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U、私たちを取り巻く情勢の特徴
1、組合員の生活と職場をめぐる状況

(1)公務員攻撃の中で度重なる賃金引き 下げと厳しさを増す組合員の生活

特別区人事委員会は、10月7日、3485円(0.79%)のマイナス勧告を行いました。また、一時金についても0.25月削減し、5年連続の削減で、年間4.40月と勧告しました。5年連続の一時金の支給月数減を含めると職員一人あたり平均16.9万円の年収減勧告であり、この5年間の減収は51.9万円となり、私たちの要求と生活実態からすれば大変不満な内容となっています。

 勧告について、経済が好調だったときには、公民格差を解消するまでの引き上げ勧告を行わず、かつ不景気になると敏感に引き下げ勧告を行うのでは、手落ちのある不公平感は否めません。また、今年の勧告について、官民較差を精確に反映せず、較差を大きくしている点は、労働者全体の賃金抑制を狙っているといえます。
 この勧告は、私たち職員の生活をいっそう悪化させるだけでなく、地域の中小労働者にも影響を与え、賃金引き下げ悪循環サイクルを続けるものです。

 2002年12月に行った区職労春闘要求アンケートによると、組合員の家計の状態は「赤字が増えて苦しい」と「やりくりに心配がある」とを合わせると六割を超え、生活が苦しくなっていることをあらわしています。特に、教育費などに多額の支出を要する40〜49歳のあいだでは約6割の人が「赤字が増えて苦しい」と回答しています。
 賃上げ要求額の加重平均は昨年より低くなりましたが34539円となっています。そして、「賃上げ要求はするべきでない」とする回答は4.16%とごく少数にとどまっていて生活改善のための賃上げ要求が強いことを示しています。また、年金改悪や医療費引き上げ、退職手当削減、消費税の引き上げなど、将来に不安があるせいか充実させたい費目では「貯蓄」との回答が増えていて、冷え切った消費経済の出口の見えないトンネル状態を伺うことができます。

(2)「勧告」の給与・一時金削減を当然視し、退職手当の見直しを提起する区長会

 区長会は、03勧告の実施を当然視し、退職手当の見直しも提起することを示唆しています。退職手当の削減は、安易な民間との比較によるものであり、退職手当を含めた生涯賃金で調整し、公務員賃金を低く抑えてきた歴史的経緯を無視したものであり、断じて認めることはできません。
 また、区長会は、国家公務員の退職手当削減が決定したことを受けて見直しは必至といっています。

(3)「千代田区版リストラ」コスト効率 主義優先、子どもの視点を欠いた区政

 区当局は、2003年度に麹町小、和泉小、こども園の給食調理を委託し、順次全校・全園の給食調理の民間委託を急ピッチで進めようとしています。
 また、「保育園の民営化」「学童クラブ・児童館の民間委託」など、「千代田区版リストラ」を一気に進めようとしています。
 それに伴い、子どもの視点を欠いた民間委託・民営化に対し、区民、利用者に不安を与え、職員から職場を奪い勤務・労働条件を大幅に変更し、切り下げようとしています。

 当局は、こうした「千代田区版リストラ」をさらに強引にすすめようとしています。区職労は、これらの動きに対し、区当局を追いつめるために保護者と共に運動を進めることをめざし、区民宣伝や署名運動などの運動を進め、区民とスクラムを組んでの闘いをすすめていくことが、「千代田区版リストラ」を跳ね返すことにつながると考えます。

(4)人件費削減で新規採用ゼロ、300 人削減、再雇用期間1年切り下げなどで 職員に過重労働強いる区政


 5年間で職員の300人削減を着実に進めており、2003年の新規採用はゼロ採用を明確にしています。
 区当局は、条例で決められた人件費比率を達成しようと、来年度予算編成の中で、正規職員の削減に止まらず、再任用、再雇用職員、臨時・非常勤職員の削減も検討するとしています。
 ただでさえ、人手不足の職場では、過重労働が強いられ「これ以上の人員削減がされたらもっと病気が増えるのでは」との懸念の声が上がっています。

