次世代育成支援対策支援法に基づく特定事業主行動計画策定に関わる要求書とその解説
 次世代育成支援対策支援法に基づく特定事業主(千代田区)行動計画策定に関わる要求書を決定しました。併せて、要求の解説を示しました。以下、回覧して、要求をご確認下さい。区職労は、この要求の前進めざして、当局と交渉していきます。職場から子育てと仕事が両立できる職場づくりのための要求の前進をめざし、声をあげていきましょう。

千代田区長 2004年10月27日
石川雅己 様
千代田区職員労働組合
執行委員長 小林秀治
「次世代育成支援対策推進法」に基づく特定事業主行動計画
策定に関わる要求書
 「次世代育成支援対策推進法」が制定され、特定事業主(国、自治体等)は、2004年度末までに「行動計画策定指針」に基づき行動計画を策定するよう義務づけられました。
 貴職は、このことに関わって先ごろ職員に対しアンケートを取り、行動計画案の策定を進めていると思います。
 つきましては、行動計画の中に下記の要望を取り入れていただくよう要求したします。

1、 基本的な考え方
@  子どもの権利条約や児童福祉法の理念に基づき、子どもの豊かな成長を保障する社会の形成とそのための条件整備、労働環境の整備の視点から、実効ある行動計画を策定すること。
A  「女性差別撤廃条約」「家族的責任条約」の遵守、母性保護の拡充、「性と生殖に関する健康と権利」の保障、労働時間短縮、仕事と家庭の両立、男女平等が実現する内容とすること。
B  「指針」を理由とし、現行の労働条件を後退させないこと。
C  民間事業主及び他の自治体のモデルとなる特定事業主行動計画とすること。
D  計画策定にあたっては、実施したアンケートを参照し、職員の意見を聞き、かつ行動計画案について区職労と協議を行うこと。
2、 具体的な要求
@ 母性保護に関する権利保障
1) 母性保護の権利を拡充し、権利行使ができるように、適正に人員配置を行うこと。
2) 生理休暇について、制度の周知徹底・啓蒙などにより、取得しやすい職場環境を実現すること。
3) 出産休暇について、産前、産後の日数を改善すること。予定出産日前出産や異常分娩の場合について、特別な対応を取ること。
4) 産休代替職員制度をつくること。
5) 妊娠初期休暇(妊娠初期障害)の日数等の改善を行うこと。
6) 更年期・不妊治療に関わる措置等について制度化すること。
7) 「均等法」22条・23条に基づく、母子保健健診休暇改善、母親・両親学級への参加について、休暇として制度化すること。
8) 妊婦の時短休暇制度を設け、労働軽減を図ること。
9) 妊産婦の危険有害業務、深夜労働、時間外労働の原則禁止を制度化すること。
10) 母性保護に関わる定期健康診断項目の改善を行うこと。
11) 妊娠4ヶ月未満の流産についての休暇を制度化すること。
12) 育児時間について、3歳までに期間延長するなどの改善を行うこと。
13) 出産補助休暇の期間延長(最低5日間)などの改善を行うこと。
14) 権利行使により、人事異動、昇任・昇格・昇給について不利益扱いを行わないこと。
A 仕事と家庭生活の両立のための要求
●育児休業の取得しやすい環境をつくるために
1) 育児休業制度について、正規職員及び任期付フルタイム職員による代替制度を確立すること。
2) 男性の取得を促進する対策を講じること。特に、給与上の不利益を是正し、取得を促進すること。さらに、男性を対象とした育児休業取得促進の研修を行うこと。
3) 給料・退職手当などにおける取扱いを改善すること。
4) 育児休業手当金について、休業中全期間を通じて支給し、増額すること。
5) 育児休業中の一時金の勤勉手当について、期末手当と同様の支給率とすること。
6) 育児休業に伴う復職時の給料調整について、改善すること。
7) 育児休業からの職場復帰については、職場情報の提供や研修など、復帰までのプログラムを個々に作り対応すること。
8) 臨時・非常勤職員にも育児休業を適用すること。
9) 育児休業制度について、所属長を含めた短時間研修を行うなど、制度の周知徹底を図ること。
10) 育児時間の取得期間について改善すること。
11) 育児休業制度及び育児時間でカバーしきれない問題を解決するための「仮称保育時間」制度をつくること。
●介護休暇・子の看護休暇等の改善にむけて
1) 介護休暇の改善を行うこと。
2) 介護休業手当金の改善を行うこと。
3) 子の看護休暇について、日数や休暇の対象等の改善を行うこと。
4) 子どもの保護者会、授業参観、予防接種などに出席するための「子育て休暇」を新設すること。
●公的保育の拡充について
1) 公的保育の解体を進める指定管理者制度の導入、民設民営などによる営利企業の参入 を促進しないこと。
2) 国による保育の一般財源化に反対すること。
3) 区立保育所を維持すること。また、保育料の引き上げを行わないこと。
4) 学童保育や児童館の民営化を行わないこと。
●時間外労働縮減、勤務時間に関わる要求
1) 労働時間を短縮し、年間1800時間とすること。
2) 時間外労働を減らすこと。
3) 休日・週休日労働を減らすこと。
4) 家族的責任をもつ男女労働者の時間外・休日・週休日労働、深夜労働を免除すること。
5) 勤務時間について、次世代育成支援対策の観点から、子の養育・保育に関わって、育児時間及び育児休業が取得できない職員について、何らかの対応をすること。
●休暇の取得促進
1) 年次有給休暇の取得促進を図ること。そのために、職場の条件整備や職員の計画的な年次有給休暇の消化で取得促進を図ること。
2) 土、日と連続して休暇が取れるようにすること。
3) リフレッシュ休暇の拡充を行うこと。
●その他
 「次世代育成支援対策推進法」に基づいた人員対策に関わっては、正規職員を基本とし、不安定雇用労働者の拡大を行わないこと。
以上

