2003年度運動方針目次へ次頁へ前頁へ

U、私たちを取り巻く情勢
1、アメリカの戦争政策に追随し、「戦争する国」めざす日本

 昨年9月11日の同時多発テロは世界中に大きな衝撃を与えました。アメリカ政府は国際世論を無視して報復戦争を開始しました。この戦争で犠牲となったアフガニスタン国民は、テロの犠牲者を上回ったといわれます。武力ではものごとを解決するどころか、新たな憎しみが増すばかりです。しかし、アメリカのブッシュ大統領はイラクやイラン、北朝鮮などを「悪の枢軸国」と名指しして核兵器を含む武力攻撃を行おうとしています。
●有事法制
 政府が国会に提出している法案は、三つある。武力攻撃事態法案、安全保障会議設置法改正案、自衛隊法改正案である。これらの法律は、アメリカの戦争に日本を巻き込む危険なものであり、戦争を放棄している日本国憲法に違反するものである。
●京都議定書
 地球温暖化を防止するための国際的な取組として、1997年京都で行われた気候変動枠組条約(COP3)で採択されたもの。先進国の温室効果ガス排出量を少なくとも5%削減を目指すなど枠組が決められている。日本では1990年を基準に、2010年までに二酸化炭素の排出量を6%削減する。しかし、最大排出国であるアメリカのブッシュ大統領は、経済的に不利益を被るとして批准せず、離脱しようとしている。
●NPT(核不拡散条約)
 核兵器保有国(アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国)以外の国が核兵器を開発・保有することを防ぐ目的で1970年に発効した。インドやパキスタンなどの核兵器開発中止を求める一方、核兵器保有国に対しては核軍縮を求めている。
 このようなアメリカの戦争政策に対して世界中で批判が起こっていますが、小泉首相はアメリカを批判するどころか追随しようとしています。政府が成立をもくろむ「有事法制」はアメリカの要求で急がされているものです。アメリカがイラクと戦争をはじめようとするときに、日本からの出兵が必要だというのです。小泉内閣はアメリカの期待にこたえ、日本を「戦争する国」に仕立てあげようとしています。
 「有事法制」に対する国民の批判は、その本質が明らかになるにつれて急激に増大しました。組織や団体の違いを超えた幅広い共闘が全国各地で取り組まれました。しかし、政府は2000年秋の臨時国会でなんとしても成立させようとしています。これまで以上の運動で有事法制を阻止することが求められています。
 ブッシュ政権になってからのアメリカの横暴ぶりには目に余るものがあります。地球温暖化の防止策を取り決めた京都議定書を「アメリカ経済に悪影響与える」として一方的に離脱を表明し、核兵器の削減でもイラクなどの新たな核兵器所有は認めない一方でNPT(核兵器拡散防止条約)を守らずに臨界前核実験を繰り返しています。

 「拉致問題」「核問題」もあって国交正常化が難航していた北朝鮮に、首相としては初めて小泉首相が訪問し、国交回復への一歩前進が図られました。「拉致問題」では北朝鮮政府が初めて認めたものの、8名もが死亡と伝えられるなど被害者家族から激しい怒りをかっています。北朝鮮政府は信用できないとして国交回復すべきでないという意見もあります。しかし、日本も戦時中には朝鮮人などにさまざまな蛮行を行っており、感情論ばかりでは両国間関係は改善されません。お互いの主張を尊重しながらも「拉致問題」「核問題」などを話し合い解決する中で国交回復への道を開くことが、アジアの緊張緩和のためにも重要です。