 「千代田区版リストラ」で予算はカットされ、人員は削減され、時間外労働も恒常化するなど、組合員は安らぐ余裕すらなく、過重労働で身体的ばかりでなく精神的にも疲労しきっています。このため疲労が原因での病気と思われる病人も多発しています。病気一歩手前だと訴える人も少なくありません。そのよう中で、突然の事業計画の実施など労働量は益々急増する傾向にあります。当局は過重労働の行われる現状を把握し、人員や労働量、時間外労働と言った職場環境の改善を急ぐべきです。
 また、職場環境の悪化と大きく関連しているメンタルヘルスの問題はメンタルヘルスに対する理解と対策を真剣に行うべきですが、病気の発生しない、また、復帰しやすい職場環境の改善が大切となっています。

●04年度区予算編成方針
 事業部制のもとで、初めて取り組む予算編成で、今回の予算編成方針の特徴は、大きく二つとなっています。
 特に、重点施策についての目標、施策を実現するための財源について、今年度に引き続き新規採用を抑制し、総人件費の削減など厳しい内部努力により少なくとも約3億円を確保するとともに、各事業部が「成果」と「コスト」重視の行財政運営に取り組み、さらなる財源確保を図るとしています。
さらに区当局は、04年度区予算編成方針で、人件費を約3億円減らすとして、再雇用期間の1年切り下げ、特勤手当の3分の2以上を廃止する提案をしてきています。

(5)解決迫られる清掃事業移管問題

 清掃事業は2006年に完全区移管になりますが、区職員と清掃職員の賃金・労働条件は大きく異なっています。また、区職員には何らの手当もなく年末の清掃事務所に勤務している実態も明らかになりました。
2003年度末には清掃職員の欠員が8名ありますが、区当局は300人削減方針のもとで現業職員の新規採用を考えていません。そうなると、清掃職場の欠員を現在の区現業職員で補充せざるを得なくなります。ところが、清掃職員と区現業職員の賃金・労働条件が大きく異なっていますが、区長会・区長は、その差を解消しようとしていません。同一労働・同一賃金の原則を強く求めて対応することが求められています。

(6)違法な賃金不払い残業を依然として放置

 「千代田区版リストラ」で職場がなくなる一方で、職員の5年間で300人削減、超過勤務予算の一律カット、臨時・非常勤職員予算の削減などが強行され、人手の少なくなった職場では過重労働が進み時間外労働が当たり前のようになり、違法な賃金不払い残業がまかり通っています。
 労基法は、同法第36条による労使間の協定(36協定)ない場合の時間外労働は、違法なものとして原則的に禁止しており、違反した使用者については刑事罰が課せられることになっています。にもかかわらず、一部の職場では協定なしの時間外労働・サービス残業が横行しているのが現状です。
 国もこの状態を見かね、改めて2003年5月には、サービス残業=賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針(厚生労働省)を出し、現状の時間外労働の是正を求めています。
 しかし、石川区政は、職員に過密・過重労働を押しつける一方で、賃金不払い残業の問題に対しては是正しようとする姿勢はうかがえず、まともな使用者とは言いがたいものとなっています。

(7)既存の休暇・職免を後退させる区当局

 休暇問題では、夏休5日の条例化を確保することができましたが、夜間勤務者については、時間数換算とする提案があり、条件付き4勤務となり、後退する結果となりました。
 また、区当局は、子の介護休暇を制度化したものの、育児時間の特例措置、介護欠勤制度を廃止し、出勤時間の特例措置も2004年4月に廃止しようとしています。
 少子化対策が必要とされているのに、職員の育児支援を積極的に行おうとしない当局の考えは、少子対策に逆行するのは明確です。
 育児に関わる職員からは、出勤時間の特例措置が廃止されると仕事を辞めるか、育児を辞めるかの反人道的選択を迫るものだとの声が上がっています。

(8)人事任用給与制度の能力・成績主義強化と自己申告制度に目標管理型を導入

 区当局は、人事任用給与制度について、いっそうの能力・成績主義を強化してきています。
 能力・成績主義強化に対して、当然ではないかとの意見もありますが、公務職場に差別と分断を持ち込み、チームワークの取れた職務遂行に支障をきたし、区民サービス低下につながること、そしてなによりも、その狙いが、全体として賃金抑制にあることをみるとき、組合員の生活と権利を守るべき組合としては是認できないものです。最近、導入している民間企業において、見直しや実質的に廃止した企業が増えていることが報告されています。