<要求の解説>
行動計画策定の取組みの意義
 2003年7月、「少子化対策基本法」、「次世代育成支援対策推進法(以下推進法)」が成立し、2004年度中の「行動計画」づくりが進められています。2004年6月には、「少子化社会対策大綱」もだされ、政府あげての少子化対策が進められようとしています。
 「推進法」では「次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」(第3条、基本理念)とし、国、自治体に「総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない」(第4条)としており、国、自治体の実施責任があいまいにされ、国民相互の社会連帯によって進めていくことが強調されています。また、違反しても罰則規定がないこと、財源に関する法的裏付けがないなど問題を含んでいます。
 少子化問題の背景には、小泉「構造改革」によるリストラ推進、労働法制の改悪などによる若年層の急速な雇用の不安定化や低収入化、長時間過密労働、男女差別や格差、社会保障制度の切り捨て、保育への企業参入や民営化、教育環境の悪化など「誰もが安心して子どもを産み育てられる社会」とはほど遠い日本の現実があります。政府・企業が責任を持って、有期雇用など不安定雇用の規制、労働時間の短縮や育児・介護休業制度拡充、男女賃金格差是正、ILO条約など国際的な労働水準への引き上げで人間らしく働くルールの確立、保育・福祉の公的拡充、性別や役割分業意識の克服など条件整備をすすめることこそが求められています。
 「推進法」は、深刻な少子化に対して、「国、自治体、企業による対策が求められていることを認めた」ことは重要な側面であり、子どもをほしい人が安心して生み育てやすく、子どもが育ちやすい環境を整えるための総合的な施策をすすめる点では積極面も持っています。積極面を最大限活用して、行動計画策定、要求前進をめざしていくことが求められています。
策定にあたって取り組みの基本
@ 人間らしく働くルールの確立、誰でもが安心して子どもを産み育てられる社会の実現 をめざす観点で行動計画策定の取り組みを進めます。
A 策定に関わって、労使で協議することを求めていきます。
B 子どもの権利条約や児童福祉法の理念に基づき、子どもの豊かな成長を保障する社会 の形成とそのための条件整備、労働環境の整備の視点から、行動計画策定の取り組みを進 めます。
C 特定事業主行動計画を策定する際には、日本政府が批准した「女性差別撤廃条約」「家 族的責任条約」の遵守、母性保護奈拡充、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生 殖に関する健康と権利)の保障、労働時間短縮、仕事と家庭の両立、男女平等が実現す る内容とすることを求めていきます。
D 「指針」を理由とした現行の労働条件の後退を許さず改善をめざします。
E 民間(一般事業主計画)のモデルとなる特定事業主計画を求めます。
F 正規、臨時・非常勤、「関連職場」の均等待遇を求めます。
G 計画作りへの職員参加の重視、職員の英知を結集め、必要な情報の公開を求めます。
「指針とは」
 2003年8月に出された「行動計画策定指針」です。そこでは、特定事業主(自治体)行動計画の策定にあたり、「基本的視点」として、@職員の仕事と子育ての両立、A機関全体で取り組む、B機関の実情を踏まえた取り組み推進、C取り組みの効果、D社会全体による支援、E地域における子育ての支援の6つが掲げられている。計画内容に関わっては、「計画策定にあたって踏まえるべき重要な次世代育成支援策」として、@勤務環境の整備に関する事項、A地域における子育て支援の柱にそった13項目が掲げられています。