2、国民に痛みを押しつける小泉内閣の「構造改革」

●構造改革
 小泉内閣が推し進めている、行財政の構造を大幅に変えて企業の負担を減らし、国民に負担を押し付けるもの。また規制緩和などで大企業がより利益を増やして国際競争力を高めるとしている。景気が回復しない中で、不良債権処理をすすめ、倒産や失業率の増大を招いているが、小泉首相はさらに進めなければならないと強硬姿勢を崩していない。
る。
 小泉内閣に対する国民の期待はこの一年間で急速にしぼみました。国民の願う景気回復のための経済政策にはまったく手をつけず、掛け声ばかりで「構造改革」が実体を伴わないことに対して国民の不満は高まりつつあります。
 倒産件数も相変わらず多く、「リストラ・合理化」を行う企業は後を絶ちません。失業率は2001年で5.0%(東京都)と高く、実質賃金は減る一方で、トヨタ自動車などの大もうけをしている大企業までもが、不況を口実にベアゼロというありさまです。このような日本の労働者を取り巻く現状に対して、小泉内閣は有効な手だてをとるどころか、医療改悪や社会保障予算の削減などで3兆2400億円もの国民負担増を押し付けようとしています。金融・経済政策では、不良債権処理を加速させるとして、大銀行に圧力をかけ、健全な中小企業までもつぶそうとしています。まさに、アメリカ経済における弱肉強食の世界そのままに持ち込もうとしています。このままでは私たちの生活は苦しくなる一方で、中小企業の営業も脅かされています。
 財界は法人税の引き下げなどを政府に求め、政府は大企業中心に1兆円もの「減税」を行おうとしています。その財源として、消費税の10%引き上げなどの国民負担増を当てこむというでたらめぶりです。

 「労働基本法」は相次ぐ改悪で労働者の権利をなし崩しにしています。政府は財界の意向も取り入れて更なる改悪を狙っています。新たな規制緩和で職業紹介を自由化し、民間紹介所は企業だけでなく労働者からも手数料を取ることを可能にしようとしています。これが通れば再就職するたびに労働者の賃金が目減りすることになってしまいます。それ以外にも裁量労働の拡大や派遣法の改悪などで従来守られてきた労働者の権利がずたずたにされ、企業にとっては安上がりの労働者を容易に獲得することが可能となります。しかし、雇用が不安定となり、収入すらも減少することは不況を克服できない日本の経済情勢をますます悪化させます。
 労働者の声を結集し、企業の生き残りばかりを追求し、労働者の権利を踏みにじるやり方を改めさせる大きな運動が求められています。

●国人勧
 人事院は、8月に勧告史上はじめて2.03%のマイナス勧告を行った。すでに支払われた賃金は、不利益不遡及の原則を無視し、12月の一時金から徴収するとしている。
 今年の「国人勧」は史上初のマイナス賃金を勧告し、国は退職金までも引き下げようとしています。「国人勧」は、建前では官民格差の是正といっていますが、労働者全体の賃金を引き下げるための政治的な判断によるものという指摘もあります。マイナス勧告は、民間労組などからも賃上げ交渉への影響を懸念する声があがっています。「民間が苦しんでいるのだから公務員賃金が下がるのも当然」で、やむを得ないものと「公務員でも賃下げなのだから来春闘でも賃下げ」という悪循環になりかねません。

 今年は企業のモラルハザードが大きな問題となりました。儲けのためには消費者の安全性を無視してまで利潤追求する姿勢や不祥事についてもそれを隠そうする企業の姿勢は消費者の大きな怒りと不信を生みました。そして鈴木宗男議員と外務省の癒着問題など、税金を私物化している特定の政治家と官庁の関係が国民の不信を買っています。雪印や日本ハムのBSE(狂牛病)対策費の詐欺行為や賞味期限の改ざん問題は、食の安全よりも利益を優先する企業倫理が問われるとともに、監督官庁である農林水産省の責任も問われています。
●プルサーマル計画」
 原発で使われた使用済み核燃料を処理して、再び原料として再利用する計画。2000年5月には新潟県刈羽村の住民投票では過半数が反対するなど、安全性に対する不安から地元の反対運動などが各地で起きており、開始予定が大幅に遅れている。
 また、東京電力が原子力発電所の異常を数年間に渡って隠していた問題は国民に大きな衝撃を与えました。とりわけ原発を受け入れていた県では、その安全性が疑われるとしてプルサーマル計画や新たな設置などの撤回を表明するなど、原子力政策が大きく揺れ動いています。検査する立場の保安院には東京電力の社員も派遣されているなど、検査体制そのものについても疑惑がもたれています。これらは国民の公務員に対する信頼を揺るがしています。
 以上の問題は、内部告発で真相が明らかにされました。内部告発者の権利を守る法制度が急がれます。

