2004年賃金確定に関わる要求書
 特別区人事委員会は、本年10月8日、職員の給与に関する「報告」を行いました。公民較差について平均82円(0.02%)としながらも、「4月の時点で職員の給与と民間給与がほぼ均衡する結果となった」として給与改定を見送り、一時金についても民間の支給状況と均衡しているとして現行支給月数に据え置くなど、本年の人事院勧告に追随する内容となっています。
 「勧告」が行われないことで、2年続いたマイナス勧告や5年続いた一時金の削減が押しとどめられ、国同様に給与の前年水準を維持するものとなっていますが、高い住居費や教育負担に苦しむ首都圏・東京での生活実態や、依然として他都市と比べ低水準にある特別区の賃金水準、さらに社会保障費の急激な負担増などが強いられている私たち千代田区職員にとっては、実質的な「賃下げ勧告」となっています。
 一時金についても、今年の夏季分の民間支給状況が改善されている中での据え置きであり、納得のできるものではなく、総務省の家計調査結果における支出額や、人事院、各人事委員会の発表する標準生計費が大きく上昇している実態からも、特別区人事委員会の対応は極めて不満であると言わざるをえません。
 また、特別区人事委員会は、能力・業績及び職責に基づく新たな人事・給与制度の構築に向けての「意見」を述べていますが、職員の給与を決定する制度や仕組みの改正は、基本的にすべて労使協議事項であり、拙速を避けた十分な協議と合意が必要です。
 なお、本年より特別区人事委員会は、通勤手当を公民の比較給与種目から除外しました。人事院は、来年から除外する方向を検討しており、特別区人事委員会が今年の公民の比較給与からいきなり外したことは妥当性を欠くものであると考えます。
 賃金確定交渉を開始するにあたり、私たちは本年の特別区人事委員会「報告」の真剣な精査を求めるとともに、昇任・昇格・昇給制度の改善などを含む要求事項を、7課題26項目として具体化しました。
 貴職におかれましては、私たちの主張を十分に理解されるとともに、下記のとおり要求事項を提出しますので、国・総務省等からの不当な「指導」に屈することなく、特別区及び千代田区の自治の立場を堅持し、自主的・主体的に決断して回答されるよう要求します。


一、 賃金等の改善について
 2004年特別区職員の賃金改善については、大都市東京の生活実態に相応しいものとすること。
 業務職給料表について、行(一)横引き体系を堅持すること。
 再任用現業系職員に適用される給料表について、行(一)横引き体系とすること。
 調整手当については、給料表額への繰り入れをはかるなど、制度改善を行うこと。
 再任用職員の賃金についても、定年前職員に準じ、大都市東京の生活実態にふさわしいものとすること。
二、 例月支給諸手当の改善について
 扶養手当について、教育加算の増額など現行支給額の引き上げを行うとともに、配偶者が扶養親族でない場合の第一子等への加算制度を新設すること。
 扶養手当認定限度額を引き上げること。また、扶養手当認定限度額との整合性をはかるため、共済組合の扶養認定基準及び所得税の非課税限度額について、引き上げを行うよう関係機関に働きかけること。
 住居手当について、特別区職員の住居費支出の実態を踏まえ、手当のあり方を含めた抜本的な改善を行うこと。
 通勤手当について、引き続き制度改善に努めること。
 また、支給方法が6箇月定期券価額での支給・原則年2回の支給に変更されたことにともなう職員の負担増を軽減すべく、措置を講じること。
 東京23区清掃一部事務組合に派遣されている特別区職員の特殊勤務手当については、清掃特殊勤務手当が支給されないなど、同一職場・業務にもかかわらず東京都派遣職員との格差が生じていることから、派遣を行う当事者として改善へ向けて必要な対応を行うこと。
三、 一時金の改善について
 支給月数の算出において公民で比較ベースが異なっているなどの現状をふまえ、大都市東京にふさわしい支給水準とすること。
 「加算措置」については、その適用範囲を行政職・業務職ともに拡大し、また、加算区分についても改善を行うこと。
 勤勉手当は廃止し、期末手当に一本化すること。
四、 賃金決定基準の改善について
 都道府県行政とは異なる、基礎的自治体である特別区にふさわしい人事・任用・給与制度に改善すること。
 昇任・昇格制度を改善すること。
(1) 昇任・昇格制度について、一職二級制度の維持・改善を行うとともに、定年退職時には行政系では6級、現業系では4級に到達できるよう、制度の改善及び運用を行うこと。なお、統一交渉で合意した昇格率については、誠実に履行すること。
(2) 当面、現業系4級特別昇格特例取扱の選考資格基準年齢を、55歳からとすること。また、有資格者の実態を踏まえて本則の実施率とは別枠とし、有資格者の5割以上を昇格させること。
(3) 係長長期選考の昇任率を有資格者の実態に合わせて改善し、行政系6級特別昇格の特例取扱を制度趣旨に即して実施すること。
(4) 男女共同参画社会をめざして、特別区職員の男女別昇任・昇格の実態を踏まえ、男女間格差の解消に向けた具体的な改善策を提起すること。
 昇給制度の改善を行うこと。
(1) 昇任時特別昇給制度の拡充をはかること。
(2) 給料表の枠外者の救済のため、給料表の足のばしを行うこと。
(3) 人工透析等にともなう病気休暇の取得による、昇給制度等の不利益措置を引き続き改善すること。
 ホームヘルパーの職の安定的なあり方について、早期に結論が得られるよう協議を進めること。
五、 労働時間短縮の促進・休暇制度の拡充について
 土曜閉庁職場の拡大をはじめ、「1日当たりの労働時間」を短縮し、週40時間を下回る勤務制の条例改正に、引き続き努力すること。
 超過勤務の縮減と年次有給休暇の取得を促進し、年間総実労働時間のより一層の短縮をはかること。併せて、厚生労働省「基準」の遵守等、そのための条件整備をはかること。
 超過勤務手当の割増率について、「100分の150」にすること。また、深夜超過勤務及び休日給については、「100分の200」にすること。
 取得しやすい育児休業や介護休暇をめざして制度の拡充を行うこと。また、育児休業・介護休暇の取得にかかわる、昇給制度など賃金・一時金・退職金措置の改善、休業手当金の支給期間・割合の改善を行うこと。
六、 福利厚生制度の充実について
 福利厚生制度の一層の充実に向けて、引き続き努力すること。
 防災及び災害対策用を含め、区内及び近距離に職員が居住できるよう職員住居援助施策の一層の拡充に向けた対応を行うこと。
七、 その他の要求項目
 公務員制度の民主的改革をはかるため、ILO勧告にそった労働基本権の完全保障など、関係法規の改正に向けて、政府関係機関への働きかけを行うこと。
 年金制度について、給付削減や保険料引き上げによる国民・労働者への負担強化ではなく、公的責任を一層拡充していくことをはじめ、介護保険・医療保険など社会保障制度全般の改善に向けて、政府関係機関への働きかけを行うこと。
 住宅・年金財形貯蓄については、育児休業取得等による1回の中断が2年を経過すると、その超過した日以降につく利子等が課税扱いとなることや、損保の一般財形については、1回の中断が2年を超えると解約扱いとなる約款規定が設けられていることから、育児休業取得期間の延長に伴い、財形貯蓄の積立中断期間を3年間まで延長するよう関係機関へ働きかけること。
以上