 主任主事選考について、当局は、成績主義の立場から「成績の優秀な者を選考するのが当然」と公言し、「実務経験重視の選考」とするとの労使確認を無視する態度に出ています。また、昇任率についても、職員の級構成が偏ることなどを理由に引き下げを画策しています。主任主事が多くなることは職務遂行上特に問題はなく、当局が新人採用を行わない現状でその級構成比率が高くなるのは当然であり、その責任を若い職員に負わせて昇任率を引き下げることは問題があります。

 特別昇格問題でも当局は昇格率を引き下げています。
 2002年度の実施結果は、2001年度の昇任率をさらに下回るものでした。特に、現業職員のなかでの問題ある追い越しが発生したことは今後の課題となりました。

 成績特別昇給の実施率拡大問題については、区長会と特区連の合意で、成績特別昇給の実施の面積率が3短換算で22%から40%に拡大できることとなりました。その実施にあたっては「現行制度を基礎として」行うとの内容で合意されています。しかし、区当局はここでも能力・成績主義を持ち出し、これまでの3短を中心とされてきたものを、12短と6短を中心にして実施率(付与率)15%で実施しようとの提案をしています。当局の考えでは、実施率(付与率)がこれまでより低いものとなり、成績特別昇給を受ける人はごく一部の人となり、特に現業職員は全く適用されなくなると危惧されます。

 区長は、マスコミの公務員攻撃に乗り、労使交渉も無視し、「名誉昇給は見直す」と発言し、実態づくりを先行させました。そして当局は、名誉昇給制度の全廃を提案しています。
 区職労は、名誉昇給制度の全廃には問題があると反対し、55歳昇給停止問題などとともに解決することを当局に求めています。しかし、区当局は、区職労要求には応えず、名誉昇給制度の一部を残す提案を新たに行い、12月から実施するよう迫っています。

 区当局は、2003年7月から自己申告制度を見直し、公務労働にはなじみにくい目標管理型を導入しました。この目標管理を業務遂行の結果追求型で実施されると、職場は混乱するものと考えます。
 区職労は、人が人を評定することは難しく制度とすることは問題があると考えています。当面は、人事考課制度の速やかな本人開示や管理職を下から評価する制度の導入などを求めていくことが重要です。

(9)条例に基づく時間内組合活動の制限で組合つぶし攻撃

 労働組合の存在とその活動が憲法および地公法上保障され、労働組合の活動上必要な一定の行動については、時間内組合活動が有給で保障されるべきで、これまでは条例に基づき行われてきました。ところが、区職労が区政に対して意見するのが気に入らないとして職免による時間内組合活動について、「適法な交渉と予備交渉、小委員会交渉に限る」との提案を行い、組合活動の制限を強めてきました。
 このように組合を敵視し、時間内組合活動を一方的に否定するような当局の不当な考えは、悪意に満ちた反憲法的意識の発意に他なりません。
 区職労は、今後の組合の存亡を決しかねないものとして、粘り強く交渉を繰り返しましたが、適法な交渉と予備交渉、小委員会交渉のほか区職労大会、区職労執行委員会の一定の機関運営を職免による時間内組合運動として引き続き認めさせましたが、その他は制限され、分会、部の活動では交渉と予備交渉のみしか認めさせることができませんでした。 
 この結果、職免による時間内の活動は大きく制約されるものとなり、区職労委員会、闘争委員会、専門部活動や分会、部等の機関運営に大きな制約を伴うことになりました。しかし、「適法な交渉及びその準備行為」を認める条例の改悪は許しませんでした。
 組合員の賃金や労働条件がさらに改悪されようとしている今日、当局の相次ぐ悪意に満ちた不当な組合つぶしの攻撃に屈せず、それを跳ね返し、組合の組織強化と団結によって、組合員の生活と権利を守る組合を構築していくことが重要となっています。