 政府が閣議決定した「公務員制度改革」では、労働基本権の回復は盛り込まれず、国民から批判を浴びている天下りやキャリア制度については温存しています。今こそ「全体の奉仕者」である公務員が、民主的な公務員制度改革のもと、国民から信頼される存在になることが求められています。
 国鉄や電電公社の民営化に続き、郵政関連4法案の成立により郵政事業の民営化に道が開かれました。政府は民営化でサービスがよくなったと宣伝をしていますが、JRは赤字路線を次々廃止し、NTTは11万人の「合理化」などの利益追求路線をすすめ、結果として、サービス切り捨てにつながっています。郵政民営化でも全国一律のサービスや郵貯事業が崩される心配があります。
 長野県知事選挙などに見られるように、いま国民は自分たちの意見が反映される政治を求めています。一部の政治家による税金を食物にしたむだ使いをやめさせ、国民に役立つ政治改革が必要です。小泉内閣を一日も早く解散・総選挙に追い込み、本当の「改革」を実行する政府を実現させることが求められます。

3、福祉・教育切捨て、強引な石原都政と石川区政

(1)都政から公共性をなくす石原都政

●都庁改革アクションプラン
 東京都が、平成12年12月に発表したもので、都と民間、都と区市町村の役割分担の見直し、事業のあり方検討、行政評価制度の構築・実施などを行うとしている。この方針に基づき、都立病院・保健所・都税事務所・都立高校などの統廃合、「民間でできるものは民間で」との方針を実施しようとしているが、都民の反対は大きい。
 石原都知事は「都庁改革アクションプラン」で都政の変質をねらい、行政責任を放棄しようとしています。「公立学校や病院・福祉施設などは民間にまかせればいい」とマスコミなどでも公言し、都民の反対の声を無視して、民営化を押しすすめようとしています。また、財政危機を理由に、都立病院・保健所の統廃合、福祉施設からの全面撤退・民間委譲、職員の定数削減や4%もの給与カットを行なっています。自治体が行うべきでないカジノ構想なども実施しようとしています。
 このような効率化や税収アップで浮いた税金はどこに使われているのでしょうか。「都民の税金は一銭も使わない」としてはじめられた臨海部開発はバブル崩壊で破綻し、湯水のごとく税金を投入し続けています。さらに「東京構想2000」では、首都圏メガロポリス構想と称する首都圏規模の大型開発を推進しようとしています。政府の「都市再生特別措置法」とも一体となって、容積率や環境アセスなどの規制を大幅に緩和し、手続きの簡略化や金融面での優遇措置などを行ない、大企業の巨大開発を後押しています。圏央道などの環状線や第2湾岸道路の建設、羽田空港の再拡張工事などがすすめば、東京の一極集中をさらに加速させ、都財政を借金づけにし、環境悪化など都民に大きな負担を残すだけです。
 2000年4月には、都知事選挙が行われます。石原都政に反対する広範な勢力を結集して、都知事選挙をたたかうことが求められます。