■現業系人事制度要求書について
「現業系人事制度」要求書

 貴職におかれましては、日頃より千代田区職員の労働条件改善のためにご尽力いただき、あらためて敬意を表します。
 さて、本年5月に区長会より特区連に対し、「技能系人事制度改正骨子案」の提示が行われました。特区連と区職労は、「『技能系人事制度改正骨子案』に対する特区連の主張と要求」をまとめ、特別区及の役割や職場・業務の実態を踏まえた職のあり方と位置付けについて意見を述べ、基礎的自治体である特別区・千代田区にふさわしい現業系人事制度として、行(一)横引き体系の任用給与制度が必要であるとする基本的主張と要求を明らかにしてきました。
その後、7月に入り、区長会は「技能系人事制度改正案」を特区連に提示しましたが、提案内容は、東京都の現行制度をほぼそのまま引き写したものであり、特別区・千代田区の現業職場の実態や業務内容に沿った人事制度案とは言い難く、特区連が示した主張や要求に何ら応えるものではありませんでした。特区連と区職労は、「『技能系人事制度改正案』に対する特区連の反論(「特区連の主張と要求」への追加見解)」を発表し、区長会提案が、職種や職場の相違による差別・分断を特別区に持ち込むものであること、給与水準全体を大きく低下させることにつながることを指摘し、提案を容認できないことを表明しました。しかし、区長会は、人事制度に関する特区連との積極的かつ具体的な協議を十分に行うことなく、10月1日に、業務職給料表の「行(一)横引きの是正」を突如として提案してきました。提案内容はもちろんのこと、交渉の進め方としても納得のできるものではありません。
特区連と区職労は、給与水準の引き下げには断じて応じられないことをあらためて表明するとともに、貴職が一方的な任用給与制度の押し付けを行うことなく、交渉経緯を踏まえて、特区連との積極的かつ具体的な協議を行うよう求めるものです。
つきましては、下記のとおり「技能系人事制度改正案」に対する特区連と区職労要求を提出いたしますので、現業系職員の士気の高揚や職場の一層の活性化に向け、誠意ある回答を行うよう要求いたします。