2、石川区政をめぐる状況

(1)国や都と同様の痛みを押しつける「行財政構造改革」をすすめる 

●BSC
 バランス・スコアカードのことで、民間事業所などが取り入れている組織の目標管理手法の一つです。組織経営力を高めるため、従来の財務的なアプローチだけでなく、顧客や業務プロセス、学習と成長など4つの視点から指標を定め、これをもとに業績評価を行う仕組みです。
●行政評価制度
 行政活動のねらいを明らかにして、これに応じた目標を設定して、その達成度や費用対効果を評価するものです。行政評価の対象としては、政策、施策、事務事業があります。
 NPMの手法が導入されてきている今日では、民間委託や民営化を進めるものとして利用されている傾向が強くあります。
 国や都の動向とほぼ期を同じくして、千代田区においても区政「構造改革」(NPM・新しい公共経営)の新しい動きがあります。この「構造改革」は、自治体の公共性を投げ捨て、自治体の変質をねらうやり方です。これらの背景には小泉内閣の「構造改革」、「新自由主義的行政改革」の進行があり、大企業、ゼネコンの利益のために、「民間でできるものはすべて民間に任せる」そのやめには税金も投入するものとなっています。
 石川区政は、「国保料の引き下げ」や「公益通報制度の創設」などの評価すべき施策があるものの、2002年4月には、区政の「構造改革」を進めるために「千代田区行政評価システム導入」、「千代田区行財政改革に関する基本条例制定」、「千代田区行財政構造改革推進大綱(平成14年度から18年度)策定」を行い、区民や職員の痛みを伴う「区政構造改革」をすすめています。
 また、2004年度予算編成にあたっても、「構造改革」の新手法を導入しています。
2003年9月に出された2004年度予算編成方針では、@予算編成の数値目標の提示、「マニフェスト」的手法、A「事業部予算枠編成方式」の「複数年度編成」、BBSC(バランス・スコア・カード)システム(事業部の行政評価システム)を取り入れるとしています。
 こうした手法の導入は、区民サービス向上に資するというよりは、意識的な経費削減や効率化のみに利用される危険性を持っているものです。また、行政評価や目標管理など数値で評価する新たな管理システムは、職員ひとりひとりを管理し、トップダウンに都合がよいように職場を変えようとします。
 石川区政については、是々非々で対応しますが、今後、新たな手法に対する点検活動が重要になっているといえます。

(2)能力・成績主義強化でトップ言いなりの区政

 石川区政では、職員の意見にほとんど聞く耳を貸さず、区長の一言で方向が決まるという強引な手法がますます顕著になってきています。このような区政運営の中で、「何を言っても無駄」「言えば跳ね返りがある」等の雰囲気が出来上がり、区長に対してモノを言える職員がいなくなり管理職をも含めて職員に不満が鬱積しています。結果として、トップ言いなりの区政になっていると言えます。
 また、昇任選考や成績特昇、特別昇格等を利用し、かつ能力・成績主義を全面に打ち出し、当局に都合のよい職員づくりをねらっています。

(3)区民や職員の意見を十分聞いたとは言いがたい新庁舎建設計画

●PFI方式
 Private Finance Initiativeのこと。公共施設整備において、民間の資金とノウハウを活用して、より効果的・効率的な行政サービスを提供しようとするもの。しかし、民間企業のもうけがあり、長期的なスパンでみると事業費が安くなるかは不透明です。
 「新庁舎建設問題」が急浮上し、国との合築、PFI方式で建設することを、住民や職員の意見を十分聞くことなく進めました。これに対し、区職労は、「新庁舎建設は住民や職員の意見をよく聞いてすすめるべきである」との申し入れを行いました。しかしながら、建設費問題や借地問題、「不況のこの時期になぜ庁舎建設か」などに対して、十分に情報提供や回答しきれないまま、庁舎建設が進められています。
しかし、新庁舎建設は既定路線で進行しており、区職労は、手後れにならないように各職場の新庁舎建設に関する要求集約を行っています。