「指針」の問題点
@ 「指針」の全般的な内容は、職場優先で、家庭や子育て優先の意識が薄くなっていま す。仕事と子育ての両立の観点で、既存制度での自助努力的なものではなく、業務の内 容や体制の見直しなどが強く求められます。
A すべての労働者の労働時間短縮の観点が不足しており、超過勤務(時間外労働)の縮 減に留まっています。子育て期になる20代・30代の過労死・過労自殺が増えている 現状で、総労働時間短縮が制度として確立していません。
 また、雇用の流動化を一方ですすめ、正規職員(労働者)雇用に消極的で、臨時・非 常勤職員など不安定雇用の増加やフリーターの増加などの社会体制では、安心して子ど もを生み育てる環境ではありません。また、家族的責任をもつ労働者の時間外労働(所 定外労働)と深夜労働の免除請求に対する使用者の拒否権(公務の運営に支障がない限り)は廃止すべきです。
B 年次有給休暇の取得促進ではなく、育児休業・介護休暇等の制度として確立し、国及 び自治体の予算・財政措置が必要です。
 以上のような問題点の改善、自治体労働者の権利や労働条件および賃金に関わる改善などについて、労使交渉を中心に作り上げていくことをめざします。
母性の保護について
生理休暇
 生理休暇は、「生理日の就業が著しく困難な女子に対する措置」(労働基準法第68条)です。正規・非正規雇用に関わらず、法的に認められている権利であり、妊娠・出産する、しないに関わらず、女性の健康のためには重要な権利です。生理休暇の取得率は年々下がり、服薬しながらの勤務者も少なくありません。生理中に就業すると、妊娠中の出血・貧血、そのほか流産などの異常出産が多くなることから、本人の健康と母性の保護のために必要です。また、生理中は精神面でも不安定になり、作業の過失やまちがいが多くなりやすく、災害につながることからも第三者保護としても重要です。
妊娠・出産にともなう制度
ア) 産前休暇(労働基準法第65条)
申請があれば、必ず休暇を与えなければなりません。また、出産予定日より出産が遅れた場合その分だけ延長されるものです。このことにより産前産後休暇を調整させることが必要です。
イ) 健康診査休暇(通院休暇)(男女雇用機会均等法第22条で義務づけ)
ウ) 母親・両親学級への参加休暇(同上)
エ) 妊婦の時差出勤制度(同23条)
オ) 妊娠障害休暇・つわり休暇
カ) 妊産婦の労働軽減、深夜業・時間外労働・休日労働の禁止
・妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければならない。
(労基法第65条の3)
・妊産婦が請求した場合には、時間外・休日労働をさせてはならない。
(労基法第66条の2、3)
・妊産婦が請求した場合、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない。
変形労働時間制の禁止。(労基法第66条の1)
キ) 産後休暇(労働基準法第65条)
ク) 配偶者出産補助休暇(人事院規則15−14 第22条第9号)
(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第19条)
ケ) 育児時間(労働基準法第67条)
休暇中の賃金・生活保障等経済的支援、解雇の禁止、権利行使と不利益扱いの禁止