(2)典型的な「新自由主義的行政改革」をすすめる石川区政

●千代田市構想
 2001年7月、区長が発表した特別区から市への移行をめざすとしたもので、千代田区基本構想に盛り込まれたもの。20年後の移行を目標としている。構想では区政の課題を区民自らの意志と責任で、主体的に取り組める真の住民自治の確立を目指すとしている。 しかし、23区の歴史や他の区との連携を無視したものともいわれている。
●一時金への成績率導入
 この課題は、特区連と区長会の統一交渉事項となっている。しかし、石川区長は、9月議会で、一時金への成績率導入を示唆しており、統一交渉事項を無視しようとしている。 この背景には、石川区政が、「新自由主義的行政改革」に基づき、競争、成果主義人事制度をめざしていることがある。
●都市再生特別措置法
 小泉内閣の新たな大規模開発政策の一つを進める法律。公共事業に対する国民の批判が強い中で、公共事業の「効率化・重点化」という方向で、都市再生と称して大都市に公共事業を集中させる政策です。この法律に基づき、「緊急整備地域」17カ所が指定され、有楽町駅周辺、秋葉原・神田の地域も含まれている。石川区政は、この方向を歓迎している。
 都と同様に委託化・民営化や大規模開発などをすすめ、行政責任を果たさずに自治体を変質させる手法は千代田区でもすすめられています。
 石川区長はマスコミなどで「千代田市構想」をぶち上げ、千代田区で集めた税金が他区で使われるのはおかしいなどと言って特別区のあり方を一方的に変えようとしています。他区や他自治体にない施策を追い求め、無理矢理独自性を浮かび上がらせようとしています。「生活環境条例の異常な宣伝と対応」「江戸開府400年記念事業」「一時金への成績率導入」や「事業部制導入」、「退職金割増し、50歳5割増し」などはその一例です。
 9月の定例区議会の召集挨拶で石川区長は、「区民は株主」と発言し、マスコミでも「コンビニは経営の手本」として企業経営手法の導入を進めようとしています。
 こうした区政への企業経営の手法の持ち込みは、効率化・コスト効率化至上主義がまかり通り、区民にはサービス低下、職員には労働強化や職場を奪うものとなっています。区長は行政サービスに「受益と負担」の考え方を強く打ち出し、従来のやり方を大きく変えようとしています。今年の4月から、受益者負担の適正化と称する区施設使用料等の大幅な引き上げが行なわれ、窓口で応対する職員は苦情処理におわれ、利用率が減った施設もあります。これではサービスを選択できるのは、所得に余裕がある人に限られてしまいます。敬老金制度についても、段階的に廃止することになり、区民からは批判の声が出ています。
 千代田区は、現在、財政状態が特に良いわけではないはずなのに、「江戸開府400年記念事業」や「地域コミュニティ活性化事業」など、区が緊急に財政支出しなければならないのか疑問のある事業に多くの予算が投入されています。また、10月から施行された生活環境条例の宣伝費等には1億2千万円もの補正予算が組まれました。
 都市開発の面では、地区計画の形骸化、「都市再生特別措置法」に基づき、大規模開発にはいっそう民間業者が有利になるように財政面でも法規制面でも有利になるようにし、大手ゼネコンの乱開発に拍車をかけ、住民を追い出すような政策を進めようとしています。民間の再開発に対しては、国や都の補助金ですが、90億円(14年度)の税金を投入します。その結果、高層のオフィスビルが中心に作られ、住宅もつくられますが、5千万円から一億円もの住宅ばかりで高額所得者しか住めない状況です。
 区の「政策会議」には三菱地所や清水建設、前田建設、東京電力などの大企業、ゼネコンの役員が含まれており、行政が大企業、ゼネコンの視点から議論され、区民が住み続けられる視点での議論が軽視されています。
 このように自治体の公共性を投げ捨て、自治体の変質をねらうやり方は、全国の自治体でも見られるものです。これらの背景には小泉内閣の「構造改革」、「新自由主義的行政改革」の進行があり、大企業、ゼネコンの利益のために税金を使うものとなっています。
 こうした流れの中にあって、徳島や長野などで公共事業のあり方をめぐって大きな議論が巻き起こり、無駄な公共事業の中止を公約に掲げた候補者が勝利したことは、私たちの大きな確信となるものです。私たち自治体職員が、自治体の公共性を守り、その変質を許さずにたたかうことが、いま求められています。