3、都政から公共性をなくす石原都政

 東京都では、2%の給与カット措置が行われています。その上にマイナス勧告(0.8%、3542円)の実施と退職手当の削減を都職員に求めています。
 石原都知事は就任以来、人権感覚欠如の資質を問われる数え切れない暴言、平和への敵対を繰り返し、お台場のカジノ構想、東京ドームでの競輪の復活計画、財政面では、「羽田空港の再拡張・国際化計画」、首都圏メガロポリス構想としての「圏央道」建設、「三環状道路」「中部国際空港建設プロジェクト」構想を描き、都財政を借金づけにし、環境悪化などで都民に大きな負担を課し、「都市再生」の名で大企業・ゼネコンの巨大開発を後押ししてきました。

 他方、「第2次財政再建推進プラン」に先だって出された「途半ばにある財政再建」では、都職員の給与関係費と補助金の削減にねらいをつけ保育所への助成、私立学校教育助成、区市町村助成、シルバーパスの交付、民間社会福祉施設サービス推進費、特別養護老人ホーム整備費、など教育や福祉の予算を大幅に削減しようとしています。
 保育所への補助削減を行い、かつ区立保育所つぶしを狙って企業も運営できる認証保育所の誘致を積極的に進めています。
医療の分野では、都立病院の統廃合を進め、病院そのものを民間に売り渡そうとしています。
 さらに2003年10月に発表された「第2次財政再建推進プラン」では、大型公共事業を推進する一方で、都政のあらゆる分野で定数削減や人事給与制度改革による給与関係費削減など、「量も質も」今までの水準を大きく超えるリストラを提起しています。
こうした無茶苦茶な背景がありながら、2003年4月、石原氏が都知事に圧倒的に再選されました。この原因は何なのかを分析することが急務ですが、その一因として、石原氏の虚像がマスコミによってつくり上げられていることがあげられます。また、東京都には、すぐには生活には困らない比較的に所得の高い層が多く存在していることも上げられます。
 石原知事は、「治安の維持こそ最大の都民福祉」として「安全・安心まちづくり条例」を制定し、初めて現職警察官僚を副知事にすえ、地域の防犯に対し、防犯カメラの設置等を進めています。その上、職員1000人を警視庁・交番に派遣するとしています。
 ますます「治安強化」の名目で強権的な都政運営が行われようとしています。

4、「行革」「人員削減」すすめる23区

 23区では、好転しない経済状況を背景に、区財政の危機的状況を強調し、「退職不補充・人員削減」「民営化・民間委託化」「利用料・使用料の引き上げ」など、トップダウンの行政手法とNPM型行革を進め、区民生活と職員の労働条件に大きな影響を与えています。
 1993年の特別区職員総数は、77908人でしたが、10年後の2002年には69247人と8661人も減少しています。とりわけ現業職員は、この10年で7312人の減少となっています。
 こうした結果は、住民へのきめ細かなサービスが低下する大きな要因となっています。
また、各区で、給与や人員問題などの労使交渉事項に対して、議会の介入も強まっています。

5、自治体が変質させられようとしている

 小泉「構造改革」が進める自治体再編、「三位一体改革」、規制緩和・市場化、構造改革「特区」、地方独立行政法人化、公務員制度改悪により自治体のあり方が根本から変えられようとしています。更に自治体が有事法制により有事体制に組み込まれ、憲法に基づく住民の暮しと権利、安全を守るという自治体の本来の役割が後退させられ、中央集権化が図られる事態となっています。
 社会福祉事業、公共施設の設置管理など現在の自治体業務のほとんどが独立行政法人に移管できるようにりました。このまま行くと、住民無視の経済優先の中で、地方自治体や公務労働の存在意義を失わせ、職場の「大合理化」の道を招くことになります。

6、小泉「構造改革」すすめるための公務 員制度改悪

 政府は、今年の通常国会への「公務員制度関連法案」の提出を断念しました。これは、多くの労働組合が粘り強い反対運動を展開した結果です。
 「公務員制度関連法案」は、公務員の労働基本権を制約する一方で、採用・任用・給与の「能力・成果主義」を徹底し、しかも「能力等級」や「人事評価」に関わる事項は、「管理運営事項」として労使交渉の枠外におき、使用者の一方的な権限のもとに人事管理を徹底しようとするもので、公務労働にはふさわしくないものです。
 こうした政府の「公務員制度改革」を許さず、ILO勧告の実現を求め、国民世論を広げ、民主的な公務員制度をめざす闘いが求められています。