<参考法令>
男女雇用機会均等法
(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)
第22条
 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない。
第23条
 事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。
2 労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針(次項において「指針」という。)を求めるものとする。
労働基準法
(産前産後)
第65条
 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
2 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
第66条
 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第32条の2第1項、第32条の4第1項及び第32条の5第1項の規定にかかわらず、1週間について第32条第1項の労働時間、1日について同条第2項の労働時間を超えて労働させてはならない。
2 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第3項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
3 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

(育児時間)
第67条
 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。
(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
第68条
 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
人事院規則15−14(職員の勤務時間、休日及び休暇)
(特別休暇)
第22条
 職員の妻(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)が出産する場合で、職員が妻の出産に伴い必要と認められる入院の付き添いなどのため勤務をしないことが相当であると認められるとき、人事院が定める期間内における2日の範囲内の期間
育児休業の取得促進を
 育児休業の取得をすすめるためには、取得に伴う職場や仕事上への不安を取り除くこと、取得による昇任・昇格など働き続ける上で何らかのペナルティにならないという制度的な整備を進めることがたいへん重要です。

 育児休業は無給であり、共済組合等から育児休業手当金が支給(給料の40%)されていますが、取得できる期間が、子どもが3歳になるまでに延長されたにもかかわらず、支給期間は1歳未満など所得保障というには不充分です。また、共済組合法改正に伴う支給の上限設定がされました。このことを踏まえた対応が求められています。
 一時金のうち、期末手当については、休業期間の2分の1を在職期間としてみなしますが、勤勉手当については切り捨てられています。また、育児休業中は勤務をしなかった日として昇給がなく、復帰時に休業期間の2分の1が勤務したものとみなされます。
 いずれも育児休業の取得がペナルティの対象となるような取り扱いは改善すべきです。

 休業中の代替保障は、たいていの場合不充分であり、結局は職場の同僚に負担をかけるケースが多い実態にあります。こうしたことも取得を事実上困難にし、男性取得がすすまない原因ともなっています。従って、正規職員等による代替制度は必須の課題です。
 スムーズな職場復帰ができるかどうかも、大きな不安要因となっています。休業中から様々な技術情報や職場の様子などを伝えることなどを含め、きめ細かい復帰へのプログラムを当局が準備することが重要です。

臨時・非常勤職員への適用を
 形式的な空白期間をおいて脱法的に雇用が継続されている臨時職員や非常勤職員への適用も重要な課題です。このことについて日本弁護士連合会は、千葉市に雇用されている非常勤職員からの訴えに応え、総務大臣に対し「少なくとも実質的に継続して雇用され、常勤としての勤務実態を有する場合は、育児休業及び看護休暇を取得できるよう、地方公務員の育児休業等に関する法律の改正も含めて適切な措置をとる」よう勧告しました。同じ有期雇用でも、民間では更新されていれば取得可能であるのに、少子化対策基本法で「必要な雇用環境を整備」すべき国や地方公共団体が、雇用を継続したにもかかわらず育児休業認めないのは、差別的な取り扱いであり改善は急務です。