4、組合員の生活と職場をめぐる状況

(1)組合員の生活の状態がいっそう悪化

特別区人事委員会は、10月3日、勧告史上初めて7,396円(1.67%)のマイナス勧告を行いました。また、一時金についても0.05月削減し、4年連続の削減で、年間4.65月と勧告しました。政府による相次ぐ経済政策の失敗で経済情勢が非常に厳しいのは事実ですが、特別区人事委員会勧告は、経済が好調だったときには、公民格差を解消するまでの引き上げ勧告を行わず、不景気になると敏感に引き下げを行うのでは、手落ちのある不公平感は否めません。
 昨年暮に行った区職労生活アンケートによると、組合員の生活実態は「赤字が増えて苦しい」と「やりくりに心配がある」との回答が5%も増加して生活が苦しくなっていることをあらわし、特に45〜54歳のあいだでは70%以上の人が「赤字が増えて苦しい」と回答しています。賃上げ要求額の加重平均は昨年より若干低くなりましたが40,034円と依然4万円を超しています。そして、「賃上げ要求はするべきでない」とする回答は3.04%とごく少数にとどまっていて生活改善のための賃上げ要求が強いことを示しています。また、年金改悪や医療費引き上げ、退職手当削減、消費税の引き上げなど、将来に不安があるせいか充実させたい費目では「貯蓄」との回答が増えていて、冷え切った消費経済の出口の見えないトンネル状態を伺うことができます。
 こうした状況の中で、2002年11月、02スト批准投票を実施しました。投票率は、90%に届かなかったものの、批准率は昨年より10%も高く、71.9%となりました。厳しい状況のなかで、「組合に何とかしてほしい」との期待が表れているといえます。

(2)「千代田区版リストラ」が矢継ぎ早に出され、職場が奪われ労働条件も改悪に
   住民・職員無視の性急な「千代田区版リストラ」


 職場との十分な話し合いをせず性急に実施に移された「こども園」(幼保一元化)は、幼保間で一体化した保育・教育を行う制度のはずでした。ところが、事業内容の整理、勤務時間、勤務内容についての検討協議が不充分なままで施行され、職員に大きなストレスを与え、子どもにはその影響が表れることが懸念されています。
●新たな給食調理委託
 区当局は、2003年度に麹町小、和泉小、こども園の給食調理を委託すると提案している。
 学校職場では、親子方式による中学校給食が実施されたものの、その調理は民間委託が実施され、新たに来年度から小学校2校の「学校給食調理民間委託化」が出され、順次、全校の調理の民間委託がなされようとしています。
 また、「保育園給食調理の民間委託化」「新たな学童クラブ民設民営化」など、「千代田区版リストラ」が一気に提案されました。それに伴い、区民、利用者に不安を与え、職員から職場を奪い労働条件を大幅に変更し、切り下げています。
 今年は、新規採用があったものの、5年間で職員の300人削減を着実に進めており、2003年の新規採用をゼロにしようとし、また、予算編成において各部・課の人員も委託化などにより大幅に人員削減を計画しています。こうした人員削減をすすめようと、勧奨退職の特例措置を50歳で5割増し、再雇用制度の勤務期間の延長をしようとしています。
 「千代田区版リストラ」や当局の無計画とも写る突然の事業計画の実施等々のなかで、人員は削減され、アルバイト予算もカットされ、逆に労働量は急増し、時間外労働も恒常化するなど、組合員は安らぐ余裕すらなく、過重労働で身体的ばかりでなく精神的にも疲労しきっています。このため疲労が原因での病気と思われる病人も多発しています。また、病気一歩手前だと訴える人も少なくありません。当局は過重労働の行われる現状を把握し、人員や労働量、時間外労働、と言った職場環境の改善を行うと共にメンタルヘルスに対する理解と対策を急ぐべきです。
●清掃職員の区採用
 2000年4月、清掃事業が都より区へ移管され、既存の清掃職員の身分は、2005年3月までの6年間、都職員のままで、区への派遣扱いとなった。2003年4月以降は区の職員として採用される。しかし、採用された職員や区から異動した現業職員は、清掃職場で同じ仕事をしながら、全く異なった給料表・手当の適用を受けることなる。こうした差別に対し、区職労は反対している。
 2003年には、清掃職員が区の採用になりますが、区当局は、300人削減方針のもと現業職員の新規採用を考えていません。そうなると、清掃職場の欠員を現在の区現業職員で補充せざるを得なくなります。ところが、清掃職員と区現業職員の賃金・労働条件は大きく異なっています。区長会・区長は、その差を解消しようとしていません。同一労働・同一賃金の原則を強く求めて対応することが求められています。
 当局は、こうした「千代田区版リストラ」をさらに強引にすすめようとしています。区職労は、これらの動きに対し、保護者と共に運動を進めることをめざし、区民宣伝や署名運動などの運動を進めてきましたが、今後も区民ともっと強いスクラムを組んでの闘いをすすめていくことが必要となっています。