7、国民に痛みを押しつける小泉内閣の「構 造改革」

 「自民党を壊す」といって登場した小泉首相は、平和憲法を蹂躪し、「規制緩和」、「民営化」をキーワードに「構造改革路線」を進めてきました。
 自民党総裁選で小泉首相が再選されましたが、小泉内閣は新保守主義のもと福祉国家的視点を後退させ、アメリカ流の弱肉強食の「構造改革」を進めています。
 こうした中で、アメリカによる日本経済への介入、政府・大企業による「ルールなき資本主義」の強行は、日本経済の不況をより悪化させ、労働者に対する長時間・過密・過重労働と賃金引き下げを押し付け、中小企業の倒産など国民生活に大きな痛みをもたらしています。
 不況による企業経営の悪化・フリーター等の不安定労働人口の増加のなかで、年金未納者が37.2%と4割に迫り、サラリーマンの厚生年金も脱退企業が相次ぐ状況で、02年はじめて取り崩し措置がとられるなど年金制度の危機が言われています。このため政府は、給付額の引き下げや掛け金の引き上げ、給付開始を67歳に延ばすなどの方針を明らかにし、またその財源として消費税率の引き上げを検討しています。
 厚生労働省の将来見通しでは基礎年金の積み立て額は175兆4000億円となっていますが、計算上の額はもっと多いはずだという意見もあります。現在の保険形式による積み立ては積み立てられた原資が、目減りや投資等による失敗で減少する危険があること、また、年金制度に不安を抱く若年層の年金未納による制度崩壊の危険があります。これらの弊害を防止するには、保険方式ではなく税方式に改めること、また、逆進性による社会的弱者いじめの手法とならないように所得税方式とする必要があります。当面は、すでに国会で一旦決議されている基礎年金の国庫負担を早急に2分の1とし、年金を保険方式の制度から所得税方式による誰もが最低水準の年金を保障される制度の改革が求められています。

8、政府・財界一体となったリストラによ る労働者の暮し破壊

 政府統計では「リストラ・合理化」が押し進められた結果、倒産件数は減少しています。しかし、「大リストラ」を実施した企業や輸出関連等の一部企業を除けば、倒産件数、負債総額、失業率は依然かなり高水準(5.3%、02年の平均失業者数359万人)で、自殺者は毎年3万人を超え4万人に迫り、中小企業をはじめとした企業の多くは業績が回復傾向にあるとはいえません。
 また、「リストラ」の一環として、下請け・外注(アウトソーシング)が進められていますが、下請け企業の労働者の平均年収は300万円台で、200万円台の労働者も少なくありません
 最近、新日鉄、ブリジストン、出光と大手の企業で相次いで大火災が起きています。これも、「リストラ」によって人員を減らし、無人のために火災が起きたのが原因といわれています。
 9月に発表された国税庁の報告によると民間給与生活者の年間収入が5年連続で減少し、また、銀行協会の発表では無貯蓄家庭が21%を超え、小泉内閣が言うように景気が回復軌道にあるといっても、一般労働者にとっては底なしの不況がなお続いているといえます。

 政府与党は、財界の意向にそって「労働者保護法」の改悪を繰り返しています。今回は使用者による「解雇権」の明記を阻止することができましたが、派遣労働の範囲を拡大しました。「労働者保護法」の相次ぐ改悪の結果、正規社員・職員の割合が減少し、低賃金の契約、パート、アルバイト等の不安定労働者人口が急増しています。年収300万円台の労働者が多く増えていることも特徴です。不安定雇用・低賃金労働者の増大は、社会全体の消費経済を停滞させ、デフレを押し進め労働者の賃金引き下げを呼び起こしています。この悪循環を断ち切るには賃金の下限を定める「最低賃金」法の制定が急務です。
 深刻な日本経済・地域経済の不況からの脱却の道は、何よりも国際労働基準に沿った「働くルールの確立」、雇用の拡大、賃金の底上げ、「均等待遇」など、労働もナショナルミニマムの確立と国民所得拡大が不可欠です。「働くルールの確立・雇用の拡大」で21兆円の所得増が見込まれ、その経済の波及効果は13兆円と試算されています。この方向で労働組合が大きな運動を展開することが求められています。
 さらに弱肉強食の経済、大企業重視の流れを断ち切り、国民、住民、労働者重視の政策に切り替える政治が強く求められています。