一、基本要求

1 新たな任用制度の構築にあたっては、現業系職員の士気の高揚や職場の一層の活性化を図ることを目的とし、経験に裏打ちされた知識・技能が生かされる制度、職の安定と活性化により職員が安心して働き続けられる職場づくりに寄与する制度とすること。
2 現業系職員が住民生活と直結した責任ある仕事を行政系職員と共に担い、職場全体のチームワークで仕事を遂行し直接住民サービスを提供していることや、一職場の職員数が極めて少数であることなど、基礎的自治体である特別区・千代田区の役割や事情・条件に沿った制度とすること。
3 現行制度の導入にあたっても、特別区の役割、事情・条件を踏まえた任用制度・給与制度を構築する理念の下に協議が行われ制度設計がなされたことを踏まえ、行(一)横引き体系の任用制度とするとともに、現行4級への到達を引き続き保障する制度とすること。
4 東京都や他都市と比較しても低水準にある特別区現業系職員の給与水準実態を踏まえ、かつ、現業系職場における公務の役割を存分に発揮し、仕事への意欲と働きがいの持てる制度として、行(一)横引きの給与制度を維持すること。
5 特定の職種・職務や職場のみに適用されるなど、職種・職務、職場間における差別・分断をもたらす制度としないこと。
6 新制度への移行にあたっては、必要な経過措置を行うともに、現給を保障すること。
7 協議にあたっては、特別区により相応しい制度の構築へ向けて、拙速を避け双方の認識の一致点を拡大させる方向で進めること。

二、任用制度要求

1 職級構成
4層制の人事制度とし、1級職、技能主任主事職、技能長職、統括技能長職をすべての区に設けること。
(1)新1級職
  現行の1級職と2級職を統合し、新1級職とすること。
(2)技能主任主事職(新2級職)
行政系の主任主事と同様、実務経験豊かな現業系職員の職とし、長年の経験を生かす職とすることを「設置目的」として設置すること。
(3)技能長職(新3級職)
技能系職員の指導・育成、若しくは、高度の知識と経験を生かすことを「職責」として設置すること。
(4)統括技能長職(新4級職)
技能系職員の指導・育成にあたるとともに、困難な業務を処理することを「職責」として設置すること。

2 任用資格基準
23区統一の基準とし、行(一)任用基準を基本に以下のとおりとすること。
(1)技能主任主事職
技能主任主事については、短期選考と長期選考を行う。
@ 短期昇任選考   新1級職歴12年以上 年齢50歳未満
A 長期昇任選考   新1級職歴17年以上 年齢40歳以上58歳未満
満18歳以降の職務に従事した期間の2分の1として6 年を限度に前歴通算を行う。
(2)技能長職     技能主任主事歴5年以上 年齢58歳未満
(3)統括技能長職   技能長歴3年以上 年齢42歳以上58歳未満

3 職の設置数
技能主任主事職、技能長職、統括技能長職について、それぞれ有資格者に対する昇任率を23区統一で定め、その数とすること。
但し、技能主任主事職昇任選考のうち短期昇任選考の昇任率については、有資格者の20%とすること。長期選考については、該当者の資格発生初年度も含め概ね3年で昇任させること。

4 選考方法
すべての選考について各区選考とし、本人申込制とすること。選考内容は以下のとおりとすること。
(1)技能主任主事職
@ 短期昇任選考   勤務評定及び簡易な筆記
A 長期昇任選考   勤務評定
(2)技能長職      勤務評定、筆記及び面接
(3)統括技能長職    勤務評定、面接

5 現業再任用職員
再任用職員の任用する職務の級については、退職時の任用上の級と同等以上の職務の級とすること。

6 新制度への移行に伴う措置について
(1)現行4級職員は、技能長に任用すること。
(2)現行3級職員は、技能主任主事に任用すること。

三、給与制度要求

1 業務職給料表
現行の行(一)横引きの業務職給料表の考え方を適用し、以下の4級構成の給料表とすること。
(1)現行1級と2級を統合し、新1級とし、新1級職の級とする。
(2)現行3級を新2級とし、技能主任主事職及び新2級職の級とする。
(3)現行4級を新3級とし、技能長及び新3級職の級とする。
(4)新4級を設置し、統括技能長及び新4級職の級とする。

2 級格付基準
  以下のとおりの格付を行うことにより特別区独自の1職2級制度とし、昇格率については23区統一で設定すること。
 (1)新2級格付    新1級職歴18年以上 年齢42歳以上
満18歳以降の職務に従事した期間の2分の1として6年を限度に前歴通算を行う。
 (2)新3級格付    技能主任主事歴2年以上 年齢44歳以上
             (特例取扱)区歴24年以上
 (3)新4級格付    技能長歴5年以上 年齢52歳以上

3 初任給格付
  行政系V類と合わせ、全職種3月分の短縮措置を行うこと。

4 昇任時特別昇給
  12月短縮を行うこと。

5 職務別段階加算
  技能主任主事相当職から措置すること。

6 再任用給料表
  行(一)再任用給料表を横引く給料表とすること。
以  上