(3)違法な不払い残業とノー残業デー、休暇問題、開庁時間の延長について

 「リストラ」で職場がなくなる一方で、職員の5年間で300人削減、超過勤務予算の30%一律カット、アルバイト予算の5割削減などの「合理化」も強行され、人手の少なくなった職場では過重労働化が進み時間外労働が当たり前のようになり、違法な不払い残業もはびこっています。
●36協定
 労基法第36条による協定のこと。恒常的な超勤には36協定が必要である。この協定を活用して超勤を減らすことが重要である。区と区職労は、超勤協定を結んでいない。
●夏休
 現在、条例では3日になっている。これを一刻も早く、都と同様の5日にすることが必要である。さらにこれまで獲得してきた権利を石川区政は奪おうとしている。
●区「生活環境条例」
 「生活環境条例」は10月1日から施行された。区長の肝いりで制定され、タバコのポイ捨て、路上喫煙、置き看板などを禁止し、違反には過料を課した。宣伝等には、1億2千万をかけている。また、パトロールには土木現業と係長級以上の職員が、本来の仕事よりも優先にかり出されている。街がきれいになったと言う反面、過料を取るのは行き過ぎ、やり方がおかしいとの批判もある。
 労基法は、同法第36条による労使間の協定(36協定)ない場合の時間外労働は、違法なものとして原則的に禁止しており、違反した使用者については刑事罰が課せられることになっています。にもかかわらず、一部の職場では協定なしの時間外労働・サービス残業が横行しているのが現状です。
 国もこの状態を見かね、昨年4月には、現状の時間外労働の是正に乗り出しています。
 しかし、石川区政は、「生活環境条例」を始めとする多くの新規事業の下、職員に過密・過重労働を押しつけはしますが、不払い残業の問題を是正しようとする真剣な姿勢はうかがえません。
 休暇問題では、区当局が夏休についていっそう削減をもくろんでおり、条例で5日を確保することが切実となっています。また、区当局は、子どものための介護休暇を制度化しようとするものの、育児時間の特例措置、介護欠勤制度、出勤時間の特例措置を廃止しようとしています。
 区当局は、開庁時間の延長(水曜日を17時から19時まで、図書館は土、月を19時まで)を実施するとともに、6月末から毎週木曜日をノー残業デーとすることにしました。図書館の開庁時間の延長は区民・利用者の声と説明していますが、利用者アンケートでは時間延長を求める声は少数意見で、時間延長に伴って来庁者が増加しているとは言い切れない実態があります。また、残業解消に向けての具体的な措置を何も取らないまま行ったノー残業デーも効果が上がっているとは言い難く残業者が多く、木曜日に残業を控えると他の曜日にしわ寄せが出ると言ったありさまです。結局、開庁時間延長もノー残業デーも区民や、組合員のためではなく、実績づくりのポーズになっています。