9、総選挙の結果で改憲勢力増大へ

 9日投票で行われた総選挙は、6割に満たない低い投票率で終わりました。なぜ、投票率が上がらなかったのかについては、自民、民主の二大政党制へといわれましたが、肝心の政策の違いが見えず、どっちが勝っても同じではないか、また違いがあっても二大政党と違う第3の選択肢が無駄になる等の要因が考えられます。
 この結果、政権交替は起こりませんでしたが、選挙期間中大きな論争とされなかった憲法改悪問題や消費税問題、年金問題などが大きな課題として浮上しようとしています。
戦争に巻き込まれるような憲法の見直しは、将来への大きな禍根となります。今後の政治動向に強い関心を示していく必要があります。

10、アメリカの戦争政策に追随し、「戦 争する国」めざす日本

 米国は、9・11テロの協力者、毒ガスや核兵器開発の大量破壊兵器の所持、独裁国家、人権無視などの理由で昨年のアフガン侵攻につづきイラクへ侵攻しました。
 「証拠が十分ではない」「もっと時間を掛けて調査すべき」との国際世論と国連を無視し、イギリスその他の数カ国だけで圧倒的科学兵器での攻撃を開始しました。結果、子どもや女性、高齢者を含む非戦闘員の多大な被害の後、フセイン政権は崩壊しました。しかし、大量破壊兵器等の証拠は発見されず、治安は悪化し、ゲリラによるテロも頻発しています。米・英・豪では侵攻にあたって国内世論作りのため、不法な情報操作があったとされ、英国のブレア首相をはじめ政府首脳が窮地に立たされています。また、米国では治安維持および復興支援のため10兆円にも上る補正予算が提案されていますが、与野党からの非難にさらされています。早速米国はマドリードで開かれるイラク復興支援国会議でEUと日本へ相当額(4〜6兆円)の支援の要請を行いました。フランスとドイツを中心とした国が、復興支援は米英主導ではなく国連主導で行うとする立場から支援に消極的な中で、小泉内閣は、1500億円の支援援助を約束しています。これは、イギリスの実に5倍もの巨額でアメリカに対して気前のよいところをみせています。さらに小泉内閣は、イラクに占領政策の一環である戦後復興支援に向けて、憲法上防衛のために存在するとしてきた自衛隊を派遣しようとしています。憲法を無視しつづける無法者内閣そのものといえます。

●ネオコン
 「ネオコン」つまり「ネオ・コンサーバティヴ」のことで、「新保守主義」と略されます。その定義はまだ固まっていませんが、とりあえずブッシュやラムズフェルド、チェイニーら政権中枢の「タカ派」に大きな影響を与え、イラク戦争を推進した人々のことを指すようです。もともと保守的傾向の強いブッシュ政権ですが、「ネオコン」とよばれている人が台頭してくるのはやはり「9.11」同時多発テロの後です。
 核兵器は人類滅亡に導く兵器で即廃絶すべきものです。劣化ウランを大量に使用し、自国で臨海前核実験を繰り返す米国が、他国の核兵器開発に対して警告するのは説得力がありません。さらに、北朝鮮の核威嚇に対抗するため、米国のネオコンと国内の一部で日本に対して核保有させようとする声が起こりました。これに呼応したのか、日本でも福田官房長官や安部幹事長が核保有も許されるような発言をし、小泉首相は憲法見直しを指示するなど軍靴が聞こえてきそうな動きがあるのは由々しき事態です。