 さらには育児休業制度の積極的な活用へ向け、該当者にとどまらず、人事担当者や管理職を含め制度についての正確な理解を深めることが大事です。
 育児休業の取得をすすめるためには、取得に伴う職場や仕事上への不安を取り除くこと、取得による昇任・昇格など働き続ける上で何らかのペナルティにならないという制度的な整備を進めることがたいへん重要です。
時間外労働、深夜勤務の規制を
(1) 1月24時間、1年150時間を超える時間外労働(超過勤務)の制限(育児・介  護休業法第61条15項)
(2)  深夜勤務(午後10時から午前5時)制限(育児・介護休業法第19条1項、第6  1条23項)
 以上については、最低限の法規制を遵守する必要があります。なお、法は最低基準であることを明確にして、当局の対応を求めることが重要です。

<参考法令>
育児・介護休業法
第19条
 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、午後10時から午前5時までの間(以下この条において「深夜」という。)において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。
1、当該事業主に引き続き雇用された期間が1 年に満たない労働者
2、当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同 居の家族その他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者
3、前2号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理 由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの
第61条
 地方公務員法第6条第1項に規定する任命権者又はその委任を受けた者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第37条第1項に規定する県費負担教職員については、市町村の教育委員会)は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する地方公務員法第4条第1項に規定する職員であって第19条第1項の規定を適用するとしたならば同項各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、深夜において勤務しないことを承認しなければならない。

時間外労働の規制
 年間360時間を超えて超過勤務をさせないよう努めること(「超過勤務の縮減に関する指針について」平成11年人事院職員局長通知)や36協定においても年間の延長限度時間は360時間(月間45時間)とされています。(「労働基準法第36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」)
 しかし、非常に緩い基準であるので、超過勤務の規制を成るべく厳しくすることが求められます。

過重労働の防止
 職員の意識啓発については、「過重労働による健康障害を防止する事業者が講ずべき措置」(平成14年2月12日厚生労働省)、「賃金不払残業の解消を図るための講ずべき措置等に関する指針」(平成15年5月23日)等の周知を徹底し、サービス残業はもとより過重労働を防止するとともに、適正な職員の配置と業務の見直しにより、特定部署や職員への業務が集中することがないよう強く要求していく必要があります。

「仮称保育時間」と保育に関わる勤務時間の特例について
 「仮称保育時間」の要求は、新設要求です。現行制度で育児休業や育児時間制度がありますが、3歳未満となっており、それ以上の子の養育・保育に関わっては、遠距離通勤や保育所事情などにより仕事と子育てが両立しにくい場合があります。この点を解消するように、今の制度の他に保育時間制度として要求するものです。
 また、区の独自制度としての子の養育・保育に関わる勤務時間の特例(8時半から9時まで)が廃止されました。これを一部補うものとして、時差勤務が導入されましたが、不十分となっています。
 次世代育成支援対策推進法ができ、事業主としての区が職員の子育て支援を行うことが義務づけられたことにより、区が勤務時間の特例を廃止したことは、法律の趣旨に逆行するものです。
 区職労は、この点に関し、有給による職免制度を求めています。

安全衛生委員会の確立及び充実
 安全衛生委員会の開催は一定規模以上の事業場に対して、労働安全衛生法において月1回以上の開催が義務付けられています。委員会を形骸化させずに、安全管理者や安全衛生推進者は各職場や支部・分会の意見を反映し活性化させることにより、公務災害や職員の命と健康を守っていくことが重要です。
職場と家庭生活の両立のいっそう推進
 平成16年8月6日に人勧と併せて報告された「公務員人事管理に関する報告」の中で勤務環境と服務規律の整備を検討すべき課題として掲げ、「多様な勤務形態に関する研究会」の中間取りまとめを受け、職業生活と家庭生活の両立支援策を一層推進するとしています。その両立支援策として、育児を行なう職員の部分休業の拡充、短時間勤務の導入、男性職員の育児参加促進策などについて検討するとしています。
 2004 年通常国会で、自治体にいっそうの不安定雇用労働者を拡大する「地方公務員法の一部改正」「任期付き職員の採用に関する法律の一部改正」が成立しましたが、この制度を安易に正規代替として利用させないようにしなければなりません。
 両立支援策を取り入れる際には、既存の労働条件が後退しないようにすることと、制度の自己選択の自由が確保されなければならないものです。