(4)生活環境条例の異常な宣伝と対応

 千代田区では、10月1日より生活環境条例を施行しました。たばこのポイ捨てに最高2万円の罰金を科す内容の条例です。条例の徹底を図るため、環境土木部の職員や係長層まで動員しパトロールを実施しています。物騒な昨今の世の中で、職員がトラブルに巻き込まれないか心配があり、職員の安全を保障した対策が必要です。
 職場では本来の業務のほかにパトロール要員を出さなければならなくなったため、一段と労働が過重になってきています。パトロールは平日の昼間だけでなく、平日の夜のほか、土・日・祝日も行うことになっています。
 職場実態無視の唐突な思いつきとしかいいようのない事業実施で世間受けをねらった施策によって、職員の健康やいのちを害しないかも大いに心配です。
 この事業実施にあたっては、広範な職員や区民の意見を十分聞こうとしない姿勢と強引なトップダウンの手法が表れています。

(5)事業部制の導入問題について

 区当局は、平成15年度に事業部制を導入しようと、事業部制に対する職員への啓発、それに基づく予算編成等を進めています。
 事業部制は、製品別地域別等に事業部門を設けて各事業部が製造から販売まで一貫して行い、事業部間で業績を競い合う組織形態で、各事業部が一定範囲内で経営権を持つとともに業績につき責任をもつ民間企業の組織形態といえます。
 区は、「行政効率化をめざすためのもの」として導入しようとしていますが、事業部制では同一業務が事業部に分散化して一定のロスが生じることを前提としつつ、競争による業績の向上でそのロスをカバーするものです。その意味で事業部制は「効率化」と矛盾するとする部分があります。
 また、事業部制を採用してきた民間企業の中では、企業間の競争に生き残るために、事業部制の見直しと解体・再編が進んでいます。
 こうした状況の中で、自治体の組織にそぐわない事業部組織を導入することは、区民サービスに影響を与えかねないものです。
 さらに、事業部に財政と人事関係の一部権限の委譲を行うとし、一応分権化であるとしていますが、職員の意向を無視した強力なトップダウンが発揮されている現状では、実態が伴うか疑問です。
 特に人事関係の権限委譲については、職員の勤務・労働条件に大きな影響を及ぼすものであり、今後の実施について区職労との十分な協議が必要です。事業部ごとに人事・任用管理が行われると、事業部間で不公平な人事・任用管理がなされる危険性も少なくありません。区職労は、交渉等について、個別対応をするのではなく、統一的で公平な労働条件が確保されるよう体制の整備を図っていく必要があります。
 区職労は、もちろん、現在の組織が絶対と考えている訳ではありません。住民のニーズに応じて、千代田区の区政運営にふさわしい、住民に分かりやすく、利用しやすい組織を、職場の論議を経てつくり上げることが大切だと考えています。

(6)人事任用制度にいっそうの能力・成績主義を持ち込む区当局

区当局は、人事任用制度について、いっそうの能力主義・成績主義を持ち込んできています。主任主事選考について、「実務経験重視の選考」の担保であった短期(長期)制度の廃止、特別昇給制度の同一人への連続昇給など、昇任・昇給選考の改悪はその表れです。また、区長は、統一交渉事項であるにも関わらず、一時金への成績率導入に強い意欲をもっており、「使命感と高い意欲を持った職員を育成し」と発言し、職員の能力主義・成績主義を徹底しようとしています。
 このことは、「上司に忠実で、区民に目の向かない職員づくり」を加速させ、行政運営にマイナスをもたらすものといえます。