 一昨年アメリカが侵攻したアフガニスタンでもまだ治安は回復せず、一部では旧政権のタリバンが勢力を盛り返しています。パレスチナでもイスラエルのガザ地区等の占拠政策に反発して自爆テロと報復と言う名の逆テロがいつ終わるとも知れず繰り返されています。そんな中で、イスラエル空軍のパイロットの一部が「民間人にも被害を与える攻撃はしたくないとして」空爆命令を拒否し、占領政策を中止べきだとしています。厭戦気分とともに平和的方法による紛争解決の声が広がることが期待されます。
 拉致問題で北朝鮮は、日本が植民地時代の戦争責任をキチット果たさなかった事を取り上げ、「拉致問題は民族の憎しみから起きてしまった問題」などと、下手な口実の材料に使われています。日本が戦争責任をウヤムヤにしてきたことも重要な問題ですが、拉致を正当化する理由にはなりません。また、拉致問題の解決には、日本政府の粘り強く平和的方法による交渉とともに、北朝鮮へ影響力が強い中国政府の積極的協力が必要です。しかし、小泉首相は再三の靖国神社参拝で信頼を失い、積極的な協力を得ないでいます。
 さらに、いずれの武力行使も紛争の解決には有効でないばかりか、憎しみとテロと報復が残るだけです。世界に誇る平和憲法を有する日本は、米国の圧力に屈することなく、もっと積極的に平和外交のリーダーとなり、憲法9条を広げるとういう名誉ある地位を占めるべきです。

11、自治労の不祥事問題

 自治労は、今年の定期大会で、不祥事問題での事実上の再生宣言を行うとともに、借財に対する「新借財返還計画」返済(組合費も返済に充当)を決定し、一部の損害賠償裁判等を除き、決着を図りました。
 しかし、裏口座として管理された金銭の中から、主に地方に対する組織対策・組織強化の交付金として使用されてきた問題については、調査の結果不正な使用はなかったとするのみで、詳細は明らかにされぬままとなっています。
 また、不祥事に係った当時の役員等責任者については、その責任等に応じて返還金や負担金などを求めてきましたが、責任者等の返還金額、負担金額はプライバシーに関わることを理由に一部しか明らかにされていません。責任追及及び対応が妥当であったかどうかは基本的に組合員の判断によるべきであり、こうした点などで不祥事の解明は中途半端なものとなっています。
 区職労はこれらの点などを大いに不満とせざるを得ません。
 自治労の不祥事問題は、労働組合への信頼を著しく損ねました。また、区職労への組織的影響も少なくないものがありました。組合員の信頼回復のためにも、自治労及び都本部の機関会議等で、機会あるごとに引き続き真相究明や自治労再生のための追及を行っていく必要があります。

12、情勢をめぐっての展望

 小泉「構造改革」による中小企業つぶし、社会保障制度の大改悪、増税など、悪政が行われているもとで、これまで政府・与党を支えてきた農協、漁協、商店会、中小業企業者、医師会などのなかに、政治に対する矛盾が生まれ、これまでの政府・与党ではだめだという変化が生まれています。
 たとえば、医療制度問題では、医師会などの四団体が政府・与党の方針に反旗を翻し、「3割負担を元にもどせ」と運動を進めています。
 「幼保一元化」保育園の調理室廃止の規制緩和など、保育をないがしろにする政策に対しても日本保育協議会など三団体が反対運動を起こしています。
 地方自治体をめぐっても全国市町村会や町村議長会が市町村合併の押し付けに反対しています。
 イラク戦争に反対する運動は、全世界で広がり、日本では若者にも広がり、平和への関心の度合いの深まり、そして憲法9条の大切さが改めて見直されることになりました。
 小泉「構造改革」のもとで、「賃下げとデフレの悪循環」が進むなかで、マイナス「勧告」は、民間労働者の賃金にも大きな影響を与えていることから、民間労働組合からも大きな怒りが上がり、公務・民間の共同闘争の重要性が出ています。
 東京都の進める保健所統廃合についても三多摩の自治体・議会が反対し、条例提案ができずにいます。
 これからすすめようとしている東京都の保育所などへの補助金カットに対しても大きな抵抗運動が起こると予測されます。
 このように小泉「構造改革」を中心とした様々な悪政は、労働者・国民に苦痛を与えるものであり、これに対する反発は必至であり、あちこちで反対闘争が起こります。
 自治体労働者も住民サービスの切り捨てに反対するたたかいと働き甲斐を奪う「自治体リストラ」「行政の市場化」に反対する闘いを結合し、住民と地域労働者と共同して闘えば、運動は広がると確信します。
 また、こうした流れの中で、政治が大きく動きます。主体的に私たちが、政治を動かす役割を果たすことが、要求が前進する道であるといえます。