動きの中で、地方自治体も福祉自治体へと変わっていくことが求められるのである。

管理からコミュニティ(民主的共同社会)の形成へ
 地方分権は本来、自治体が国の出先機関としての住民統制機関からの脱却にある。主権者たる住民が自ら決定し、自ら運営するという自治体像を追求する必要がある。民主的議論ができるように手続きの確保、情報公開、特権的利益の排除、などを通じて住民が自治体の意思決定に参加することが重要である。現在の「行政改革」として進められている住民参加は、すでに決定された政策・施策のもとでの単なる運営への参加であり、意思決定への参加はトップダウンによって否定されているのがほとんどである。
 新しくめざされるのは、管理からの脱却であり、住民が主人公となるコミュニティ(民主的共同社会)の形成である。

政策提案型自治体へ
 自治体労働者は専門家としての提案を行い、住民とともに議論して生活に関わる自治体課題や将来像を決定していくことが重要となっている。自治体全般や個別課題について提案し、判断するのは住民であるとの基本的立場で自治体から積極的な政策を発信することが求められている。

財政運営の民主的効率性の追求
 今は、財政危機論やコスト効率至上主義のもとで、住民や職員にしわ寄せがいく財政運営がなされている。自治体の役割を明確にし、住民との相互検証を行い、民主的効率性を追求し必要なところに財源をつけるための議論が必要である。

6、 最後に
 区職労は、以上述べてきたように、「改定行革大綱案」やそれに基づく「アクション・プラン」には同意できない。改めて、区当局に対し、「区職労見解」について、聞く耳を持つことを求めたい。
 「改定行革大綱案」に基づく労働条件の変更は労使協議事項であり、交渉による協議を尽くし、かつ協議が整うまで具体的実施をすべきではないことを改めて表明する。
 また、「改定行革大綱案」の内容を区民に伝え、区民との議論を交していくことは、区職労の重要な役割であると考えている。
 区職労は、「改定行革大綱案」が具体化され、職員の労働条件や区民サービスに悪影響を与えるものについては断固としてたたかう決意である。以上、区職労見解を表明する。
以上