(7)条例に基づく時間内組合活動への攻撃

 東京都は、時間内組合活動について、条例を改悪し「時間内組合活動は、適法な交渉以外認めない」と都庁職に迫りました。11月14日、条例は、改悪されたものの、「都庁職本部と局支部の機関運営」を都当局に認めさせる結果になりました。こうした結果を見ると、区当局が区職労や分会等の機関運営を認めないのは不当極まりないものです。
 区当局は、学校や保育園職場での「合理化」に反対する取り組みに端を発して、休暇を取ってビラ配りをしていた組合員の氏名を調査するなど、時間内組合活動を抑制しようと、不当な圧力を加えてきました。それだけでなく、時間内組合活動は「適法な交渉と予備交渉、小委員会交渉に限る」との提案を行い、組合に対する圧力をより強めようとしています。
 労働組合の存在とその活動が憲法上、地公法上保障されている以上、労働組合の活動上必要な一定の行動については、時間内組合活動が保障されるべきで、これまでの長い間慣例的に行われてきた時間内組合活動を一方的に否定する当局の不当な考えは、労働組合を敵視する悪意に満ちた反憲法的意識の発意に他なりません。
 当局の策謀は、労働組合の活動を大きく左右するもので到底許すわけにはいきません。この課題は、あくまでも労使で解決するよう強く、当局に求めていくことが重要です。
 しかし、一方では、賃金の引き下げ、委託などによる配置転換、競争主義強化、過重労働など、職員攻撃に対する批判は強くなっており、労働組合がなんとかしてほしいとの期待も強まりつつあります。
 そうした状況を踏まえて、組合員の期待に応えられるよう、執行部一丸となり、特別な組織強化の体制をとって、取り組むことが必要です。
 また、労働組合が日常的に取り組んでいる様子を分かりやすく早く知らせていく取り組み、道理のない賃金引き下げに断固反対し、これまでに獲得した権利・労働条件を守りぬくねばり強い取り組み、区政を研究し、働きがいのある仕事を求める自治研活動をいっそう強化し、組合員の参加を求めていくことがこれまでにも増して重要です。

5、自治労の不祥事問題

●連合運動
 連合は、日本に二つある労働組合のナショナルセンターの一つ。もう一つは、全労連。
連合は、労使協調を基調とした運動を進めており、リストラや人員削減などに積極的に取り組んでいない実態があり、区職労は、こうした運動に反対している。
 私たちの上部団体である自治労は、この間、「自治労共済、約2億円の裏金」、「自治労関連のUBC専務が3800万円着服」「自治労が組織ぐるみで16もの簿外口座で裏金づくり」「会計報告のない借入金39億円」「自治労共済アルゼンチン債購入、紙くず同然に」等々の一連の不祥事報道がなされてきました。自治労も事実究明を徹底して行うと言ってきましたが、事実究明委員会は3ケ月事実究明作業を行っただけで解散しました。
 自治労では、今後も事実究明は続けるとしていますが、事実上、8月の定期大会で幕を引きました。
 都道府県に交付された組織活動費が領収書がないまま決裁されていることについては、今後の事実究明の必要なしとしています。民事・刑事の訴訟が提起された事実についてのみ、事実関係を認め、その他の事実については不明な点を多く残したまま蓋をして、自治労再建計画に移っています。
 しかし、事実究明をおざなりにした再建策では、不正支出の温床を温存したままでの再建となり、不正防止の再建とは名ばかりのものとなるでしょう。雪印など一連の食品の不祥事を起こしたところは、そのために会社の解散にまで追い込まれています。その点からみると自治労の対応は、非常に甘いものと言わざるを得ません。
 この自治労の不祥事問題は、国民と組合員に対する労働組合への信頼を著しく損ない、組合員の減少につながるなど組合存続の危機を招いてると言っても過言ではない状況にあります。わが区職労では、「千代田区版リストラ」攻撃とも相まって、少なからず影響を受けています。
区職労執行委員会は、徹底的に事実を明らかにし、自治労が明確な責任を取るよう求めています。その対応如何では、組合費の上納を一時凍結することも検討しています。